【吸血ロマノフ王朝奪還戦】悲壮な覚悟で（作者 メリーさんのアモル）

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リプレイ

「人は城、人は石垣……。傲慢な吸血貴族たちのカドが削りに削れて石材になれたんだ？」
　『“魔槍”Mk-Ⅱ』を手に、敵を眺めてそう呟くのは女性と間違われるほどに可愛らしくゴスロリを着こなす人間のディアボロス、ロキシア・グロスビーク（啄む嘴・g07258）だ。
「だけど剣を作っちゃったか。じゃあ折ろう。鋭く怖くなる前に」
　紅玉めいた赤い瞳が爛々と輝き、その歩みは意気揚々としている。
「配下に捨て石になれと強いるとは。事実追い詰められ居るとは言え「ロシア一の剣」としてそれは誇りある選択でしょうか？」
　その隣で、敵のジェネラル級ヴァンパイアノーブル『ケールレル伯爵』の言葉に眉を顰めるのは中性的な顔立ちに女性のような服装が可愛らしい吸血鬼のディアボロス、イオナ・ガルバローゼ（空染めの一輪・g07485）だ。
「敵とはいえ捨て駒にされる事に不憫さを感じますが、私たちも歩みを止めれないので」
　イオナの言葉にそう応じるのは、ふんわりしたピンクの髪に極端に白い色白な肌を持つサキュバスのディアボロス、花咲・音々（Mystic Ark・g07823）だ。
「えぇ、相手はクロノヴェーダ。被害者面をしておりますが、これまで数多の人々を虐げ血を啜って来た者共。躊躇は不要であります」
　音々の言葉に頷くのは緑の髪を纏めている無表情なサイボーグのディアボロス、バルタン・ディエチ（突撃のバトルメイド・g01433）だ。
「でございますね。ただ、覚悟を決めた者ほど恐ろしいものはありません、トループと言えど本気で全て使い尽して来るでしょうね」
「はい。油断することなく、敵軍を粉砕し突き進むのであります」
　２人のメイド、イオナとバルタンが頷きあう。
「十王も冥神も天使も大忙し。書き入れ時だ、我が馬よ！」
　先手を取って、敵陣に向けて疾走するのはロキシア。
　その側に朧げに浮かび上がってくるのは亡霊なる騎馬。
　完全に馬の形を取ると同時に、ロキシアはその亡霊馬に飛び乗り、即座に腹を蹴って加速する。
「さあ生前葬。一切の希望を捨てよ！」
　『“魔槍”Mk-Ⅱ』を激しく振り回し、騎乗突撃を仕掛ける。
　パラドクス『地を駆ける暴虐の牙：Loxia』だ。
「っ！　ディアボロス、現れたな！」
　鋭き『“魔槍”Mk-Ⅱ』の一撃をくらいながらも、トループス級ヴァンパイアノーブル『国境警備吸血隊』は雪上を滑るようにロキシアと騎馬に追従しながら、魔法弾を放つ。
「――いいね。熱狂に焼入れた一撃」
　ロキシアはその狙撃を『“魔槍”Mk-Ⅱ』を構えて攻撃を受け止め、時空が軋みをあげる。
　防ぎきれなかった一撃が、美しいゴスロリ服の端々を焼くが、ロキシアはそれすらも装飾であるかのように迫力を増すばかり。
「数も多いので纏めて相手してあげます……。雪と嵐の壁程度で、この攻撃は止めれませんよ」
　ロキシアの突撃で陣形が乱れたところに、音々が星の様に淡く輝く細剣『エストレア』を点高くかざし、思いっきり振り下ろす。
「これでっ！」
　それを合図にパラドクス『ミーティアライト』が発動し、流星の如き光の矢が一面に降りそそぎ『国境警備吸血隊』を貫く。
「危ない！」
　いつもと違っていたのは、ロキシアの一撃を既に喰らっていた『国境警備吸血隊』が他の『国境警備吸血隊』を庇うように攻撃のターゲットに割り込んだことだ。
　より多くの『国境警備吸血隊』を生かすために自分が捨て石になることを選んだ、ということだろう。
「なるほど、栄光の代償は大きそうですね。そもそも代償を払った先に栄光があるかもわかりませんけど」
　捨て石により生き残った『国境警備吸血隊』は反撃として雪と嵐の防壁を作り、そのまま音々を圧し潰そうとする。
「わたくしの血の最後の一滴までご主人様の薪となります」
　それに抗うかのように、紅蓮に燃える薔薇の花が生み出され、激しい炎が咲き乱れる。
　イオナのパラドクス『Explorer Series』だ。
　攻撃のターゲットは一番弱った者から。
　そうすれば、捨て石が庇いにくることは出来ず、ダメージを想定より軽減されることもない。
　紅蓮に燃える薔薇の花が生み出す灼熱の花弁の嵐と雪と嵐の防壁が衝突し、時空が軋みをあげる。
「っ、押し切れない……」
「この名の薔薇はどんなに冷たい冬をも越える。貴女達の使う冷気はロシアの冬より短く温いのですよ」
　ロキシアは敵陣の中にあって敵を撹乱し、音々とイオナは前線にて、敵集団と当たっている。
「ならば我輩は後衛にて、火力支援を行うであります」
　その状況を素早く分析したバルタンはその腕のみで操作可能な左右の腕に装備したヘヴィキャノン、即ち『レフトアーム・ヘヴィキャノン』及び『ライトアーム・ヘヴィキャノン』を両手に構えて、『国境警備吸血隊』の集団へ向ける。
「ガンガン行こうぜ、であります」
　パラドクス『アナイアレイション』。装備武装を一斉発射するシンプルなパラドクスだが、重火器に当たるキャノン砲を２つも装備したバルタンにはこれほどぴったりなパラドクスはない。
　一斉に２つのキャノン砲からの砲撃が開始し、『国境警備吸血隊』を攻撃していく。
　ロキシアに撹乱され、正面に現れた音々とイオナへの対処でいっぱいいっぱいになっているところへ遠距離から攻撃された『国境警備吸血隊』は、慌てて吹雪を発生させ、反撃する。
　無数の砲弾の嵐と、吹雪がぶつかり合い、時空が軋みをあげる。
　なお、バルタンは吹雪に対して、内蔵していた火炎放射器で手頃なものを燃やして、暖を取る。
　気休め程度の行動だが、これも全武装の一斉射撃には違いないため、吹雪と拮抗し、防御の効果を生む。
　弱った敵から攻撃する作戦が徹底されると、余計な妨害が発生することも確実に敵は殲滅されていく。
「撤退までは冥府送りフルコース、たっぷり愉しませてあげる。コシュタ・バワーも僕も興が乗ってるんでね」
　ロキシアも自身の騎馬を反転させ、何度も突撃を繰り返す。
　音々とイオナもパラドクスで前線を支える。
　バルタンは遠距離で支援を続ける。
　だが、戦いが長続きすればするほど増援の数も増えてくる。一方のディアボロスの継戦能力は低下する。
　撤退ラインが訪れ、まずは騎馬に乗ったロキシアが素早くバルタンの脇を抜けて撤退していく。
　音々とイオナもそれに続き、撤退し、殿を務めるバルタンが砲撃を続け相手の動きを牽制しながら、他３人が撤退し切ったのを確認すると同時、自身も身を翻して、素早く撤退した。

最終結果:成功
完成日	2024年11月22日