【吸血ロマノフ王朝奪還戦】連なる雪だるま、重なる苦行(作者 鏡水面)
#吸血ロマノフ王朝
#【吸血ロマノフ王朝奪還戦】⑪革命監獄収容所
#吸血ロマノフ王朝奪還戦
#サンクトペテルブルク
#⑪『鮮血の改革者』ストルイピン
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●再教育
監獄にて、その『躾』は行われていた。
「集めた雪を丸く固めろ!」
「形がなってない! もっと美しい丸を作れ!」
「よし! 丸めた雪を積み上げ続けろ! 崩れたら最初からやり直しだ!」
収容所の庭に集められた、元革命軍のトループス級『婦人血死隊』屍兵たち。
彼女たちは上官から命じられるままに、雪だるまを作っている。
ちなみに、雪だるまに勝手に顔を描いたり、手を付けようとすると怒られる。
彼女たちにとって、その命令はひたすらに退屈で、意味のない行為のように思えた。
「こんなことに、一体何の意味が……?」
「口答えするなっ! お前達は駒で歯車だ! 言われたことを大人しくこなせ!」
一人が疑問を口にするが、叱責が飛んでくる。この収容所では、異議を唱えることは許されない。
――命令により、無駄な行為を繰り返し行わせる。これは思想教育の一環である。
革命軍所属のトループス級は、元々自立した行動や臨機応変さを求められていた。
だが、もはやその能力は不要。軍部で求められるものは、『上官からの命令を何でも忠実にこなす能力』だけだ。
どんな馬鹿げた命令にも忠実に従い全力を尽くす兵士へと矯正するため、この雪だるま作りは行われている。
●監獄へ
「……雪だるま作りね……これも思想教育の一環なのだろうね。ちょっとよくわからないけど」
フロラン・フォンテーヌ(水底の天使・g03446)は率直な感想をこぼした後、今回の任務について説明を始める。
『鮮血の革命術式』によって、最終人類史に現れたジェネラル級ヴァンパイアノーブルは見事全滅させることができた。最終人類史の一般人に被害を全く出さず、ジェネラル級ヴァンパイアノーブルたちを撃破できたのは素晴らしいことだ。
「作戦の失敗によって、吸血ロマノフ王朝のジェネラル級は大きく数を減らした。その上、最終人類史に攻め込んだことで、ディヴィジョンの排斥力も大きく揺らいでる。この影響のせいだろうね、【吸血ロマノフ王朝奪還戦】発生を示す断層碑文が出現したよ。今こそ攻撃を仕掛け、吸血ロマノフ王朝の大地を奪還する絶好の機会だ」
ヴァンパイアノーブルの主力はサンクトペテルブルクに集結している。
勢力を保っている竜血卿ドラキュラの軍勢はウクライナを拠点としており、それ以外の地域の戦力はシベリアに冬将軍がいる程度だ。だが、シベリアでの排斥力が一気に下がり、奪還戦時にはアルタン・ウルクの侵攻がほぼ確実に発生する。
「シベリアにアルタン・ウルクを招き寄せることで、ディアボロスに二正面作戦を強いるつもりなんだろうね。……ここまで追い詰めてもなお、『吸血皇帝ニコライ2世』は起死回生の策を諦めていない。徹底的に叩いて、吸血ロマノフ王朝との決着をつけよう」
今回の前哨戦で向かってもらうのは、『鮮血の改革者』ストルイピンが管理する収容所だ。
監獄の庭で、必死に雪だるま作りに励むトループス級『婦人血死隊』屍兵と接敵し、撃破してきてほしい。
撃破した後は、援軍が来る前に撤退する流れとなる。
「敵は再度の『鮮血の革命術式』の発動を狙ってる。これを必ず防ぐためにも、確実に敵勢力を削ってきてほしい。それじゃあ、頼んだよ!」
リプレイ
ソラス・マルファス
思想教育ねぇ。数頼みの蟲や亜人はともかく、ヴァンパイアってのは個々の強さや臨機応変さが強みだと思ってたんだが。
まぁ統率の取れた軍は怖いからな、早めに崩させてもらおう。
教育が行き届いてないなら、欝憤晴らしに好き勝手襲い掛かってくる敵と、命令のせいで勝手に動けない奴とにわかれるだろう。時間は掛けず、正面から攻撃して体制を立て直される前に打撃を与えるとしよう。
「この監獄はディアボロスが制圧させてもらうぜ」
挑発しつつ、風を纏った大剣で手近な敵に斬りつける。制圧自体は無理だろうが、防衛と迎撃のどちらにするか迷えば、とっさに動きにくくなるはずだ。
敵の突進は大剣の腹で受け流し、怪力無双で雪だるまの玉を投げて敵の体制を崩そう。多数に囲まれたら空輝石で上昇気流を起こし、足元の雪を巻き上げて視界を塞ぐぜ。
戦いながら敵の動きを観察。退路を確保しつつ、伝令が走ったり増援が来ないか意識しておくぜ。増援がきそうなら、多少余裕があっても早めに退却しよう。
エルティ・アーシュ
雪だるま作ろーって曲は聞いたことあるけど、やっぱり雪だるまさんは楽しんで作るのが一番だよねえ
…と、そういう場合じゃないね
新宿島が新宿島じゃなくなっちゃうのも、たくさんの人が犠牲になるのも防がなきゃ
戦う前の敵さん減らし、頑張ろうなの
戦闘前にこっそり、敵さん達の並びや周りの状況とかをできるだけ確認
敵さんが特に油断してそうなところに不意打ちを狙うよ
ダッシュで一気に近づいて、水鳥の戯れでばさっといくの
攻めたら一撃離脱でなるべく距離を取ったり、敵の攻撃は薙ぎ払ったり吹き飛ばしたりして、背中を取られないように気をつけよう
雪だるまさんが盾になる幸運とか、ないかな
アウリーネはそばにいて
敵さんに囲まれたりしないように、それと気づいた事とかあったら教えてね
ぼくがしっかり護るから
必要な時は仲間に続いて攻撃したり、仲間に攻撃をつなげられるように連携するよ
ある程度敵さんを減らして、疲れ具合を見ながら、敵さんの増援前に撤退
今回はここまでだけど、新宿島もたくさんの人々も護ってみせるの
絶対負けないからね
連携アドリブ歓迎
不知火・紘希
視界を悪くする黒いモヤモヤオーラを纏うクロノヴェーダはとっても苦手。幸せいっぱいの世界に僕が描きかえてあげるよ!
磨いてきた観察力やアートの魔法で、仲間や戦況を観て臨機応変に作戦をサポートするね! 使うのは魔法のクレヨンやペイントツールに光魔法。
戦闘中も笑顔を忘れずに世界の幸せを心から大切に考えてベストな行動を取ろう。自由自在に具現化するアートを描くよ!
ホンモノみたいでびっくりした?
多少の怪我も全然平気! 光る靴で元気に駆け抜けるよ。
他のディアボロスには絶対迷惑をかけないよ。礼儀作法はちゃんとしなさいとって昔おじさんに言われて育ったんだ。
アレンジはおまかせ! みんなの笑顔のために頑張るぞ!
●崩れる敵と雪だるま
有刺鉄線には雪が薄く降り積もり、鈍色の金属には白い雪化粧が施されている。
物々しい雰囲気漂う監獄へと、ディアボロスたちは訪れていた。この施設は『鮮血の改革者』ストルイピンの居城とも言っていい。
「思想教育ねぇ。数頼みの蟲や亜人はともかく、ヴァンパイアってのは個々の強さや臨機応変さが強みだと思ってたんだが」
静かに呟くのはソラス・マルファス(呪詛大剣・g00968)だ。軍部にはその臨機応変さが弱点となるのであろう。
不知火・紘希(幸福のリアライズペインター・g04512)は息苦しい監獄を見つめ、きゅっと眉を寄せていた。
「雪だるま作りだって、本来はもっと楽しく自由なもののはずなんだ。こんなの、全然幸せじゃないよ」
命令で同じものを作り続けるだけだなんて馬鹿げている。
紘希へと頷き、エルティ・アーシュ(受け継ぐ小竜・g01898)も率直な想いを紡いだ。
「雪だるま作ろーって曲は聞いたことあるけど、やっぱり雪だるまさんは楽しんで作るのが一番だよねえ……」
ともあれ、庭にいる『婦人血死隊』屍兵たちを倒し、雪だるま作りも止めさせる。ディアボロスたちは寒さを吹き飛ばすように意気込んだ。
今こそ磨いてきた力を実践する時と、紘希は表情を引き締める。
「幸せいっぱいの世界に僕が描きかえてあげるよ! クロノヴェーダの黒いモヤモヤオーラをキラキラな色に塗り替えるんだ!」
「まぁ統率の取れた軍は怖いからな、早めに崩させてもらおう」
教育が半端なうちにケリをつける。ソラスは呪詛の大剣を堅く握り、庭の方向へと鋭い眼差しを向けた。
ソードハープを手に、エルティも力強く前を見据える。
「うん、新宿島が新宿島じゃなくなっちゃうのも、たくさんの人が犠牲になるのも防がなきゃ」
息を潜め物陰に身を隠しながら、ディアボロスたちは庭へと接近した。
木陰からこっそりと、雪だるま作りに励む『婦人血死隊』屍兵たちを観察する。
命令に従い、彼女たちは雪を集め、丸め、積み上げたものを並べ続けていた。雪だるまたちが、等間隔でズラリと並んでいる。
雪を丁寧に丸めている敵を視界に入れ、エルティはソードハープに魔力を注ぎ込んだ。
「雪だるまさんが綺麗に整列してるね。あそこの、頑張って雪を丸めてるところに不意打ちを仕掛けるの」
心に思い描くのは、清らかな川に住む水鳥の美麗な羽搏き。水鳥が水面を翼で薙ぐように、エルティはソードハープを大きく閃かせた。
水中の魚を狙う水鳥のように戦場へと飛び込み、水鳥の戯れを発動する。
「美しい水鳥さんの物語の一端を、この剣に込めるの」
風のように舞い込んだ彼女の斬撃が、雪だるま作りに熱中していた敵群を深く斬り裂いた。
裂かれながらも、屍兵たちは戦闘態勢に入る。
「ディアボロスの襲撃だと!?」
「雪だるまなど作ってる場合ではないッ!」
屍兵たちへとソラスも大剣を構え、堂々と言い放った。
「この監獄はディアボロスが制圧させてもらうぜ」
言いながら敵全体の動きを観察する。襲撃に驚き戦闘に身が入らない敵、逆に殺気立った様子で戦う気満々の敵。
……やはり、まだ統率は取れていないようだ。敵の動きが安定する前に仕留める。この戦闘は速戦即決が肝心であろう。
「軍部の教育とやらがどれだけ行き届いているか、確かめてやろう。――風纏い、旋風!」
ソラスは大剣にエネルギーを込め、旋風を巻き起こした。正面から吹き付ける大旋風が、周辺の雪だるまごと敵を吹き飛ばす。
「やってくれたな! 我が銃弾を喰らうといい!」
戦意に満ち溢れる屍兵たちが、銃剣を手にディアボロスたちへと突撃する。
「アウリーネ、ぼくの後ろに」
繰り出されるナカーザニエからアウリーネを護るようにエルティは一歩前に踏み出し、ソードハープを凛と構えた。
雪だるまを盾にするように位置取れば、雪だるまを貫きながら屍兵の銃剣が迫る。
「雪だるまさんがバラバラに……底知れない鬱憤を感じるの」
崩れる雪だるまから敵が来る方向を把握し、ソードハープを振るった。
銃剣の突きを薙ぎ払い、放たれる銃弾による衝撃も後方へと跳び退きながら軽減する。
エルティは傍にいるアウリーネへと視線をやった。……大丈夫だ。彼女に傷は無い。
ほっと安堵の息をつくのも束の間、すぐに眼前の敵へと視線を戻し、戦闘に集中する。
「そう容易くは当たらんか……!」
屍兵が忌々しげに言った。なおも繰り出される銃剣の突撃を、ソラスは大剣の腹で受け流す。
攻撃を弾かれた敵が僅かに体勢を崩した隙に、手近にあった雪だるまの頭をむんずと捥ぎ取った。
「巨大な雪玉で雪合戦……ってな!」
雪だるまの頭部を敵へとぶん投げる。雪だるまは屍兵の頭に激突し、粉々に砕け散った。
「ぶふっ!?」
雪にまみれる敵へとソラスは再び旋風を叩き込んだ。凄まじい暴風は、傷の修復が間に合わぬほどの威力を以て屍兵の肉体を破壊する。
「お前らが作った雪だるま、思う存分利用させてもらうぜ!」
「くっ、我々が心血を注ぎ作った雪だるまが!」
「このままではまた上官に怒られてしまう……」
雪だるまを壊されたことに憤りを覚える者や、上官の怒りを恐れる者。屍兵たちの反応は様々だ。
先ほどからその傾向は顕著だが、やはり、軍部による再教育は完全には行き届いていないようである。
陣形を乱す彼らへと、追い打ちを掛けるように紘希が戦場へと突入した。光る靴に搭載したインラインスケートをフル稼働させ、風のように走る。
魔法のクレヨンを指の間に挟み、屍兵たちの頭へと狙いを定めた。
「雪玉を投げるのもいいけれど、僕はこれ! クレヨンだって、思いきり当たると痛いんだからね!」
クレヨンに魔力を込め、敵へと投擲する。魔力に輝くクレヨンが、監獄の空気を切り裂きながら宙を飛んだ。
希望のキラメキは、真っ直ぐに屍兵へと向かう。魔力でコーティングされたクレヨンは鉄のように硬い。
クレヨンが敵の頭部へと直撃した瞬間、激しい衝撃に血が噴き出した。
「ね、それなりに痛いでしょ?」
「くううぅ、っ……!」
それなりなどというレベルではない激痛に、屍兵は頭を押さえながら言葉を失う。
だが、その眼差しには変わらず殺意を宿し、血の影を紘希へと差し向けた。
迫る影から、紘希は逃れるように駆けまわる。
「血の影で僕を捕まえるつもりだね。けど、そう簡単には捕まらないよ!」
追い付いた影が一瞬彼を絡め取るも、光る靴を駆使することで脱出する。
連続射撃が体を掠めるが致命傷には至らない。紘希は太陽のような笑顔を浮かべ、勝利宣言をしてみせた。
「この鬼ごっこ、僕の勝ちだよ!」
統率が乱れている『婦人血死隊』屍兵の軍勢を掃討するまで、そう時間は掛からなかった。
ただ、この騒ぎは監獄の他エリアにも届いたであろう。
周辺へと警戒心を張り巡らせつつ、ソラスが仲間たちへと呼びかけた。
「じきに増援が来るだろう。余裕のある今のうちに撤退しよう」
無理をして大怪我などしてしまっては本戦に響く。
ソラスの言葉に、紘希は力強く頷いた。彼としても、ここで無理に戦闘を続行するつもりはない。
「本戦前に無理は禁物だもんね。あとは本戦に取っておくよ」
ディアボロスたちは戦場から離脱する。
監獄の奥でざわめく多くの敵の気配を感じながら、エルティは決意を紡いだ。
「今回はここまでだけど、新宿島もたくさんの人々も護ってみせるの。絶対負けないからね」
遠ざかる監獄は、灰雪の中で悠然と佇んでいる。
閉鎖的で息苦しさすら覚えるこの場所が、奪還戦の後には清々しい空気に包まれることを願っている。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【水源】LV1が発生!
【操作会得】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV2が発生!
【ダブル】LV1が発生!