【吸血ロマノフ王朝奪還戦】エピック・ザ・バイキング(作者 土師三良)
#吸血ロマノフ王朝
#【吸血ロマノフ王朝奪還戦】⑨正規軍養成練兵場
#吸血ロマノフ王朝奪還戦
#サンクトペテルブルク
#⑨アレクセイ・ブルシーロフ
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●吸血ロマノフ王朝にて
「ちんたら走ってんじゃねえぞ、このタマナシども! あそこがおっ立たなくなった老いぼれの騾馬だって、おまえらを簡単に追い抜けるぞ! えーい! 足を止めるな! ペースを上げろ! 肺が裏返しになるまで走り続けろぉーっ!」
城塞と見紛うほど大きな練兵場の前で、アヴァタール級のヴァンパイアノーブルが鞭を振るっていた。
彼の怒声に追い立てられるようにして駆けているのは、バイキング風の出で立ちをした筋骨隆々たるトループス級たち。
『駆けている』というのは比喩の類ではない。バイキングたちはヴァンパイアノーブルの特種能力もパラドクスも用いることなく、汗を流し、息を切らせて、二本の足で練兵場の周囲をぐるぐると回っているのだ。
基礎体力の強化を目的としたこの訓練に対して、バイキングたちが不満を抱いているのは明らかだった。しかし、倦怠感や厭戦気分に支配されているわけではない。
むしろ、戦意に満ち満ちている。
「こんな訓練をさせられるとは……屈辱以外の何物でもないな」
一体のバイキングが(訓練教官たるアヴァタール級には聞こえないように小声で)呟くと、他の者たちも次々と口を開いた。
「まったくだ。訓練など必要はない」
「うむ。我々の肉体は既に仕上がっているのだからな。完璧なまでに」
「ああ! この鍛え上げられた筋肉を駆使して屍山血河を築く日が待ち遠しい……」
「首を洗って待ってろよ、ディアボロスども」
「やはり、筋力! 筋力はすべてを解決する!」
勇ましい言葉だが、バイキングたちの足はがくがくと震えていた。
彼らの名誉のために断っておくと、恐怖のために震えているのではない。
筋肉痛に苛まされているのだ。
●新宿駅グランドターミナルにて
「このパラドクストレインの行き先は『吸血ロマノフ王朝』だ」
パラドクストレインの車内に足を踏み入れたディアボロスたちにそう告げたのはインセクティアの精悍な青年。
時先案内人の李・令震である。
「『鮮血の革命術式』によって最終人類史に侵攻したジェネラル級ヴァンパイアノーブルどもは一体残らずくたばった。最終人類史の一般人の被害は皆無。一方、吸血ロマノフ王朝のほうはジェネラル級の数を大きく減らした上に、こっちに攻め込んだ影響でディヴィジョンの排斥力も不安定になっているようだ」
しかし、その大勝利に寄っている余裕はない。
吸血ロマノフ王朝奪還戦が始まろうとしているのだから。
断片の王である『吸血皇帝ニコライ2世』はすべてを賭けて挑んでくるだろう。また、アルタン・ウルクの干渉も確定視されている。苛烈な戦いとなることは間違いない。
それを制するためにはファーストアタックが重要となる。今までの奪還戦がそうであったように。
「というわけで、ファーストアタックを仕掛けてもらいたい。場所は、『アレクセイ・ブルシーロフ』なるジェネラル級が仕切っているサンクトペテルブルク郊外の正規軍養成練兵場だ」
令震の予知によると、ここに招集されたディアボロスと相対するのは『ヴァンパイアヴァイキング突撃兵』と呼ばれるトループス級たちだという。
「そいつらは肉弾戦を得意とするトループス級らしいが……たいした連中じゃないだろうな。この段階で練兵場に残っているってことは、まだ訓練が済んでないってことだから。おまけに訓練がキツすぎるせいで疲労が溜まっているようだ。ただし、志気と自己評価は異常に高いから、呑まれないように気をつけろ」
志気が高いと言っても、それは所謂『匹夫の勇』である。そこに付け込んで調子に乗るように仕向ければ、戦闘を有利に進められるかもしれない。
「訓練途中の新兵だからといって、情けをかけたりするなよ。とはいえ、殺り過ぎるのもいけない。新兵といえども大軍勢だから、ファーストアタックだけで全滅させるのは不可能だ。兵力を削れるだけ削ったら、頃合いを見て撤退してくれ」
と、話を締め括った後、令震は力強い声で宣言した。
「では、行くぞ!」
パラドクストレインが走り始めた。
リプレイ
イシュア・アルミゴス
逆説連鎖戦なんだし肉体の強さって関係あるのか…?
クロノヴェーダ、しかもトループス級なのに…。
やりたいってなら止める理由もないんだけどさ。
これだけ数が居たならディビジョンが崩壊しても漂流先でも
寂しくはないだろうね。それじゃあライドスコルピオに跨り
セルケトクロウを結合。さあ、耐えて見せなよ。この寒さ!
敵が少なかったり油断している所を狙って凍結弾を発射。
一気に凍らせ速攻突撃、遠慮なく蹴散らさせてもらうよ。
敵の攻撃はライドスコルピオを不規則に走らせ回避していこう。
時代は機械化だよ、文明の差を噛みしめな!
それじゃあ祭りで会おう!
アティシア・アッシュハート
アレンジ、共闘歓迎。
む。力不足ではあろうがやれるだけやってみよう。
「情けは掛けん。むしろ数は力だ。侮ることは無い。全力で挑もう」
事前にフラッシュバンを使用することを周知しておく。
突入時に使うべきだが舌戦で戦意を煽りその上で叩き折るのも一手だ。
とはいえ私は舌戦は苦手だ。やるメンバーが居るなら邪魔せず見守ろう。
戦闘時はストッピングパワーの長けるショットガンで制圧していこう。
「フラッシュだ。」
距離があるのなら距離が詰まる前にフラッシュバンを投擲する。
なるべく背を見せないよう共闘者と背後をフォローしあい戦っていく。
距離を置いた敵はヘヴィピストルで応戦。背中を向けるものも容赦なく叩く。とどめを刺せるものは刺していくが無理はしない。
重症の手当で敵兵の手間を割き意欲を失わせるのも有効だろう。
パラドクスは適宜使用。ヘヴィピストルで敵の頭を貫こう。
「…む。頃合いか。退くぞ。」
撤退時は声をを掛け合い同じタイミングで。フラググレネード、再度フラッシュバンなどを投げて攪乱しつつ撤退。動けないものは担いでいこう。
マティアス・シュトローマー
(……ヴァンパイアノーブル達も案外地道にトレーニングを積んでるんだなー)
まだまだ訓練中とはいえ、この人数を相手にするのはかなり骨が折れそう
さて、どこから切り崩そうか
筋肉は全てを解決する、かあ
本当にそうなのか試してみようよ
パラドクスを発動。瞬時に間合いを詰めた後、高く蹴り上げた敵を追って跳躍。上空から重力を味方につけた踵落としを叩き込もう
仲間とは狙いを統一し、効率良く敵を撃破出来るよう声を掛け合う。また、一人突出したり、敵に包囲されたりしないよう視野を広く持って立ち回りたい
因みに俺はここ(頭)も同じくらい大事だと思ってるかな
……っおわ、びっくりした!
大声を出すのはパフォーマンスを高める上で確かに有効だけど――
敵が突撃してきたら、装備したライオットシールドを構えながらノックバックで後退。攻撃の勢いを削いで被ダメージを軽減しよう
可能であれば反撃アップの効果を活用して軌道を見切り、至近距離からのカウンターを喰らわせたい
あまりスマートではないよね?
敵戦力をある程度削ったら撤退を
この続きは奪還戦で!
九十九・静梨
筋肉に自信を持つのは全く良し
しかし慢心して筋肉を鍛え上げる訓練を疎かにするのは良くないですわ!
筋肉痛の状態で鍛える上官もどうかと思いますが…いや、申告していないのが悪いのかしてても鍛えてたのかわかりませんけどね
ともあれ筋肉を愛する者としてここは先にお相手させて頂きましょう
真っ向から仕掛けますわよ!
パラドクスを発動し変身と共に肉体強化
更に筋肉亜人軍団を召喚し息を揃えて敵群へと攻め入りますわ!
筋肉に自信があるならば我らの筋肉真っ向勝負、受けて頂きますわ!
筋肉疑似亜人たちと連携し互いの隙を埋める形でグラップルを含めた肉弾戦で攻撃を仕掛けますわ!
鍛錬も大事ですがその間の筋肉の休憩やケア、これこそが筋肉をより鍛え上げるのです
筋肉痛を放っておいての鍛錬は逆効果とお冥土のお土産になさいませ!
反撃の突撃にはガントレットを装備しての肉弾戦で対処
時には筋肉で受け止め
時には筋肉での拳や蹴りでの迎撃強打を行い
ダメージを軽減しますわ
囲まれないように気を付け
ジェネラルが出るか限界まで戦力を削れたら撤退
筋肉防御し殿に
●序幕
厚い雪に車輪を半ば沈めるようにして、JR山手線の車両に似た列車が停まっていた。
積雪に阻まれて立ち往生しているわけではない。そもそも、ここにはレールなど敷かれていない。
異様な光景ではあるが、その列車がパラドクストレインとなれば、話は別だ。
「ヴァンパイアノーブルたちも地道にトレーニングを積んでたりするんだね。なんか意外だ」
車両側面に並ぶ黄緑色の扉が一斉に開き、自信に満ちた表情をした少年がそのうちの一つから降り立った。
機械化ドイツ帝国出身のマティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)である。
「トレーニングに励むのは結構だけど……逆説連鎖戦に肉体の強さなんて関係あるのかね? よっと!」
当然の疑問を口にしながら、長身の青年――サイボーグのイシュア・アルミゴス(守護星蟲・g00954)が降りてきた。言葉の終わりに『よっと!』という掛け声がついたのは、大型の電動バイクを押しているからだ。
「ありますとも。筋肉は万物に関係があります」
そう断言したのは、第三の降客である九十九・静梨(魔闘筋嬢・g01741)。筋骨隆々たる体躯と昆虫の翅のような魔力の翼が目を引くデーモンの少女だ。
次に降りてきた少女の身体も見るからに頑強なものであった。ただし、静梨のそれとは別の意味で。
その少女――アティシア・アッシュハート(銀腕・g10763)は有機的な筋肉を持ち合わせていない零式英霊機なのだ。
「肉体的トレーニングの効果の有無がどうであれ、侮ることはできないな。数は力なのだから」
そう行って、アティシアは歩き出した。
他の三人も後に続いた。
●マティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)
雪面に足跡のスタンプをサクッサクッと刻んで歩き続けること暫し。小高い丘を越えると、練兵場らしき大きな建物が見えた。
そして、その周りでランニングしている連中――いかにもバイキングって感じの角付き兜をかぶったトループス級たちもね。
彼らはかなりの大集団だった。アティシアが口にした『数は力』という言葉を実感できるほどに。
「やれやれ」
俺は、白く染まった溜息をついた。
「まだまだ訓練中とはいえ、あの人数を相手にするのは骨が折れそうだね」
「まあ、しかし、あれほどの大所帯なら――」
イシュアがバイクに跨がり(ここまでは押してきたんだ)、エンジンを噴かした。いや、『噴かした』という表現は正しくないかな? 駆動音は静かだし、排煙も出ていない。とうやら、彼の愛車は電動式らしい。
「――このディヴィジョンが崩壊して別の地に漂着しても、寂しくはないだろうね」
そうかも。バイキングは海が好きだろうから、冥海機ヤ・ウマトか黄金海賊船エルドラードに漂着することを祈ってあげよう。もっとも、それらのディヴィジョンもいずれは俺たちがブッ壊しちゃうだろうけどね。結局のところ、執行猶予がつくだけ。
当然のことながら、全員に執行猶予が与えられるわけじゃない。大半の連中は今日ここで(あるいは吸血ロマノフ王朝奪還戦の当日に)実刑判決を告げられる。
判事と処刑人を兼ねた俺たちに。
「力不足ではあるが、やれるだけやってみよう。」
被告の大集団を見据えて、裁判官/処刑人の一人であるアティシアがショットガンを構えた。『力不足』とはまた御謙遜。
バイキングのほうも俺らの姿に気付いたらしく、ランニングをやめて――
「むっ!? あれに見えるはディアボロスか!?」
「まさか、この練兵場にまで魔手を伸ばしてくるとは……」
「しかーし! 我らにとっては渡りに船!」
「おうよ! くだらん訓練など不要だということを証明してやろうではないか! 彼奴らをを叩きのめし、捻り潰し、縊り殺すことによって!」
――その場で足踏みしながら、ぎゃーぎゃーわーわーと盛り上がり始めた。声だけ聞いてると勇ましい印象を受けるけども、実際の姿は情けない。過剰なランニングのせいか、足腰がぷるぷる震えてるから。生まれたての小鹿ってやつ。
「『くだらん訓練』ですって?」
と、静梨が呟いた。小さな声だから、小鹿ちゃんたちの耳には届いてないだろう。
でも、呟きの後に続いた叫びは届いたはず。
「筋肉に自信を持つのは良し! しかし、筋肉を鍛え上げる訓練を慢心の末に疎かにするのは良くないですわー!」
●アティシア・アッシュハート(銀腕・g10763)
静梨が両の拳を打ち合わせた。鋼の鳴る音ともに火花が散ったのは、左右の前腕がガントレットに覆われているから。
それが開戦の号砲であったかのようにトループス級たちが走り出した。
「一に筋力!」
「二に膂力!」
「三、四がなくて!」
「五に腕力!」
口々にスローガンを叫びながら、こちらに向かってくる。
「筋力も膂力も腕力も同じようなもんじゃないか……って、ツッコんだら負けなんだろうなあ」
迫り来る大軍勢に気圧される様子も見せず、イシュアが奇妙な武器(なのだろうか?)をバイクに取り付けた。有機的なフォルムを持つ巨大な鋏だ。
「実は知力の大切さを知らしめる反面教師的なスローガンだったりしてね」
マティアスが苦笑を浮かべてステップを踏み、虚空に蹴りを軽く放った。
「適当なタイミングで閃光手榴弾を使用する。各自、目の保護に気を向けておいてくれ」
私は閃光手榴弾を取り出そうとしたが――
「それはいけませんわ」
――静梨に止められた。
「非パラドクスの攻撃はクロノヴェーダに効果がない上に余計な反撃を受けてしまいますから」
「そうか」
逆説連鎖戦の経験が少ないので、色々と勘違いしていたようだ。閃光手榴弾の出番はなし。散弾銃の『Jack』も仕舞って、代わりに大型拳銃『Ace』を抜き、右腕にスマートリンクさせた。
パラドクス『Nuada-Airgetlamh(アガートラーム)』発動。
静梨もまたパラドクスを用いたらしい。その逞しき肉体がみるみるうちに変化した。より逞しき姿に。蹂躙戦記イスカンダルの亜人を思わせる異形の姿に。
「九十九家家訓が一つ! 攻める時は一気に協力して攻めるべし!」
彼女がポーズを決めると、その背後に頑健そうな亜人の群れが出現した。変身系と召喚系を兼ねたパラドクスだったらしい。
「それほどまでに筋肉に自信がおありでしたら!」
静梨は亜人軍団とともに走り出した。
「我らの筋肉真っ向勝負、受けていただけますわね!」
『真っ向勝負』という言葉に偽りなし。静梨と亜人軍団は雪煙をあげて真正面から敵に突っ込み、拳を叩きつけ、あるいは蹴りを見舞い、あるいは関節を極め、あるいは投げ飛ばした。
その猛攻の標的となったトループス級は四体。彼らはダメージを受けながらも『ウラァーッ!』という咆哮とともにショルダーチャージで反撃した。
しかし、凶器と化した肩が静梨の体に触れることはなかった。
ガントレットで受け止められてしまったから。
●イシュア・アルミゴス(守護星蟲・g00954)
「筋肉痛のせいで動きが鈍っておられますね! 簡単に見切ることができますわよ!」
腕組みするような姿勢で仁王立ちしている静梨。
ショルダーチャージを仕掛けたバイキング1号から4号(勝手に命名させてもらった)は彼女のガントレットに肩を食い込ませた状態で停止している。
「確かに鍛錬も大事ですが、その間の筋肉の休憩やケアこそが――」
静梨が両腕を勢いよく払うと、1号から4号は弾き飛ばされて無様に転がり、全身が雪まみれになった。
「――筋肉をより鍛え上げるのです! 『筋肉痛を放っておいての鍛錬は逆効果』という教訓をお冥土のお土産になさいませ!」
オメードノオミヤゲとやらを渡している静梨に向かって、他のトループス級たちが襲いかかる。
静梨がそれに対処している間に1号から4号は立ち上がり、再び彼女に攻撃を加えようとしたけれど――
「空中散歩と洒落込もうか」
――マティアスが素早く滑り込んできた。
そして、1号と2号をまとめて蹴り飛ばした。いや、誇張はしてないよ。本当に蹴り飛ばしたんだ。空高く、垂直方向に、打ち上げ花火のようにね。
体格差のある相手を(いや、体格が勝っていたとしても)蹴り上げて『空中散歩』させるなんて普通なら不可能だ。だけど、パラドクスの前では普通という概念など無意味。
しかも、マティアスのパラドクスはそれで終わりじゃなかった。
「空中散歩に連れ出すだけでは無責任だよね。地上に帰る時もちゃんとエスコートしてあげるよ」
1号と2号を追いかけるように自身も高くジャンプしたかと思うと、空中で踵落としを食らわせたんだ。
1号と2号は真っ逆さまに墜落し、雪の覆われた地面に激突。人型の窪みに埋まった死体(二人前)の出来上がり。
3号と4号もすぐに後を追った。
アティシアが大きな拳銃をぶっ放し、そいつらの胸板に風穴を開けたんだ。
「令震に言われた通り、情けはかけん」
続けざまに発砲するアティシア。静梨を攻撃していたバイキングのうちの二体――5号と6号に命中。いや、もう命名するのはやめよう。僕がここでやるべきは名前を与えることじゃなくて、命を奪うことだ。
「いくよ、ライドスコルピオ」
腰を預けた愛機に声をかける。
そして、その愛機と結合させた装甲剥離生体鋏『セルケトクロウ』の切っ先を名無しのバイキングたちに向けて――
「さあ、耐えてみせなよ。この寒さ!」
――凍結弾を発射!
●九十九・静梨(魔闘筋嬢・g01741)
イシュアさんの鋏から撃ち出された弾頭が炸裂し、冷たい爆風が吹き荒れました。
それに巻き込まれたのはお三方のトループス級。お体のそこかしこに霜が生じ、白く染まっています。
とはいえ、お亡くなりになったわけではなく――
「ふん! なぁーにが『耐えてみせなよ』だ!」
「こんなものは冷たくもなんともないわ!」
「極寒の荒波に揉まれてきた我らを舐めるなよ!」
――凍りついたお体を無理に動かし、力瘤を誇示するようなポーズを決めておられます(しかし、切れの悪いポージングですね。せいぜい七十点といったところですわ)。
もっとも、その虚勢の咆哮はすぐに真性の叫喚へと変わりました。
「じゃあ、これも耐えられるかい?」
と、イシュアさんがおバイクでお突っ込みして、お三方を次々とお撥ねあそばしたからです。弾頭で凍らせた後におバイクで突撃するという二段構えのおパラドクッスだったのですね。
お三方のうちのお二人はそれでお亡くなりになりました(アティシアさんの銃弾でおダメージを受けておられましたからね)が、残されたお一人様は受け身を取って体制を立て直し、イシュアさんに反撃を仕掛けました。真紅のオーラを全身に纏ってぶつかっていくというおパラドクスで。
しかし、イシュアさんは――
「おそい、おそーい」
――華麗なハンドル捌きでおバイクをジグザグに走らせて、お躱しになりました。
「えーい! 機械に乗って逃げ回るとは卑怯なりぃーっ!」
「なーに言ってんの。時代は機械化だよ? 文明の差を噛みしめな!」
悔しげなお叫びなどどこ吹く風とばかりにおバイクで疾走をお続けになるイシュアさん。
そして、お叫びを放ったお相手のほうはというと……『文明の差』なるものを噛みしめることもできず、逝かれてしまいました。イシュアさんに気を取られている間にマティアスさんに蹴り飛ばされた挙げ句に踵落としをお食らいになったからです。
マティアスさんは同時にもう一方をお蹴りになっていましたが、そちらの方は(お脳天に踵落としを受け、雪面に激しく叩きつけられながらも)なんとか持ち堪え、ショルダータックルで反撃しました。
「ウラァーッ!」
「おわっ!? びっくりした!」
お相手の喊声に驚きながらも、マティアスさんは片腕に装備したライオットシールドを素早く構え、タックルを受け止められました。いえ、ただ受け止めただけではありません。タイミングを合わせて飛び退り、お相手の勢いを削いでおられます。
「そうやって大声を出すのはパフォーマンスを高める上で有効かもしれないけど――」
透明のシールド越しにお相手と対峙しながら、マティアスさんはニコッとお笑いになりました。
「――あまりスマートではないよね」
「では、どんな攻撃がスマートだというのだぁーっ!」
と、お相手が(懲りずに大声で)問いかけましたが、それにお答えになったのはマティアスさんではありません。
「こういう攻撃だ」
アティシアさんです。
その直後、彼女のおピストルが火を噴き、マティアスさんと対峙していたお相手の頭に大きな弾痕が穿たれました。
●終幕
誰もが知るように吸血ロマノフ王朝は雪深いディヴィジョンである。
しかし、マティアスとイシュアと静梨とアティシアがバイキングたちと激闘を繰り広げているこの場所では『一面の雪景色』などという定型的な表現を使うことはできない。
何十体ものトループス級の死骸とそれらから流れる血潮によって、白い雪面に醜悪な斑模様が描き出されているのだから。
とはいえ、死骸と化したのはほんの一部。まだ多くのトループス級が残っている。
「頃合いか……退くぞ」
間近の敵に発砲しながら、アティシアが仲間たちに言った。
「承知しました」
召喚した亜人の群れとともに撤退を始める静梨。
「それじゃあ、祭りで会おう!」
「この続きは奪還戦で!」
イシュアがバイクをターンさせ、マティアスも手を振って背を向けた。
「おのれ、逃げるか!」
「まだ勝負はついておらんぞ!」
「尋常に勝負しろぉー!」
「ウラッ! ウラッ! ウラァーッ!」
バイキングたちの怒号がディアボロスの後を追った。
しかし、あくまでも怒号だけ。実際に追いかける者は一人もいなかった。
疲労と筋肉痛が限界に達したのかもしれない。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【冷気の支配者】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【狼変身】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!