【吸血ロマノフ王朝奪還戦】②帝室マリインスキー劇場

 このシナリオは【吸血ロマノフ王朝奪還戦】に関連する特別シナリオです。
 サンクトペテルブルク及びウクライナの地に集結したジェネラル級ヴァンパイアノーブル及び『鮮血の革命術式』で重要な役割を持つジェネラル級アークデーモンに対して、戦闘を仕掛けます。
 また、吸血ロマノフ王朝の排斥力の低下と攻略旅団の提案により、アルタン・ウルクのディヴィジョン『融合世界戦アルタン・ウルク』への逆侵攻も一部可能となっています。

 この戦闘によって、敵の戦力を削ることが出来ます。
 勝利したシナリオ数に応じて、対応する戦場の敵の数が減少し、戦いを有利に進めることが出来るようになります。

 このシナリオの攻撃対象は【『文豪卿』ドストエフスキー】の軍勢です。
『文豪卿』ドストエフスキーは、サンクトペテルブルクに参集した大領主の配下の内、軍に所属する事を嫌った芸術家気質のヴァンパイアノーブルを統率しているようです。

「成功したシナリオ数×5%」だけ、「②『文豪卿』ドストエフスキー」の敵残存率を低下させます。

【吸血ロマノフ王朝奪還戦】薔薇の花咲く(作者 ライ麦
3


#吸血ロマノフ王朝  #【吸血ロマノフ王朝奪還戦】②帝室マリインスキー劇場  #吸血ロマノフ王朝奪還戦  #サンクトペテルブルク  #②『文豪卿』ドストエフスキー 


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#吸血ロマノフ王朝
🔒
#【吸血ロマノフ王朝奪還戦】②帝室マリインスキー劇場
🔒
#吸血ロマノフ王朝奪還戦
🔒
#サンクトペテルブルク
🔒
#②『文豪卿』ドストエフスキー


0



 その豪華絢爛なる劇場ホールでは、眉目秀麗な青年達が本を片手に熱心に語り合っていた。
「貴殿の新作、読ませてもらった。今回も素晴らしいな。特に少年が愛する主人のために血を捧げるシーンの艶めかしさは称賛に値する」
「ありがとう。そちらの新作も素晴らしいな。薔薇風呂で盟友の少年同士の二人が生涯を誓うシーンなど、官能的かつ情熱的で、読んでいて心が震えた」
「こちらの新作も良い……敵同士なのに愛し合ってしまった二人が、雪の中密かに抱き合うシーンなど、胸を打たれる」
 などと、どうやら互いの小説を読み合って熱く感想を論じ合っているようだ。それはいい。いいとして、どうやら官能的な恋愛小説っぽいのにここまで女性キャラが出てこなさそうなのは気のせいなんだろうか? 誰もそこには突っ込まないまま、瞳に熱い情熱を滾らせた男達の談義は続く。
「ああ、創作意欲が滾るな。どうだろう、こちらで続きを書かせてもらっても構わないだろうか?」
「もちろんだ。どんなものになるのか、楽しみだな。こちらも、貴殿の薔薇風呂のアイデアを拝借させてもらっても構わないだろうか? そのシーンを読んでいて、こちらのカップルの良いシーンが思い浮かんだんだ」
「構わぬよ。何せ、この戦場では芸術性を高める事で有利に戦えるんだ。大いに論じ合い、互いに刺激し合って素晴らしい作品を生み出していこう」
 そう、ガッチリと手を組み合う男達の目に映る妖しげな煌めきは、これからの戦いや創作意欲のため……というばかりではなさそうだった。

「『鮮血の革命術式』によって、最終人類史に現れたジェネラル級ヴァンパイアノーブルは見事全滅させることができました。これもディアボロスの皆様の活躍のおかげですね。最終人類史の一般人に被害を全く出さずに撃破できたのは素晴らしいことです」
 そう、新宿駅グランドターミナルで手帳片手に述べるサフィール・セレニテ(見習い少年執事・g08576)は、とりあえずいつも通りに見えた。
「作戦の失敗により、吸血ロマノフ王朝のジェネラル級は大きく数を減らし、更に、最終人類史に攻め込んだことで、ディヴィジョンの排斥力も大きく揺らいでいます。この影響により、【吸血ロマノフ王朝奪還戦】発生を示す断層碑文が出現したことは、皆様もご存知かと思います。まさに攻撃を仕掛け、吸血ロマノフ王朝の大地を奪還する絶好の機会となるでしょう」
 と、これまでの流れを端的に説明する様もいつも通りで。
「これまでの戦いで多数のジェネラル級を撃破し、追い詰めた状態ではあります。ですが、断片の王である『吸血皇帝ニコライ2世』は、起死回生の策を諦めていません。油断せず、徹底的に叩き、吸血ロマノフ王朝との決着をつけましょう」
 そこまで言って息を吸い、
「……皆様には、『文豪卿』ドストエフスキーの軍勢と戦っていただきます」
 ため息と一緒に吐き出したあたりからちょっと様子がおかしくなってきた。
「その……『文豪卿』ドストエフスキーは、サンクトペテルブルクに参集した大領主の配下の内、軍に所属する事を嫌った芸術家気質のヴァンパイアノーブルを統率しているようで。皆様に戦っていただくヴァンパイアノーブル達……『血の記述者』もそのクチなんですが、その」
 こめかみを指先で叩き、言うべきか迷ったように視線を彷徨わせた後、はあ、と嘆息してポツリと漏らす。
「……その、男性同士の恋愛小説を書き、読むことを至上としている、少々変わった集団でありまして」
 なるほどそれでだいたい分かった。要するに腐男子の群れか。暫し奇妙に押し黙った後、サフィールは慌てたように面を上げた。
「あ、い、いえ! 人の趣味嗜好を、否定する気はないんです本当に……ただ、少々、驚いてしまっただけで」
 ディアボロスの中にも、そういったものを愛好する者はいる。そうした人が自分の態度で気を悪くしたりはしていないかと、少しばかり気まずそうにした後、兎にも角にも今は戦争の話だ、と軽く咳払いをして続けた。
「……彼らは、戦争前にも関わらずマリインスキー劇場のホールに集い、互いの作品を読み合ったり感想を言い合ったり、筆を走らせていたりしますが、何も遊んでいるというわけではなく。『マリインスキー劇場は、芸術性を高める事で有利に戦える』戦場なので、戦闘訓練として行っています」
 ということは、ディアボロス達も芸術性を高める事で有利に戦えるということだ。アーティスティックな技等、披露するチャンスかもしれない。
「それに、彼らの性癖……というか、趣味嗜好も、うまく利用できれば、戦闘を有利に運べるかもしれませんね」
 彼らの性癖をどううまく使うというのか。それはお任せしますと目を逸らし、ともかく、と結びの言葉に入った。

「完全な『鮮血の革命術式』は、敵のジェネラル級が広大なロシアの大地制圧の為に大挙して攻め込んで来た時点で、集結した自軍の戦力を首都ごと敵本拠地に転移させ、敵本拠地の制圧及び断片の王を撃破して速攻で勝利するというカウンターを可能とする秘術であるようです」
 それを一度は阻止できたのは、これまで大領地の解放やモスクワ鉄道会社の活動をはじめとして、多くの人々を助けて来たディアボロスの活躍が、吸血ロマノフ王朝の人々の『従属』の感情を減らしていたからだろう。
「ですが、敵は再度の『鮮血の革命術式』の発動を狙っています。迅速に決着をつけなければ、ディヴィジョンの人々は死に絶え、新宿島も甚大な打撃を受けることになるでしょう。幸い、多くのディアボロスの皆様の活躍で市内の一般市民は既に避難しております。この隙に、敵を一掃してしまいましょう」
 それがどんな敵であっても、と呟くサフィールは、どこか遠い目をしていた。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【傀儡】
1
周囲に、ディアボロスのみが操作できる傀儡の糸を出現させる。この糸を操作する事で「効果LV×1体」の通常の生物の体を操ることが出来る。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【迷宮化】
1
洞窟や家屋、砦などの内部を迷宮に変化させる。迷宮化により、敵は探索や突破に必要な時間が「効果LV倍」される。

効果2

【アクティベイト】LV2 / 【ロストエナジー】LV1

●マスターより

ライ麦
 ライ麦です。これは、【吸血ロマノフ王朝奪還戦】に関連する特別シナリオ(ファーストアタック)です。
 このシナリオで戦うのは、『血の記述者』。【『文豪卿』ドストエフスキー】の軍勢になります。
 『血の記述者』の名にふさわしく(?)小説、特に男性同士の恋愛ものを好んで書く、眉目秀麗な青年の腐男子の集団。主従ものが好きだったり熱い友情からの恋愛が好きだったり敵同士の悲恋が好きだったり薔薇風呂のシチュエーションが好きだったり(?)色々と好みはありますが総じてお耽美なものがお好きなご様子。同好の士として仲が良く、連携して挑んできますが、逆に彼らの趣味嗜好をうまく利用できれば有利に戦えるかもしれません。やり方はお任せします。

 それでは、皆様のプレイングを心よりお待ちしております!
6

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


八百陣・葵漆
うーん。男性同士の恋愛かあ
僕にそれを妄想して楽しむような趣味はないなあ
芸術推奨するとこんなのも混じるんだねえ(ジト目)

えーっと、こういうのって
同じジャンルといっても細かい嗜好の差で争うこともあるんだよね
その辺りを利用させてもらおうかな

『虚言八百』を使っていくよ
カップリングのどっちが右側左側だの
趣味嗜好の地雷を突いたりして
敵集団で仲間割れするとか
ディアボロスそっちのけの議論に発展するように
口車で誘導していくよ

そうやって敵が隙を晒したところで
絡繰りとか爆弾とかで攻撃するよ
他に攻撃役の仲間がいるなら
僕は敵を混乱させることに集中するのもいいかな

そういえば、『文豪卿』ドストエフスキーは『吸血文学』を確立したらしいけど、文学系の『血の記述者』ならどんなものか知ってるかな?
もし余裕があれば、戦闘の合間にちょっと聞いてみたいところだね
(※ドストエフスキーの宿敵主です)


 豪華絢爛なるその劇場ホールの客席では、俳優かと見紛うほどに美しい男性達が、本を片手に熱心に語り合っていた。傍から見ているだけなら、それこそ舞台俳優がより良い演技のために激論を交わしているようにも見える。そうでなくとも、目鼻立ちの整った男性が本を手に熱く話してなどいると、その美しさと相まって、書籍の内容に対してなんだか高尚な意見を述べているように錯覚してしまう。だが、実際は。
「ふむ。やはり主従モノは良いな。主に対する忠誠心が、やがて愛に変わる……素晴らしいものだ」
「分かってくれるか、同志よ。しかし、貴殿の得意とする、強い友情が互いに対する愛へと変化していく様もまた見応えがある」
 ……などと、お互いの趣味嗜好について熱く語ってるだけだった。それも、男性同士の恋愛……いわゆる『BLモノ』についての。物陰からその様子を窺っていた八百陣・葵漆(勝利こそが正義・g01007)は、
「うーん。男性同士の恋愛かあ。僕にそれを妄想して楽しむような趣味はないなあ。芸術推奨するとこんなのも混じるんだねえ」
 と、ジト目で観察しながら呟く。自分には理解できない世界だがしかし、これも勝利のため。利用できるものはさせてもらおうと、葵漆は両手を広げて彼らの前に進み出る。
「やあやあ、ずいぶんと盛り上がっているようだね」
「ハッ、貴様は……ディアボロス!」
 葵漆の姿を確認した『血の記述者』達は一転、腰に差した剣の柄に手をかけ、猛然と立ち上がった。そんな彼らを宥めるように、葵漆はまあまあと両手を上下に振る。
「落ち着いてくれ。何も戦いに来たんじゃないんだ。君達があまりに楽しそうだから、少しばかり話に混ぜてもらおうと思ってね」
 初手から嘘八百である。しかし嘘も方便。戦いは既に始まっている。葵漆は後ろ手を組み、小首を傾げて尋ねた。
「ところでそこの君、先ほど『主従モノが好き』と言っていたが……カップリングとしては、どちらなんだい? 主が右側なのか、それとも左なのか」
「えっ!?」
 柄に手をかけたまま、問われた記述者は目を見開いた。
「そんなの、主が左に決まっているではないか」
「そうなのかい? 僕には、右左の概念もよく分からないけど。しかし、そっちの君は先ほど、主が絶対に右だと言っていたね」
「何だと!!?」
 急転。『主が左』派の記述者は、突如抜刀して憤然と切っ先を葵漆が指差す記述者に向ける。
「貴様、裏切ったな!! あんなに我が作品を讃えておいて、実は逆カプだっただと!?」
「待て、誤解だ! 私はそんなこと一言も」
 おろおろと両手を突き出す記述者に、葵漆はさらに畳み掛ける。
「そうそう、そういえばさっき、『友情モノって、実は地雷なんだ』ってそっちの人が言ってたね」
「貴様ァ!!」
 顔を真っ赤にした記述者が思いっきり剣で斬りかかった。パラドクス【虚言八百(キョゲンハッピャク)】。その嘘は、クロノヴェーダすらも欺く。ディアボロスそっちのけで議論という戦いに入った記述者達は、言葉のみならず刃すら交わしている。その混乱に巻き込まれた葵漆も剣で貫かれたが、まあこのくらいは致し方なし。カップリング論争というものは、それほどまでに血で血を洗うものなのだ。
(「やはり、僕には理解できない世界だね」)
 その認識を新たにしながら、葵漆はどさくさに紛れて戦場を後にしたのだった。
成功🔵​🔵​🔵​🔴​
効果1【友達催眠】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!

音羽・華楠
……何と、言いますか――
――サンクト新宿ブルクといい、唐突にこういうネタ枠ぶち込まれてくるんですけど今回の奪還戦!?
……それでも、ここで敵戦力を削るのは大事です。
気合いを入れて頑張りますよっ。

腐男子の集団ということですし、一計を案じます。
新宿島の書店で人気のあるBL小説を見繕い、持ち込みましょう。
それを用い、血の記述者たち相手に朗読劇を催します!
……彼らも、最終人類史の男性同士の恋愛小説には興味津々となるはずです。
それの読み聞かせに思わず耳を、意識を奪われて隙を見せた個体から、《雷幻想・涅槃》で仕留めていく狙いです。

それに、『朗読劇』という体裁を取ることで、『芸術性を高めることで有利に戦える』というマリインスキー劇場の特性を利用出来るかと。
最終人類史でも、声優さんとかが登場人物の台詞を感情を籠めて喋り、状況描写を情感を籠めて語る朗読劇は、非常に素敵なものですし。
『話術もまた芸術』ということです。
本職の方には負けますが、私も精一杯言葉に力を籠めましょう。

……BL小説なのがあれですがっ!!


ゼロファスト・ニーレイ
(連携アドリブ歓迎)

「――はぁ、“衆道”というジャンルは現代でも舞台演目として存在するのは知っていたが……本当にそういうのを嗜む手合いがいるのだな……」

正直作戦段階で既に頭が痛いが、うだうだ言っても仕方あるまい
周りも何か策があるようだし……え、これを朗読? 感情込めて???
……まぁこちらは特に浮かんでないし、ここはオトワの作戦に乗るとしよう。読み上げなら割と日常的にやっているし
――そういえば、衆道の演目は主として主従の絆を描くことが多いんだったか

朗読の間、秘密裏に『領域具現:彼岸の内海』を展開。奴等の周辺をこちらの領域に引き込んで襲撃を仕掛ける

おい、クロノヴェーダ。冥土の土産に創作のネタをひとつくれてやる
――黒は何者にも染まることなく、彼岸花は一人だけを想う華。あの方への我が忠義を示す、ただ一つの仮想の花
我が忠義は何人にも歪められることなく、貴様らを討ち取る。……覚悟を決めろ

とはいえ、想定外の増援が現れた場合は素直に撤退するがな
この後に本番が控えているのだ。ここで倒れるわけにはいくまいて


「……はぁ、“衆道”というジャンルは現代でも舞台演目として存在するのは知っていたが……本当にそういうのを嗜む手合いがいるのだな……」
 ゼロファスト・ニーレイ(漆黒(くろ)の彼岸・g11308)はため息をつき、掌でこめかみを押さえた。正直作戦段階で既に頭が痛い。音羽・華楠(赫雷の荼枳尼天女・g02883)もまた、なんとも言えない表情を浮かべていた。
「……何と、言いますか……サンクト新宿ブルクといい、唐突にこういうネタ枠ぶち込まれてくるんですけど今回の奪還戦!?」
 頭を抱えて天を仰ぐ。言いたいことは山ほどあるが、声にはならない。しかし、こんなんでも敵には違いない。奪還戦本番に向け、敵戦力を削っておくのは大事なことだ。華楠は胸の前で両拳を作った。
「気合いを入れて頑張りますよっ!」
「ああ、うだうだ言っても仕方あるまい。オトワも何か、策があるとか言っていたし……それで、策というのは?」
「これです」
 華楠は得意げに取り出した本を掲げた。その表紙では、麗しい男性同士が半裸で絡み合っている。事前に新宿島の書店で見繕ってきた、人気のBL小説だった。
「これを使って……血の記述者たち相手に朗読劇を催します!」
「え、これを朗読? 感情込めて???」
 華楠がポンと渡してきたそれに、ゼロファストの目はテンになる。
「ええ、彼らも、最終人類史の男性同士の恋愛小説には興味津々となるはずです。それに、『朗読劇』という体裁を取ることで、『芸術性を高めることで有利に戦える』というマリインスキー劇場の特性を利用出来るかと」
「なるほどな」
 一理ある、とゼロファストも件の小説をパラパラ捲りながら頷いた。最終人類史でも、声優等が登場人物の台詞を感情を籠めて喋り、状況描写を情感を籠めて語る朗読劇は人気もあるし、ひとつの舞台芸術として成立している。『話術もまた芸術』ということか。
「……まぁこちらは特に浮かんでないし、ここはオトワの作戦に乗るとしよう。読み上げなら割と日常的にやっているし」
 パタンと本を閉じ、戦場に向かって歩き出すゼロファストに華楠も続く。
「そうですね。本職の方には負けますが、私も精一杯言葉に力を籠めましょう……BL小説なのがあれですがっ!」
 クッと若干悔しそうに拳を握る華楠。気持ちは分かる。これを感情込めて読むって、なんというか……しかし、とゼロファストはふっと天を仰いだ。先ほどパラパラ捲ってみた感じ、件のBL小説はどうやら執事とその主の禁断の恋模様を書いたものらしい。かつて命を救われた貴族に従属していた者として、主に対する忠誠心というなら分からないわけではない。が、それが恋となるとしっくり来ない。けれど、とふと思う。
(「……そういえば、衆道の演目は主として主従の絆を描くことが多いんだったか」)
 いつの時代も、一定の人気があるのかもしれない。まあ、それはともかくとして。マリインスキー劇場のステージに進み出た二人は、すっと大きく息を吸い、高々と例のBL小説を掲げて宣言した。
「注目! 私達は今から、この小説の朗読劇を開催いたします!!」
 先に戦っていたディアボロスのパラドクスによって、ちょっと激論が取っ組み合いの喧嘩にまで発展していた血の記述者達は、その声にステージを見た。途端に色めき立つ。
「ハッ……そ、それは……!!」
 表紙を見ただけで内容をなんとなく把握したらしい。……まあこれ以上ないくらい分かりやすい表紙だしなうん。などとちょっと遠い目になりつつ。読み上げを始める二人を前に、血の記述者達は慌てて髪を撫でつけたり身繕いしたりしながらソワソワと客席に座った。戦いよりもやはり、BL小説及びその朗読の方への興味が勝ってしまったらしい。ゼロファストが持ち前の女性を惹きつける良い声で、華楠が言葉と感情に力を込めて語る、執事とその主の切ない恋物語に、血の記述達は涙し、嗚咽し、感動に打ち震えている。
「なんて……なんて素晴らしい小説なんだ……斯様に素敵なものが、この世にあったなんて」
「ああ、ただでさえ素晴らしい内容が、朗読劇という体裁をとることによってさらに高まっている……なんていい声なんだ……」
「なんて情感の籠った台詞……臨場感が高まるな……」
 などとむせび泣く彼らは、完全に耳も意識も朗読劇に奪われている。今だとゼロファストは密かに【領域具現:彼岸の内海】を展開した。
「……ハッ、ここは……?」
 執事とその主の切ない恋物語の読み上げに夢中になっていたら、いつの間にか昏く、それでいて黒色の彼岸花が数多に咲き誇る、不可思議な世界に迷い込んでいた。狼狽え、周囲を不安げに見回す記述者の耳に、先ほどの朗読劇で聞いた良い声が聞こえてくる。
「おい、クロノヴェーダ。冥土の土産に創作のネタをひとつくれてやる。……黒は何者にも染まることなく、彼岸花は一人だけを想う華。あの方への我が忠義を示す、ただ一つの仮想の花。我が忠義は何人にも歪められることなく、貴様らを討ち取る。……覚悟を決めろ」
 それを聞いた記述者の顔に、たちまち喜色が浮かぶ。
「ま、待ってくれ! それを聞いて、今すごくいいネタが思いついたんだ! うおーこの景色もすごく妄想を搔き立てられ」
「問答無用」
「アーッ!!」
 急いで手持ちの手帳に創作のネタを書き込んでいた記述者はしかし、それを形にすることは叶わなかった。反撃すら許さず、ゼロファストが主君へ貫き続けるその忠誠心が、敵を屠る刃となる。ゼロファストが囁いた創作のネタは、まさしく『冥土の土産』だった。彼のパラドクスで仕留めきれなかった個体も、
『色は匂へと散りぬるを我か世誰そ常ならむ有為の奥山今日越えて浅き夢見し酔ひもせす――ノウマクサンマンダ・ボダナン・バク!!』
「アーッ!!」
 華楠のパラドクス、【雷幻想・涅槃(ファンタズム・アスガルド)】の前に散る。ただでさえ好みのBL小説とその読み聞かせで頭がいっぱいになっていたのだ。対象の頭脳にDDoS攻撃を仕掛け、脳死や精神崩壊へと導く華楠の技は完全にキャパオーバーである。マリインスキー劇場の特性と、敵の趣味嗜好を上手く利用した戦いはディアボロス優位に進み、血の記述者達は大きくその数を減らしている。それに気付いたゼロファストは一度手を止めた。
「そろそろ頃合いだな。一旦退くとしよう。この後に本番が控えているのだ。ここで倒れるわけにはいくまいて」
「そうですね。私達の戦いはこれからです!」
 頷いた華楠と共に、戦場を離脱するゼロファスト。血の記述者達のBL劇場はこれでおしまいのようだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【傀儡】LV1が発生!
【迷宮化】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
【アクティベイト】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2024年11月19日