リプレイ

●スカートめくりの元凶は？
「皆のハロウィン衣装、とっても素敵なの！」
　パレードして歩く他のディアボロスたちの衣装に目を輝かせるマリアラーラ・シルヴァ（コキュバス・g02935）。
　彼女自身も赤色を基調とした礼服を纏い、魔法戦士風の衣装をしていたが……、
「……？　なんだかおかしいの」
　自分を見る目に時折混ざる、不思議な空気に首を傾げる。
　よく観察すると、一部の観客……主に少年たちが、マリアラーラの衣装を見てため息をついてるようだ。
「きゃっ♪」
　どうしてだろう？
　そう思って観察していると、踊り子の衣装を纏ったルペ・エストレーノ（セイレーンのトレジャーハンター・g10820）が、真紅のスカートをめくられて少し楽しそうにきゃーきゃーと悲鳴をあげていた。
「……つまり、スカートじゃないからめくれなくてガッカリ？」
　マリアラーラは自分が履いている白いズボンに視線を向ける。
「よく分かったの。ここは学校じゃないしマリアも本気出しちゃうよ！」
　そんな空気にスイッチが入ったマリアラーラは、いつも以上にディアボロスとしての力を強く開放し、
「商店街の一帯をスカートワールドにしてあげるね！」
　お店にスカート（のれん）するのを皮切りにして、売り物のカボチャスイーツやペットボトルもスカートでドレスアップしていく。
「わっ」
「ズボンがスカートに！」
　そして、パレードしていた仲間たちも、観客の人々ももちろん、マリアラーラの衣装もスカートに！
「もきゅっ！？」
　その隣では、シャルロット・アミ（金糸雀の夢・g00467）の相棒、 モーラット・コミュ『モラさん』もスカートに姿になっていた。
「もちろんスカートメクラーな男子達も、全員ミニスカートになってもらうから！」
　という言葉通り、老若男女かかわらずにみんなスカード姿になり、
「そんなにめくりたかったらお互いにめくり合えばいいの」
　と言いながら、状況の変化に気づき、素早く迫ってきた男の子にスカートをめくられるのだった。

「すごい……！　マリアさんのパラドクスのおかげでみんなスカート、可愛いスカート！」
　そよ風がひらひらとスカートを舞わせる光景に目を輝かせ、
「もきゅー」
　ふりふりスカートを靡かせながら、手に取ったスカート履いたペットボトルをふりふりするモラさんを微笑ましく見つめるシャルロット。
「とは言え、何か変ね？　新宿島でこんなにスカートめくりが流行っているなんて……」
　ルペはめくれることが前提の服装なので楽しそうにしていたが、昨日までそんな素振りもなかったのだ。
「これは、なにか黒幕的なものがいるかもしれないわ……！」
　無邪気にスカートをめくらせて欲しそうにしていた子どもに微笑んで、無理のない程度にめくらせてあげながら、シャルロットはマリアラーラとモラさんを巻き込んで考え込み、この事件の真相を推理する。
「どうしたんだシャルロット？　こんなところで考え込んで」
　そこへやってきたのは、やって来たばかりなのかスカートの魔力にかかっていないロナルド・ハーキュリー（ドラゴニアンの撃竜騎士・g03319）。
　その姿を見て彼女ははっと顔をあげる。
「……この状況。犯人は、スカートを履いていない人のはず……！」
　そして、２人と目配せして、ロナルドが逃げないように取り囲んでから、キセルを手に持ちゆっくりと近づいて、
「つまり、犯人はロナルドさんね！」
　びしぃ！　とキセルを突きつけ、ジト目で睨みつけた。
「な、何のことだ？」
　何も知らない風のロナルドだが、
「逃げたって無駄よ、ロナルドさん。このお馬さんの目のきらめきに、ロナルドさんがかなうはずはない……！」
　取り出したうまぐるみのつぶらな瞳がすべてお見通しだと言いきった。
「どうしてもスカートをめくりたかったロナルドさんが、こんなイベントを企画したんでしょう？」
　それとも、スカートめくりたくないって言い切れるの？
　なんとか言い逃れしようとしていたロナルドだが、執拗に問い詰められ、言葉に詰まって隙を与えてしまう。
「これはシャールロット・ホームズの名推理通りみたいだね」
「もきゅ♪」
　そこにマリアラーラとモラさんも乗っかり、ロナルドのズボンをスカートに変え、ついでに自分たちのスカートの下にはズボンを履かせると、
「ロナルドさん。判決の時間よ？」
　裁判官になったシャルロットは妖艶に微笑み、
「さあ、ロナルドさんのスカートを捲らせなさい……！」
　マリアラーラとモラさん。そして呼ばれて近づいてきたルペも加勢してロナルドを追い詰める。
「あっ、逃げたの」
「みんな！　ロナルドさんのスカートを捲ってあげて！」
　そして、そんなロナルドを先頭にして、スカートめくりの仮装パレードはどこまでも続き。
「……もきゅーん♪」
　パレード終了と同時に、たくさんめくられて倒れたロナルドの前で、モラさんがスカートをふりふりしながらめくってもいいのよ？　とドヤ顔を浮かべるのだった。




●異形のお菓子を食べて討伐！
「わっ、なにこれー♪」
　パレードの熱狂も一段落した会場では、みんなが思い思いに持ち寄ったお菓子を渡したり、食べたりしてはしゃいでいた。
「これは……なに？」
　マジシャン風衣装に身を包んだラウム・マルファス（研究者にして発明家・g00862）に手渡されたクッキー……のような異形を手にした子どもは、その見た目を気持ち悪そうに見つめる。
　それは、様々な生物が無秩序に融合し、触手を伸ばして食べる人すら取り込もうとしているアルタン・ウルクみたいな姿をしており、
「本体部分が橙、触手部分が緑のハロウィン仕様サ」
　というラウムが、これはディアボロスが戦っている敵の一種なのだと説明した。
「じゃ、じゃあ、これを食べるのは『やっつける』ってことだね？」
　それなら協力するよ！
　子どもはそう言いながらも、怖いものは怖いので、目をつぶって口に含む。
「んっ……！？」
　味は甘いクッキーそのものだったが、ぬるっとした食感と、何かが膨らんだような感覚に、子どもは思わずびっくりしてクッキーを吐き出してしまいそうになる。
「フフフ」
　目の部分にチアシードが仕込んであって、口の中でちょっぴり膨らむ悪戯を仕込んでいたラウムは、
「こっちは大丈夫だヨ」
　チアシードが入ってないクッキーを改めて渡し、口直しさせるのだった。

　その後、子どもからのお返しで、食べたら口の中でポンッと爆発したかのように刺激を与える「ばくだんおにぎり」に引っかかってあたふたしながらも、
「チアシードは水分を吸われるから、クッキー食べた子は飲み物貰ってネ」
　ラウムはそう言って、狼男に扮するソラス・マルファス（呪詛大剣・g00968）が用意した血のように赤いペットボトルを受け取るよう促す。
「ハッピーハロウィン。悪戯しないでくれるなら、紅茶があるぜ」
　ソラスは大人しく手を出す子どもたちに紅茶を配り、
「あれ？　この紅茶、青くなった！」
　彼らが飲み始めると、いつの間にかペットボトルが青くなったことに驚く姿に悪っぽい笑みを浮かべた。
「容器が２重になっていて、間にサーモインクが入っているらしいぜ」
　温度が変わることで色が変わる仕掛けが、ペットボトルにされており、
「作ったのは兄貴だから、俺は良くわからんが、面白いものだな」
　狼男は制作者のマジシャンに視線を向け、詳しい説明は任せてクッキーと紅茶を手に子どもたちに配って回る。
「それーっ☆」
　素直に受け取る子どもがいると思えば、あえてソラスに悪戯しようとしてくる子どももいて、
「うわっ、降参だ、降参。羽根はひっぱらねぇでくれよ。触るのは良いけどな」
　そんな彼らの悪戯に素直に引っかかりながらも、危ないことはしないように目を光らせた。
「迷子かな？　ソラと僕で必ず見つけるよ」
　そんな中、親とはぐれて泣いている子どもを見つけた２人は、ラウムがコミカルなネコ型ドローン２匹でアクロバットショーを見せて喜ばせてから、
「人通りが多くても、上からなら見つかるだろう」
　ソラスが肩車して翼を広げて飛び上がる。
　楽しい夜を悲しい夜にしないために、２人は子どもが笑顔で親のところに戻れるように全力を尽くし、
「ありがとう！　おじちゃんたち！」
　最後は親と再会した子どもの笑顔で幸せな気持ちになるのだった。




●魔女と赤ずきん（狼）
「おかしを『おかし』く楽しむ罪を犯してみて～」
　いたずらの神様が笑ってくれそうな言葉遊びを唄のようにして。
　マリートヴァ・ズロービナ（祈りましょー・g10662）は悪戯っぽい笑顔を浮かべながら商店街の通りを歩いていた。
　普段は可愛らしい笑顔。
　だが、魔女の仮装をした今日の彼女は、魔女らしく少し意地悪……ではなく、いつも通りの可愛らしい笑顔だ。
「お互いに悪戯し合うと言うのは面白そうですな」
　そんな魔女と並んで歩くのは、赤ずきんに扮するウェアウルフのユオ・ルスカ（Lopussa kiitos seisoo・g10632）。
「マリートヴァ殿は素敵な仮装ですな。ふんわりと可愛らしく、貴女にぴったりです」
　彼女はそう言いながら、近づいてくる子供たちに狼の爪（作り物）を見せながらやさしく吠えて驚かせていた。

「泣かせてしまって悪かったです」
　赤ずきんが狼になっちゃったと泣きだした女の子に、ユオは肉球のついた掌であやし、
「ごめんね～？　ユオちゃんは赤ずきんにして狼なんだよ～。わたしの魔法でえ～い……ってね？」
　マリートヴァは魔法のステッキを振って、ユオに仮装の魔法をかける振りを見せる。
「ユオちゃん～。きゅーとでかっこいいです～」
　そして、そんなユオにマリートヴァはぎゅーっと抱き着いて、狼の爪を一時的に消し去ってみせ、女の子に笑顔を取り戻させた。
「これはお詫びのキャンディだ」
　ユオから渡されたリンゴ、ブドウ、ハッカにサルミアッキ……様々な味のキャンディを口にして、女の子は頬を緩めたり驚いて目を丸くしたり。
　先程まで泣いていた顔の面影はなく、２人に笑顔でありがとうとお礼を言うのだった。
「……護らねばなりませんな、この光景を」
　ユオが元居た時代とは異なり、ここでは子供が冬を越えるのは難しく無い。
　だが、刻逆を経てこれまでの日々。不安もある中で子供たちが明るい表情でいることの何と尊いことか。
　幸せそうな女の子の顔を見ながら、ユオはそんな思いを強くする。
「さあ子供たち。トリック……オア…………zzz～」
　その傍らで、マリートヴァは子供たちに向かって悪戯をしに行こうとするが、急に眠くなってきたのか、大きなあくびをしてそのまま微睡みに堕ちていった。

「……はっ」
　それからどれだけ時間がたったのか。
「つい寝ちゃうところだった～」
　マリートヴァが意識を取り戻すと、そこには傍で彼女を優しく見つめていたユオと、トリック・オア・トリート！　と彼女たちに声をかけてくる子供たち。
「……あっ」
　もしかしたら、意識が無くなっていた間にいたずらされたかもしれないと、彼女は焦りの顔を浮かべるが、
「で、でも大丈夫、お菓子があるからね～」
　手に持っていたお菓子の存在を思い出し、笑顔で子供たちに手渡していく。
「わたしからはクッキーを～……。色々な形のクッキーがあるの～、吸血鬼の形とか、お化けの形とか、フランケンシュタインもありありのありさん～」
　この日のために丁寧に作ったクッキーを手にして、口にして、子供たちがはしゃぐ姿をみて、マリートヴァは目を細め、
「冬を超えても、その先も。子供たちの未来は、晴れやかで明るくなければならないの」
　だから、この尊き日常をわたしたちが護る。
　そう強く決意した。

「あ、お菓子、どんなのが良いかな～……」
「見た目で判断して、口にして脅かされるとか。楽しそうです」
　子供たちを喜ばせた後は自分たちの番。
　商店街で売られているお菓子を求めて２人は商店街を歩き、お菓子に仕掛けられたトリックに驚きながら、その雰囲気を存分に堪能するのだった。




●もきゅもきゅ事件（パラダイス）
「あれ？　なにかもっきゅ……へんもきゅ……もっきゅー」
　追いかけっこパレードの後、楽しいお菓子を見つけるために仲間たちと手分けしてお店を回っていたマリアラーラ・シルヴァ（コキュバス・g02935）は、
「……もきゅ！　もきゅ？！」
　周りに居た人と共に、モーラットのようにもきゅもきゅとしか喋られなくなってしまっていた。
「あっ、これメロンじゃない！　……きゅうり？」
　一方、ルペ・エストレーノ（セイレーンのトレジャーハンター・g10820）は、
「私のは、いちごの色形をしているけど梅干し味の飴ね」
「そっちも食べた～い☆」
　シャルロット・アミ（金糸雀の夢・g00467）と２人。不思議な飴を面白そうに舐めながら食べ比べしていると、
「もきゅー！」
　シャルロットの相棒、モーラット・コミュ『モラさん』が駆け寄ってくる。
　……と思いきや、その声の主は慌てた子どものものだった。
「ど、どうしたの？」
　一体何事だろう？
　ルペは子どもに問いかけるが、もきゅもきゅとしか返事が帰ってこず……、
「もきゅ！」
「もーきゅーっ」
　よくよく周りを眺めると、何故かもきゅっと鳴いている子が沢山居るのだった。
「まあ、みんなもきゅもきゅしているのね」
　シャルロットはそんな様子を可愛らしいと思いつつも、今にも泣き出してしまいそうな子どもたちを放って置くわけにも行かず、
「もきゅっ！」
　ドヤ顔で先輩面するモラさんを優しく撫でながら、再び事件の解決のため、名探偵シャールロット・ホームズに扮するのだった。
「……とはいえ、怪しいのは一人と一匹……」
　シャルロットはそうつぶやきながら、マリアラーラの姿を探すが見当たらない。
「そんなの、犯人は決まっているぜ！」
　そこに現れた、先程まで散々走って疲れて倒れていたロナルド・ハーキュリー（ドラゴニアンの撃竜騎士・g03319）。
　彼はシャルロットに目配せしてからモラさんを捕まえて、
「もきゅもきゅもきゅー！　犯人はモラさんだ！！」
　あまり深く考えない迷探偵を装い、モラさんをグリグリといじめて尋問しようとした。
「！」
　モラさんのピンチに、マリアラーラは思わず駆け寄りそうになるが、
（「こ、ここは我慢なの……」）
　イタズラの犯人だとバレてしまえば、あのグリグリを自分も受けてしまう。
　そう思って成り行きを見守ることにしたのだが、
「痛いもきゅ！　助けてマリアちゃんもきゅ！」
　突然モラさんが喋りだし、マリアラーラに助けを求めだしたではないか。
　そんな叫びに思わず駆け寄ってロナルドからモラさんを奪い取ったマリアラーラ。
「もきゅー……」
　だが、その声はいつものモラさんの「もきゅ」で……、
「えへっ。モラさんの鳴き真似。上手でしょ？」
　それがルペの腹話術でのイタズラだとネタばらしされると同時に、彼女はロナルドに捕まってしまった。
「もきゅ……」
　自分も被害者なんだよー。
　そう言いたそうにもきゅもきゅと反論するマリアラーラ。
「マリアさん、モラさん」
　そんな彼女にシャルロットは、
「とっておきのお菓子。あげましょうか？」
　シューの中に粒たっぷりいちごジャムを詰め込んだシュークリームを取り出した。
「！！」
「もきゅ！」
　２人はシャルロットに飛びついて、シュークリームにはむはむとかじりつき、
「あまあまイチゴ美味しいの☆」
「もきゅー♪」
　口のまわりを真っ赤にさせながら、美味しそうに頬張る。
「ふふ、犯人確保」
　そして、そんな２人をぎゅうと抱きしめ、
「……シマッタなの！」
　捕まってしまったマリアラーラはイタズラを認め、子どもたちを元に戻してごめんなさいと謝った。
「みんな、すまなかったな！」
　いたずらされた子どもたちには、ロナルドがシャルロットからもらったかぼちゃの色形なのにオレンジ味のクッキーを手渡し、
「うおっと！」
　手の早い子どもに再びスカートをめくられて苦笑いするのだった。

最終結果:成功
完成日	2024年11月18日