リプレイ
ジェーン・コーネリアス
僕らが太平洋で使っているのと同じくらいの船か
元々ヤ・ウマトに攻め込んでるアビスローバーから奪ったものだからね
あれと同じくらいの規模や部隊ってことだろう
狙いは『迷宮』を作り出し、そこから得られる『宝』ってことだけど……ここは元々ドラゴンのダンジョンがあったところだっけ?
ダンジョンに親和性でもあるのかもしれないね
冥海機は撤退済み、一見罠も何もないように見せておいて、敵が意気揚々と上陸したところを罠にかけてやろう
【トラップ生成】を使って大きな落とし穴を作ろう
敵1体の重量じゃおっこちないけど、複数人乗ったら落っこちるようなやつをね
これなら先頭の1体がかかって終わりじゃなく、他のやつもかかってくれるだろう
ついでにモアイの陰に最終人類史から持ち込んだ携帯スピーカーを隠しておこう
敵が落とし穴に落ちたところで爆発音や銃声などをスピーカーから響かせてまるで周囲を敵が取り囲んで攻撃を仕掛けてきているように見せかける
落とし穴と合わせてパニックにさせて攻撃を仕掛けよう
間抜けは嵌ったみたいだね
それじゃあ漁の時間だ
クローディア・ベネット
邪神獣の浮島は、前にヘンリー・ハドソンの手下から「様」付けで呼ばれてたんだよな
島が巨大なアビスローバーだとすると、多少手下を掃除した程度じゃ上陸させてくれそうにないね
イースター島での迎撃もこなさなきゃならん回数が増える訳だ
面倒な話だが折角のチャンスは見逃せない。今日もキリキリやっていくぞ!
モアイを作った文明で伐採しすぎたせいか、イースター島には木が殆どない
敵が来るまで身を隠すのに周りが見通しスッキリじゃ困るよな
そこで最終人類史から人工低木を持ち込み、敵が狙っているモアイが見える位置に置いていこう
後はバリケードフェンスの上に草色のマットを敷いて隠し、遠目には地形の凸凹に見えるようにするのもいいかもな
荷台に加え【アイテムポケット】も利用して、効率よくトレインから資材を搬出し設営作業を行う
近くで見たら違和感だらけでも、初めて来た島で遠目に見る分には騙されるぐらいの仕上がりを目指そう
奇襲の初撃を放って有利な状況で逆説連鎖戦に持ち込めれば十分さ
こいつがとんだペテンだって気付いた時には、もう手遅れさ
●序幕
虚ろな目をした石造りの巨人――モアイ像が居並ぶ高台。
その麓に、JR山手線の車両に似た列車が停まっていた。
異様な光景ではあるが、その列車がパラドクストレインとなれば、話は別だ。
「ここんところはずっと新宿島とイースター島を行ったり来たりしてるなあ。モアイたちともすっかり顔馴染みだ」
車両側面に並ぶ黄緑色の扉が一斉に開き、歴戦の海賊船長然とした衣装に褐色の肢体を包んだ女がそのうちの一つから降り立った。
黄金海賊船エルドラード出身のディアボロス――クローディア・ベネット(黒き旗に矜持を掲げて・g10852)である。
「たぶん、顔馴染みができたことをモアイたちも喜んでいるんじゃないかな。殺風景な島に立ちっぱなしで退屈していただろうからね」
そう言いながら、銀髪金眼のセイレーンが車両から姿を現した。
海賊帽を被った彼女の名はジェーン・コーネリアス(pirate code・g10814)。クローディアと同様、黄金海賊船エルドラードの出身者である。
降客はそれで終わりではない。ゴム毬のようにぴょんぴょんと跳ねながら、アクアスライムが降りてきた。ジェーンのサーヴァントの『おたから』だ。
球体の従者がジェーンの足下に着地したのを確認した後、クローディアは高台のモアイ像たちを見上げた。
「さて、直立不動の顔馴染みたちに挨拶に行こうかね」
「そうしよう」
ジェーンは頷き、高台を登り始めた。
●クローディア・ベネット(黒き旗に矜持を掲げて・g10852)
この高台のモアイたちは皆、正面を島の陸側に向けて建てられていた。アビスローバーなんて厄介な存在を寄越す海に愛想をつかし、そっぽを向いている――そんな印象を受けてしまうな。
海を嫌うモアイたちの傍までの移動したところで私はジェーンに確認した。
「『グレートトレジャー』ヘンリー・ハドソンの手下どもは邪神獣の浮島のことを『様』付けで呼んでいたんだってな?」
「ああ。確かに彼女たちは『邪神獣の浮島様』と言っていたよ」
パラドクス効果を生み出すためにパラドクスを空打ちしながら、ジェーンは答えた。彼女は、冥海機ヤ・ウマトに侵攻したヘンリー・ハドソンの部隊と接触したことがあるんだ(かく言う私も別の任務でヘンリー・ハドソンと一戦交えたことがある)。
「ってことは、邪神獣の浮島はただの島じゃなくて、島サイズのアビスローバーなのかねえ」
「そう考えるのが自然じゃないかな」
「ふむ……」
本当に邪神獣の浮島が超ドデカいアビスローバーだとしたら、手下を少しばかり掃除した程度じゃあ、上陸なんてできやしないだろうな。ましてや、撃破おや。この島での迎撃をこさなきゃならん回数が増えるのも納得ってもんだ。あー、思っていた以上にめんどくさい……が、これは敵の戦力を削り取るチャンスでもあるから、投げ出すわけにはいかない。今日もキリキリやっていくぞ!
そうやって決意を新たにした時、ジェーンが言った。
「よし。作業の第一段階は終了だ」
「第一段階?」
私が聞き返すと、彼女は説明してくれた。
「パラドクス効果の『トラップ生成』を使って、この辺りに大きな落とし穴を作ったんだ。結構な重量でないと作動しない落とし穴だから、先頭の一体がかかって終わりじゃなく、他のやつもかかってくれるだろう」
ふむ。落とし穴か……。
『トラップ生成』の罠ゆえに物理的なダメージを与えることはできないだろうけど、上手く利用すれば、面白いことになるかもな。
●ジェーン・コーネリアス(pirate code・g10814)
僕は作業の第二段階を開始した。
そして、すぐに終えた。そんなに手間のかかることじゃなかったからね。モアイの陰に小型のスピーカーを隠しただけ。アビスローバーたちが落とし穴にはまったら、このスピーカーから銃声だの爆発音だのを響かせて、更なる混乱に陥れてやろう。
クローディアも迎撃の準備をしていた。『アイテムポケット』から取り出した太い棒を地に立て、左右に引き延ばして展開すれば、何本もの棒が斜めに交差した形の柵に早変わり。
「そんな柵でクロノヴェーダのパラドクスを防ぐことはできないと思うよ」
と、僕は指摘したけど、クローディアは意に介することなく、同型の柵を次々と設置していく。
そして、モアイの群れと落とし穴との間に貧弱な防壁を築き終えると――
「このバリケードフェンスは身を守るためのものじゃない。身を隠すためのものなんだよ。もちろん、素の状態では隠しようがないから、こうやってカモフラージュするけどな」
――草色の敷物を防壁に被せた。
「近くからだと違和感ありまくりだろうけども、遠目には地面の凸凹に見えるかもしれないだろ。初めて来た島なら尚更だ」
「なるほど」
僕が感心している間にクローディアは低木群(たぶん、人工だ)をモアイの近くに置いて回った。それらもディアボロスが身を隠すためのものだろう。
最後の低木が設置されたところで、僕は気になっていたことをクローディアに確認した。
「この島に攻め込んできたアビスローバーの中に『迷宮』という言葉を口にした者がいたというのは本当かい?」
「ああ、本当だよ。クルセニアって奴が『宝の中身は迷宮が出てきてからのお楽しみ』とかなんとか言ってた。黄金海賊船エルドラードのお宝と同様、このイースター島のお宝もダンジョンに出現する……と、アビスローバーどもは考えているのかもな」
突然、僕の足下にいたおたからが一際高くジャンプし、自分の存在をクローディアにアピールした。『お宝』という言葉を聞いて、自分の名を呼ばれたと勘違いしたらしい。
そのおなじみの行動(そう、これは毎度のことなんだ)に苦笑しつつ、僕は言った。
「幻想竜域キングアーサーの支配下にあった頃のイースター島にもダンジョンがあったんだっけ? ダンジョンと縁深い地なのかな」
「ダンジョンと縁深いなら、ダンジョンが大好きなアビスローバーどもとの縁も深いかもな。もっとも――」
クローディアはサーベルを抜いた。
「――そんな縁は私らがブッタ斬ってやるけどよ」
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【ラストリベンジ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
●幕間
「あそこで雁首そろえてんのがモアイってヤツかな?」
「モアイなんか、どうでもいいや。それより冥海機はどうしたよ?」
「一匹も見当たらんな。尻に帆をかけて逃げたのか。それとも、最初からいなかったのか……」
「まあ、邪魔者がいねえのなら、それに越したことはねえわな。さっさとお宝をいただいちまおうぜ!」
イースター島に上陸したトループス級アビスローバー――パイレーツランサーの一団が高台を駆け上がっていく。落とし穴が待ちかまえていることも知らず。ディアボロスが隠れていることも知らず。
彼らの後を行くのはアヴァタール級のペドロ・デ・アルバラード。
猫背気味になって肩をいからせ、長い首をゆらゆらと振って剣呑な目を左右に走らせている様は、地回りのヤクザ者を彷彿とさせる。
しかし、彼が口中でぶつぶつと呟いている言葉は――
「なんか不気味な島だな……イヤな予感がするぜ……あー、ちきしょう。胃がキリキリと痛んできやがった……帰りてえよぉ……今すぐに帰りてえよぉー……」
――実に情けないものだった。
クローディア・ベネット
予知通り、いかつい見た目の割に覇気がない奴が船長だな
準備は万端だ。落とし穴が開いたらすぐに仕掛けようか
バリケードの後ろに隠れながら【未来予測】で敵の動きを先読みしよう
「一秒後に落とし穴が開く」って分かってりゃ、タイムラグなしに攻撃できる
相手が思いの外冷静だろうと、建て直しの隙を与えずに一発目をぶちかましてやれるだろうさ
チャンスが来たら総攻撃だ!
――『野郎ども、一気に雪崩れ込むぞ!』
混乱の中で隙を晒した敵群に、カトラスを手にした海賊の霊達をけしかける
戦いが始まったら隠れてる必要はないんで、私も《船長のサーベル》を手に躍り出て暴れよう
落とし穴に嵌まった奴の首を刈り、爆音や銃声の方向に振り向いた隙に背後から仕留める
なるべく多くの敵を、ご自慢の盾を使う暇もない内に仕留めてやろう
数を減らして敵の密集陣形の効果を低下させ、槍の穂先をサーベルで弾く
二回目以降の攻撃では海賊を二手に分け、正面から当たる奴らが盾を使わせた上で、もう一つの隊が側面から斬り込む戦術を使おう
はっはっは!あんた達、運がなかったな!
ジェーン・コーネリアス
あぁいう奴が船長だと、部下は逆に勇んで前に出たくなるもんだ
これは落とし穴にも期待ができそうだ
前に出てきたパイレーツランサーたちが落とし穴に引っかかった瞬間にバリケードから飛び出て攻撃を仕掛けるよ
右手に「Badhbh」、左手に「Nemain」。二丁のピストルを手に『葬笛の丹青』
穴に落ちて慌てる敵を赤と青の魔力の弾丸で撃ち抜いていこう
ついでに僕が飛び出してくるのとは別の方向からスピーカーで銃声や爆発音、号令を流してそっちからも攻撃がされているように錯覚させる
ほらほら、僕だけに構ってていいのかい?
悪いけど冥海機との契約があるんでね、君らにはここで死んでいってもらうよ!
今考えたその場限りのハッタリだけど、混乱している最中に予想外の情報を投げ込めば混乱も長続きするだろう
防衛設備と罠、ハッタリを活かすには何よりも敵が慌てふためいている間に勝負を決める速攻が重要だ
【ダメージアップ】を乗せた複数を攻撃するパラドクスで押し切ってしまおう
こいつで終いだ!
●クローディア・ベネット(黒き旗に矜持を掲げて・g10852)
銛と楯を装備したアビスローバーどもが高台を駆けのぼってくる。下卑た喚き声を撒き散らしながら。
「あの猪突猛進振りからすると――」
偽装されたバリケードフェンスの裏から敵の様子を窺いつつ、私は傍らのジェーンに声をかけた。
「――奴らが私たちの存在に気付いてないことは間違いないな」
「うん。例のアレにも気付いてないだろうね」
ジェーンは二丁の海賊ピストルを抜いた。右手に持ってるやつの銃身は黒く、左手に持ってるほうのそれは白い。
彼女が言うところの『例のアレ』の出番に備え、私はパラドクス効果の『未来予測』を発動させた。
一秒後の光景が視界に二重写しになった。
未来視の中のアビスローバーどもは現実の自分たちよりも五メートルほど先行し、『例のアレ』との距離を縮めていく。
あと二十メートル。
十五メートル。
十メートル。
五メートル。
そして……ゼロ!
『例のアレ』に到達した瞬間、アビスローバーどもの先頭集団は視界から消え、代わりに土煙が巻き起こった。
きっかり一秒後、現実の先頭集団も――
「のわっ!?」
「うひゃあぁーっ!?」
「なんじゃこりゃあーっ!?」
――喊声を奇声に変えて、視界内でのポジションを土煙に譲った。
言うまでもないだろうけど、『例のアレ』であるところの落とし穴にはまっちまったんだよ。
●ジェーン・コーネリアス(pirate code・g10814)
『未来予測』でタイミングを計っていたであろうクローディアは、アビスローバーたちが落とし穴にはまるやいなや柵から飛び出した。
もちろん、僕も飛び出したよ。おたからと一緒にね。
「野郎ども! 一気に雪崩れ込むぞ!」
クローディアが勇ましい声をあげた。
でも、『野郎ども』というのは僕やおたからのことじゃない。
パラドクスで召喚された一団――海賊たちの死霊だよ。
死霊の群れはクローディアに率いられて落とし穴の傍まで突き進むと、手にしたピストルを撃ち、あるいはカトラスを振りおろした。這い上がろうとして縁に手をかけていた何体かのアビスローバーに向かって。
死霊だけでなく、クローディア自身もまたサーベルで敵に斬りつけている。どうやら、彼女が発動させたのは、召喚対象に戦わせるパラドクスではなく、召喚対象とともに戦うパラドクスだったようだね。
とはいえ、敵のほうも(あっさり落とし穴にはまったマヌケとはいえ)一応は歴戦の海賊だからして、蹂躙されるがままで終わったりしない。慌てふためきながらも穴の中で密集陣形を取って盾を構え、クローディアめがけて銛を突きあげた。まずまずの力強さを有した反撃と言っていいだろうね。
『まずまず』止まりのパラドクスがクローディアに通じるはずもないけれど。
●再び、クローディア
「なんだい、その銛捌きは? へっぴり腰もいいところじゃないか」
落とし穴にはまったアビスローバーどもが次々と銛を繰り出してきたが、私は穴の縁に沿うように横走りして、それらを躱した(ちなみに言っておくと、逆説連鎖戦が始まったので『未来予測』はもう役に立たない。逆説連鎖戦中の時間の流れってのは正常じゃないからな)。
そして、銛の穂先が落とし穴に引っ込む間もなく、何発かの銃声が響いた。
ジェーンの持っている黒と白の二丁拳銃が火を噴いたんだ。いや、『魔力を噴いた』と言うべきか? 銃口から撃ち出されたのは弾丸じゃなくて、不可思議な青と赤の光だった。
その銃弾ならぬ光弾の標的となったのは、銛を突き上げていたアビスローバーどものうちの三体だけど、今回は反撃はなかった。弾丸がとどめとなって、くたばっちまったからね。
光弾の洗礼を受けなかった連中はというと――
「うぉーっ!」
「なめるなよぉ!」
「ブチ殺してやらぁーっ!」
――お仲間の死に奮起したのか、あるいは動揺振りをごまかすためか(一ミリもごまかせちゃいないけどね)、事更に喚き立てながら、盾を斜めに掲げて、その先端をジェーンへと向けた。
次の瞬間、盾から銛が次々と発射された。うん。そこそこの素早さを有した攻撃だ。
だけど、『そこそこ』止まりのパラドクスなんぞがジェーンに通じるはずもない。
彼女は銛の群れを軽々と躱し、悠々と語りかけた。
「ほらほら、僕だけに構ってていいのかい?」
その直後、爆発音が轟いた。
●再び、ジェーン
ドラゴンの咆哮もかくやという猛烈な爆発音が戦場の空気をびりびりと震わせた。
でも、爆風や爆煙は生じていない。
それもそのはず。爆発音の発生源は、僕がモアイの傍に隠しておいたスピーカーだからね。
そうとは知らないアビスローバーたちは――
「な、なんだ!?」
「新手が来のか!?」
「えーい! 姿を見せやがれーい!」
――動揺と驚愕と強がりの三重奏だ。落とし穴のショックから立ち直りかけていたというのにまた動きが淀んでいる。
その隙を見逃すことなく、僕は再びパラドクスを発動させた。『Badhbh』と『Nemain』――女神の名を持つ二丁のピストルから魔力の弾丸を発射。
当然、クローディアも攻撃を仕掛けている。あの死霊たちと一緒にね。
「はっはっはっ! あんたたち、運がなかったな!」
哄笑とともにサーベルの白刃が走り、一体のアビスローバーの首が体から離れて宙を舞った。間を置かずに三体のアビスローバーが後を追った。死霊たちの銃弾を浴びて。
もっとも、敵はまだまだ残っている。落とし穴から這い上がってきた者もいるし、落とし穴にはまらなかった後続の連中も迫っている。
そいつらに向かって、僕は言ってやった。
「悪いけど、冥海機との契約があるんでね。君らにはここで死んでもらうよ!」
もちろん、それはブラフだ。僕らが冥海機なんかと契約するわけがない。
でも、アビスローバーたちは真に受けたらしく、またもや動揺している模様。
「あんたたちの銛だの盾だのといった戦利品は冥海機に分けてやるよ! 私らには不要だからね!」
クローディアがブラフに乗っかり、アビスローバーたちに新たな攻撃を加えた。
「いや、冥海機にとっても不要じゃないかな」
僕も『Badhbh』と『Nemain』から光弾を撃ち出した。
本当に不要なのはアビスローバーという存在そのものだ。一体残らず綺麗にかたづけよう。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【未来予測】LV1が発生!
【水中適応】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
●幕間
トループス級たちは奮闘むなしく全滅した。
奮闘する間もなく仕留められた者も少なくなかったが……。
「俺様の精鋭どもをこうも簡単にかたづけるとはな。驚かしてくれるじゃねえか」
地に転がる『精鋭』たちの屍を見回しながら、半人半ウツボのアヴァタール級アビスローバー――ペドロ・デ・アルバラードが肩を小刻みに揺らして『くっくっくっ』と不敵に笑った。少なくとも、本人はそうしているつもりなのだろう。彼が臆病者だということを知っているディアボロスたちからすれば、恐怖に震えて喘鳴めいた呻き声を発してるようにしか見えない。
「しかし、驚きはしたけども、ビビってはいないぜ。いや、ホントに。マジでビビってねえし。まあ、俺様でなきゃあ、ビビっちまうだろうけどな。はっきり言って、こんなのは障害のうちにも入らねえし、おまえらは強敵でもなんでもねえわ。俺様にとっちゃ、行く手に石ころが何個か転がってる程度のことに過ぎねえよ。あー、めんどくせえな。勝てると判ってる相手と殺り合うのはよぉー」
やたらと口数が多い。言葉を吐き続けることで恐怖を紛らわしているのだろう。アヴァタール級にあるまじき情けない姿ではあるが、逃げ出さないだけ立派とも言えるかもしれない。
「しかし、『めんどくせえめんどくせえ』と愚痴をこぼしたところで、どうにかなるわけでなし。めんどくせえからこそ、ちゃっちゃと終らせねえとな。さあ――」
サボテン型のメイスを構えて、ウツボの姿をしたチキンは叫んだ。
痛ましいほどに勇ましい声で。
「――かかってこいや! 石ころどもぉーっ!」
ジェーン・コーネリアス
くっくっ、なんだ、それじゃあ君の『精鋭』ってのは石ころに躓いて全滅したのかい?
そんな奴らのキャプテンなんて、石ころで十分すぎるくらいだ
ま、僕らが本当に石ころかどうかは……食らって確かめてみるんだね!
ピストル「Nemain」を手に戦闘
『祈弾迫撃』の近距離からの射撃で攻撃を行おう
そっちから向かってきてくれるなら都合がいい
弾丸でお出迎えしてあげるよ!
反撃に振るわれるカクタスメイスの一撃はカトラス「Macha」で受け止めて防御、直撃は防ごう
いい武器を持ってるじゃないか! それもダンジョンで見つけたお宝かい!?
「Macha」もダンジョンで見つけたお宝、相応に神秘を帯びてるし打ち合いは分が悪いか、先にこっちが折られちゃいそうだ
それなら、虎穴に入らずんば虎子を得ずってやつだ!
振り回すメイスを掻い潜って懐まで接近、メイスの間合いのさらに内側まで入り込んで『祈弾迫撃』。零距離からの射撃で着込んだ鎧ごと貫くよ
これでこの部隊は全滅だ
各地で戦闘が起きてるけど、「邪神獣の浮島」と指揮官も大物
確実に仕留めたいね
クローディア・ベネット
石だって頭に叩きつけりゃ髑髏を砕き、大砲に詰めたら城壁だって崩すもんだ
恐れ知らずと物知らずは違う。自分がどっちかよく考えてみな!
ジェーンが近距離で撃ち合うなら、私は後ろから砲撃を撃ち込むよ
――『野郎ども、全ての砲門を開け!』
砲台と共に現れた海賊の霊達にぶどう弾をぶちまけさせ、敵を散弾の嵐の中に呑み込もう
パラドクスに誤射が無いのを最大限に利用させて貰おう
直接やり合ってる前衛をすり抜けてその後ろから弾幕が迫り、逃げ場もないと来たら相手は相当やりづらいだろ
その内、私達の誰かが致命的な一撃を叩き込むための隙を晒してくれるはずさ
敵が振るうメイスに対してはこちらも≪船長のサーベル≫と≪ピストルセット≫の1丁を抜いて応じる
メイスを狙って銃弾を撃ち込んで衝撃で太刀筋を逸らしたり、サボテンの枝分かれ部分にサーベルを滑り込ませて押しやることで、狙い通りには当てさせないよ
ははっ、こいつは洒落たマラカスだな。だが音が鳴ってないぞ?
手強い奴らほど潰し甲斐があるよな!
網にかかったからには、浮島も鯨女も逃がすものかよ
黄下・泉
アドリブ、連携は歓迎
なんとか指揮官戦には間に合ったかな、手を貸すよ。
悪いな、ウツボさん。石ころ一個増えるよ。
なーに、石ころなんだったら何個増えたところで構わないだろ?
ちなみに返品は不可だ。
えーと、前衛が一の後衛一か。
ならあたしも突っ込んで抑える方に回るのがいいか。
全身の符で自己強化し、四肢には特に濃く術式を宿す。
仲間の射線は遮らないように気を付けつつ、一気に突っ込んで格闘戦だ。
最初は防りに専念するか攻撃は牽制程度に留めて、相手の動きとかをよく観察してクセを掴む。
見極めたら反撃開始だ。
狂戦士化って言えば聞こえはいいけど、勢いと力に任せて暴れまくってるだけだろ。
キミさ、戦い慣れてないだろ?無理矢理煽った戦意に振り回されてる。
そりゃ威力は強いかもしれないけど、まともに当たらなきゃ大したことないさ。
に、しても。
……こいつの両手のサボテン、マラカスかと思ったらメイスだったかー……
いや、そうだよな。初見の印象が「めっちゃくちゃノリノリなヤツ」だったけど。
マラカス持って前線に出ないよな。うん。
●幕間(承前)
「くっくっくっ」
『石ころ』呼ばわりされた者の一人――ジェーン・コーネリアス(pirate code・g10814)が肩を小刻みに揺らして不敵に笑った。先程のペドロの仕種と似ているが、彼女のそれは虚勢ではなく、心からの笑いだ。
「なんだ、それじゃあ、君の『精鋭』ってのは石ころに躓いて全滅したのかい? そんな奴らのキャプテンなんて、石ころで充分すぎるくらいだ」
「ぐぬぬぬぬ……」
痛いところをつかれて返答に窮するペドロに向かって、更なる挑発の言葉がぶつけられた。
「石だって頭に叩きつけりゃあ、髑髏を砕き、大砲に詰めたら、城壁だって崩すもんだ」
クローディア・ベネット(黒き旗に矜持を掲げて・g10852)である。その声音が感じさせる力強さは石ころではなく、鋼のそれだ。
「恐れ知らずと物知らずは違う。自分がどっちかよく考えてみな!」
「か、か、考えるまでもねえよぉ!」
ようやくにして言葉を返せたペドロであったが、その声音が連想させるのは石ころどころか、吹けば飛ぶような塵芥だった。
「悪いな、ウツボさん。石ころ一個増えるよ」
塵芥を踏み潰すべく、金色の瞳を有した娘がジェーンとクローディアに並んだ。
救援機動力で以て駆けつけた黄下・泉(リターナーの符術士・g08097)だ。
「なーに、石ころなんだから、何個増えたところで構わないだろ? ちなみに――」
太股に装着したホルスターから泉は数枚の符を取り出した。
「――返品は不可だ」
●ジェーン・コーネリアス(pirate code・g10814)
「へ、へ、返品したくても、で、できやしねえよ! て、手元に届いた先から叩き壊しちまうからな! な、何千人もの敵を血の海に沈めてきた、こ、こ、この得物でよぉーっ!」
吃りながら怒鳴るという器用な真似をしながら、ペドロはサボテン型メイスをびゅんびゅんと振り回し、長い尻尾をびったんびったんと地面に叩きつけた。
そのびったんびったんのテンポに合わせて、おたからがぴょんぴょんと高く跳ねてみせた。アクアスライム流の挑発なのかな?
「その無様な動きは威嚇のつもりかもしれないが、癇癪を起こした駄々っ子にしか見えないよ」
と、クローディアもペドロを挑発した。彼女の褐色の肌は南国を思い起こさせるけど、びゅんびゅん&びったんびったんに向けられた眼差しの冷ややかさは雪国のそれだ。
「駄々っ子には躾が必要だな」
そう言いながら、泉が両の前腕と脛に呪符をぺたりと張り付けた。
僕は二丁拳銃のうちの一つ(『Badhbh』のほうだ)を腰に戻し、『Macha』と名付けたカトラスを代わりに抜いた。
クローディアもまたサーベルとピストルを構えた。そして、先程と同様に死霊の群れを召喚……いや、先程のパラドクスとは違うようだね。現れ出たのは死霊たちだけじゃない。鈍く光る砲身を搭載した砲架もずらりと並んだ。
戦闘準備完了。
それを待っていたかのようにペドロはびゅんびゅん&びったんびったんを止め、叫んだけれど――
「おもしれえ! 躾けられるもんなら、躾けてみやが……」
「いくよ」
――泉のほうは律儀に待ったりせず、相手がすべてを言い終える前に飛び出した。
疾風のごとき勢いで距離を詰めて、怒濤のごとき勢いでハイキック。
ペドロの横っ面に命中。
「……るぇ!?」
長い首が『ぶん!』と音を立てて撓り、体勢も大きく崩れ、片膝が地についた。
だけど、転倒はしなかった。
「ぐぉのやるぅあぁぁぁーっ!」
濁った怒号とともにペドロは反撃に転じた。
●黄下・泉(リターナーの符術士・g08097)
「ぐぉのやるぅあぁぁぁーっ!」
獣のように吠えながら(たぶん、『この野郎!』と言ってるつもりなんだろう)、ペドロが猛攻を加えてきた……などと言うと、勇ましい姿が思い浮かぶかもしれないけど、実際はそうでもない。つぶらな目に涙を滲ませてトゲだらけのマラカスを滅茶苦茶に振り回している様は、積もり積もっていたものが爆発して暴れ出したいじめられっ子を彷彿とさせる。
これが本物のいじめられっ子ならば同情の余地もあるのだけれど、アビスローバーに哀れみをかけることはできない。あたしは、乱舞するマラカスの動きを見極め、ペドロの側面へ回り込むように回避した。
「ゆぉぐでぃんじゅぬぁぁぁーっ!」
再び吠え猛りながら(今度はなにを言ってるのか判らなかった)ペドロは体を四分の一回転。あたしと向き合い、再びマラカスを繰り出し……あ? よく見ると、マラカスじゃないな。
「それ、メイスだったのか? てっきり、マラカスかと思った」
メイスを躱しつつ、ボクはペドロに語りかけた。
「まあ、当然か。マラカスを持って前線に出る奴なんていないよな」
「舐めてんのか、てめぇーっ!」
と、ペドロが怒声を返した直後――
「隙だらけだぞ、アナゴ野郎!」
――クローディアの咆哮が響き、何発分もの砲声がその後に続いた。
そう、亡霊の砲手たちが大砲を発射したんだ。
側面に回り込んだあたしに向き直ったことによって、ペドロは砲列に対して横半身をさらけ出す形になっていた。そこに集中砲火を食らったのだから、たまらない。悲鳴をあげる暇もなく、派手に吹っ飛ばされた。
だけど、吹っ飛ばされるだけで済んだのはクロノヴェーダならばこそ(普通の人間なら、粉微塵になっていただろうな)。傷だらけになりながらも立ち上がり、土煙をあげて疾走し、ボクの前を横切り、砲列を飛び越え、クローディアに肉迫した。
そして、彼女の頭めがけて、マラカス……もとい、メイスを振り下ろした。
●クローディア・ベネット(黒き旗に矜持を掲げて・g10852)
ペドロが使ってきたパラドクスは泉に仕掛けたパラドクスとはまた別物だったようだが、サボテン型のメイス(言われてみれば、マラカスに似てるような気もするな)でぶちのめすという点では同じ。それはとても力強い攻撃に思えた。下手に食らうと、頭をブチ砕かれるかもな。
なんで『思えた』とか『かもな』なんて覚束ない言い方をしているかっていうと――
「ははっ! こいつは洒落たマラカスだな。だが、音が鳴ってないぞ」
――私はその攻撃を食らわなかったからだ。サーベルでメイスを受け止めたのさ。
サーベルの刃とサボテンの棘をがっきと噛み合わせた状態で四半秒ほど睨み合った後、私とペドロは同時に飛び退った。
ペドロとしてはそこから仕切り直したかったのかもしれないが、そうは問屋が卸さない。『問屋』であるところのジェーンが走り出したかと思うと、ほんの一瞬でペドロの前に到達した。
「僕らが本当に石ころかどうか……食らって確かめてみるんだね!」
白い拳銃を相手に密着させて、ゼロ距離から発射!
「……っ!?」
呻きを漏らしてのけぞったペドロだったが、上半身をぶるんと振り回すようにして体勢を立て直し、ジェーンに反撃を見舞った。例によって例のごとく、メイスを用いたパラドクスで。
だが、メイスがジェーンに届くことはなかった。赤い光を帯びたカトラスで受け止められたんだ。
「いい楽器……いや、武器を持ってるじゃないか。それもダンジョンで見つけたお宝かい?」
カトラスを構えた姿勢で問いかけるジェーン。
ペドロはそれに答える代わりに――
「んぐぁっ!?」
――悲鳴をあげた。
背後から泉の蹴りを受けたからだ。
ペドロは振り返りざまにメイスを払ったが、それはまたもや空を切った。泉は瞬時に後退している。
「キミ、もう少し冷静になったほうがいいんじゃないか」
ステップを踏みながら、泉はペドロに忠告した。
「勢いと力に任せて暴れまくってるだけじゃねえ……どんなに威力が強かろうと、まともに当たらなきゃ、意味がないよ?」
ペドロはその忠告に従わなかった。
というか、従えなかった。
従う暇など与えることなく、ジェーンが再びゼロ距離射撃を見舞ったから。
そして、私も――
「ブッ放せぇーっ!」
――亡霊たちに命じて、大砲を発射させた。
●終幕
臆病者なりに奮闘したペドロであったが、泉の忠告を活かすことはできず、その手に握られたサボテン型メイスは虚しく空を切り続けた。
そして、戦闘開始から数分後。
亡霊たちによる幾度目かの斉射を浴びて、ペドロ・デ・アルバラードの上半身は千切れ飛んだ挙げ句に粉微塵となった。
だが、下半身のほうは両足を地につけ、堂々と立っている。死してなお倒れず。実は尻尾が支柱の役目を果たしたおかげで転倒を免れただけだが。
「これにて終了」
倒れるに倒れられない死骸(の半分)を見ながら、泉が言った。
「とはいえ、ディヴィジョン境界を越えてきたアビスローバーたちとの戦いはまだまだ続くだろうけど」
「そうだね」
と、ジェーンが頷いた。
「いずれ、邪神獣の浮島や指揮官たるモビィ・ディックといった大物の相手をすることになるだろう。確実に仕留めたいところだね」
「大物か……手強い奴らほど、潰し甲斐があるよな」
ニヤリと笑って呟いたのはクローディアだ。
サーベルを一振りして、彼女は意気込みを叫んだ。
「網にかかったからには、浮島も鯨女も逃がすものかよ!」
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【コウモリ変身】LV1が発生!
【動物の友】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
【命中アップ】LV2が発生!