その島は竜宮なりや?(作者 花々実コノネ)
#黄金海賊船エルドラード
#邪神獣の浮島襲来、イースター島争奪戦
#邪神獣の浮島
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邪神獣の浮島にて。
「ディアボロスも邪神獣の浮島を追撃していたようだが、一歩及ばなかったな」
モビィ・ディックは喉を鳴らすように笑うと、高らかに宣言した。
「マーレ・パシフィカム海賊団は、これより、邪神獣の浮島の目的地である冥海機ヤ・ウマトのイースター島に突入する」
海賊船『海の巨人号』の出陣に、配下からどよめきが沸き起こる。
「イースター島には冥海機の防衛部隊が展開しているだろうが、最精鋭たるマーレ・パシフィカム海賊団の敵では無い」
モビィ・ディックの言葉は自信に満ちている。
「既に勝利は約束されている、あとは、勝利の果実を摘み取るだけだ!」
配下たちも声を挙げ、拳をつきあげ、それに応えた。
成功の決まっている作戦に、意気が上がらぬはずがない。
ただ、モビィ・ディックはまだ知らない。攻略旅団の作戦によって、ディアボロスがその前に立ち塞がることを。
●
冥海機ヤ・ウマトの攻略旅団の提案によって、ミッドウェー海戦の為に手薄になったイースター島の制圧作戦を行うことになった。
予測通り、イースター島は放棄され、冥界機戦力は撤退していたため、制圧は問題なく行えるのだが、ここで予測外の状況が発生した。
「黄金海賊船エルドラードで追跡していた『邪神獣の浮島』が、イースター島沖合に出現しようとしているのがわかったわ。どうやら、イースター島にはアビスローバーが求める何かがあるみたいね」
それが何かはまだ分からないが、アビスローバーがイースター島を制圧すれば、何が起こるか判らない。敵が欲しがるものならば、手に入れさせるわけにはいかないと、グレーテル・ベッカーは停車中のパラドクストレインを示した。
「このパラドクストレインがイースター島へ運んでくれるわ。急いで島に向かって、『邪神獣の浮島』と共に現れるアビスローバーの大軍勢から、島を守ってもらえるかしら」
今回『邪神獣の浮島』から出撃して来るのは、ジェネラル級アビスローバー『モビィ・ディック』の最精鋭部隊、マーレ・パシフィカム海賊団だ。
マーレ・パシフィカム海賊団は、上陸用の小型船を駆使し、イースター島各所のモアイ像付近の海岸から上陸、モアイ像周辺の確保を狙うようだ。
「上陸ルートは予測できるから、まずは、敵の上陸に備えて防衛拠点を設営して迎撃準備をしておくと良いと思うわ」
マーレ・パシフィカム海賊団は精鋭だが、勝利を確信して意気揚々とやってくるところをうまく翻弄できれば、戦いは楽になるだろう。
「敵は精鋭だけあって、イースター島を狙う目的も良く理解していると思うわ。うまく聞き出せば、情報を得られるかもしれないわね」
あとは、上陸して来る敵を迎撃して撃破してイースター島を守り切れば作戦成功だ。
「イースター島の迎撃戦に成功すれば、エルドラード側の太平洋からディアボロスの海賊船団を冥海機ヤ・ウマトに突入させて、邪神獣の浮島に奇襲をかける、なんてこともできそうね」
邪神獣の浮島は、太平洋における黄金海賊船エルドラードの最重要拠点。これを撃破する事ができれば、アビスローバーの戦略を大きく揺るがすことになるだろう。
「これは敵の狙いを挫いて、こちらにチャンスをもたらす作戦となるわ。どうかよろしくね」
そう言ってグレーテルは、ディアボロスを送り出した。
●
イースター島の沖合に、たちこめる深い霧。
広範囲に出現したディヴィジョン境界の霧から、手漕ぎの小型海賊船が現れた。
やがて見えて来たイースター島に、アヴァタール級『浦島太郎』は目を凝らす。
「あれが竜宮かねえ」
浦島太郎の呟きに、トループス級『タートルーパー』の船を漕ぐ速度がぐんと増す。
一刻もはやく島へ乗り込んで、冥界機を蹴散らし、約束された勝利をつかみ取るのだ。
船はすべるように浜へと近づいていった。
リプレイ
クローディア・ベネット
モアイ像ってのは話には聞いてたが、実物を見ると迫力が段違いだな
バカでかい岩を削り、海を臨む場所まで運び込む……この島の持ち合わせでどうやったって言うんだ?
ストーンヘンジにも引けを取らないお宝だな、こいつは!
あぁ、幾ら価値があるとはいえモアイの略奪はしないよ
代わりに、これからアビスローバーの目を惹き付けて貰おう
逆説連鎖戦の優位って意味だと、目立つ壁や建物は復讐者の物量じゃ活かしづらいかもな
敵を気持ちよくモアイ像近くまで来させた所で、奇襲を仕掛けるための拠点が良いと踏んだよ
そういうわけで「身を隠し、機を見て奇襲する」のに有利な隠れ場所を作ろう
新宿島からプラスチックの人工低木を持ち込んで、モアイの後方に並べる
近くで観察すれば違和感に気付くだろうが、相手はまずモアイの威容に目が行くはずだ
その隙を叩くまで潜んでいられる茂みになればいいのさ
更に【トラップ生成】で踏むと煙を吹く罠や、足を嵌める穴をモアイ周囲に生成
逆説連鎖戦の小細工としちゃ無意味でも、開戦前なら瞬間的な混乱は期待できるかもしれないよな?
荒田・誠司
アドリブなど歓迎
【心情】
そういえば、モアイ像は全部が島の中央を見るように向いているんだったか
目があるモアイ像があるって聞いた時は驚いたな。あと違和感があるのはない方が見慣れているんだろうな
ひとまず敵には嫌がらせをしておくに限る
【行動】
隠れ場所を作ってるみたいだから
俺はその前方の当たりに木々を切り出して逆茂木でも作ってみようか
ここまで来るのに泳いで来るとしても船で来るとしても多少の邪魔にはなるだろう
船まで全てパラドクスだったらあんまり意味がなくなるが
出鼻を挫くことはできるよな
あとは目の大きい網を陸地に近い場所に這わせるように置いておき砂もかけて見えづらくしておこう
これも歩いてくるときに引っかかるから嫌がらせにはなる
必要なら臨機応変に対処する
イースター島。
その名を聞いて反射的にモアイ像を思い浮かべる者は多いだろう。
パラドクストレインを降りたクローディア・ベネット(黒き旗に矜持を掲げて・g10852)がまず目を奪われたのも、立ち並ぶモアイ像だった。
「話には聞いてたが、実物を見ると迫力が段違いだな」
腰に手を当ててクローディアはモアイ像を見上げた。
「そういえば、海岸沿いのモアイ像は島の内側を見るように向いているんだったか」
荒田・誠司(雑草・g00115)はそんな知識を思い出す。モアイ像は集落のほうを向いているから、この辺りに見えるモアイ像は海に背を向けている。内陸には逆を向いている像もあるはずだが、ここからは見えない。
「守り像ってことか。それにしても、バカでかい岩を削り、海を臨む場所まで運び込む……この島の持ち合わせでどうやったって言うんだ?」
「……モアイ像は自ら歩いて移動した」
誠司の呟きに、クローディアは目を見開いた。
「は?」
「そういう伝承があるらしい」
「はは、確かに、自分で動いてくれそうな面構えだ。ストーンヘンジにも引けを取らないお宝だな、こいつは!」
お宝を前にしたクローディアに笑みがのぼる。とはいえ、幾ら価値があるといってもモアイ像の略奪をしようというのではない。
アビスローバーたちはモアイ像周辺を制圧しようとやってくる。いやでも敵の目をひくこのお宝たちに、役立ってもらおうというのだ。
逆説連鎖戦の優位という点から見ると、目立つ壁や建物は復讐者の物量では活かしづらいかもしれない。だとすれば、とクローディアが考えたのは、『身を隠し、機を見て奇襲する』のに有利な隠れ場所の設置だ。
敵はおそらく気持ちよくモアイ像までやってくることだろう。そこに奇襲をかけるための拠点があれば、精鋭といわれるマーレ・パシフィカム海賊団を崩す助けとなるに違いない。
クローディアは新宿島から持ち込んだプラスチックの人工低木をモアイの陰に並べていった。
無論、観察されれば本物ではないと気づかれてしまう。だが、アビスローバーたちの目は、まずモアイ像の威容へと向くだろう。
長い間隠し通そうというのではない。敵がモアイ像に意識を向けている隙を叩くまで潜んでいられる茂みになれば良いのだから、これだ十分だ。
「なるほど。隠れ場所か」
クローディアの始めた工作を確認すると、誠司は付近の木々を伐り出した。
それを小型船で上陸してくる敵の邪魔になるように海岸に打ち込み、簡単な逆茂木を作ってゆく。
この付近には木は多くなく、高い木も見当たらない。完全に進路を塞ぐような範囲のものは作れないが、逆茂木を壊すにしろ、迂回するにしろ、敵の出鼻をくじき、態勢を崩させる役には立つだろう。
意気揚々とやってきたところを障害物に邪魔され、アビスローバーが苛立てば、周囲への注意も散漫になる。そうすればクローディアの設置した隠れ場所が露見するのを遅らせることも出来るだろう。
「敵には嫌がらせをしておくに限るからな」
他にもなにか嫌がらせをと、誠司は逆茂木を迂回しようとしたら通りそうな場所に、新宿島から持参した目の粗い網を這わせるように広げ、視認し辛いように砂をかけた。
敵の進軍を遅らせたりする効果があるわけではないけれど、歩いてくる際に足に網が引っかかれば、嫌な気分にはなるだろう。
そんな積み重ねが、敵の平常心を奪ってくれるといい。
人工低木を設置し終えたクローディアも、更にモアイ像周辺に罠を張り巡らせる。
踏むと煙がしゅうと吹き出す罠、踏み込めば足が嵌りこむ穴……。
「逆説連鎖戦の小細工としちゃ無意味でも、開戦前なら瞬間的な混乱は期待できるかもしれないよな?」
敵の目はモアイ像へ。
逆茂木によって隊列は乱され。足下の罠にイラつかされ。
偽の茂みの向こうにはディアボロス。
――そんな事前準備をどう生かせるかが、戦いの流れを決めることだろう。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
【泥濘の地】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!

秋月・いろは
(トレインチケット)
狛玉・タマ子
(トレインチケット)
小型海賊船がイースター島へ到着するや否や、タートルーパーは待ちかねたように次々に島へと上陸した。
そのあとから悠々と降りたアヴァタール級の浦島太郎は、前方を遮る逆茂木ににやりと口元を歪める。
「無駄なあがきを」
この地でいくら冥海機の防衛部隊が抵抗したとて、マーレ・パシフィカム海賊団の勝利を揺るがせるはずがない。
「景気づけだ。存分に暴れな」
浦島太郎の命令に、タートルーパーは勢いよく飛び出していった。
進路を塞ぐ逆茂木を引き倒すその横を、別のタートルーパーが通り……足に絡みついた網をちぎり捨てる。
そこを過ぎ、モアイ像のたち並ぶ風景に気を移したタートルーパーの足下から、不意に煙が噴き出した。
はっと足下に目を落とす、その頭上から。
『うにゃーーっ!!』
突然屋台が降ってきた。
……屋台??
それだけではない。降ってきた屋台では、狛玉・タマ子(世田谷の怪・g04655)が八面六臂の大活躍。猛然と野菜を刻み、かと思えば向こうでは生地を流し込み、鉄板にコテを鳴らし。
「タマの料理も知らずして、先を見切ったような面をしているなど笑止千万にゃ。己の視野の狭さをとくと思い知るのじゃ」
瞬時に開店【猫猫飯店(ニャンニャンハンテン)】。
数多の料理を作りあげてゆくタマ子の情熱に、タートルーパーは押されてじりりと後ずさり、甲羅に頭と手足を引っ込めた。だが押されてばかりはなく、甲羅に潜ったその恰好で、タマ子へと反撃の体当たり。
「ぬお、これは面妖な」
甲羅にはじかれたタマ子はごろりと地面を転がった。
タマ子をはねたタートルーパーが、まだ甲羅から手足を出し切らぬうちに。
「飯にばっか気を取られてると、そっちがさばかれちまうぞ」
秋月・いろは(天津乙女・g05594)がはっと気合いをこめて、拳を突き出した。中学生に見られてしまうこともある身長と顔立ちをしているいろはの腕は、タートルーパーの体には届いていない……けれど。
「ちっちぇーからってなめんじゃねえぞ?」
子供の頃からじっちゃんに習ってきた武術で繰り出す【破軍衝】。拳の一撃から発生した衝撃波が、タートルーパーの甲羅をびしりと割る。
「ぐごぉ」
タートルーパーはいろはを圧する様に立ち上がると、前脚に生えた鋭い爪を力強く振るった。
「でかい図体してりゃ良いってもんじゃねえんだよ」
大きさの利で押してくるその攻撃が致命傷とならぬよう、いろははひらりとチャイナドレスを翻して身を避けた。
善戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【エアライド】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV2が発生!
亜威仙・迦昏
(トレインチケット)
「どういうことだ」
不意打ちを受けたタートルーパーたちが倒されてゆく。
だがアヴァタール級『浦島太郎』を驚かせたのは、不意打ちされたこと自体ではない。
「この島にいるのは冥界機なんじゃねえのか」
冥界機に引導を渡すのが役目だったはずなのに、目の前にいるのは最後のあがきをする冥界機ではなく、意気揚々と飛び出てきたディアボロス。
「当てが外れて残念でしたね」
浦島太郎にかけられた声は揶揄するでもなく、ただ事実を告げるように。
「なんだと」
浦島太郎はその声のしたほうへと左眼をすがめた。
モアイ像に手をついて、浦島太郎を鋭い眼光で見返していたのは亜威仙・迦昏(王の獣・g09662)。癖の強い藍の髪にひと房交ざった白が印象的……と見る間に、迦昏の姿がぶれた。
そのぶれは幾重もの残像となり、迦昏の本体を隠す。
パラドクス【ミラージュスラスト】。
幻惑するように重なる残像に浦島太郎が気を取られているうちに、迦昏はひっそりと近づいて。手の中に隠し持っていた暗殺ナイフを浦島太郎へと刺しこみ。
「なんでもてめえの思い通りになるはずないだろう」
丁寧さが剝がれ落ちた口調で浦島太郎へと囁いた。
「よくも……」
浦島太郎は迦昏に掴みかかろうとするかのように腕を振り上げた……が。
「僚機を落としたかったら先に私を撃墜しろ」
浦島太郎の頭上で様子を窺っていたガクハ・シアレット(双発複葉飛行艇のガジェッティア・g03242)が、ここぞとばかりに急速降下。
浦島太郎の脳天への一撃をぶち込む。そのままガクハは身をひねるようにして体勢を変え、小回りのきく機体ならではの動きで、再び宙へと舞い上がった。
「この島は冥界機にもアビスローバーにも渡さないよ」
宣言するガクハを、衝撃に揺れる頭に手をやりつつ浦島太郎は睨みつけた。
「この程度、後先も無く2人まとめて落としてやろう」
流れるような動きで釣り竿を構えると、熟練の釣り師の技での反撃を。
風を切る釣り竿、その先の釣り針がぎらりと輝く。
浦島太郎は刃と化した釣り糸で、迦昏を、ガクハを、絡め取って切り裂いた。
「2人まとめて? 何度も同じことを言わせるな」
思い通りになるはずない。
そのことを浦島太郎に知らしめるため、迦昏は再び残像を作り出した。
善戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【飛翔】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【アクティベイト】LV1が発生!
ラライ・リガル
設営の人たちが頑張ってくれたおかげで、身を隠す場所はそれなりに
確保出来るみたい。足止めになる罠もありがたいわ。
【光学迷彩】も意識して、タートルーパーから見えないような
位置取りで物陰に潜むの。
他のディアボロス達との攻防の音を聞きながら。
ゴーグルを装着、視界は良好。静かに呼吸、吸って吐いて。落ち着いて。
ここには巻き込まれて困る住民は居ない。ちょっと安心。
狙うのは不意打ち、初撃を必ず当てること。甲羅以外の少しでも柔らかそうな
部分だとなお良いわ。
声を出さず吐息だけで囁く、『a grin without a cat』
【猫のない笑い】ブラックハットハッターから水銀色の弾丸を発射。
ここからは隠れていられないからスピード勝負ね。すぐにタートルーパーの
背後に回り込むように移動。
体当たりの直撃だけは避けたいから、軌道を先読みして動いてみるわ…ただの
直感になっちゃうだろうけど。
そこを気を付けつつ、後は全力で撃って避けて撃つ。
やつらの目的も気になるけど、まだクロノヴェーダと会話する度胸も心の余裕も
ないわ。残念。
こっそりと、ないしょのかくれんぼ。
ラライ・リガル(トレジャーハンター・g11529)は人工低木の陰で息をひそめる。
設営の人たちが頑張ってくれたおかげで、身を隠す場所はそれなりに確保出来ている。敵の足を止めてくれる罠もありがたく。
偽物の茂みに光学迷彩で身を隠して、待ち受ける敵は……もしやにせウミガメ?
装着したゴーグルの視界は良好。
澄ませた耳に、他のディアボロスとタートルーパーの攻防の音が届く。
呼吸は静かに、吸って吐いて。落ち着いて。
ここにいるのはクロノヴェーダとディアボロスだけ。巻き込まれて困る住民が居ないのは、ちょっと安心。敵を倒すことだけを考えられる。
近づいてくる亀もどきは、ディアボロスの出現に戸惑っているから、普段の力は発揮できない。なんて好機。
もう良い? ううん、もう少しだけ。
だって不意打ちするなら、相手がびっくりするくらい突然にしたいから。
……そう、こんなタイミングで。
『a grin without a cat』
声を出さずに吐息だけで囁くと、ラライはブラックハットハッターの引き金にかけた指に力を入れた。
水銀色の銃身から撃ちだされるのは、同色の弾丸。
敵はどこもかもごつごつしているけれど、甲羅は避けて少しでも柔らかそうな部分めがけて。
「ぐぶぉぉ」
撃たれた腹を丸めて呻くと、タートルーパーは頭と手足を甲羅に引っ込めた。そして地面を滑るようにラライへと体当たりしてきた。
あんな甲羅の直撃を受けてはたまらない。ラライはタートルーパーの背後へと回り込む。
やっぱりこっち、と直感で方向を変えたぎりぎりのところをタートルーパーの甲羅がかすめ、その勢いで転びそうになった身体をラライはモアイ像に手をついて支え。
だが息を整える間も惜しく、再びラライは引き金を引いた。
全力で撃って、避けて撃って。
アビスローバーの目的も気になりはするけれど……。
(「まだ会話する度胸も心の余裕もないわ。残念」)
今は目の前にいるタートルーパーを倒すことに専念しなくては。
集中したラライの撃ちだした弾丸が、また1体、タートルーパーの息の根を止めた。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】がLV2になった!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
刈谷・テテ
浦島太郎。昔語りで太郎とつくもの、大別すれば剛の者と愚者とに
別れる。己は鬼人の婆。縁も所縁もない鬼が太郎と戦うのも一興。
勝利すれば正義は世知辛いが事実。
助けた筈の亀に似た彼奴はどちらになるのか。
策を弄する頭の器用さは持ち合わせが無いが。
当然端っから普通の亀と同じとは思わない。周囲の温度が上がった程度で
弱りもしないだろうが【熱波の支配者】と、もろもろのパラドクス残留効果や
地の利等々あるもの全て可能な限り利用する心算。
静かに近づいていき、鬼の定番武器である金砕棒ではなく大鎌【獄炎斬】を
ありったけの力で振るう。
彼奴の獲物が釣り竿ならば、大鎌で針を弾き、糸を絡め取ろう。
こちらが裂かれる側になっても、共闘するディアボロスの盾ぐらいにはなれる。
己の最後まで立ち動き続ける気力はある。力を得た今だからこそ。
いずれ彼奴の身体に刃が届く隙を見出せるだろうと。
とどめは誰でも構わない、ただ決着までは大鎌を振るい続けよう。
ラライ・リガル
基本はヒットアンドウェイ。レベルが上がった【光学迷彩】を
使わないのは勿体ないわ。また物陰に潜んでゆっくりターゲットに
寄っていく。
物陰の隙間からゴーグルを通して見えるのは、タイプは違うけどやっぱり
ウミガメもどき?
戦いの音、声に、はっと気を引き締める。よそ事ダメ、油断大敵。
奇襲の方法を考える。【エアライド】で真上辺りから砲撃は出来そう?
周囲の地形状態、敵味方の位置をよくよく確認、ジャンプ後砲撃、着地を
想像してみる。
可能そうなら、レッツチャレンジ!
無理はしない主義だし、駄目そうなら潔く諦めて。
どちらにしてもまずは浦島太郎の死角になりそうな場所に移動するわ。
言葉の音を出さす口元だけで象って『The caterpillar smokes a hookah』
ブルートゥホワイトからパラドクス【まぼろしキノコ】が載った青い砲弾を
発射。白い煙が広がる前に、足を止めず素早く動いて離れておきたい。
召喚される大亀の群れは、距離を取って迎撃するつもりで。
…もしかして浦島太郎に白い煙って、悪夢じゃない?
トループス級を倒し終えたラライ・リガル(トレジャーハンター・g11529)は、すぐに人工低木の陰へと身を隠した。
かくれんぼ、再開。
光学迷彩で身を隠し、そおっと足音を忍ばせてターゲットへと寄ってゆく。
ゴーグル越しに見えるのは、さっきのカメほどごつごつしていなくて、海賊風の恰好をしているけれど……。
(「あら、こっちもやっぱりウミガメもどき?」)
二種のニセウミガメを配合しても、本物のスープの味には到底かないっこないのに。
そんなことを思っていると、他のディアボロスが戦う音が耳に入り、ラライは緩みかけていた口元と気をはっと引き締める。
よそ事ダメ、油断大敵。
邪神獣の浮島の撃破のためにも、ニセウミガメにイースター島は渡せない。
奇襲をかける位置を探りながら、ラライは物陰を移動してゆく……。
そんなラライとは反対側から、刈谷・テテ(鬼人のおばあ・g11446)も静かに浦島太郎へと忍び寄っていた。
(「浦島太郎……」)
その名をテテは脳裏に呟く。
昔語りで太郎と名のつくものは、大別すれば剛の者と愚者とに分かれる。
そして己は鬼人の婆。
縁も所縁もない鬼が太郎と戦うのも一興か。
勝利すれば正義。世知辛くはあるがそれも事実。
この島は太郎をもてなす竜宮なりや?
それとも太郎を埋める墓地なりや?
助けた筈の亀に似た彼奴はどちらになるのかと、テテは浦島太郎を睨め付ける。
発生させた熱波の支配者で、周囲の温度は日本の真夏ほどに上がっている。こんな程度で敵は弱りはしないだろうが、不自然な温度に少しでも気を乱してくれれば重畳。些細なことが分け目となるのが勝敗というものなのだから。
ガクハと迦昏を相手取っている浦島太郎へと静かに近づいたテテは、手にした大鎌を振りかぶった。必ずや葬るとの殺意がごうと刃に纏いつき、灼熱の炎と燃え盛る。
炎の軌跡を引きながら、ありったけの力で振るう【獄炎斬】。
その刃は身を返す浦島太郎の背を斜めに焼いて。
「む」
小さく息を吐き、浦島太郎は釣り竿を操った。刃と化した糸と、その先につけられた釣り針。糸、針、そのどちらに対処しようとも、もう片方が必ずや敵を捉える、そんな熟練の反撃をテテへとみまう。
その、反撃をする浦島太郎の頭上を、軽やかに越えるラライのハイサイブーツ。
腕に抱えた艶消しの青は、不思議な大砲『ブルートゥホワイト』。
言葉は音にせず、口元だけで象って。
『The caterpillar smokes a hookah』
撃ちだされるのは丸くて青い魔法の砲弾。
ふうわりと広がり漂う水煙草の白い煙。
こちら側は幻惑で、反対側は致死。さあ、パラドクス【まぼろしキノコ(アオイイモムシガミエタラ)】をどうぞ。
その効き目を見届けないうちに、ラライはぴょんとエアライドで弾んで、目星をつけておいた浦島太郎から離れた地点へと着地した。
白い煙に包まれた浦島太郎の頭がぐらぐら揺れる。
ひれで顔を押さえつつ、浦島太郎は巨大亀の群れを呼び出した。
「そんなにたくさん亀を助けたの?」
絶対水増ししてるわと思いつつ、ラライは亀を避けたり弾き飛ばされたり。
「なんでディアボロスがいるか知らんが、邪魔者を倒してしまえば、どっちにしろ勝ちには変わりねえ」
傷を負いながらも、浦島太郎は己の勝利を疑わず、釣り竿をふるう。
それに片眉をあげただけの無言を返し、テテは大鎌で応戦した。
どちらの攻撃も緩まず続く。
傷の増えてきた身体を、まだいけるかとテテは探る。
己の最後まで立ち動き続ける気力はある。力を得た今だからこそ。
いずれ彼奴の身体に刃が届く隙を見出せるだろう。
その確信とともに、かっと目を見開き、渾身の力で炎を吹き上げる大鎌を浦島太郎へと振り下ろした。
対する浦島太郎にも疲れは見えてきているが、それでも釣り竿をしなやかに操り、釣り針と釣り糸をテテへと放つ。
金属同士がぶつかる音がして、浦島太郎の釣り針がテテの大鎌に弾かれた。だが、その動きにたわんだ釣り糸は、テテが絡め取ろうとする動きに乗じて、逆にテテに巻き付き、細い刃を深く食い込ませた。
釣り糸に巻かれながら、テテの目がぎょろりと浦島太郎を……否、その上で弾けて広がるラライのパラドクスの白煙を見る。
「……もしかして浦島太郎に白い煙って、悪夢じゃない?」
竜宮の玉手箱は手に入れられなかったけれど、白い煙だけはもくもくと御伽話のように。
煙が晴れたときに現れたのは、老いてこそいないが、命を使い切り骸となった浦島太郎だった――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【熱波の支配者】LV1が発生!
【腐食】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【命中アップ】がLV2になった!