リプレイ
日向・葉月
(トレインチケット)
ウクライナの海岸を小走りに、日向・葉月(リターナーの吟遊詩人・g03413)は流れ着いたゴブリン少女自爆隊を探した。
この季節、新宿島では海を見ると涼しげな気分になるけれど、吸血ロマノフ王朝では海もただただ寒々として目に映る。
「早くこの場所も最終人類史に取り戻して、通常の気候に戻してあげないとね」
そのために自分も時先案内を頑張ろうと、葉月は決意を新たにする。
いつか、あの時の夏はこうだったんだよと、おいしいものを食べながら誰かと笑って話せる日を迎えたい。その日のために葉月はずっと頑張っている。
「シトロンもよろしくね」
葉月に呼びかけられて、スフィンクスの『シトロン』は返事をするように、ふさふさの尻尾を揺らした。
「さあ、どこにいるのかなっ」
新宿駅で聞いた時先案内によれば、ゴブリン少女自爆隊は動く気力もなく、海岸に座り込んでいるらしい。動き回られるよりは探す範囲も少なくてすみそうだけれど……。
寒々と続く海岸を、葉月は目を凝らしながら走ってゆくのだった。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【照明】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
クロエ・アルニティコス
……亜人に蹂躙された地を思い出しますね。
亜人が来るのはこれから、ですが。
戦いの後ですから農地や建物の支援も必要ですが……まずは今の窮状をどうにかしましょう。
まずは炊き出しを行います。
あまり料理は得意ではありませんが、この国の具材……肉やビートなどの馴染みのある具材を入れた寒さを和らげる温かい粥を作ります。【口福の伝道者】を用いて量を増やし、周辺の者全員へといきわたるように。
その後は農地や家屋の整備ですね。壊れた物や瓦礫をどかし、まだ使えるものは応急修理を行います。一人分の手にしかなりませんが、私も手伝います。
これも魔女の仕事……ではありませんが。
放って一人休むわけにもいきませんから。
奪われた命は戻りません。ですが建物も畑も復興させることはできます。
助かった者だけでも、前に進みましょう。
そうしなければ、亡くなった者を弔うこともできません。
人は食べるものがなければ生きてはいけない。
ましてやこの吸血ロマノフ王朝では、身体が熱を作り出すことができなくなれば、冷たくなって転がるだけ。
人々の生命を支えるべく、ウクライナの地では小麦が育てられていた……ほんの少し前までは。
無残に焼かれた畑。呆然と佇むばかりの人々。
クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)は、亜人に蹂躙された地を思い出す。いや、亜人が来るのはこれから、ではあるのだが。
農地や建物、直したいところは多々あれど。クロエの目は力無くうなだれている住民へと向けられる。
「……まずは今の窮状をどうにかしましょう」
クロエは住民から調理のためのかまどを借りると、新宿島から持ってきた食材を取り出した。
「あまり料理は得意ではありませんが……」
作るのは温かい粥。そこに肉やビーツなど、この地域の人に馴染みのある具材を入れて、くつくつと煮こむ。
鍋からふわふわと、良い匂いのする白い湯気が流れ出す。
鍋一杯に作ってもそれほどの量は出来ないけれど、
「いただきます」
皿に盛りつけ、クロエが出来上がったばかりの粥で食事を取り終えると、口福の伝道者の効果が、たちまち皿ごと粥を増やした。
「まずはこれを食べて、身体を温めると良いでしょう。余るほどありますから、慌てる必要はありません」
何をしているのかと興味津々で覗いている住民へと、クロエは増やした粥を配っていった。
人々が粥を食べている間に、クロエは今度は農地や家屋の整備にかかる。
農地は燃やされ作物は影もない。
クロエは燃え残りを片付け、使えそうなものがあれば応急修理を行った。
白い手はたちまち黒く汚れてゆくが、それを気にすることも無く。
クロエが作業を続けていると、粥で人心地ついた住民たちも集まってきた。
食事の礼と焼け跡の整備の感謝を述べる住民に、クロエは答える。
「一人分の手にしかなりませんが、私も手伝います」
これも魔女の仕事……ではないけれど、この惨状を放ってひとり休むわけにはいかないだろうと。
食事で身体が温まり、わずかながらにも気力を取り戻したのだろう。住民たちもクロエと共に、農地やその周辺を片付け始めた。その表情が暗いのは、ここで失われた命を思ってのことか。
「奪われた命は戻りません。ですが建物も畑も復興させることはできます。助かった者だけでも、前に進みましょう」
――そうしなければ、亡くなった者を弔うこともできません。
クロエの言葉に、住民たちは涙の滲む目で頷いた。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【凌駕率アップ】LV1が発生!
刈谷・テテ
「働かざるもの食うべからず。住民は気の毒だが、生きてくのは時々どうしようもなく
無常で理不尽なもんだ。全部他人任せは通らないよ。あたしは前の生活に戻る手伝いを
するだけだ。」
農作業や家を整える道具、家財道具、農地に植えられそうな植物の種や苗、日持ちする
食品で排斥されないものを新宿島で調達し持っていく。
廃村を探索し、使えるものは再利用しつつ水場と家を修繕し、持ってきた植物類、食料を
【隔離眼】で安全な空間で移民が来るまで保存する。
片付けの際、思い出の品と見えるものがあれば、使用に耐えなくても軽くきれいにし
その場に残しておく。
農作物を焼くのは食べ物を作り出す手間や苦労を台無しにし、粗末にする行為だと憤りつつ
焼き畑ってのがあるくらいだから、土の状態はそう悲観することもないとささやかな希望を
思う。
畑を耕して、以前の状態を知らないまでも近づけるよう無駄口叩かず身体を動かす。
刈谷・テテ(鬼人のおばあ・g11446)の目の前には、血の乙女ルサルカの命で火がかけられ、焼けた農地が広がっている。わずかな焼け残りさえも無いその有様が、炎の激しさを伝えてくるようだ。
畑の片側に延焼が広がっているのは、当日の風向きによるものなのだろうか。
生活を支える畑をすべて焼かれ、住民は惨殺され。
もう暮らしてゆくことはできない。そう判断した村人たちは街を出て……残るのは誰もいない廃村だけ。
「気の毒なこった」
そう言うテテの目にはしかし、同情の色は無い。
禍に巻き込まれたのは不遇ではあるが、生きてゆくということは時々どうしようもなく、無常で理不尽なのだから。
テテはまず、廃村を探索し、再利用できるもの、できないものを見分けていった。
被害が出ているのは、畑とそこから延焼した村の一角。それ以外の家や施設は傷んでいるところを簡単に補修すれば、問題なさそうだ。
延焼した家の建て直しは今すぐには難しいとみて、いったんそのままに。
空っぽになっている食糧倉庫の中には、持参した日持ちのする食品を入れておく。
そしてテテは、人々が殺到したときに崩れたと思われる水場、そして住める状態の家を修繕していった。
村から去る際に持ちきれなかったのだろう。家には多くの家財が残されており、そのまま使用することが出来そうだ。
「おやおや、ここは直しておかないとまずいね」
外から雨がしみ込んでいる箇所を修繕しようとして、テテは隅に置かれた人形に気が付いた。あり合わせの布で作られた人形は、あちこちに修理された跡がありボロボロだ。その埃を軽く払うと、テテは安全な場所に人形を座らせておいた。
それが終わると、いよいよ畑へ。
日々村人が生長を見守っていたはずの作物は灰と化し、風が吹いても揺れる緑は無い。
「ばちあたりな……」
農作物を焼くとは、食べ物を作り出す手間や苦労を台無しにし、粗末にする行為だとテテは憤りながら、鍬を振り上げた。
ざくっと土に入れた鍬をぐいっと引いて、また振り上げて。
そんな動作を繰り返しても、腰が痛まないのが有難い。
「焼き畑ってのがあるくらいだからね」
大丈夫。この土は死んでいない。それはささやかな希望となる。
焼かれた灰を土へとすきこんで。
村を襲った悲劇を未来の収穫へとすきこんで。
黙々と淡々と畑を耕すと、テテは新宿島で調達してきた吸血ロマノフ王朝で排斥されない種や苗を保管した。だがこれを植えるのは自分ではない。
「働かざるもの食うべからず。全部他人任せは通らないよ。あたしは前の生活に戻る手伝いをするだけだ」
後のことは、やがてやってくる移民へと託して。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【隔離眼】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
クロエ・アルニティコス
あの集落のために、今できることはしました。
少なくとも今すぐに生活が破綻することはないはずです。
後は……より状況を悪くするものを消しましょう。
流れ着いた亜人どもは海岸に座り込んでいる、ということでしたね。
目立つこともしていないなら地道に探す他ありませんか。
ヴァンパイアノーブルどもも同じように地道に探しているのでしょうか……?
せめて少しでも見つけやすく……【水面走行】を使用して、海を走り捜索を行いましょう。
海からなら視界を遮るものはありませんし、亜人どもが流れ着いたままにじっとしているなら波打ち際からそう離れてもいないでしょう。少しは見つけやすくなる……はずです。
亜人なら亜人らしく騒がしくしていれば良いものを……女の亜人はまた勝手が違いますね。
亜人を見つけたらそちらへ急行、こちらを見つけ、戦闘態勢に移る前に接近し、戦闘を仕掛けます。
復興作業に取り組む人々に見送られながら、クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)は集落を出た。
手伝えることはまだまだあり、あれもこれももっと……と思うけれど。
クロエは自分に言い聞かせるように、口には出さずに呟く。
(「あの集落のために、今できることはしました」)
空腹が満たされ身体が温まった人々は、復興をする気力を取り戻した。当面の食料も渡せた。
少なくとも今すぐに生活が破綻することはないはずだ。
となればクロエが今すべきなのは、集落に留まり復興を手伝うことでなく……より状況を悪くするものを消すことだ。
幸い、今回流れ着いた亜人は繁殖能力を持たない。だがだからといって、亜人がこの地に解き放たれるのを、クロエは決して許すことなどできないのだから。
さて、どう探そうか。
時先案内によれば、流れ着いた亜人は海岸に座り込んでいるということだった。
目立つこともしていないなら地道に探す他なさそうだ。
(「ヴァンパイアノーブルどもも同じように地道に探しているのでしょうか
……?」)
ゴブリン少女自爆隊を迎えにくるというアヴァタール級のことが、ふとクロエの脳裏をよぎった。
足を急がせ海岸へと到着したクロエは、そのまま海へと足を進めた。
海に足を沈める……ことなく、水面走行の効果を使い、海面を渡る風のようにクロエは駆ける。
海上にはクロエの足を止めさせるものはなく、海から見渡す視界は良好だ。
流れ着いたままにじっとしているならば、波打ち際からそう離れてはいないはず。ならばこうして海側から広く視界を取れば、少しでも早く発見がかなうはず。
「亜人なら亜人らしく騒がしくしていれば良いものを……」
ぎゃあぎゃあ騒ぎ立てる亜人は煩くて不快だが、それはそれで見つけやすい。だが、女の亜人はまた勝手が違う。
一体どこに……。
海岸に向けたクロエの目に、それは最初影のように映った。
近づくにつれそれが、うずくまった何かが幾つもあるのだと分かってくる。
見つけた。
クロエは表情を引き締め、ゴブリン少女自爆隊のもとへと急行するのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【水面走行】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV2になった!
刈谷・テテ
「よっと…。」
榴弾砲を抱えようとし口をついて出る掛け声めいたもの。
大きなものや重いものを持ち上げたり、止まっていてから動き出す時に
気合を入れる為ほぼ習慣になっていた。
もう必要ないのだが簡単には止められないようだ。
いかつい表情、ぴっと右眉がはね上がって戻る。気を取り直し、大砲を右肩に担ぎ上げた。
ゴブリン少女自爆隊が目視できる場までは慎重にゆっくりと移動。
焼野原に戻されてたまるか、と耕してきた畑や廃村の家々を思い出しつつ少女達を
見据えて。
【イマジナリキャノン】の射程範囲内まで接近すれば、無言で即発砲。
少女達を自爆する前に息の根を止めるのが目標ではあるが、相手の数を考えれば
不可能だろう。
直撃だけは避けるように動きまわり連射。
自分はケガで済むなら上等。慈悲はない、ただの暴力。
何時かおのれが同じように殺されても仕方ない程度の覚悟はある。
どちらかが倒れるまで続くのだ。
クロエ・アルニティコス
手間を取らせてくれましたね。
まだヴァンパイアノーブルは来ていません。一息に仕留めましょう。
【水面走行】で海上を駆けながら【セイレーン・マルス】を使用。セイレーンを象った植物の怪物たちを作り出します。
こちらに気付いてはいないようですし、仮に気付いていたとしても組織的、精力的な反撃はできないでしょう。
やけになられるよりも先に殲滅します。
セイレーンの歌声を響かせ、敵の意識をそちらに向け隙を作り、かぎ爪で引き裂かせます。
【先行率アップ】を重ねて先手を取り、敵が何らかの行動を起こす前に始末しましょう。
散発的に反撃を行ってくる敵がいても、セイレーンを盾にするか、こちらまで届く物は「守護の赤薔薇」の防壁で防御、大きなダメージにならないようにします。
亜人のトループス級の寿命は短い。
ファロスの光もなく、そもそも女の亜人であるお前たちが増えることもない。
果たしてお前たちにどれほどのことができるかは知りませんが。
私はお前たちを皆殺しにするために戦っている。今も以前もそれは変わりません。
海上から見える範囲には、まだヴァンパイアノーブルの姿はない。
手間を取らされたが、ゴブリン少女自爆隊の早期発見はかなったようだ。あとはヴァンパイアノーブルが到着する前に、一息に仕留めたい。
幸い、ぼんやりと座り込んでいるゴブリンたちは、まだこちらには気づいていないようだ。狩りに気付いたとしても、今の彼女たちでは組織的、精力的な反撃をすることは、恐らくできないだろう。
水面走行で海の上を駆けながら、クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)は手の中にリンゴの種を握りこんだ。
小さな種へと注ぐのは、クロエの魔力と鬱々とした想い。
蹂躙戦記イスカンダルとともに、亜人もすべて滅びていれば良いものを。かの地を蹂躙するだけでは足りず、吸血ロマノフ王朝にまで流れてくるとは。
注がれた魔力が想いを育て、芽吹いた種はギリシャ神話の怪物『セイレーン』を象った、植物の怪物へと変じた。その口が開き……不可思議な音が発せられる。
「歌……?」
歌のようにも聞こえるその音がどこから聞こえてくるのだろうと、ゴブリン少女自爆隊は顔をあげ、きょろきょろと周囲を見回した。
ゴブリン少女たちの意識が音のみに注がれた、その間隙を突いて、植物の怪物の鉤爪が彼女たちへと襲いかかる。
「敵が出たの?」
ゴブリン少女は慌てふためきながら、腕の手榴弾型のクロノ・オブジェクトを起爆させた。
飛ばされた拳はクロエの守護の赤薔薇に受け止められ、たいしたダメージを与えることはなく。対して、セイレーンの爪はゴブリン少女自爆隊をずたずたに引き裂いた。
「もうやだ……」
仲間があっけなくやられるのを見て、ゴブリン少女自爆隊のただでさえ低かった士気がまた下がった。
クロエの襲撃にゴブリン少女自爆隊が動揺するその裏で。
刈谷・テテ(鬼人のおばあ・g11446)はゴブリン少女自爆隊を挟んでクロエとは反対の陸側を、物陰に身を隠しながら、慎重にゆっくりと移動していた。
廃村の建物などの修繕には手がかかるし、広い畑を耕すのは骨が折れる。やっとそれなりに整えてきたというのに……とテテの目はゴブリン少女自爆隊を見据える。
あんな奴らをのさばらせておいては、いつまた焼け野原にされてしまうか分からない。二度手間をかけさせられてはたまらない。
「よっと……」
榴弾砲を抱えようとし口をついて出る掛け声めいたもの。
それは、大きなものや重いものを持ち上げたり、止まっていてから動き出す時に、習い性のように入れる気合い。
無論、ディアボロスとなったテテが武器を取り回すのに苦労することはないのだが、身に沁み込んだ習慣は簡単には止められないようだ。
テテのいかつい表情、その中で右眉だけがぴっとはね上がって戻る。
気を取り直すと、テテは大砲を右肩に担ぎ上げた。
狙いをつけると、今度は掛け声もためもなく、即発砲。
パラドクス【イマジナリキャノン】。正しき歴史とともに消されてしまった砲兵たちの幻影が、テテとともに一斉に砲撃をゴブリン少女自爆隊へと浴びせかける。
「こっちにも敵が……」
砲撃をくらったゴブリン少女たちは呆然とテテと砲兵たちに目をやると、諦念の暗い瞳で反撃してきた。
少女らが首と両腕の手榴弾型クロノ・オブジェクトを動作させるのを見て取ったテテは、直撃を避けて位置を変える。
テテへと迫ったゴブリン少女自爆隊は次々と自爆していき、周囲を巻き込み大爆発を引き起こした。
自爆して散るゴブリン少女たちは無言。
爆発で傷を受けたテテも無言。
慈悲の無い、ただの暴力の前に、自分がケガで済むなら上等だ。いつかケガで済まず、おのれが同じように殺されたとしても、テテはふんとひとつ鼻を鳴らすに留まるだろう。
これは戦い。どちらかが倒れるまで続くのだ。
先んじて動いたクロエとテテにおされるように、ゴブリン少女自爆隊は数を減らしていった。
あちらでこちらで。ゴブリン少女たちは次々と自爆してゆく。
「亜人のトループス級の寿命は短い。ファロスの光もなく、そもそも女の亜人であるお前たちが増えることもない」
悲壮な顔をして向かってくるゴブリン少女自爆隊へと、クロエは淡々と告げる。
果たしてゴブリン少女たちにどれほどのことができるかは知らない。わざわざヴァンパイアノーブルに迎えに来させるのだから、何かに使うつもりではあるのだろうが。
「私はお前たちを皆殺しにするために戦っている。今も以前もそれは変わりません」
亜人がいればそれを倒すだけ。
迷いのない2人によって、流れ着いたゴブリン少女自爆隊は吸血ロマノフ王朝の海岸以外の場所を目にすることなく、倒れたのだった。
●
「あれ?」
海岸にやってきた薔薇の王子様は、ごろごろと転がるゴブリン少女自爆隊の残骸に気付いて足を止めた。
回収を頼まれて来たけれど、ゴブリン少女自爆隊は引き裂かれ、あるいは自爆して、連れ帰れる者はいない。
「どうしよう……」
途方に暮れた薔薇の王子様はしゃがみこむと、砂からゴブリン少女自爆隊だったものの破片を拾った。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【隔離眼】がLV2になった!
【友達催眠】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】がLV3になった!
アルガ・ナスガ
(トレインチケット)
「これを持って帰ってもダメだよね」
拾い上げた破片を手にため息をつくアヴァタール級『薔薇の王子様』を、アルガ・ナスガ(はみんなのママになりたい・g07567)は目を細めて眺めた。
子どものような容貌も、目的が果たせずにしゅんとしている様子も、アルガの目にはとても好ましくうつる。
「なんて可愛らしいんでしょう」
よしよしと頭を撫でて、甘やかしてあげたい。
母性を持て余しているアルガと、愛でられることに慣れている薔薇の王子様は、出会うべくして出会ったのかもしれない。
アルガはするりと音もなく、薔薇の王子様へと忍び寄ると、優しく腕を回して抱きしめた。
『うふふ、いい子いい子。このままママに委ねなさい♪』
相手を駄目にするくらい甘やかしたいという、アルガの愛情から生まれるパラドクス【母なる抱擁】は、薔薇の王子様の防御を突き抜け、その心をとろかしてゆく。
「せっかく迎えに来たゴブリンがいなくて、悲しかったでしょう。よしよし。ママがいれば何も心配しなくてだいじょうぶ」
「ママ……」
甘い毒のような愛情に身をゆだねかけ、薔薇の王子様ははっと己を取り戻す。
「わかった。ディアボロスがじゃまをしたんだね」
無数の蝙蝠にアルガを攻撃させたその隙に、薔薇の王子様は抱擁を振りほどいた。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【完全視界】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
「あなたが『薔薇の王子様』ですか」
リボンやフリルのついた服を着て、手には一輪の薔薇を持ったヴァンパイアノーブルに、カトリ・ルミルスキ(雪原の白薔薇嬢・g10256)は問いかけた。
「うん、そう呼ばれてるよ。でもぼく、王子様ではないんだけどね。薔薇が咲いてる館に住んでいるからなのかな」
そう言って薔薇の王子様は小首をかしげる。
「そうですか……。薔薇の花は私も好きです」
けれど……とカトリは蒼星のレイピアを持つ手に力をこめた。
蒼星花の意匠は、世界の未来に希望と幸せを齎すと立てた誓い。その誓いを果たすためには、ヴァンパイアノーブルの存在を許すことは出来ない。
「ぼく、早くご用を済ませて薔薇の館に帰りたいの。だからお姉さんたち、早く倒されてくれると嬉しいな」
薔薇の王子様が言うと同時に、周囲に無数の蝙蝠が召喚され、カトリめがけて襲いかかってくる。
「そんなに上手くいくと思います?」
蝙蝠の攻撃を受けながらも、カトリは白い衣装を翻して、薔薇の王子様のもとへと走る。
有利不利、戦場は不確定要素ばかり。それすらも味方につけて、
「勝負は時の運、とも申しますね」
カトリのレイピアは、身を庇おうと上げた薔薇の王子様の腕を貫いた。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【建物復元】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
刈谷・テテ
己の両腕から先、似たものをあげるならば白と茶のまだら蛇鱗。
年経て染み状に濃くなったり逆に白んだ部分や小傷がある。
左手を見、力を入れ拳を作り開くを繰り返す。
平凡に生きてきた。満ち溢れる夢も消えたくなる絶望も確かに
あった筈だが、酷く遠くに感じる。
目前の事柄に対処できるだけの力が身の内にある。
拳をふるう、虐殺された人々の為でも移民の為でもなく。
気に入らないものを振り払う、自己満足。
薔薇の王子様が迎える姫は何処にもいない。
格好つけても、見るのはこの婆くらいだ。
残念だったね、と口端だけをゆがめてわらう。
王子様の姿が視界に入った瞬間、膂力を宿す肉体を全力で動かし、懐に
入るよう接近。
【鬼神変】で殴る。ただ殴る。
おのれの損傷を気にする余裕はないだろうが、他にディアボロスが
いるなら、盾になるか邪魔にならないようにする心算。
【反撃アップ】【先行率アップ】の効果がうまく発現すれば手数を
増やせるだろう。
刈谷・テテ(鬼人のおばあ・g11446)はアオザイの左袖から覗く己の腕に視線を落とした。
鬼人となった己の両腕から先。似たものをあげるとするならば、白と茶まだらの蛇鱗か。
それは歳相応の年月を経たように、シミ状に濃くなっていたり、あるいは逆に白んだ部分があったり。どこでついたのか小傷も見受けられる。
ぐいと力をこめて拳を作り、開き。筋肉の動きを見ながら、それを繰り返す。
ディアボロスとなるまで、自分は平凡に生きてきた、と思う。
結構な長さの年月の中には、満ち溢れる夢も消えたくなる絶望も確かにあったはず。だが今となっては、それが酷く遠くに感じる。
だってそうだろう。
今のテテは、電車で吸血ロマノフ王朝とやらに運ばれて。そこではヴァンパイアノーブルとやらが、人々を虐殺したり畑を焼いたりしているときたもんだ。
それに対処できるだけの力が自分の身の内にあるだなんて、何の冗談なのか……。
薔薇の王子様が視界に入った瞬間、テテは膂力を宿す肉体を全力で動かし、突撃の勢いで懐に入るように接近した。
飛び出してきたテテに、薔薇の王子様がびっくりして目を見開いた、その顔面を。
テテは拳で殴りつけた。
ただの拳ではない。鬼の血により異形となった己の腕を巨大化させ、凄まじい力をこめての強打だ。
「ひどい……」
顔を押さえる薔薇の王子様に、テテは残念だったね、と口端だけをゆがめてわらう。
「薔薇の王子様が迎える姫は何処にもいない。格好つけても、見るのはこの婆くらいだ」
「ここにお姫様がいないなら、ぼくはおうちに帰るよ」
きれいな薔薇の咲く館へ。
そう言って薔薇の王子様は庭園から呼び出した薔薇をテテへと向かわせた。鋭い棘持つ薔薇がテテへと巻き付き、引き裂く。
傷つけられた腕で、テテはまた【鬼神変】で薔薇の王子様を殴る。ただ殴る。
その動作で腕を伝う血が飛び散るが、気にしている余裕はない。
ひたすらにふるうその拳は、虐殺された人々の為でも移民の為でもなく。
力をもらったとて、突然正義の味方になったりはできない……だからこれはただの自己満足。
気に入らないものを振り払うためだけに、テテは異形の腕をふるうのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
クロエ・アルニティコス
お出ましですか。主目的はもう達成できています。お前の命は今回の作戦の大筋には影響がありませんが……
逃がしてやる理由も生かしておく必要もありません。
ようやく薔薇が好きだというなら、館とやらに帰らずとも見せてあげましょう。
【ラードーン・ローザ】を使用、赤い薔薇の種に魔力と負の感情を注ぎ、ラードーンを象った植物の怪物を作り出します。
人間もお前たちも、口先だけならいくらでもなんとでも言えます。
一つ確かなことは、人間の血の匂いがする口から発する言葉など、何の重みも持たないということです。
ラードーンの100の茨の首で薔薇の王子様を締め上げ、棘を体に食い込ませつつ、縊り殺しましょう。
死に様をお前たちの望み通りにしてやるつもりはありませんでしたが……最期は薔薇に包まれてというのは、らしい終わりなのかもしれませんね。
亜人を根絶できなかったのは悔やまれますが……リグ・ヴェーダ、ロマノフ。どちらにもこれ以上奴らをのさばらせはしません。
「お出ましですか」
クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)は熱のこもらぬ視線を薔薇の王子様に向けた。
焼かれた農地や家屋は整備し、蹂躙戦記イスカンダルから流れ着いたゴブリン少女自爆隊もすべて片付けた。
果たすべき主目的はもう達成できている。
「お前の命は今回の作戦の大筋には影響がありませんが……」
とはいえ相手はヴァンパイアノーブル。
薔薇の館に帰るとか言っているが、逃がしてやる理由も生かしておく必要もない。倒せば敵の数が1減るというのなら、ついでに片付けておくまでだ。
手の中に赤薔薇の種を握りこみながらクロエは問う。
「そんなに薔薇が好きなのですか」
すると薔薇の王子様は、目をきらきらさせて頷いた。
「うん。だってきれいだもん。お姉さまにもぼくの館の薔薇の庭園を見せてあげたいな。……あのね、お姉さまにだったら、ぼくのとっておきの薔薇、ナイショで見せてあげるよ」
可愛らしい囁きがクロエの心へと侵入する。甘く誘う言葉によって、クロエの思考を薔薇の花で覆い尽くさんと。
その幻影の薔薇よりも鮮やかに、
「薔薇が好きならば、館とやらに帰らずとも見せてあげましょう。――種子に宿るは我が抑圧、芽吹け『ラードーン・ローザ』!」
クロエの魔力と抑えきれない負の感情を注ぎこまれた赤薔薇が、ギリシャ神話の怪物『ラードーン』を象るように伸び、大輪の花を咲かせた。
「人間もお前たちも、口先だけならいくらでもなんとでも言えます。一つ確かなことは、人間の血の匂いがする口から発する言葉など、何の重みも持たないということです」
赤薔薇のラードーンから、100の茨が跳ね上がった。それはドラゴンの100の首のように、薔薇の王子様へと襲いかかる。
1本を払い除ければその何倍もの茨、それを払い除ければより多くの茨が薔薇の王子様を締め上げ、棘を喰い込ませる。
悲鳴をあげて茨から逃れ、薔薇の王子様はまた別の甘い言葉を囁くが、ラード―ンの首はどこまでも追い詰め、捕らえた王子様の体へとぎりぎり巻き付き、牙のように棘を立てた。
「死に様をお前たちの望み通りにしてやるつもりはありませんでしたが……最期は薔薇に包まれてというのは、らしい終わりなのかもしれませんね」
好きな薔薇に縊り殺され、砂の上に転がる王子様を眺めつつ、クロエが考えるのは亜人のこと。
(「亜人を根絶できなかったのは悔やまれますが……リグ・ヴェーダ、ロマノフ。どちらにもこれ以上奴らをのさばらせはしません」)
世界のどの地域にも亜人を欠片も残すまい……と。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【託されし願い】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV3になった!