リプレイ
レイラ・イグラーナ
例え人民の皆様のお命に犠牲がなくとも、街を破壊することは生活や、そこにある想いを破壊すること……許されることではございません。
ですが、それでも。
私はその道を進みましょう。
街でまずは演説を行います。敢えて過激な言動を行い、何をするか分からない、言葉で止めることができない危険な人物だと思われれば避難もすぐにして頂けるでしょう。
人民の皆様!革命の時は来ました!
カーミラや傘下の貴族たちは既に倒れ、サンクトペテルブルクへと戻ることはございません!今や貴族の支配は終わりを迎えようとしております!
革命の波はここサンクトペテルブルクまで至りました。貴族の支配と、その象徴であるサンクトペテルブルクを、私たちの手で破壊しましょう!
【避難勧告】を使用するとともに【天上奉仕・熱狂】を使用。周囲の建物に重圧をかけ、破壊します。
まずは大きな建物ではなく、小さなものや窓から破壊を始め、人民の皆様が逃げるまでの時間の余裕を作り、逃げられてから大規模に破壊を行います。
……償いは、必ず。
新城・橙花
他の人たちと協力して頑張るねー。
かなりきっちり従属させられているみたいだから、恐怖から解き放ってあげないとねっ。
自分たちがディアボロスであることを伝えて、首都までディアボロスが来ることができた以上、ヴァンパイアノーブルはもう恐れるに足らないよって説得するよー。
全然心配ないって感じで演技を交えようかなー。よく周囲を観察して、動けそうな人がいれば勇気を見せて、みたいな感じでねっ。
もちろん【友達催眠】も全開っ。
ここが正念場だから頑張るよっ。
吸血ロマノフ王朝、サンクトペテルブルクの市街地。
肌を刺すような寒気に満ちた街中を、レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)は小走りで駆け抜けていく。これより始める行いに想いを巡らせて、彼女は微かな苦悩の滲む声で呟いた。
「例え人民の皆様のお命に犠牲がなくとも、街を破壊することは生活や、そこにある想いを破壊すること……許されることではございません」
「まあねー。とは言っても……ここの人たち、かなりきっちり従属させられてるみたいだしね」
街のあちこちを行きかう市民の様子をそれとなく観察しながら、新城・橙花(呪刀の裁定者・g01637)が言う。
今回のサンクトペテルブルク襲撃作戦において、橙花らが最優先したのは市街地での破壊活動だ。ヴァンパイアノーブルの勢力に打撃を与える上でも、それは極めて効果的と言える。ただし、そこに市民を巻き込むようなことを、復讐者たちは断じて由とはしない。
「最初に避難を呼びかけて、無人になった場所から本格的な破壊活動を開始……よし、頑張っちゃおう!」
「宜しくお願い致します。まずは私が演説を行い、避難を促すと致しましょう」
「了解だよ。ヴァンパイアノーブルの恐怖から、皆を解き放ってあげないとねっ」
互いに言葉を交わし合いながら、二人は街中を更に進んでいく。
程なくして辿り着いたのは、多くの人々が集まる広場であった。演説に使えそうな場所をすぐさま見繕い、レイラが橙花に合図を送る。
「では、手筈通りに」
「オッケー。任せて!」
橙花が友達催眠を発動するのに併せ、レイラは広場の中へと歩き出した。
今頃は、他の仲間たちも準備を終えた頃合いだろう。一度行動を始めれば、敵の迎撃部隊が出現するのは時間の問題だ。此処から先は、正に時間との勝負となる。
「今年の冬は、いくぶん暖かそうだな……」「薪は多めに用意しておこう。子供に寒い思いはさせられない」
「……っ」
嫌でも耳に入って来る市民たちの会話に、レイラは唇を噛んだ。
これから自分たちが行うことは、彼らの日常を奪う行為。どう言い繕ってもその事実は動かしようが無い。
(「ですが、それでも。私はその道を進みましょう」)
クロノヴェーダへの復讐を誓う者として、ここで立ち止まることは許されない。
この広場に集う市民の顔と言葉を、けして忘れまいと胸に刻み――レイラの演説は開始された。
「人民の皆様! 革命の時は来ました!」
広場に立ったレイラが、サンクトペテルブルクの街中に声を響かせる。
その言葉を耳にした人々は、一瞬だけぎょっとした表情を浮かべた後、互いに肩を寄せ合うようにしてひそひそと言葉を交わし始めた。
「おい、なんだあれ?」「革命? 一体、何を言ってるんだ……?」
橙花が発動した友達催眠の効果もあってか、人々の声にはあからさまな敵意こそないものの、明白な警戒の色があった。この街は断片の王がいる、いわばヴァンパイアノーブルの総本山。そこで不穏な真似をした者がどのような末路を辿るか、彼らは嫌と言うほどに知っているのだろう。
無論、それは復讐者にとっても想定の範囲内だ。万一の事態に対応できるよう橙花が警戒を引き受ける中、レイラの声は次第に力を帯びていく。
「カーミラや傘下の貴族たちは既に倒れ、サンクトペテルブルクへと戻ることはございません! 今や貴族の支配は終わり
を迎えようとしております!」
「何だって、カーミラ様が?」「まさか、嘘だろ……!?」
レイラの言葉に、市民の間から大きなどよめきが走った。
カーミラが未だサンクトペテルブルクに帰還していないことは、一般市民にとっても半ば周知の事実。その理由を最悪の現実と共に突き付けられ、市民の動揺は一層強まっていく。そうして――広場に漂う空気の変化を逃すことなく捉えつつ、レイラは決定打となる一言を放つ。
「革命の波はここサンクトペテルブルクまで至りました。貴族の支配と、その象徴であるサンクトペテルブルクを、私たち
の手で破壊しましょう!」
「おい、いい加減にしろ!」「不敬だぞ! 捕らえて貴族に引き渡せ!」
と――レイラの演説を遮るように、市民の中から抗議の声が上がる。
ヴァンパイアノーブルによって徹底的に刷り込まれた従属の心は、やはり一朝一夕で払拭するのは困難なのだろう。だがその程度の反発は、復讐者たちとて十分に予想済みだ。頃合いを感じ取った橙花が送る合図に頷きを返し、レイラは最後の仕上げに入った。
「――歌う血煙、奏でる雑踏。割れた刃が眼下に迫る」
手に取った銀の針を、レイラが指揮棒のように振るう。
果たして、次の刹那。広場の騒ぎを鎮めるように、硝子のひび割れる音が断続的に響き始めた。
「な、何だ……?」「おい見ろ、窓が!!」
異変の源をいち早く察知した市民の一人が、広場を囲む家々の窓を指差して叫ぶ。果たしてその窓は、まるで見えない力に叩かれたように、次々と甲高い音を立てながら破砕を始めていた。レイラが発動した『天上奉仕・熱狂』による、重圧の産物である。
レイラと、そして人々を避けるように降り注ぐ硝子の破片。
煌く光を背に浴びて尚も演説を続けるレイラの姿は、人々の恐怖をこれ以上ない程に煽り、そして――。
「に、に、逃げろ!」「助けてくれ!!」
併せて発動された避難勧告のサイレンが、街中にけたたましく鳴り響く。
レイラの演説と演出、そして残留効果の力によって、市民は先を争うように街から脱出を始めた。
「お、おい、何がどうなってる!?」「話は後だ! 急いでここを離れろ!」
「はーい落ち着いてー。焦らなくても大丈夫だよ、押さないでねー!」
広場で生じた混乱はたちまち渦の如く広がって、街の人々を飲み込んでいく。
その只中、橙花は建物に逃げ遅れた者がいないことを確かめながら、通りを逃げる人々に励ましを送り続けていた。
「橙花たちはディアボロス! 橙花たちが来た以上、ヴァンパイアノーブルの支配も終わりだよー!」
「う、うわあああ!」「に、逃げろ!」
笑顔で橙花が告げる言葉を聞いて、人々は一層急き立てられたように街中から離れる足を速める。自分たちが従う存在の支配が揺らぎつつあるという言葉、更には街中に鳴り響く避難勧告のサイレン。いずれも彼らから平常心を奪うには十分に過ぎるものだ。
橙花は尚も周辺を観察し、広場から完全に人の気配が絶えたことを確認する。
遠からず騒ぎは周囲にも伝播し、一帯は無人となるだろう。本格的な破壊活動の頃合いが訪れたことを感じ取り、橙花はレイラに合図を送った。
「ここが正念場だね。頑張ろうっ」
「ええ。……やるからには、徹底的に」
手短な合図を交わし合うと、二人は無人の建物を破壊し、瓦礫へと変えていく。
復讐者が行使するパラドクスの前に、クロノ・オブジェクトでもない一般建築物は全くの無力だ。轟音を立てて次々倒壊していく家々を前に、レイラは己が成した破壊の光景を目に焼き付けた。立ち止まっている暇は無い。ここから先は、敵の部隊が到着するまでに、少しでも多くの破壊活動を行わねばならないのだから。
「……償いは、必ず」
かくしてレイラは、橙花と共に街中を駆ける。
苦悩も償いも、全ては戦いに勝利してからだ。
ヴァンパイアノーブルの支配に終止符を打つため、二人の復讐者は無人の街中で更なる破壊を繰り広げていった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【避難勧告】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
効果2【グロリアス】LV1が発生!
【アクティベイト】LV1が発生!
ヴァネッサ・ダヴー
アドリブ連携可
この世はどこもかしこも獣だらけだ。
この街に巣くう獣共を引き釣り出すのだろう?なれば躊躇う理由はないであろうさ・・・・人々を巻き込まねば良いのであろう?
まずはどこか建物の影に隠れるとしようか。
住民の避難を優先させるようじゃしまずは其れを見届けねばな。
避難が始まったら動くとしよう。人気がない建物に狙いをつけて大黒柱や支柱を徹底的に破壊し派手に倒壊させるとしようか!
そうやって人々を煽り避難を促すとするか。
無論人は巻き込まぬよ?獣共に乗じさせるわけにはいかぬしな。
極上の狩場を整えるのに人々は邪魔じゃから退場してもらうとしよう。
もうすぐ始まる獣狩りの舞台からの・・・・
シル・ウィンディア
ジェネラル級を引っ張り出すとはいえ…。
わたし達の手でってなると、なかなかきついものがあるよね。
…覚悟は決めている、あとは出来ることをやるだけだね。
フード付きマントを目深にかぶって行動開始。
人の避難が終わっている場所や、人気のない場所を探していくよ。
目的の場所に辿り着いたら、身を隠して演説や避難が終わる時まで待機だね。
パラドクス通信で避難状況の確認を取りながら行動開始だね。
世界樹の翼type.Bにモードを変えてから、建物に向って誘導弾を連射していくね。
誘導弾を撃ちながら高速詠唱を開始。
大きな朽ちかけた建物など目立つものに向って、七芒星精霊収束砲っ!
まぁ、これだけ派手にぶちかませばさすがに避難もスムーズに行くでしょ。
あとは、ヴァンパイアノーブルたちが出てくるまで移動しつつ破壊活動を行うよ。
…正しいってわけじゃないのは知っている。
作戦だっていうのも。
割り切れるものじゃない。でも、誰かがやらないとっていうのなら、手を汚す事には躊躇はしない。
この気持ちは、ジェネラル、そして断片の王へぶつけるだけ!
レイラの演説で生じた混乱の渦は、たちまち恐怖を伴って街中に伝播しつつあった。
避難勧告のサイレンが鳴り響く中、次々に避難を開始していく市民たちの様子は、正に蜘蛛の子を散らすようだ。そんな光景を、目深に被ったフードの中から見遣り、シル・ウィンディア(虹を翔ける精霊術師・g01415)は先行した仲間たちの行動成功を確信した。
「……よしっ。まずは最初の動きは上々、だね」
一見すれば普段と変わらぬ様子のシルだが、その口から洩れる吐息は重い。
ジェネラル級ヴァンパイアノーブルを引きずり出すという明白な目的があるとは言え、罪のない一般市民が暮らす建物を破壊するのは中々にきついものがあった。
とは言え、シルもまた復讐者の一人としてこの戦場に立っている。罪悪感はあれど、その覚悟に揺らぎは無い。仲間との連絡用にパラドクス通信を発動すると、戦いを共にする仲間へ回線を通じて呼びかけた。
「……あとは出来ることをやるだけだね。よろしく」
「うむ、宜しく頼む。周辺の避難が済んだことは確認済みだ、存分に暴れるとしようか!」
通信機を介して返って来たのは、ヴァネッサ・ダヴー(ウェアウルフのグリムリーパー・g10171)の声だ。
彼女は今、シルの居場所から少し距離を開けた建物の影に身を隠し、襲撃の機を窺っている最中であった。
先攻したレイラと橙花の働きかけで避難が完了した今、すべきことは至ってシンプル。全力で暴れ、市街地に破壊活動に専念する――それのみだ。人々を巻き込む気はないが、ヴァネッサの中に渦巻く強烈な感情がヴァンパイアノーブルと戦う欲求にあることも、また確かな事実だった。
「この世はどこもかしこも獣だらけだ。この街に巣くう獣共を引き釣り出すのだろう?」
「うん、やると決めたら手は抜かない。全力で行くよ」
なれば躊躇う理由はないと、不敵に笑うヴァネッサ。一方のシルもフード付きマントを目深に被って、手にした通信機に同意を返す。
仲間との連絡で、避難状況が問題ないことは確認済みだ。あとは仲間とともに破壊活動を続ければ、じきに敵の迎撃部隊も迎撃に駆け付けるだろう。前方並ぶ無人の建物を標的に捉えながら、シルは深呼吸をひとつ。世界樹の翼type.Bにモードを切り替え、行動の開始を伝えていった。
「……じゃ、始めよう。皆、よろしくね」
「さあ、行くよ。加減はしないからっ!」
宣言と同時、シルの杖が次々に誘導弾を連射を開始した。
パラドクスを駆使せず放つ弾幕も、一般の建築物にとっては十分な脅威となる。軍事用の拠点でもなく、碌な補強も無い建物は、降り注ぐ弾を浴びてたちまち外壁が砕かれていく。既に周囲には市民の影ひとつなく、響くのはサイレンの警報と建物の破砕音だけだ。
「狙うのは……あそこっ!」
誘導弾の勢いをそのままに、シルが高速詠唱を開始する。
彼女が狙い定めるのは、前方に建つ大きな建物だ。市民の集会場にでも用いられたのであろうそれは外見こそ厳しいが、建物を構成する石材は目に見えて劣化が進んでいる。全力を出さずとも破壊が容易であることをシルは瞬時に見抜き、杖の先端を建物の中心部へと向けた。
「行くよ――七芒星精霊収束砲っ!」
刹那、街を覆う灰色の空を、七色の光が塗り潰す。
6つの属性に時の属性を乗せて射出する、シルの超高出力型複合魔力砲撃。時にはジェネラル級個体にさえ大ダメージを刻むパラドクスに、単なる石造りの構造物が耐えきれる筈も無く、標的となった建物は断末魔めいた地響きを轟かせながら倒壊していく。
恐らくは、支えの柱を撃ち抜くことに成功したのだろう。その光景は、すぐ傍で破壊を繰り広げるヴァネッサの目にも、極めて鮮明に映っていた。
「うむうむ、順調のようだな。妾も遅れては居られぬ!」
街中を席巻していく破壊の空気を感じ取り、ヴァネッサが高揚に身震いする。シルと同じく、彼女もまた人気のない建物を標的に、攻撃準備を完了したところであった。寒々とした建物の中に飛び込んで、狙うは支えとなる支柱。復讐者に与えられた時間が有限である以上、破壊は効率的に――それが彼女の方針だ。
「始めるぞ! グオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
咆哮で血を昂らせたヴァネッサの振るう拳がパラドクスを帯びて、建物の支柱を跡形も無く粉砕する。
支柱を失った建物は、いわば背骨を断たれた生物と同じ。ヴァネッサが脱出を終えて間を置かず、致命傷を負った建造物はあっという間に崩壊、無残ながれきと成り果てた。立ち昇る土煙と響き渡る轟音は、避難を終えた人々の五感にも鮮明に感じられることだろう。
「とは言え、それはヴァンパイアノーブル共にとっても同じこと。この騒ぎ、間違いなく……」
「……うん。敵も察知する頃だね」
「ぐずぐずしては居られぬな。急ぐとするか!」
ここから先は、一秒の時間も無駄には出来ない。
通信機から届いたシルの言葉に頷くと、ヴァネッサは次なる獲物を求めて街中を駆けていった。
シルとヴァネッサの破壊活動は、それからも一層激しさを増して続いた。
パラドクスの光が煌く度、攻撃を受けた建物が悲鳴じみた響きを上げて崩れ落ちていく。ヴァンパイアノーブルの支配はサンクトペテルブルクにあっても過酷であるのか、粗末な造りの家々はさしたる苦労も要することなく、あっさりと瓦礫に変わっていった。
「人々の避難が終わっているのは有難い限りだ。獣共に乗じさせるわけにはいかぬしな!」
一秒たりとも足を止めずに無人の街中を駆け回りながら、ヴァネッサは嵐の如き破壊をまき散らし続けていた。
彼女にとって、これは敵を追い詰めると同時に、極上の狩場を整える地均しでもある。もうすぐ始まる獣狩りの舞台――そこに力なき人々が巻き込まれることを、彼女は決して望まない。
「オオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
発動した『獣狩りの咆哮』の咆哮を攻撃の号砲と為して、ヴァネッサが破壊をまき散らす。
己の存在を誇示するように響くそれは、血に酔った狩人を誘うかの如く悍ましい気配を帯びて、サンクトペテルブルクの街に木霊していった。
「……よし、首尾は上々。そちらはどうだ?」
「順調だよ。あとは、敵の部隊が出てくるまで破壊活動を続けよう!」
通信機を介して連絡を交わしつつ、シルは街中を駆け回り続けていた。
世界樹の翼から魔法の砲撃が発射される度、次々に崩壊していく建物を見つめながら、シルは立ち止まりそうになる足を踏みしめて走り続ける。
無論、分かっている。たとえ作戦であろうとも、自分たちの行いは正しきものでは全く無い。
もし破壊を行わずにヴァンパイアノーブルだけを倒せるなら、自分も仲間たちも恐らく其方を選んだだろう。だが、現実にその道が存在しない以上、取りうる手段は一つしかなかった。
(「こんなの、割り切れるものじゃない。でも……」)
でも、とシルは思う。
誰かがやらねばならぬなら、手を汚すことに躊躇は無い。
胸に渦巻くこの気持ちは、サンクトペテルブルクのジェネラル級と、そして――断片の王へぶつけるだけだ。
「行こう。限界の一秒まで!」
「承知。任せて貰おうか!」
シルとヴァネッサ、そして、この戦場に建つ復讐者たちに迷いの心は無く。
遠からず現れるであろうヴァンパイアノーブルを待ち受けるように、破壊の嵐は一層激しく街を包んでいった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【通信障害】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
エレオノーラ・アーベントロート
歯向かうつもりのない弱者を狙って殺すのは美しくありませんけれど、わざわざ避けて破壊するのも面倒ですわね。全部まとめてブチ壊す方が貴族どもも焦ると思うのですけれど。
分かっていますわ。しませんわよそんなこと。
民間人を生かすために支援をしているのに、ここでブチ殺したら支援が無駄になりますし――ブレるのも美しくありませんもの。
他の方の演説が終わり、避難が始まったところで電磁レールガン「フェアレーター」より「第六十二の魔弾【双竜】」を投射。二匹の竜の形のオーラを放ち、建物を派手にブチ壊しましょう。
ついでに【避難勧告】も積んでおきましょうか。
わたくしが気持ちよく弾を撃つためにも、邪魔な方々には居なくなってもらいませんと。
貴族どもの危機感を煽るのが大事ということですし、なるべく派手に、大規模に破壊できるよう、大きな建築物や建物が密集しているところを狙い、効率的に破壊を進めていきましょう。
うふふ、これを見て泡を食う貴族の顔を想像するだけでも愉しいですわね。
「うふふ、作戦は順調のようですわね?」
けたたましく鳴り響く避難勧告のサイレン。そこに重なる、倒壊する建物の絶え間ない地響き。
今や完全なゴーストタウンと化したサンクトペテルブルク市街地の一角を見澄まして、エレオノーラ・アーベントロート(Straßen Fräulein・g05259)の顔には物騒極まりない笑みが浮かんでいた。
「願っても無い状況ですわ。歯向かうつもりのない弱者を狙って殺すのは美しくありませんけれど、わざわざ避けて建物を破壊するのも面倒ですものね」
彼女の口から紡がれる言葉は、露悪ではなく至って真面目な響きを帯びていた。
実際のところ、市民もまとめて瓦礫に変えた方がヴァンパイアノーブルの貴族も焦るはずという思いは、エレオノーラの思考に厳然として存在している。
そして同時に、それを実行に移さぬ分別もまた、彼女は確りと同居させていた。
「ええ、しませんわよそんなこと。ここでブチ殺したら、民間人を生かす為の支援が無駄になりますし――何より、ブレるのは美しくありませんもの」
演説が終わり、避難も完了した今、彼女を阻むものは何もない。
電磁レールガン「フェアレーター」の投射準備が完了すると同時、エレオノーラは解き放たれた獣の如く、街中へと疾駆していくのだった。
目に映る的を片端から破壊する。それが大きく、破壊が派手であればなお良い。
至ってシンプルな目標に忠実に、フェアレーターは恐るべき勢いで破壊のオーラをまき散らし始めた。
「うふふ、それでは始めましょう。【双竜】解放――」
同時、レールガンに装填された魔弾が二匹の竜のオーラへと姿を変えていく。先行メンバーが発動したダメージアップの残留効果によって増幅されていく火力を感じながら、エレオノーラの口の端が歓喜に歪んだ。これならば、気持ちよく弾を撃てそうだ。
「第六十二の魔弾、投射!」
解き放たれた竜のオーラが、牙を剥いて建物へと襲い掛かる。
標的に選んだのは一際大きく聳え立つ、工場と思しき建造物。増幅された火力と共にパラドクスで投射されたオーラは、外壁から支柱から射程に存在する全てを一切合切薙ぎ払い、粉みじんに粉砕する。たちまち土煙を上げて倒壊していく建物を後に、エレオノーラは次なる獲物を求めて走り出した。
フェアレーターの投射するオーラが、竜の咆哮を響かせる。
その度、着弾で生じる衝撃が爆風に変じ、エレオノーラの髪を衝撃で弄ぶ。
破壊は派手かつ大規模、そして効率的に――己の信念に従って彼女がまき散らす破壊の嵐は、先んじて仲間たちが行った避難誘導の甲斐もあって、極めてスムーズに街中の建物を瓦礫の塊へと変えていった。
「追加の避難勧告も、この様子では不要だったようですわね。うふふ、何よりですわ!」
そうして暴れ回るうち、幾度目とも知れぬ投射を終えたエレオノーラは、すっかり更地に変わった周囲を見回して笑顔を浮かべる。吸血ロマノフ王朝の首都たるサンクトペテルブルクでこれだけの騒ぎが起これば、市民のみならずヴァンパイアノーブルへ与える心理的影響も甚大に違いない。
自らの膝元で狼藉を働かれ、破壊の限りを尽くされる――それは、この街の支配者たちにとって、この上ない屈辱に違いなかった。
「うふふ、これを見て泡を食う貴族の顔を想像するだけでも愉しいですわね?」
と、その時――破壊し尽くされた街の彼方、寒風に乗って現れた無数の影を、エレオノーラは即座に感じ取った。
どうやら、襲撃を察知した迎撃部隊のお出ましらしい。
エレオノーラが妖艶な笑みを浮かべる中、次々合流に駆け付ける復讐者たち。かくして市街地の破壊は大成功に終わり、戦いは次なるステージに向けて動き出す――。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【避難勧告】がLV2になった!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
半ば廃墟と化した街中の一角に、ヴァンパイアノーブルの一団が音も無く現れる。
トループス級『ロマノフ白軍精鋭兵』を護衛に連れ、一際濃厚な殺意を纏うのは、黒衣に身を包むヴァンパイアノーブル『黒色卿』ピョートル・ヴラーンゲリ。襲撃を察知して駆け付けた、迎撃部隊の指揮官であった。
『……一足遅かったか。やってくれたな、ディアボロス』
戦場へと駆け付けた彼は周囲の様子から、凡その状況を察したのだろう。復讐者たちを睨み据えると、怒りに満ちた声で叩きつけるようにそう告げる。
ここまでされた以上、ヴァンパイアノーブルは面子にかけても復讐者を生かして帰す気は無いだろう。
だが、目の前の相手を生かす気が無いのは、復讐者たちとて同じこと。両者は互いに敵意をぶつけ合いながら、得物を手に戦闘態勢を取った。
戦場を無事に離脱する為にも、彼ら迎撃部隊の撃破は避けて通れない。
ヴァンパイアノーブルか、復讐者か――サンクトペテルブルクの街中を舞台に、死闘の幕が今、開けようとしていた。
レイラ・イグラーナ
……えぇ、作戦の第一段階は完了しました。
貴方たちが来てくれたことで、第二段階に移ることができます。
街を破壊され、迎撃に出した部隊も撃破されたとなれば、貴方たちの上も黙ってはいられないでしょう。
お覚悟を。
銀の針を手に戦闘を行います。
破壊した建物などの瓦礫を足場に敵の頭上へと跳び上がり【手製奉仕・雨】。ロマノフ白軍精鋭兵たちの頭上より、雨のように銀の針を降らせ、その体を貫きます。
【先行率アップ】と【ダメージアップ】で敵に行動される前に仕留め、敵の攻撃を減らすことでこちらの被害を軽減して戦います。多少の傷は【グロリアス】で治癒を。
サンクトペテルブルクの戦力を削るのもこの作戦の鍵の一つ。
皆様の生活を犠牲にして得られた機会、逃しません……!
着地後も足を止めずに駆け、白軍精鋭兵の血の弾丸の的にならないように。瓦礫以外にも様々なものを足場にして跳び、パラドクスによる攻撃を繰り返し殲滅しましょう。
サンクトペテルブルクの落日、貴方たちを討つことでも示させて頂きます。
シル・ウィンディア
そだね、もうちょっと早かったらここまで破壊されなくても済んだのにね。
…よかった。ちゃんと出てきてくれて。
出てきてくれたところ申し訳ないけど…。
ここで滅んでね。
今日はちょっと激しくいくよっ!!
世界樹の翼type.Bからの誘導弾を連射を行いつつ、高速詠唱からの天翔残影砲。
誘導弾を囮にパラドクスでまとめて薙ぎ払うよっ!
敵攻撃は、パラドクス発動時に発生する光の翼で体を覆って防御を行うよ。
津波だろうが何だろうが、そんなのでわたし達を挫くことはできないんだよっ!!
初撃後は、常に動き回りつつ、パラドクス砲撃を繰り返し撃っていくよ。
移動砲台として敵の気を惹きつつ攻撃を仕掛けるよ。
さぁ、本物のわたしはどれでしょうっ!!
攻撃対象は、味方の攻撃した敵を中心にして攻撃を仕掛けていくよ。相手の方が数が多いんだ。しっかり倒して継戦能力を上げないとね。
さて、指揮官さん、次はあなたの番だよ。
さっき言ったよね。
今日のわたしは激しいって。
…絶対に帰さないから。ここで滅んでもらうよ。
新城・橙花
他の皆と協力して頑張るねー。
町中だし、最初は隠れているよー。
他の人たちと戦い始めて注意がそれたところで、行動開始だよっ。
くるりと舞ってパラドクス呪法【八岐魂魄】
「我は喚ぶ、諏訪が大蛇の呪を・・・蹂躙だよっ!」
相手に打撃を与えたら一度ひいてまた隠れる。
そしてまた隙をみて攻撃。
これの繰返しだねっ
復讐者の行った破壊活動により、廃墟と化した市街地の一角。
建物の残骸が瓦礫となって散らばる街中で、復讐者たちはヴァンパイアノーブルの部隊と対峙していた。
「いよいよ敵のおでましかー。きっちり仕留めないとねー」
迎撃に駆け付けた『黒色卿』ピョートル・ヴラーンゲリの部隊を見遣り、新城・橙花(呪刀の裁定者・g01637)は静かに戦意を昂らせる。
彼女が見遣る先、ピョートルと彼の配下たちが浮かべるのは、強い怒りの形相だ。ここサンクトペテルブルクはロマノフ王朝の言わば中枢であり、これを見逃せばヴァンパイアノーブルの威信は地に落ちる。自身の面子のみならず、エネルギーの源である『従属』を人々から収奪する為にも、復讐者を生かして帰す訳には行かないのだろう。
『……一足遅かったか。やってくれたな、ディアボロス』
「……そだね、もうちょっと早かったらここまで破壊されなくても済んだのにね」
殺意も露わに言い放つピョートルが、殺意を込めた視線で復讐者たちを射貫く。
それをシル・ウィンディア(虹を翔ける精霊術師・g01415)は真っ向から受け止め、挑発の言葉を叩き返した。
彼女は今、敵を殲滅する『復讐者』としてこの場に立っている。目的の為に手を汚したという事実は、シルにその覚悟と決意を抱かせるのに十分なものであった。
それは彼女だけでは無く、レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)にとっても同じこと。背負ったものの重さをその双肩に感じながら、レイラは敵の群れを前に淡々と口を開く。
「……えぇ、作戦の第一段階は完了しました。貴方たちが来てくれたことで、第二段階に移ることができます」
『ふん……まさか我らを討とうというのか』『罪人風情が、調子に乗るな!』
レイラの言葉に、『ロマノフ白軍精鋭兵』の間から嘲りの言葉が飛んだ。
血気に逸るヴァンパイアノーブルの部隊は、自分たちが敗れるなどとは夢にも思っていない様子だ。都市の破壊に続き、街を防衛する自分たちが敗れれば、権威の失墜はさらに深刻なものとなる――そんな当然の事実さえ、怒りに曇った彼らの眼には映らないらしい。
もっとも、それはレイラたちにとっても悪い話ではなかった。上に控える貴族共を誘き出す為にも、奴らにはここで生贄として死んで貰うとしよう。そうして得物の銀針を構えると同時、レイラの双眸が氷のように冷たい色に染まった。
「――お覚悟を」
『ピョートル様、ここは我らが』『必ずやディアボロスを討ち果たして御覧に入れましょう』
それを見て、精鋭兵の部隊も一斉に動き出す。
血を用いたパラドクスで敵対者を粉砕する、ロマノフ王朝の忠実な手駒たち。白一色の軍服に身を包み、双眸に深紅の光を宿したトループス級ヴァンパイアノーブルは、上官たるピョートルが攻撃命令を下すと同時、一糸乱れぬ動きで戦闘態勢を取る。
『『ロマノフ王朝に逆らう者に死を!』』
「……逃げないんだね。良かった、追う手間が省けて助かるよ」
鯨波を響かせ展開する精鋭兵と対峙しながら、シルは渦巻く想いを鎮めるように深呼吸をひとつ。
世界樹の翼type.Bを構え、精神を研ぎ澄ましていく。
この想いに整理を付けるのは、戦いを終えた後でいい。今は一人の復讐者として、目の前の敵を葬るだけだ。
「出てきてくれたところ申し訳ないけど……ここで滅んでね。今日はちょっと激しくいくよっ!!」
開戦と同時、まばゆい光の弾幕が戦場を席巻していく。
それはシルの世界樹の翼が放つ、誘導弾の嵐であった。囮を意図して放った弾幕を合図に、橙花とレイラが息を合わせるように精鋭兵の隊列へと殺到する。続けざま、光翼を広げたシルの両脚が地面を離れ、重力の束縛から解放されると同時、高速詠唱で発動したパラドクスの砲撃が敵の頭上から降り注いだ。
「まとめて薙ぎ払ってあげるっ! 逃がさないからっ!」
街中に響く断続的な轟音。それが、攻撃開始の合図となった。
シルが残像を生み出しながら砲撃の連射を続ける中、戦場を先行率アップの風が吹き荒れる。それに力を得たレイラは、敵部隊の先頭を狙い定めると、近場の瓦礫を足場に跳躍。標的を眼下に捉え、『手製奉仕・雨』を発動する。
「因果の滴、注ぐ応報。神域の歔欷が廃都に落ちる」
同時、精鋭兵めがけて降り注ぐのは矢のように鋭い銀針だ。
単なる投擲とは異なり、パラドクスの力で数を増した針は、標的に回避を許さない。たちまち全身を針に貫かれた精鋭兵たちは、白い軍服を真っ赤に染めて、苦悶の呻きを上げながら斃れ伏していく。
『うぐっ……』『ぐあぁ!』
「3体の撃破を確認。戦闘を続行します」
パラドクスを敵群に叩き込み、着地した次の瞬間には、レイラは地面を蹴っていた。
敵は弾丸や迫撃砲を駆使した攻撃を用いる敵であり、立ち止まることは標的になることと同義だ。サンクトペテルブルクを守る彼らを撃破し、敵の防衛戦力を削ることは、今回の作戦の鍵の一つ。償いの誓いを果たす為にも、ここで立ち止まることは許されない。
「皆様の生活を犠牲にして得られた機会、逃しません……!」
『部隊の被害は未だ軽微!』『攻撃を開始せよ!』
そんなレイラに対し、敵もまた負けてはいない。
銀針の連射を浴びて態勢を崩したのも束の間、精鋭兵たちは直ちに体勢を立て直すと、血の弾丸を次々とレイラめがけて発射して来た。銀針のそれと同様、パラドクスを介した攻撃に弾切れの概念は無い。雨霰と飛来する弾丸は一撃の威力こそ小さいが、浴び続ければ相応のダメージは不可避であろう。
レイラはガードアップを駆使して弾丸を防ぎながら、敵部隊の様子を冷静に見遣る。シルの砲撃と自分の銀針、二人分の攻撃で仕留めた分を合わせても、精鋭兵の数はなおも多勢だ。その証拠に、血の弾丸を放つ彼らの様子には、いまだ余裕の色が見て取れた。
『この程度か、ディアボロスめ』『ふん、口ほどにも無い――』
「ふっふーん。余所見は禁物だよ!」
しかし――そんな敵の余裕に冷水を浴びせかけたのは、シルの弾幕に紛れて襲撃をかける橙花であった。
移動しながら砲撃を続けるシルと息を合わせ、敵陣の懐へと飛び込んだ彼女が発動するのは『呪法【八岐魂魄】』。神代に滅されし大蛇の魂が欠片を呼び覚まし、敵陣を蹂躙するパラドクスだ。
「我は喚ぶ、諏訪が地の大蛇の魂を……蹂躙だよっ!」
同時、橙花の力で顕現した魂の欠片が、悍ましい咆哮を響かせながら戦場に降臨する。
無数の鏃に変じた恨みの霊力は、多数の標的を穿つ広範囲攻撃に適したものだ。橙花の合図と同時に放たれる矢の雨は、標的たる精鋭兵たちに一切の慈悲を示さない。
「このまま、一気に撃破していくよ。いっけー!」
『ぐおぉ……っ!!』
砲撃に銀針、そこに加わる恨みの矢。
四方八方から降り注ぐパラドクスの嵐には、流石の精鋭兵も陣形を維持することは叶わず。
血を用いた迫撃砲の反撃さえも押し切られ、戦場に転がる屍の山は次第にその高さを増し始めた。
『部隊の被害が拡大中……!』『応戦を継続しろ!』
三人の復讐者が息を合わせて行う猛攻に、精鋭兵の部隊はじりじりと戦力を削られ続けていた。
橙花には鮮血の迫撃砲を、レイラには血の銃弾を、そしてシルには血の津波を。一糸乱れぬ動きで放つ精鋭兵の反撃は、確かに浅からぬ威力をもって復讐者たちに傷を刻んでいた。しかし、
「残念でした。この程度で負けたりしないよー」
『な……っ!?』
余裕を保って告げる橙花の笑顔に、流石の精鋭兵にも焦燥の色が浮かび始めた。
余力を残している復讐者は橙花だけではない。1分、2分……着々と時間が過ぎる中、三人に刻まれたダメージは明らかに精鋭兵が与えたそれを大幅に低く抑えているのだ。
ガードアップによる防御力強化も、無論理由の一つではある。だが、更に大きな要因は別のところにあった。驚愕の表情を浮かべて復讐者たちを凝視していた精鋭兵の一体は、程なくしてその理由を突き当てる。
『……き、傷が癒えている!?』
「そういうこと。ちょっと気づくのが遅かったね!」
精鋭兵の衝撃を肯定しながら、シルは堂々と告げた。
彼女たちがパラドクスで敵を攻撃するたび、栄光ある戦いは肉体に癒しを齎し、傷を塞いでいるのだ。
【グロリアス】――多勢のトループス級を相手取る際には、とりわけ大きな効果を発揮する残留効果。その加護を受けた三人は、敵を撃破する度に大幅な回復を果たし、通常よりも遥かに長時間の戦闘を可能としていたのである。
『ば、馬鹿な……ぐおっ!』
「サンクトペテルブルクの落日、貴方たちを討つことでも示させて頂きます」
驚愕の表情を浮かべた精鋭兵の眉間を銀針で穿って絶命させながら、レイラは冷徹な声で告げた。
彼女が投擲する銀の針に、シルが放つ砲撃、更には橙花が発射する恨みの矢。それらは未だ一切の勢いを損じること無く敵の部隊に降り注ぎ、精鋭兵を葬り続けていた。
多少の被弾はものともせず、敵を葬るたびに傷を癒し。そうして更に猛攻を続けること暫し、精鋭兵の部隊を壊滅寸前に追い込むと、レイラは通信機を介してシルに連絡を送った。
「残る敵は僅かです。……決着を」
「任せて。逃さず滅ぼして見せる!」
『くっ……させるか!』
シルの動きを悟った精鋭兵の一体が、苦し紛れに血の津波を放つが、そんなもので今更戦況が変わる訳もない。
光の翼で体を覆ったシルはガードアップでダメージを最小限に抑えると、すぐさま『天翔残影砲』を発動。勢いよく光翼をはためかせ、残像を生む速度で精鋭兵の頭上を旋回し始める。
「さぁ、本物のわたしはどれでしょうっ!!」
『……っ!!』
見下ろす先、狼狽を露わにする精鋭兵に、開戦当時の余裕は最早ない。
シルはそんな敵の群れを世界樹の翼で狙い定めると、一切の慈悲を排して魔力砲の連射を開始する。逃がす気も、生かす気も無い。与えるべきは、ただ『死』の一文字のみだ。
「光よ、我が手に集いて、すべてを撃ち抜く力を……。最大稼働、乱れ撃つよっ!」
『う――うおおおぉぉぉっ!!』
光の精霊の力を借りた高速立体機動で発射する砲撃が、上下左右から降り注ぎ――圧倒的な火力に曝された精鋭兵たちは断末魔の叫びだけを残して、一体残らず光に溶けて消滅するのであった。
「……さて、これで精鋭兵は片付いたね」
かくしてトループスの全滅を確認すると、シルは最後に残った敵へと視線を向ける。
街を破壊し、配下を蹴散らし、今や戦場には黒色卿が残るのみ。ひとり孤立したヴァンパイアノーブルの形相は、もはや怒りを通り越し、今にも復讐者たちへ噛みつかんばかりだ。
『ぐっ、ぬうぅぅぅ……!!』
「次はあなたの番だよ。……さっき言ったよね。今日のわたしは激しいって」
そんな彼をレイラや橙花と共に見澄ましながら、シルは堂々と告げる。
お前は狩る側などではない。復讐者に誘い出され、狩られる側に過ぎないのだと。
「……絶対に帰さないから。ここで滅んでもらうよ!」
怒りと殺気を露わに身構えるピョートル。それを討たんとする復讐者たち。
サンクトペテルブルクの市街地を舞台に、両者の雌雄を決する戦いが、いよいよ幕を開けようとしていた――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】がLV2になった!
【ガードアップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
シル・ウィンディア
世界樹の翼をtype.Aモードチェンジしてから、杖を突き出して宣言するよ。
さ、始めましょうか。
激しく…。
街を破壊した時よりもっと激しくいかせてもらうから。
覚悟してね。
ピョートルを中心に円を描くようにして移動を開始。
結構激しく言っているから、わたしの方に注意が向くかな?
向いているなら、その状況を利用してみんなに攻撃を仕掛けてもらうよ。
他の人に注意が向いている状況になったのなら、高速詠唱で隙を減らしてからの六芒星精霊収束砲を撃つよっ!
防壁があっても知らない。
防御ごと撃ち抜かせてもらうからっ!!
敵の反撃や攻撃に対しては、パラドクス発動時に背中に発現する光の翼で体を覆って防御態勢をとるよ。
薄い防御だとしても無いよりましだからね。
…ね、あなたの攻撃ってこんなもんなの?
これじゃ、わたし一人も倒すことはできないよ。
言ってから全力魔法の六芒星精霊収束砲を使用
わたしの全力全開、遠慮せずもってけーっ!
正当な理由があるとしても、街を破壊した事実から目を背けちゃいけないよね。
…絶対にジェネラルを引っ張り出すよ。
新城・橙花
他の人たちと協力して頑張るねー。
よく見たらシルお姉さんがいるー。
ということで、主役はシルお姉さんにお任せして、私は補助だねー。
敵の動きを見て、一気に[ダッシュ]で踏み込む。
大剣型呪刀【譲葉】を振りかざして一気にパラドクス呪剣【金剛豪閃】。
「我纏うは金剛力士が剛力、吹き飛べっ」
正面から叩き込むよー。
もちろん、これだけでどうにかなるなんて思っていないよ?
隙が作れれば十分っ。
他の人の攻撃が飛んできそうだから、【飛翔】も使って飛びのく。
もし他の人の攻撃でも落とせなければ、追撃をかけるねー。
「さてさて、どれだけ耐えられるかなー?」
「……さて。いよいよ残るは、あなただけだね」
戦場に孤立したピョートルと対峙しながら、シル・ウィンディア(虹を翔ける精霊術師・g01415)は告げた。
破壊活動を終え、護衛を排除し、残るは指揮官の撃破のみ。復讐者にとって戦いの流れは理想的だ。
だが――そんな状況にあって、シルの瞳に差した陰が晴れることは無い。世界樹の翼をtype.Aにモードチェンジすると、杖頭に鏤めた藍鉱石の蕾を突き付けて言う。
「さ、始めましょうか」
『……まさか、ここまでの力を持っていたとは……だが、ここで退く訳にはいかん!』
対するピョートルもまた、憤怒の形相で復讐者たちに軍刀を抜いた。
配下の全滅という現実を前に、彼はシルたちの実力を嫌でも理解したらしい。戦場に駆け付けた頃の傲慢な気配は完全に消え失せ、眈々と攻撃の機を伺っている。防衛部隊を指揮する彼にとって、端から撤退の選択肢は無いのだろう。
『これ以上の狼藉を許す気は無い。死んで貰うぞ、ディアボロス』
「ふふん。生憎だけど、死ぬのはそっちだよー」
戦意を滾らせるピョートルに、新城・橙花(呪刀の裁定者・g01637)が即座に言い返す。
その手には呪剣【譲葉】を構え、戦闘態勢は万全。彼我の間合いをじりじりと詰めつつ、橙花はパラドクス通信を介してシルに連絡を送った。
「私は補助に回るねー。シルお姉さん、頑張って行こう!」
「うん、頑張ろうね。……じゃ、行こっか」
阿吽の呼吸で駆け出す橙花とシル。
迎え撃つピョートルの全身から迸る漆黒のパラドクスが、戦いの始まりを告げていた。
「さあ『黒色卿』。その命、頂戴するよ」
『賊どもめ……! これ以上、陛下の都を踏み躙らせはせん!』
先陣を切って橙花がダッシュの速度を上げるのと同時、ピョートルのパラドクスが牙を剥いた。
漆黒の闇が意思を持ったように膨張し、凍える冷気を伴って橙花を包み込む。捉えた者の心身を凍てつかせる闇の牢獄に囚われ続ければ、復讐者とて只では済むまい。ならばと橙花は怒りの心を燃え立たせ、パラドクスで剛力を込めた譲葉の一閃を見舞う。
「精鋭兵よりは厄介な敵だけど……この位の相手なら、今までだって戦って来たよー」
負傷など元より覚悟の上とばかり、不敵に笑う橙花。
そうする間にも、シルは世界樹の翼を構えて戦場を疾駆し、ピョートルの背後を取りつつあった。
敵を中心に円を描くように陣を組み、前後から攻撃を浴びせて倒す――それがシルたちの作戦だ。気配を察知して挟撃から逃れようとするピョートルだが、橙花が振るう譲葉の猛攻はそれを彼に許さない。このままでは不利を強いられると判断したピョートルは、焦燥を露わに攻勢を強め始めた。
『くっ……どけ、小娘!』
「やだよー。通りたいなら力ずくで倒してごらん?」
そんな敵を前に、橙花は一歩も譲らない。
残留効果で守りを固め、火力を増して、粘り腰の逆説連鎖戦を繰り広げ続ける。
そして――そんな攻防の奏功を物語るように。ピョートルの背後で、世界樹を構えたシルの背から青白い光が輝いた。それは魔力によって展開した二対の翼。シルの砲撃準備の完了を告げる証だ。
「激しく……街を破壊した時よりもっと激しくいかせてもらうから。覚悟してね」
『……っ!!』
眼を見開くピョートルの頬を、一筋の冷や汗が伝う。
間を置かず発射されたパラドクスの砲撃が、轟音を響かせながら戦場を蹂躙し始めた。
『ぐ、ぐうう……!』
戦況は、たちまちピョートルの不利へと傾き始めた。
彼の眼前では、いまだ橙花が平然と戦い続け、背後からはシルの砲撃が間断なく降り注ぐ。
ならばと意識をシルへと切り替え、パラドクスで構築した漆黒の防衛陣から銃撃で反撃に移れば、背後からは橙花の刃が即座に襲い来る。
放った銃弾は命中こそすれ、戦闘不能に至らしめるには及ばないレベルだ。防衛陣からの反撃を難なく凌いだシルは、体を覆った光翼を悠然と開き、ぞっとするほど冷たい声でピョートルに告げる。
「……ね、あなたの攻撃ってこんなもんなの? これじゃ、わたし一人も倒すことはできないよ」
『言ってくれる……だが、まだ戦いは終わっておらんぞ!』
突き付けられた世界樹の翼を前に、ピョートルの戦意は未だ旺盛であった。
たとえ一介のアヴァタールであっても、王都を守る部隊長たる誇りが彼にはあるのだ。力を使い果たし、敗北の現実を突き付けられても、彼は最後の瞬間まで抵抗を止めないだろう。
ならば、と橙花は思う。
ならば猶更、この戦いは速攻で終わらせねばならない。
シルと、自分たちの後に続く仲間へ繋げる為のパラドクス――この『呪剣【金剛豪閃】』の一撃で、と。
「我纏うは金剛力士が剛力、吹き飛べっ!」
仏法の剛力を纏った橙花の肉体が、譲葉を真正面からブンと振るう。
身の丈ほどもある呪剣にして、次へと繋ぐ象徴でもある祓魔神具の刃は、ピョートルの守りをただの一撃で突き破り、その身体を吹き飛ばした。
刃を浴びた傷から血を滲ませ、ピョートルの焦燥はいよいよ濃い。
そんな彼に間髪入れず襲い掛かるのは、シルが放つ砲撃だ。橙花への反撃もそこそこに、背後を振り返るピョートル。果たして次の刹那、六属性の力が世界樹の翼に凝縮を開始する。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ、暁と宵を告げる光と闇よ……」
『――……っ!!』
高速詠唱によって杖に凝縮した属性エネルギーが、六芒星増幅術の力で瞬く間に増幅されていく。
極限まで高めた力を杖頭の藍鉱石に収束。二対の魔力翼を背中に広げ、ピョートルを狙い定めながらシルは思う。
例え正当な理由があったとしても、目の前に広がる破壊の風景は自分たちが成したもの。自分たちが望み、自分たちの手で生み出したもの。
だからこそ、その事実からは決して眼を逸らすまい。
この戦いに勝利して、ジェネラル級を引きずり出し。そして必ず、奪われた歴史と大地を取り戻す――と。
「――六芒星に集いて全てを撃ち抜きし力となれっ!」
発動した『六芒星精霊収束砲』が、あまねく戦場を光で照らす。
パラドクスで築かれた防壁を穿ち、術者たるピョートルの身を覆う闇を暴き、甚大なダメージをその肉体に刻む。シルの一撃を前に彼は為す術の一切を持ち得ず、そして、
「わたしの全力全開、遠慮せずもってけーっ!」
『ぐうっ、ああぁぁっ!!』
直撃を受けたピョートルは、その肉体を勢いよく吹き飛ばされ。
風穴を開けられた胴体を無残に晒しながら、寒空の下に絶叫を迸らせるのであった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【クリーニング】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV3になった!
レイラ・イグラーナ
一つだけ、訂正をさせて頂きます。
ここは皇帝の街ではなく人民の街であり、私が破壊したものは皇帝の所有物ではなく、人民の所有物。
私の罪はただ人民の皆様に対して負うものです。
銀の針を手に戦闘を行います。
放たれる斬撃が変化した迫りくるコサック騎兵たちに対して、【手製奉仕・縫】。騎兵の突破力は脅威ですが、歩兵と違い完全に密着した陣形を取ることは困難。
その隙間を縫うように前へと進みながら騎兵の突進とすれ違い、ヴラーンゲリへと接近します。
コサック騎兵からの攻撃は防刃コート「Chat Noir」と【ガードアップ】でダメージを抑え、怯んで突撃に巻き込まれることがないように。
ヴラーンゲリへと接近できればそのまま足を止めず、静かに、素早く、確実に、すれ違いざまにそっと胸に銀の針を突き立てましょう。
皇帝と貴族の支配を打ち破り未来を作るため、成すべきことを成すのみです。
たとえそれが、今人民の皆様を苦しめることになったとしても。
『おのれ……ディアボロスどもめ……!』
荒い息で呪いの言葉を吐くピョートルの姿に、もはや指揮官の威厳は欠片も残っていなかった。
雪のような白髪は砲撃で焦げ、漆黒の装束は血で汚れ、その体は満身創痍。彼を未だ戦場に立たせているのは、偏に王朝への忠誠心のみである。
『皇帝陛下の街を! よくも土足で――』
「一つだけ、訂正をさせて頂きます」
そんな敵の言葉を、冷たい声で遮るのはレイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)だ。
瀕死のピョートルに射るような眼差しを向けながら、彼女は告げる。じきに命尽きるであろう眼前の敵に対し、一言一句を刻み込むような口調で。
「ここは皇帝の街ではなく人民の街であり、私が破壊したものは皇帝の所有物ではなく、人民の所有物。私の罪はただ人民の皆様に対して負うものです」
『黙れ……っ! これ以上、賊徒と語る舌など持たん!』
銀の針を構えるレイラを前に、ピョートルは軍刀を抜刀。
最後の力を振り絞るように、その刃に漆黒の闇を宿していく。
『ゆくぞ! 我がブラックチャージ、受けるが良い!』
敵が振るう刃を合図に、馬の嘶きが戦場に木霊した。
漆黒のコサック騎兵に姿を変えた斬撃が、群れを成してレイラへ迫る。パラドクスで実体化した騎兵であろうとも、その突破力は脅威だ。対処を誤れば、此方が受けるダメージは計り知れまい。
「問題ありません、凌いで見せましょう」
そんな突撃を前に、レイラは至って冷静であった。
歩みは真っ直ぐ前へ。逃げも避けもせず、正面から騎兵の群れに向かって行く。
歩兵と異なり、完全に密着した陣形を取ることは不可能――そんな騎兵の弱点を突いた彼女の赤い瞳は、果たして陣形の僅かな隙間を見逃さない。発動する『手製奉仕・幻』の揺らめく足取りで残像を生みながら、突進する騎兵の群れへと踏み込んでいった。
「逃がしはしません。お覚悟を」
『くっ……! させるものか!』
着々と距離を詰めて来るレイラに、ピョートルが刃を振るう。
焦燥の滲む太刀筋は、そのまま騎兵突撃の乱れとなって現れ、レイラの足を止めることは叶わない。
防刃コート『Chat Noir』とガードアップを盾に、騎兵の攻撃を防ぎながら尚も進むレイラ。程なくして突進を抜けきった彼女の前方には、満身創痍のピョートルの姿があった。
もはや、レイラを阻むものはない。
足を止めず、銀針を構え、次の瞬間には標的との距離を詰める。そして、
「砂塵の清泉、水面の月光。揺らめく踵が虚を翳す」
静かに、素早く、確実に。
暗殺者が放った銀の針は、音もなく標的の胸を刺し貫いた。
胸板を貫き、骨の間をすり抜け、心臓を穿つ致命の一刺し。そうしてレイラが脇を通り過ぎると同時――己の死を悟ったピョートルの身体は、糸の切れた人形のように崩れ落ちる。
『皇帝陛下……万、歳……』
それは、絶叫も断末魔もない静寂の決着。
かくして戦場からヴァンパイアノーブルの気配は絶え、ひとつの戦いが終わる。
冷たい地面に転がる骸の山を背に、レイラはパラドクス通信を発動すると、仲間たちへ勝利を告げた。
「敵部隊の全滅を確認しました。……帰還しましょう、皆様」
全ての仕事を終えた復讐者たちは、こうして市街地を後にした。
レイラは遠ざかりゆく街中を振り返ると、そこに刻んだ破壊の痕跡を見澄ましながら思う。皇帝と貴族の支配を打ち破り未来を作るため、自分は成すべきことを成すのみだと。
そう、たとえ――。
(「たとえそれが、今人民の皆様を苦しめることになったとしても」)
吸血ロマノフ王朝、曇天の空が覆うサンクトペテルブルク。
断片の王、そして数多の吸血貴族たちが支配する魔都は、間もなく1917年の冬を迎えようとしていた。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【神速反応】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!