『アルタン・ウルク』VS蟲将『王異』
~大戦乱群蟲三国志・北西部~

 シュゴォォォ……シュゴォォォ……!

「あれは……クロノヴェーダ、なのですか?」

 ディヴィジョン北西部を監視していた『司馬懿』配下の蟲将『王異』は、漆黒の巨体の姿に自分の目を疑った。
『もし曹操が滅ぼされ、劉備が断片の王の座に就けば、大戦乱群蟲三国志は外部からの侵攻を許すだろう』
 そう懸念し、王異をこの地の守備につかせた『司馬懿』の予感は、まさに的中していた。

 だが、司馬懿でさえ、現れる敵もまたクロノヴェーダであり、知性ある軍団であろうと考えていた。
 その予想に反し、実際に現れた巨群は、全身を蠢かせては周辺の大地を掘削し、喰らっている。
 王異は司馬懿から幾つかの計略を授けられていたが、どれも通用するとは思い難かった。

「相手が何であれ、侵攻を食い止めねばなりません。攻撃開始!」
 王異の号令一下、配下の蟲将達が漆黒の大群へと一斉にパラドクスを放つ。
 そして彼らは、反撃の突進によって儚く蹴散らされた。
「……あ、無理ですね、これ」
 一瞬で戦闘力の差を理解してしまった王異は、絶望的な予感を抱きつつも後退の命令を下す。
 王異に赤い目を向けながら、漆黒の巨体は蟲将の屍を、大地を……ディヴィジョンに存在する、ありとあらゆるものを欲するかの如く、己の裡に取り込みながら前進していくのだった。