霧雨の中を歩いている。
此処は何処だろう。
そも、何故自分は此処にいる?
答えは出ない。
旧い街並みには人の気配はなく、静かな雨音だけが辺りを満たしている。
霧雨の向こうで人影が忍び笑う声が聞こえた。
───こんな場所に、迷い人とは。
「此処は何処?」
───珍しいこともあるものだね。
「……?」
───ああ、だめだよ。此処に居てはだめだ。
傘に隠れて顔は見えないが、人影は忍び笑う。
つい、と指を差した先には、少し外れた小高い丘に立つ堂が見えた。
元は寺院だったのだろうか。
崩れかけた瓦屋根の建物はすっかり苔むしてはいるが、雨戸の隙間から小さく灯りが漏れている。
───彼処に行くといい。
───決して、振り返らずに。
客人の背を見送って、人影はくるり、傘を回した。
───嗚呼。
謳うように、慈しむように、呪うように。
人影は口遊む。
───嗚呼、此処は雨幻の郷。
───雨幻に紛れた、今は亡き追憶の残滓。
◆のんびり
◆出入りは自由
→全団員を見る(1)
→全友好旅団を見る(0)
→退団報告