――そこは新宿島の海端、途絶えた線路の只中。
街並みから離れた崩れた鉄橋の上では、時間に置き去りにされた電車が月明りに濡れて佇んでいた。
パラドクス・トレインとは異なる、最早動く事のない忘れ物は静かに時を刻む。
頭を垂れるように、自分を見つめるように水面にその顔を埋めて。
…けれど、物語のお約束の様に、歪な静寂は破られる。
神の名も神殿も忘れた狐は考えた。
神は細部に宿るならば、技術の粋を集めた鉄の箱こそ神の御座に相応しいのではないかと。
かくて人の足が遠のいた車両に光が灯る。主は生臭神官と、何の縁かふら りと現れる異形の双子。
錆び付いた電車は今は動かない。
けれど気づけばあなたの手に握られた、古びた切符を翳す事で…泡沫の夢を見る。
対価と燃料はあなたの衝動、あなたの記憶。
語り終えるまで暫し、時の旅路をご一緒に。
車輪は回らず、けれど定めは廻る。地上の星を三度、彼の地に取り戻す為に。
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