【イ】Canonちゃん消失事件・解決編
クリスタ・コルトハード 2021年10月13日
歌舞伎町各所でNEO新宿連合の守る発電機を破壊、もしくは停止した学園生たち。
それにより、カノンを封じていた電磁障壁の効力は失われる。
力を取り戻したカノンは、NEO新宿連合のボスである丹頂・安弘を逆に捕らえることに成功した。
「――――よう相棒、目標は拘束した。オメーの思惑通り踊ってやったぜ。次からは掌じゃなくて、もっとマシな舞台を用意しな」
「…………はい、ごめんなさい、カノン様」
カノンがそうつぶやくと、影に潜んでいたクリスタがしおらしく現れた。
クリスタの学園に対する裏切り、NEO新宿連合との戦い、そしてカノンの反撃。
これらは予め決められていたものだった。
丹頂・安弘は危険で狡猾な男だ。
組織ができてからというもの、仕事の場にはほとんど足を運ばず、影から指示を出し、自分は危険な場所には近寄らなかった。
刻逆が起きてからはさらに慎重さに磨きがかかり部下たちの前にもほとんど姿を見せなくなった。
このまま放っておけば、復讐者の目の届かぬ新宿の裏で暗躍をつづけ、組織は巨大化し、大きな力を持つに至ったであろう。
だから、早い段階で捕まえておく必要があった。
彼もそれなりの腕力と組織力を持つが、所詮は一般人だ。
埒外の力を持つ復讐者が数千数万もいるこの新宿島で、半グレ組織が栄えることはありえない。
なにか〝きっかけ〟でもなければ、そのまま地下で力を蓄え続けただろう。
、、、、、、、、 、、、、、、、、
どこかのメイドが、力を貸すだなんて言い出さなければ。
クリスタはNEO新宿連合のひとりに接触し、一日ご主人様を実行した。
その日ごとに主人を変え、忠実なメイドとしてときには黒いことまで。
そうして徐々に信頼を得て、丹頂が主人となる日がやってきた。
ただし、顔を合わせもしない。
「俺に世界を変えられるだけの力をよこせ」
電話越しにそう命令されたクリスタは、知り得る中で〝最も優秀なワールドハッカー〟と、人をの意識を朦朧とさせて言いなりにさせる薬品を差し出した。
だが、安弘はそれだけではクリスタを信用しなかった。
突然自分の従者になったメイドだ、当然様子は見る。
捕らえられたカノンにも会わず、高電圧電磁障壁の檻に二週間置いた。
クリスタが学園の生徒にその矛を向け、カノンが憔悴してきたそのときになってやっと、安弘はカノンの前に姿を表した。
まとまりのない部下たち、学園生の対応の早さ、カノンの能力。
彼の想定を超えるいくつもの要因により、計画は破綻することとなった。
「どうしてもここで捕らえておきたかったんです。あとは、俺が然るべきようにしますので」
気を失ったまま縛られて動かない安弘を抱えたクリスタが、カノンを助けにやってきた生徒たちに頭を下げる。
「ご迷惑、おかけしました」
このときをもって、カノンとクリスタが学園に戻ってきたのだった。
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