【個】苦境にあって守るもの
龍・雲嵐 2021年10月11日
「ふざけんなふざけんなふざけんな!!」
バベル
上の階からも下の階からも響いてくる抗争と破壊の音に、山川・巨塔はヒステリックに叫びながら作業していた。
カチコミに来たガキ共を迎え撃つ――為ではない。
間抜けな上役が油断したときに盗み見たクスリの保管場所。
そこからアタッシュケースにありったけのクスリを詰め込んでいるのだ。
あんなガキの姿をしたバケモノの相手なんかしてられるか。
賢い俺は危ない橋は渡らない、引くべき時は引く。
そしてこのクスリを使って、もっと俺にふさわしい場所へと――
「へ……は……はは……!」
クスリの袋でパンパンになって、無理矢理閉じたアタッシュケースを見つめ。
山川は明るい未来に頬を緩ませた。
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龍・雲嵐 2021年10月11日
#梶野・龍夜
#山川・巨塔 (
#龍・雲嵐 )
龍・雲嵐 2021年10月11日
はぁっ、はぁっ、はぁっ!!
(クスリの保管場所からいくつか部屋を通り、発電機のある部屋の扉をぶち破るように開けて後にした。
急げ急げ、ディアボロスのガキ共に鉢合わせる前に……!)
梶野・龍夜 2021年10月11日
(事前に知らされた発電機の場所。そこへ一直線へ走る少年と、それにくっつく羽猫。この方全力で走る機会などなかったけれど、思ったよりも息は切れていなかった)
(迷いは振り切った。はず。けれど、その背に感じる重さがまた別の迷いを生む。今度は、ミナが……)
(いいや、そんなことはない。起こさせない。そのために決心したんだ。だから、こうして走っている。)
(やがて、目的の場所が近づいてくる。もう少し。あとは、ここを上れば──)
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月11日
…………あっ、あんたは
(そこでかち合ったのは、見知った顔。というか、忘れられない顔。あの時の)
なんで、いるんだよ……!
(当然といえば当然。けれど、思わず声に出さざるを得なかった。出会わなければ、それでよかったのに)
龍・雲嵐 2021年10月11日
【山川・巨塔】
なっ……!? クソが!!
(扉を出てすぐに鉢合わせたのは、よりによって白髪のガキだった。
ガキにやられた右腕が疼く)
退けよ、クソガキ……!
大人は忙しいんだ、ガキの相手なんざしてるヒマねーんだよ!!
発電機でもなんでもぶっ壊せば良い、そこを退け!!
(前のような腹から吐き出す怒鳴り声。
しかし、前のように馬鹿力でふっ飛ばされたら……と警戒して不用意には近づかなかった)
梶野・龍夜 2021年10月11日
(ぐ、と肩が上がりそうになるのを腹に力を込めて抑える。今度はビビらない。あの時とは違うんだ)
(けれど、しばし考えてしまう。目的は発電機の破壊だ。それさえ達成出来ればいい。それさえ出来れば、人を傷つけることなんて───)
……………
(ふと、大事そうに抱えたそのケースに、焦点が合った)
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月11日
…………じゃあ、それ。置いてってよ。それなら、見逃してもいい。
(背のミナに預けていた妖刀『逆猫』をその手に握る。未だ包帯でぐるぐると巻いてあるそれを、構えて、告げた)
龍・雲嵐 2021年10月11日
【山川・巨塔】
(「クソがっ!」)
(内心毒づく。前のときのようにはビビらない。怖気づかない。
萎縮して動けなくなったクズを殴り倒すのが基本の山川にとって、このケンカは難易度が一段階上がった難しいものとなった。
しかも相手はディアボロス――)
(無効票)
龍・雲嵐 2021年10月11日
――――は??
(なんつったこいつ? 置いていけ? 俺の大事なクスリを?
しかも、見逃してもいい? そんな、そんな)
(無効票)
龍・雲嵐 2021年10月11日
そんなに俺のことを見下してやがんのか、ガキがぁぁあああ!!!!
(叫びながらパーカーのポケットに左手を突っ込み、取り出した無針注射器で首筋にドッ!とその中身を打ち込んだ!)
梶野・龍夜 2021年10月11日
なっ………
(何を、という言葉は飲み込まれた)
(そっと背中を曲げてミナが遠ざかるための道を作る。不安げな瞳に笑みを返した)(『大丈夫』)
(視線を戻して、深呼吸を一つ。そう、俺は大丈夫。腕と足に力がこもる)
龍・雲嵐 2021年10月11日
【山川・巨塔】
が、はあああああ……!!
(『デーモンスケイル』)
(動脈注射されたその麻薬は、勢いよく血液に運ばれて素早く全身の細胞を作り変えた)
(どこのディアボロスかディビジョンで生まれたものかは定かではない。
しかし「より大きな快楽を受けられるように、まずは身体を作り変える」という麻薬は、言うまでもなくその筋では誰もが欲する新しい麻薬だった。
NEO新宿連合でも少数ながら取り扱い始めたそれを、山川は今日初めて使用した)
(無効票)
龍・雲嵐 2021年10月11日
はっ……はっ……
(呼吸が荒くなる、目が血走る、身体が熱くなる……)
(様々な身体の異常に苛まれながら、山川はふと気付いた)
(――白髪のガキの動きが、やたらゆっくりに見える)
(無効票)
龍・雲嵐 2021年10月11日
――うらぁぁぁぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!
(前触れ無く、ケダモノのような雄叫びと身のこなしでガキへと突っ込んだ!
痛みと歪みに苛まれていた右腕はすでに健常とばかりに、ナイフを握りしめて、口から泡を吹きながら真っ直ぐに突き込む!)
梶野・龍夜 2021年10月11日
(恐怖をその唾と一緒に飲み込んだ。大丈夫、大丈夫。)
(たとえ、相手がどう見たって、"ヤバい"ということを感じてもなお、そう信じて平静を保とうとした)
(そうして心情を優先したばかりに一手が遅れるということまでは、経験の浅い龍夜には想像できなかった)
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月11日
ッが、───!
(咄嗟に刀で受けることは出来た。けれど、そこまで)
(相手の増幅された膂力に対しての構えが全く出来ていなかったその体はあっさりと壁に叩きつけられた)
(肺から一気に空気が抜ける感覚。衝撃によって規則的なその心臓の鼓動は狂い、思考が纏まらない)
(なんで。どうして。)
(だって、この前は圧倒的に自分の方が早かったはずだ。吹き飛ばしたのはこちらの方のはずだ)
(それなのに、どうして。)
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月11日
(そんな状態なのに、どうして俺は)
(──その顔を見てしまったのだろう)
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月11日
────あ、
(決意にあったはずのその目つきは、大丈夫と誓ったはずの心は、あっさりと瓦解する)
(異常に見開かれた眼孔。ギラギラと光る瞳孔。額や頬にびっしりと浮き出た血管。裂けているかのような口角と、そこから溢れている泡。人間であるはずなのに、まるで人間味の感じられないその顔つきが、恐ろしい。さっきまで人間だったそれが、怖い。)
(いっそこれが初めから化物であった方が、きっとこんな気持ちにはならなかった)
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月11日
────っ、
(視線を伏せた。思わず。)
(ナイフをギチギチと受け止めているその手が、果たして力が拮抗しているが故のものなのか。それとも、怯えているのか)
(もはや、ただの少年にはわからない)
龍・雲嵐 2021年10月11日
【山川・巨塔】
は、ははハハHAはhaはヒャバはハハ!!!
(異常に上がった動体視力で捉えた光景は、胸がすくような最高の光景だった。
虚勢を張ろうと場数を踏もうと、ガキはガキ。少し本気になればこのザマだ!)
(恐怖に目を逸らすガキの姿を見て、クスリでハイになった精神がさらにボルテージを上げていく。
ただ、破壊衝動に突き動かされるがままに拳を、脚を、膝をガキに叩き込む!!)
(無効票)
龍・雲嵐 2021年10月11日
(もっとだ、もっと壊したい!!)
(もっとこのガキを壊せるモノはないか? ガキの肉体だけでなく、精神まで壊せるような――)
(そこまで考えて、ふと視界の端に映ったもの)
(無効票)
龍・雲嵐 2021年10月11日
――ヒィハハハ!!!
(満面の笑みで、その映ったもの――ガキの翼猫を捕まえんと手を伸ばした!)
梶野・龍夜 2021年10月11日
ぐ、ぶッ、
(おえ。)
(視線を外したままその衝撃の嵐を受け止められるはずもなく、あっさりとその身に吸い込まれていく)
(嫌な音がいくつもいくつも鳴り響く。悲鳴にもならない苦悶も声が喉奥から漏れ出る。鉄の味が口内に広がっていく)
(何も、出来ない)
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月11日
(やがて乾いた金属音と共に刀はその手から零れ落ち、ガクンと膝を折ったその体は、地に伏した)
(同時に、再び疑問が生まれる)
("どうして、このままトドメを刺さないのか")
(頭部から垂れる鮮血によって右目は使い物にならない。そして揺さぶられ痛めつけられ続けたことによって視界は歪んでぐらぐらとしている)
(それでも、確かに聞こえたんだ)
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月11日
「────なご」
(聞き慣れた、呑気な鳴き声。いつもいつもそうやって気を引こうとして、結局何でもなかったりする。そういう、声)
(床に擦りつけている顔を辛うじて、そちらに向ける)
(大丈夫だよミナ。俺は、まだ、大丈夫───)
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月11日
(ぞわ、と全身の毛が逆立つのがわかった。何をしているのかも。あいつが、その刃物を突き付けていることも)
(ミナが、怯えた目でこちらを見ていることも。申し訳なさそうな鳴き声を上げていることも)
(歪んだ視界が一気に鮮明になっていく。遠ざかっていた意識が急速に戻っていく)
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月11日
────やめろッッ!!!!
(気づけば、そう叫んでいた。息すらも苦しいその肺から一気に空気が抜けたためか、血反吐が出てくる。けれど構うものか)
(ギシギシと痛む腕に無理矢理力を込める。立てよ。立て。今やらなくて、どうするんだ)
(視線を一切背けないまま、何とか体を起こそうと試みる。もう怖いもなんともない。だって一番恐いのは)
(ミナを、もう一度喪うことだから──!)
龍・雲嵐 2021年10月11日
【山川・巨塔】
(ガキの血で少し赤くなった手でガキの首根っこを掴む)
はぁはははHAハHAハ!!!
(クスリが脳細胞の隅々にまで回った頭は、ガキの叫びをただの愉悦としか捉えていなかった)
なにがやめろだクソガキぃ?
俺がやることに指図すんじゃねぇよ……
(無効票)
龍・雲嵐 2021年10月11日
そうだ、どいつもこいつも……クソが、俺が、俺が一番優秀なのによ……
見下しやがって……!
(ついさっきまで愉快そうに狂った笑い声を上げていた山川は、急に怒りに身体を震わせ手を震わせ、猫を掴む手に力を込めた)
あ゛あ゛っ!!クソがクソがクソが!!
ナメやがってナメやがってナメやがって!!!
いいぜ、てめぇらが俺の思い通りにさせねぇってんならよぉ!!
俺もてめぇらの思い通りになんかさせるかってんだ!!!
(興奮のあまり鼻血を流し、口から泡を飛ばしながら、山川は震える手でナイフを猫に向けて)
(無効票)
龍・雲嵐 2021年10月11日
まずはてめぇからだぁ!!!
死ね、ひねぇ!!!
(ろれつの回らない舌でヒステリックに叫びながら、猫にナイフを突き立てんと)
梶野・龍夜 2021年10月11日
あ゛────っ
(だらんと持ち上げられる体。ミシミシと音を鳴らす首)
(苦しい、苦しい。苦しい痛い苦しい痛い痛い痛い、痛い)
(苦しくて痛くてもう嫌で、もう本当に、堪らないのに)
(一番嫌なのは、ミナを護れない自分自身だ)
(あんなに怯えて、苦しそうで。それでも、こんな俺を見つめてくる。そんなに優しいあの子を護れない弱い俺だ)
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月11日
(『どうする?使う?ボクを』)
(うるさい。)
(『力を貸してあげようカ』)
(うるさい。)
(『全部"ひっくり返してあげる"ヨ』)
(うるさい……!)
(『今なら初回サービス、代償は要らなイ』)
(うるさいって言ってんだろ……!)
(『……へェ────』)
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月11日
(『あの子がどうなってもいいんダ?』)
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月11日
……………ひっく、り、がぇぜ……逆猫────ッッッ!!!
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月11日
(刹那、包帯に包まれていたはずの刀身が破裂するように輝いた。少年の持つ瑠璃色と全く同じ色。部屋一つぐらい、造作もなく)
(たったの一瞬で、全てがひっくり返る)
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月11日
(持ち上げられていたはずの体は、男の背中側に立ち
立つことも困難な肉体は、傷一つなく完治し
凶器を突きつけられていた羽猫は、飼い主の腕の中に抱かれ
床に転がされたまま輝いていた妖刀は、契約者の手に収まり)
梶野・龍夜 2021年10月11日
(暴力の嵐によって無数の傷を受け、蟲のように情けなく地に伏し、汚らわしい血を流すのは、)
(『山川・巨塔。お前だヨ』)
龍・雲嵐 2021年10月11日
ひねっ!ひねっ!ひねっ!ひ、ぃ?
(それは突然のことだった。突然青い光が発し、鋭敏になりすぎた目を思わず瞑って)
(誰かの声が聞こえた気がして)
(無効票)
龍・雲嵐 2021年10月11日
ひぃいいいいいあああああああ!?!?
なんっ、な゛ん゛っ゛!!!
いで、ああああああああああ!!!!
(気付けばガキも猫も視界からいなくなり、代わりに得たのは全身に出来上がった傷と痛み。
それがガキに作ってやった傷と気付くほどの冷静さも余裕もクスリ漬けの頭にあるはずもなく。
ただただ、羽根をもがれた蛾のように惨めに床に這いつくばる)
(無効票)
龍・雲嵐 2021年10月11日
ひぃっ……へぁっ……ひぃっ……!!
(ヤバい、死ぬ、死んじまう!)
(逃げねぇと、どこか分からねぇが逃げねぇと!)
(ズリズリとみっともなく、芋虫のように手近なドアへと逃げようとして)
(無効票)
龍・雲嵐 2021年10月11日
あ……あああああ!!
(そこで目に入ったのは、さっきまで後生大事に抱えていた――クスリの詰まったアタッシュケース)
クスリ……クスリぃ!!
(ドアから遠ざかるルートにも関わらず、アタッシュケースへとにじり寄る)
梶野・龍夜 2021年10月12日
(まるで何かに取り憑かれていたような感覚からハッと意識を取り戻す。何が起きた?いや、起こした。そう、"ひっくり返した"。それだけは、辛うじてわかる)
(それに、体も大丈夫。動く。どころか、絶好調。それと──)
………ミナ。
(腕の中の温もり。唇は震え、口角は情けなく上がる。安堵が一気に全身を駆けまわって、力が抜けそうになる。それなのに、ミナは相変わらず呑気な顔をしていた)
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月12日
(今すぐ抱きしめたい気持ちをグッと堪えて、代わりに、片腕で抱き寄せる)
(振り向いて、状況を確認する。今頃、罪悪感なんてない。どこか冷めた目で、歩を進めて)
(無効票)
梶野・龍夜 2021年10月12日
(ゴガシャン。軽々しく振り上げたその妖刀で思い切りアタッシュケースを叩き潰した。床ごと凹んだそれをさらに突き刺して、刀を振るう。あっさりと飛ばされたケースは窓を突き破り、はるか遠くから音を響かせた)
(、)
梶野・龍夜 2021年10月12日
二度と俺たちに手を出すな。そして二度と、人に危害を加えるな。動物にも。
……俺は、お前を許さないし。
きっと、世界もお前を赦さない。
(瑠璃色に鈍く煌めく妖刀を突きつけながらそう告げて、足早に発電機のある部屋へと向かった)
龍・雲嵐 2021年10月12日
ぇあ?
(アタッシュケースが)
(叩き潰されて)
(なにかが突き立って)
(それから、とんでいって)
――お、おれの!!おれのくしゅりぃぃぃいいい!!!
(無様に手を伸ばすも、半グレであろうと只の人間である山川・巨塔に届くはずもなく。
ただ遠く、視界から消えていくのを見ることしかできなかった)
(無効票)
龍・雲嵐 2021年10月12日
(そんな男が、刀を突きつけられて、折れた心で何か言い返すことが出来るはずもなく)
ひぃあっ!? ち、ちくしょう、ひぃ、ちくしょうぅぅぅぅ……!
(突きつけられた刀から逃げるように、部屋の隅へと這いずってうずくまる)
(、)
龍・雲嵐 2021年10月12日
(――後には、部屋の隅でガタガタ震える山川と、発電機の破壊音が残るだけだった)
龍・雲嵐 2021年10月12日
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