私立MM学園

【個】メイド・イン・カブキチョウ

ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
狙い撃ってみて分かったこと。
思ったよりも発電機が分散されていて、射線の通る場所を探すのに一苦労してしまう。

これでは効率が悪い。

だから――――


#クリスタ・コルトハード
#ミサゴ・ゾーリンゲン




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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
右に構えた銃剣、フラットラインの銃口を真っ直ぐに向けて放つ。

          リリィエル ・ クロノワール
「悪いけど、剣舞はアンタよりすげえのを見たことがある」
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
. ステイシス
“遅延骨格”

――服の下に着こんだ“魔術式”が起動する。
ライフルが銃弾を吐き出すと同時、その反動がスーツの刻印を伝って左足へ。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
左足が屋上を蹴る、雷鳴めいた音。
反動を踏み込みへ乗せ、弾丸のような速度で軽快な舞いの内側へと侵入し、



銃剣、銃身の下に備え付けられた刃を振るう。                    
――――ただし、踏み込みと同じく、いつの間にか左手に握られていた大口径リボルバー4発分の“反動”を乗せた、突風のような凄まじい速さの一撃を。
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クリスタ・コルトハード 2021年10月9日
正直に言えば、侮っていた。
廃ビルでの一戦で、力量は測ったつもりだった。
口にした3分という期間は、それに基づいたものだった。
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クリスタ・コルトハード 2021年10月9日
「……っ!」

だが繰り出されたのは、想定よりも遥かに速い踏み込み、遥かに速い斬撃。
距離を詰めるため跳んでいる最中に剣舞の間隙を縫って滑り込んできた銃剣。
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クリスタ・コルトハード 2021年10月9日
受けるには、体勢があまりに悪い。
上体を強引に捻って、空中で速度を殺す。
だがそれでも、躱しきれない。
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クリスタ・コルトハード 2021年10月9日
.
刃が、メイドの腹を切り裂いた。
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クリスタ・コルトハード 2021年10月9日
一歩引いて剣を構え直すと、じわりと服を赤く染め、滴り落ちる血。

「……なるほど、なるほど。見事な隠し玉ですね、ミサゴ様。それに動きへの対応も、随分と……」
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
――獲ってはいない。
流石に、まだこの速度に振り回されている部分が少なくないのもあるが――単純に、相手のほうが自分よりも数段上手だ。

だが、
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
「能ある鷹は爪を隠すんだよ」

オレは“鶚”だから。なんて、薄く笑って。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
――――――止まるな。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
. シャープシューター
「“弾速強化” ――――疾ッ!!」

フェンシングめいた、鋭い突き。
――と、同時に放たれる射撃。

刺突の加速を得て、通常よりも速い弾速を得た弾丸がさらに加速して、まるで鞭のように遠くの間合いを“突き穿つ”
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
そして、放たれた“射撃”を元に弾丸に一瞬遅れて飛び込みながら――その勢いを殺さず、真っ直ぐの蹴りで屋上からメイドを叩き落としにかかる。
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クリスタ・コルトハード 2021年10月9日
「これは一本とられましたね」

続く銃弾も、疾い。
一息つく隙もなく、攻め立てられる。
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クリスタ・コルトハード 2021年10月9日
剣舞によって炎剣がきらめいて、的確に弾道を通り、弾丸を斬り捨てた。

「打破しないと、このまま果てるまで攻められそうですね、こんなときでなければそれも良いのですが……」
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クリスタ・コルトハード 2021年10月9日
炎剣を握ったまま、人差し指を伸ばす。
その軌跡に、炎のエレメントを一つずつ残していく
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クリスタ・コルトハード 2021年10月9日
それが10か20か溜まったころ、一斉に剣の形へと変化した。
クリスタが剣を振るうのを合図に、それがミサゴへと向けて不規則な軌道で飛んでいく。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
切り捨てられる銃弾の影に、自分自身の体を隠し、弾丸よりも一拍遅れて踏み込む。
迎撃の剣が奔るが、蹴りの態勢に入った体は易々とは止まらない。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
当てずっぽうに放った銃撃のリコイルを蹴り脚へと集約し――
強引に、蹴り脚を地面に叩きつける!
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
再度、強引に加速したまま全身を彼女へと、しなだれかかる――というには随分強引に突っ込んで。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
「……センパイ、ちょっと下まで付き合ってもらうぜ」

――――その腰を抱いたまま、ビルから落下した。
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クリスタ・コルトハード 2021年10月9日
剣の投射を掻い潜ってきた黒狐へと目を向けた瞬間、胸にかかる衝撃と、浮遊感。
足が屋上の床から離れて、ビルの縁から落ちていた。
空を蹴って戻ろうにも、密着したミサゴで自由には動けない。
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クリスタ・コルトハード 2021年10月9日
「おやおや、無理矢理がお好みですか? それならそうと早く言ってくだされば良かったのに」

くすりと笑って、炎剣を手放す。
腰に回された手に、応えるように背中に手を回して囁く。
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クリスタ・コルトハード 2021年10月9日
「じゃあ、我慢勝負といきましょうか」

落下しながら、万力の如き膂力でミサゴの身体を締め付けた。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
「――――ゲ」

これは、流石に想定していたよりもずっとキツかった。
捕まるわけにはいかないと思ってはいたが、思っていた以上に即死できるだけの力で――!
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
超至近距離

ねじ切られる

不安定な足場

ねじ切られる


なら。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
身を捩る。当然、逃げられはしない。
もぞもぞと、締め付けられる中で体を動かして――


――右の掌底を、彼女の左胸に添えた。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
『銃使いをを怖れる必要はない』

それは母の言葉だった。銃による射撃は、その速さも攻撃性能も、いくら鍛えたところで定められた領域を超えてくることはまずありえない。
だから、銃弾よりも速く動くことができて、それを捌くことができるのならば怖れる必要はないのだ――そうだ。

しかし、そんな母の口から、例外をひとつ聞いたことがある。

発砲の反動を基点とした、銃撃を拳と見做す格闘術。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
―――――銃弾拳法と呼ぶ、それの話を。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
.


            リコイル
――――ため込んでいた“反動”      リコイル
狙撃の際に撃った、3発の対物ライフル。その反動を、右の掌底へと送り――発露させる。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月9日
「―――ナックル・パラベラム」

 ナックルバレル・ガンマ
“銃弾拳法 三式”
“これが出来れば一人前”と言われる技術。

 ステイシス
“遅延骨格”のまじないと合わせて、漸く再現できる程度の“紛い物”ではあるが、対物狙撃銃3発の反動を乗せたそれは、威力だけは十二分で――――!
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クリスタ・コルトハード 2021年10月10日
ミサゴが身を捩るほどに、強く締め付ける。
骨が軋み、血の巡りが悪くなるほどに。

「もー、俺とのハグはそんなに嫌ですか? 傷つきますよ?」
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クリスタ・コルトハード 2021年10月10日
からかうように笑った途端に、胸元に走る衝撃。

「……ッ!?」

驚愕で、血のように赤い目が大きく開かれる。
弾丸そのものが直撃したわけではない。
だが、それにも匹敵する衝撃が胸を貫いて───。
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クリスタ・コルトハード 2021年10月10日
高密度の筋肉の鎧を越えて、内臓へと伝わっていく破壊力。
肺の空気が、いくらかの血と共に吐き出される。
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クリスタ・コルトハード 2021年10月10日
───だが、腕の力は緩めなかった。
さらに強く、ミサゴの身体を抱きしめる。

「本当に、本当に大したものですね」

強い。以前戦ったときよりも、遥かに。
だからこそ、ここで確実に排除しておかなければならない。
そうしなくては、計画に支障が出るから。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月10日
「……マジか、よッ」

やはり、衝撃をただ伝えるだけでは足りないのか。
なんにしても今この瞬間、彼女を突破しうるだけの手札は――――
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月10日
「―――――――」
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月10日
辛うじて動く足。思いっきり、ビルの壁を蹴って落下の軌道を変える。

窓ガラスの割れる音。そのまま、狙撃に使っていたビルの中ほどの階に転がりこんだ。
改装の途中なのか、机や棚のようなものが並んでこそいるが、他には何もなオフィスビルの一角、そんなフロア。
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クリスタ・コルトハード 2021年10月10日
転がり込んだオフィスで、少し距離を取って立ち上がる。
服の汚れを軽く叩くと、血の塊を吐き捨てて、ハンカチで口元を拭った。

「今のはかなり効きましたよ、ええ、ええ」
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月10日
無理矢理縮められていた肺に、たくさんの空気が急に入り込んできて視界が白と黒に明滅している。

息を整える。
フロアの冷たい床に転がったまま。
銃剣は――取り落としたらしい。リボルバーも、空の弾倉に再装填のまじないを使うだけの余裕がない。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月10日
――だから。残った体力の一片を振り絞って立ち上がり。

中指を立てて、

「――――とっくに3分は過ぎてんぞ」


. リ リ ー ス
“停滞解除”

アンタはもう5分でも10分でも、ここに釘付けにさせてもらう。
最後の悪あがきとして、このビル全体に仕掛けたあらゆる罠を起動させた。
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クリスタ・コルトハード 2021年10月10日
ミサゴの言葉に、ぴくりと眉を動かす。

「そう……ですね。すっかりしてやられてしまいました」
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クリスタ・コルトハード 2021年10月10日
胸元の結晶に手を添えて、息を一度吐いた。
途端にクリスタから放たれた濃すぎる殺気が黒く空間を歪めて、オフィスのフロアを埋め尽くしていく。

「……こんな短期間にまた使うことになるだなんて思いませんでしたけど、仕方ありませんね」
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クリスタ・コルトハード 2021年10月10日
ありとあらゆる方向へと向けられる殺気の刃。

「───鏖殺刃・ナギ」

クリスタがその名を呼ぶと同時にそれが実体となって、罠も、瓦礫も、全てを薙ぎ払っていく。
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クリスタ・コルトハード 2021年10月10日
すでにふらふらのミサゴにぶつけるのは、圧ある殺気だけで十分だ。
気を失うであろうそのときまで、困ったように微笑むクリスタが、ミサゴを見ていた。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月10日
――――『撃てない分も、オレが撃っておいてやるよ』
とは約束したが。

「……これは流石に」
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月10日
初見では無理だ、と苦笑して――――
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月10日
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月10日
――――刃が終わるころ。

経ったまま意識を手放した黒狐の指先は、彼女が居た場所へ向かって鉄砲を象った手の人差し指――銃口を向けていた。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年10月10日
次は外さない、と。
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