私立MM学園

【個】卑怯、非情、非日常

十埼・竜 2021年9月20日
――――自分の日常と「それ」が接している場所なんて、
どうしたって真っ先にそこが思い浮かぶ。

ここは某ショッピングモールから伸びる、地下道の抜け道。

#十埼・竜 vs 卑危谷・劣(#奉利・聖 )




■STOP
2
1

十埼・竜 2021年9月20日
(―――リストの名前のひとつに、見覚えがあった。
「おわりんもいちおー覚えといてねぇ、これブラックリストーっつってさぁ」――――)

(このショッピングモール地下への通路は店舗側からだけじゃない。ダクトも配線もところどころ剥き出しの抜け道を、ぼくは歩いている。
聞き込みや情報の抜き取りで繋ぎ合わせた事実が、どうやら、この先の歌舞伎町に繋がっているようだったからだ) (無効票)
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奉利・聖 2021年9月20日
【卑危谷・劣】

(興奮するなァ)

(すごく凄くすんごくっ、興奮するッ)

(「こいつに報復してこい」って人相見せられた時からもう、興奮が止まらないんだよォッ。わかる?わかるよなァ?)
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奉利・聖 2021年9月20日
【卑危谷・劣】

(この道はさァ、よォく知ってンだ)

(あのショッピングモールの関係者ならさァ、通ると思ってさァ)

(ここで待ち伏せてたんだッ。ちゃんと、ちゃんと我慢してさ)

(ァハァッ!来た来たきたきたキタキタ)

(何が復讐者だよッ!他の連中も言ってたぜ!案外ちょろい奴もいるってさァ!!このひょろくせえガキもそうだろ?そうだろォ~!)
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奉利・聖 2021年9月20日
【卑危谷・劣】

「サァプラァァァァイズ!!!!」

(──突然、死角から飛び出してきたのは、黄色いレインコートの男。金属バットを振りかぶって、躊躇なく振り回す) (無効票)
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十埼・竜 2021年9月20日
(勝手知ったるぼくの庭だ)(素早く通り抜けてしまえば大丈夫)(確かに明確に学生狙いのヤツが出始めてる、って聞いてはいたけど。あの学園に学生が何人いると思う? そのうち授業にろくに顔も出さないようなぼくに目を付ける可能性は?)

(――――その全ての楽観を、咆哮と風切り音がブチ壊した)

(視界に過る黄色)ひっ(辛うじて体を捻る)ひぁ(足がもつれて)(がぃんッ!!と嫌な金属音が通路中に反響した)(泥と油と埃塗れの壁に転げるように背中を叩きつける)
あ、ぁ……(喉に貼り付いた悲鳴を絞り出しながら、「そいつ」を、見る) (無効票)
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奉利・聖 2021年9月20日
【卑危谷・劣】

「イぃ~~~ねェ~~~ッ!」

「好みとはちょォ~~ット遠いけどけどよォ」

「“イイ声”してんじゃん君ィ~~!!」

(それそれそれソレソレよォ!いきなり目の前で恐怖が現れてェッ!みっっっともねェ~~~声出すのがッ!たっまんねェ~~!!)
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奉利・聖 2021年9月20日
【卑危谷・劣】

(これだからさァ!不意打ちは最高に気持ちいいんだよねッ!)

「なぁなぁなぁナァ!復讐者だからってさァ!こういうことにならないワケじゃねェーーのよッ!大人ナメちゃダメだってさァ!義務教育で習うんじゃないノォ~?なァ学生クン」

(ガリガリガリガリ)

(金属バットを引きずって、お顔はいけぇ~~~ん) (無効票)
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十埼・竜 2021年9月20日
(劣情と快感を隠そうともしない声を叩きつけられるのは気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い)は、ッ、(背中は壁、左右どっちかに逃げる? あいつが居る側は論外、じゃあ引き返す――――)
(がりがり、金属バットと薄汚れたコンクリートが作るノイズにはっと顔を上げて)
(その近さに愕然とした)

(奇妙な異形のヘッドホンで耳を塞いだ、まだあどけない白い少年の顔にはありありと戸惑いと恐怖と、うっすら涙まで張り付いている)
………ぁ、んた、は(口を動かせ、動けよ、何しにきたんだぼくは!!)(……けれど、その「次」が出てこない) (無効票)
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奉利・聖 2021年9月20日
【卑危谷・劣】

「君達がネェ!こぉ~そこそ嗅ぎ回ってるとこのォ、ホーフク担当。分かる?ホーフク!やり返し!100倍返しってワケ!」

「ヒレツなんて呼ばれてんのッ!イヒッ」
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奉利・聖 2021年9月20日
【卑危谷・劣】

「泣いちゃった?泣いちゃったァ~~~!!??最っ高!やっぱこれだよなァッ!女子供は惨めに泣いて叫ぶのがイィ~~のよっ!」

「ァハァッ!濡れてきたなァ…ヤァッベェよ…!3日ぶりに果てちゃいそうだァ……もっと聞かせてよォ!!」

(金属バットを再び振りかぶる)

(が、これは当てる気のない脅しだ) (無効票)
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十埼・竜 2021年9月20日
ほう、ふく……?
(かすれ声で弱々しく繰り返す。ほうふく、報復?ぼくが?なんで?(そんなの決まってるじゃないか知りすぎたからだろ(相手は番長クラスをどうにかする奴らだぞ!!)

(つまり)(ぼくの掴んだ糸は、掠っては、いるのか)

……歌舞伎町、に、本当に何かあるってこ……
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十埼・竜 2021年9月20日
(風切り音)
(頬に風圧)
(ノイズイーターを貫通して届くバットの轟音)
(抉られた壁の欠片が顔に飛ぶ)

(頭を庇うように腕を持ち上げるのも)ひぃっ、ぁ、ああああああ(情けない悲鳴が喉から漏れるのも、致命的に遅い) (無効票)
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奉利・聖 2021年9月20日
【卑危谷・劣】

「アァ~あとなんだっけなぁ、この先のモールにさァ。恨みがある奴がい~~~ンのよォッ!ボクちゃんそこの関係者なんだっけェ~?」

(オッサンの依頼受けてチョ~~正解っ!!こーーんな弱そうなガキを嬲れるんだもんねェ!)
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奉利・聖 2021年9月20日
【卑危谷・劣】

「ン~~~~~~ッ!!ァハァッ!!!それそれそれがイイッ!!ヤベェッ!ヤベェッて!首絞めてヤった時みてェに!興奮する興奮するン~~~~~ッ!!!!!」

「アァ~~~もうヤバイ!!漏れる漏れる漏れる!!」

(──この男は、完全に目の前のガキを舐め腐っている)

(復讐者を恐怖させて、悲鳴を聞けることに興奮している)

(故に、油断をしている。とても、とても)

(脅しのように、バットを掠めさせながら)

(悦に浸り続けている) (無効票)
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十埼・竜 2021年9月20日
(怖い怖い怖い気持ち悪い気持ち悪いきもちわるい)
(竦んだ体を丸めてそれでも音も目の前スレスレを過るバットも翻る黄色いレインコートもなにもかも消えてはくれない)
(喉からかたちにならない悲鳴を垂れ流しながら)(これは報復でこいつはそれをこれを楽しんでいてぼくの声を貪り尽くしたらあとはどうなるんだろう)
(きもちわるい)



(ヘッドホンに、指が触れた。)
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十埼・竜 2021年9月20日
(消してしまえる。)
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十埼・竜 2021年9月20日
、っ(喘ぐように息を継ぐ、鱗の、骨の、甲殻の、縁が指先を抉ってもお構いなし、藻掻くようにノイズイーターを毟り取り)

(……一瞬だけ、世界の音がクリアに聞こえた。)

(その直後に、やってくるのは)

https://tw7.t-walker.jp/garage/gravity/show?gravity_id=10245
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十埼・竜 2021年9月20日
(――――百億の蝉を耳の中に突っ込まれたような轟音と)
(それらが耳の中を這いまわり三半規管を食い破るような)
(天地がうねって混ざり合うような)
(あらゆる光が極彩色を纏って踊り狂う)
(吐き気と苦痛を)

(そういう呪いを、ぼくとあんた二人で分け合うことになる)
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十埼・竜 2021年9月20日
(――――その呪いに、ぼくは、まだ慣れている)
(ノイズイーターを痛いほど握りしめながら、もう、叫ぶことはやめていた) (無効票)
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奉利・聖 2021年9月20日
【卑危谷・劣】

「おらァッ!泣けェッ!叫べェッ!」

「イーハッハッハッハッ!!もっと!もっと───」

(びきりっ いやな おと あれ? まって まっ──)
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奉利・聖 2021年9月20日
【卑危谷・劣】

「あ゛っ゛ がっ゛ お゛ごっ゛」

「ギ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ィ゛イ゛ッ゛!?」

(スタングレネードを何千も食らったみたいに)

(音が 音が音が音が音が音が音が音ががががががががが)

「ブ゛ォ゛ェ゛ッ゛ ガ゛、ガキ゛何゛を゛っ゛」

(胃液を吐き出して、苦痛に呻く)

(速くこの音を振り払いたくて、バットを鈍く振り回しても)

(痛い 耳が 脳が 身体がァッ!!) (無効票)
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十埼・竜 2021年9月20日
(ぢかぢかする視界の向こうで、『それ』は確かに動きを弱めた)
(ああ、そうだろうよ)
(それすげーくるしいんだよなあ!!)

(ノイズイーターを被って耳を塞ぎ直す。息を吐く。ここからはさっさと済ませなきゃいけない――――こいつが復活する前に)
ねぇ。そっちにはクリスタ・コルトハードが……白い髪のメイドがついてる。きみたちの本拠地は歌舞伎町にある。それは合ってる?
(きっとぼくの声だって轟音として届くだろう。それに対して『正解』を思い浮かべてくれさえすればいい。)
(ぼくのスカイセンサーは、それを逃さない。)

https://tw7.t-walker.jp/garage/gravity/show?gravity_id=10387 (無効票)
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奉利・聖 2021年9月20日
【卑危谷・劣】

「何゛な゛ん゛だ゛よ゛お゛前゛ぇ゛!!」

(さっきまで お、おぉぉおぉ俺が有利だったのに!)

(こんな、こんな──痛い痛い痛い痛い!!)

(轟音の中に、言葉の轟音が混ざって)

(思い浮かべる。あの何もかも見透かしてそうなメイドのツラ)

(アイツが 痛い 苦しい 俺らンとこに きてっ!)
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奉利・聖 2021年9月20日
【卑危谷・劣】

(思い浮かべた情景は、全てを克明に喋っていた)

「早゛く゛っ゛ 止゛め゛ろ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛」 (無効票)
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十埼・竜 2021年9月20日
(答えは得た。)

(もう一言だって、こいつの前で洩らすつもりはなかった)
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十埼・竜 2021年9月20日
…………っ(のたうち回る黄色いレインコートに、蹴り一発入れる勇気もない)
(うつろな目を一瞥して、背を向ける――――逃げ出す足音も、きっと聞こえないだろう)

(耳を埋め尽くすそれは、今やただの残響。けれど聴覚と視覚を取り戻す頃には、復讐者の姿はとうに失せている。) (■STOP)
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奉利・聖 2021年9月20日
【卑危谷・劣】

「ぜぇ゛っ゛ ぜぇ゛っ゛ ぜぇ゛っ゛」

「ふ、ふざ、ふざけ、やがってェッ……!!!

(あのガキの反撃は、俺の、俺の俺の俺のォ!自尊心に傷を付けたァッ!!許さねェぞ…舐めやがって…!萎えちまったじゃねえか!あと少しでイったのにヨォォォォォォッ!!)
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奉利・聖 2021年9月20日
【卑危谷・劣】

「ブッッッッ殺してヤラァァァァァァァァァァッ!!!!!!」

(怒りのままに、金属バットを振り回して)

(コケにされた憎しみを、必ず晴らしてやると)

(すえた地下道で、卑劣な男は叫んだ) (■STOP)
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