【イ】エムライブ 遠遠・忽の怪談(終)
遠遠・忽 2024年2月7日
ステージにセーラー服姿の少女が上がって来た
しずかに、ゆっくりと
BGMはなく、照明は落し気味に
怪談トークのはじまりはじまり
出演者:遠遠・忽
観客席:
https://tw7.t-walker.jp/club/thread?thread_id=51419
1
遠遠・忽 2024年2月7日
どうも、遠遠・忽です
名前くらいはみんな知ってもらえてるやろか?
そうなっとったら幸いやで
ちなみにディアボロスとしてのジョブは妖怪博士やで
遠遠・忽 2024年2月7日
さて、今日は怪談をやらせてもらうんやけど
その前にまずは『妖怪』ってなんやろか?
っちゅートコをお話しようと思います
遠遠・忽 2024年2月7日
辞書を引いてみましょ
(そう言って手に持った端末をポチポチ……読み上げます)
「妖」は「あやしい。あやしげな。また、もののけ。」
「怪」は「あやしい。信用できない。ふしぎな。」
「あやしいもの。ばけもの。もののけ。」
遠遠・忽 2024年2月7日
……同じやなー
遠遠・忽 2024年2月7日
まあ、同じ意味の言葉を重ねて強調するんはちょくちょくあるわな
つまり「あやしくて、あやしい、ふしぎなばけもの」
それが、妖怪
遠遠・忽 2024年2月7日
で!
そんな妖怪の代表格ゆーたら
何が思いつくやろか?
(そう言って耳に手を当てて聞く仕草をします)
遠遠・忽 2024年2月7日
一番が雪女はちょっと珍しいかもしれへんな
ゆーめーではあるけども
ぬりかべにはこちらもお世話になっとります。妖怪博士としてー
ぬらりひょんは総大将やーってハナシが有名やから印象強いんかな?
遠遠・忽 2024年2月7日
まあ、色々あるわな
そんな中でも今さっき挙げた「あやしくて、あやしい、ふしぎなばけもの」
にぴったり相応しいんがおるんや
それは『鵺(ぬえ)』
夜に鳥って書くんやけども
(中空に文字を書くように指をふりふり)
……画数多いなー
遠遠・忽 2024年2月7日
こいつも辞書検索すると――
「正体がつかめない、はっきりしない物事」ってのが出て来るんや
ほら、ぴったりやろ?
まあなんや漫画の題材になったり、ゲームに敵で出て来とったりもするな
その時は「頭は猿、手足は虎(とら)、体は狸(たぬき)、尾は蛇、声は虎鶫(とらつぐみ)に似ている。」
とされたりしとるね
遠遠・忽 2024年2月7日
これは諸説色々あるんやけども
元々「不思議な声で鳴く得体の知れないもの」とされていた存在に後年の色々な話が合わさって見た目が設定されて『鵺』とされたというハナシや
遠遠・忽 2024年2月7日
ちなみに「ぬえのような」という言葉で「得体がしれない」って意味で使われたりもするで
遠遠・忽 2024年2月7日
さて、妖怪に興味を持ってもらったところで……
持ってくれた?
持ってな!
ところで、今日の怪談、語らせて頂きます
遠遠・忽 2024年2月7日
(マスクさんみたいな……)
遠遠・忽 2024年2月7日
怪談をひとつ、お話しよう
遠遠・忽 2024年2月7日
これはよくあるお話です
遠遠・忽 2024年2月7日
ある夏の日に肝試しをした少年たちが出会った怪異の話
遠遠・忽 2024年2月7日
三人の少年、A君B君C君としておこう
彼らは心霊スポットに肝試しに行くことになった
きっかけもそこまでの経緯もありがちな話で
「近くの廃ビルに首なしの幽霊が出る」と言う噂を聞いたA君がB君とC君にその話をしたところ、誰が言い出したか「面白そうだ」ということになり
……引くに引けなくなって、行くことになったというわけだ
遠遠・忽 2024年2月7日
そこに出る「首なし幽霊」にまつわる話もちょっとショッキングなものだが、よくある話で「バラバラ殺人事件の被害者の幽霊」で「見つかっていない首のありかを探して彷徨っている」とのこと
A君たちは「俺たちが見つけてやるさ!」とやってきた
遠遠・忽 2024年2月7日
見慣れた景色も夜の空気の中では違って見え、何処か不気味になるものだ
三人は軽口を叩きながらビルの中を進んで行く
明かりはそれぞれが持った懐中電灯のみ
進むにつれて口数は少なくなりざくざく、かつかつと砂利を踏む音がよく響く
遠遠・忽 2024年2月7日
ここから進むにしても、もう引き返すにしても結構な道程になってしまう
……そんな辺りまで進んだとき、B君が何かに気付いて声をあげた
「あっ……」
「どうした、B」
「……そこの壁んとこ、何か書いてる」
言われて壁を見ると確かに何かが書いてある
遠遠・忽 2024年2月7日
←あたま からだ→
遠遠・忽 2024年2月7日
三人はぞくりと鳥肌が立つのを感じた
考えればいくらでもこじつけることはできる
普通に考えれば噂を知っている誰かが書いたいたずらだ
でもこういうのは『理屈じゃあない』
「どうする?」
「……そりゃあ……あたま、だろ」
大した――褒められるべき胆力だ
集団心理と言えばそれまでか、何人かいるせいで……とも言える
遠遠・忽 2024年2月7日
少年たちは「あたま」へと向かう
遠遠・忽 2024年2月7日
何処か遠くから聞こえる虫の声を聞きながら進んで行く
かつかつ、じゃりじゃり、かつかつ、じゃりじゃり
遠遠・忽 2024年2月7日
「この先ってどうなってるんだっけ?」
「たぶん、行き止まり……」
そう、行き止まりが見えて来た
でもその行き止まりの壁に何か「書いてある」
立ち止まることも出来ずにそれを見に行く三人
そこに書いていた言葉は――
遠遠・忽 2024年2月7日
うしろから きてる
遠遠・忽 2024年2月7日
「「「うわああああああああああああああああああ」」」
遠遠・忽 2024年2月7日
緊張と我慢の糸が切れた三人は叫び声をあげて走り出した
冷静に考えると戻ったら鉢合わせすることになるのだけど
勿論そんなこと冷静に考えていられる者はその場にはいなかった
急いで戻って階段を駆け下りてビルから飛び出すまで止まれない
遠遠・忽 2024年2月7日
いや、外に出ただけでは止まれない
そこからさらに走りに走ってビルから離れたコンビニまで戻ってやっと息をついた
遠遠・忽 2024年2月7日
そこでAが聞いた
「なあ……見たか?」
「……うん」
「ああ」
端的な質問に言葉少なく答えるBとC
「階段まで戻る時に……」
「言うなっ!!……みんな、見たならもういいじゃん」
「そう、だね」
『見た』という事実だけで十分だった
詳しく話すことで「それ」がまた目の前に現れてしまう気がして……
遠遠・忽 2024年2月7日
さて、こうして生還した三人は特にそれから怪奇現象に悩まされたり
祟られたりはせずに平穏にくらしました。めでたしめでたし
遠遠・忽 2024年2月7日
ただ、少しだけ続きがある
遠遠・忽 2024年2月7日
少年たちの訴えなど諸々の事情が重なって「あたま」の辺りの捜索が行われたのだ
その際になんと死体の頭部が見つかり、事件となった
犯人も捕まり、法の裁きを受けたという
遠遠・忽 2024年2月7日
少年たちはそのニュースを耳にして、勿論話題になった
「なあ、あの’あたま’のやつ」
「ああー、誰かに見つけて欲しかったのかな」
「そうだね、だからあの時笑ってたのかな?」
「……笑ってた?」
「首のない身体だけだっただろ?」
遠遠・忽 2024年2月7日
「え、俺が見たのは薄っすら笑ったあたまだけだったよ」
遠遠・忽 2024年2月7日
同じものを見ていると思っていも、そうであるとは限らない
と、いうお話
あなたの『ぬえ』はどんなものでしょうか?
遠遠・忽 2024年2月7日
なにをおもいつくでしょうか?
(ふっと蝋燭が吹き消され真っ暗になりました)
遠遠・忽 2024年2月7日
(ステージ上に人の気配はありません)
遠遠・忽 2024年2月7日
【このステージは終了しました】