【イ】豊饒祭2023:開会式
奉利・聖 2023年11月18日
◆
壇上に上がるは、金髪の偉丈夫。タトゥーとピアスの厳つい風貌に反して、表情は穏やかである。
緑のクラスを纏める“常葉番長”──豊穣祭運営責任者の一人である。
「多数の皆様の協力を賜り、今年も無事に豊穣祭を開催できること…大変嬉しく思います」
生徒一人一人の顔を見渡して、軽い一礼をしてみせる。
「ここまでの尽力に多大なる感謝を───さて、堅い話はここまでにしておきましょうか」
もう少しお付き合いくださいね、なんてにこやかに笑いかけて。
「さて、今年は何かと激動の年でした。七曜の戦があり、私事にもなりますが…番長の代替わりも発生いたしましたね」
「その変化の年に倣い、今回の豊穣祭は一つ…新しい試みの先駆けもご用意しております。お楽しみに」
軽い宣伝もした後で、表情を少しだけ引き締めた。
「今年4月の新入生も、中途で入学された方も……この新宿島、この学園での生活は慣れたでしょうか」
「慣れない土地、繰り返される戦い。外から来た方々にとっては息つく暇も無いかもしれません」
「けれどもこの場は、そんな方々でも心を癒し、楽しめるように作られました。我らが心身の豊穣を願って、素晴らしい時にいたしましょう」
パンッ!柏手一つ……これを以て開会の合図とする。
「それでは――これより豊饒祭の開催です」
「我らが護り、築き上げた日常を」
「どうか存分に、お楽しみくださいませ」
0