【個】Nocturne
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
学園の傍。刻逆の影響で、施工業者が消失してから手つかずのまま放置されている工事途中のマンション。
5階までは凡その基礎工事が進んでいるが、それより上の階は剥き出しの鉄筋と足場、資材を運ぶためのクレーンが置き去りにされている。
――――そんな場所の、3階。規則正しくコンクリートの柱が並ぶフロアで狐は静かに待っていた。
2
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
どうするかは、やりながら考えるわ。
(大きく、ただし全速でバックステップ。ただでさえ速さで勝てない相手)
(一瞬でも時間を稼ぐには、こちらも全力で走る以外にない――“自分自身に魔術を使えない”、ミサゴ・ゾーリンゲン最大の欠点だ)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
“――――”
(片腕で顔面を庇いながら、リボルバーの引き金を引く。5発。弾倉の中を、出来うる限りの最速で“ばら撒く” 銃声の影で、一つの詠唱を終わらせながら)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
良いでしょう。
(ふわり笑って、指先を離れる感触を見送って、)
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
(――銃口が向く度に小刻みに消えて、現れて、追いすがる)
(呪文も動作もなく、執拗に繰り返される「同じ動き」。出方を見るように楽しげに笑む目元)
(別段、弾倉と弾数を理解した上の動きではなく。ただ次の射撃がない、と見て取ると――今度はより鋭く、貴方の襟元に向けて、開いた掌を伸ばす――!)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
そこは――――
(視線、殺気、自分自身の本能が最速の反射で体を動かす)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
流石に、遠慮がなさ過ぎるなッ
(伸びて来た掌を、左ひじで迎撃して――――)
(“爆ぜた”)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
. チェンジリング
(“装甲置換”によって「何かが触れると爆発する」性質を帯びた左腕のガントレットが、触れられるや否や粉々に砕ける)
(衝撃に、よろめくように後ろへ下がって間合いを取る)
(――鋭い破片が2人の間へ、行く手を遮るように飛び散った)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
わわっ!?
(なんて、可愛らしい声。完全に無警戒な様子で、もろに爆発に、そして爆ぜた破片に巻き込まれた)
(確かに避けられずに傷ついたのが、確認出来るだろう)
(事実、それ以上追いすがることはできず――)
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
――――、
……いったぁ。
なんです、今の。火薬……ではありませんわね。でも、火の魔術でもなく……概念的な置換? はなから「これはそういうものだ」と世界を騙した――とかでしょうか。
……どんな方法にせよ、わたくしへの対処としては、大正解ですが。
(なんて。ぶつぶつと言いながら)
(焦げた袖口から覗く、無傷の真っ白い手を擦っていた)
(その上半身、制服と長ランにも、細かい傷や穴があり。けれど、一度は与えたはずの肉体的なダメージは、離れた時にはもう残っていない)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
(既に2回、その飛び抜けた能力を目の前で見ている)
(――――止まるな。目の前の敵を少女と思うな)
(“彼ら”はヒトの形をした、人外の類だ)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
流石にいてえな……ッ(指向性を付けているとはいえ、至近距離の爆発にしびれる左腕をだらりと垂らしながら、柱を縫うように、視線を切りながら走る)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
(――――何もないフロア。しかし、何も考えずに走っているわけではない。追って来れば無数のボールベアリングを放つクレイモアが、予め用意しておいた数発の“遅延狙撃”による網が、頭上から適当に降り注ぐ“加速対策”のガラス片が、行く手を遮るだろう。そういう“狩場”を走らせるための、逃げだ)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
あら、あら。
逃げですか? ここから隠れて狙撃とかは、さすがにちょっぴり面倒ですわね――(なんて。ふわりと、笑って)
(ゆらりと手を上げ。逃げる狩人の背を、獣の如く追い始め――――)
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
(続けざまの、爆炎と)
(執拗なまでの追撃に)
(その背を捉えることなく、飲み込まれていく)
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
(――ずずん、と、建設中の建物が、揺れて……傾ぐ)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
(取った――などと、思わない)
(この程度で何とかなるのなら、ここまでの準備をしない)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
(傾いた建物。懐の中でピンを抜かれた赤や青、紫色のスモークグレネードの煙の中でライフルを構える)
“赤外線視” “魔力腔綫”
(視界が熱を捉え、銃身の先に弾を加速させる魔法陣が展開される)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
“貫徹強化” “弾速強化”
(弾倉に込められた銀の弾丸に、魔力の線が奔る)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
“電磁加速”
(銃身が雷を帯び始め――――)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
(爆炎の中から、)
…………あのですねえ、ミサゴくん!
(のんびりとした――いや。少しだけ怒ったような、声がする)
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
(誤解を招かぬように言えば――「全部避けた」わけではない)
(加速できないように無機物で道を塞ぐ、というのは如何にも正しい選択だ。
彼女が加速中に干渉できるもの、できないものには明確なルールがあり、この場合は概ね有効な、観察と考察に基づく正しいミーレ・ベルンシュタイン対策だった、といえる。はなまるです)
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
(「全部受けた」わけでも、ない)
・・・・・・・・・・・・・・・
(まあ、受けても死にはしなかっただろうが、流石に痛いし、消耗もするので)
(小刻みな加速と、そもそも魔術抜きで卓越した体術の限りを尽くして、最小限のダメージに留めながら、)
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
(ああ、後は、そう。――何か魔術の仕込み、その可能性を感じる弾の類だけは、明確に区別して避けて)
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
(あとは、全部治しながら、歩いて出てきただけのこと)
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
(少しばかりボロボロになった制服と長ラン、ちらちらと覗く、白い、無傷の肌)
(少女は、もう、と、可愛らしく頬を膨らませて)
人間相手に使う火力じゃありませんわよ。
そろそろ―――――――怒りますからね?
(あなたの射線に、姿を現した)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
言ったろ。“全力を尽くす”って。
(ぴしゃりと、よく聞こえる耳に聞こえた言葉に応えて)
(――引き金を引いた)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
(バチリと、雷のはじける音)
(爆発染みた銃声を置き去りにして銃弾が放たれる)
(銃弾は音の壁を突き破り、空気圧の銃身でさらに加速し、吸い込まれるように、少女の胸に――――)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
(目を細めて)
(一言の応酬の間に、込められた魔術の意図を読み――や、駄目ですね。「魔術じゃない部分」が分かりません、が)
(……狙い次第ですが、ちょっと良くない、ですかね)
(ええ、きっと正しい対処が飛んでくる。術に起因する逆行である以上、起動できなければ治せない。最大火力、受けたことを認識出来ない速度の攻撃で殺すのは間違っていない)
(……参ったなぁ。ちょっと優秀すぎます、この子)
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
(これだけ食らっていたら。少しは壁らしいところを見せないと――)
(負けても、納得いきませんわよね)
(困ったように、唇を開いて、)
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
『■■■■』
(初めて。何か、呪文らしきものを囁いて)
(それだけ。消えるでもなく、音速を超えた弾丸はその胸に突き刺さり――)
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
(何かが激突して、弾けた音)
(着弾してから時間を巻き戻して治すのとは、明らかに違う光景)
(白い少女の、柔らかな胸元。電磁力に加速され、貫通力と速度を高められた、必殺の弾丸は)
(ひしゃげて、潰れて、突き刺さることなく、止まっていた)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
…………(位置を隠すための煙が晴れていく―――)
時間停止? 違うな。空間の圧縮?
・・・・・・
いや――何か出したか?
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
・・・
いいえ。
なぜ加速したまま殴らないか――という、話ですけれど。
(晴れていく煙を、じっと、見つめて)
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
時間の流れが違うもの同士は、干渉が難しいんですのよ。少なくともわたくしの術理、わたくしの認識においては、そう。
時の流れに置いていかれた孤独なモノは、相手に速さを合わせなければ世界に触れられない。
これはその応用。
速度を少しだけズラして、「触れられない」という属性を強化する魔力障壁。
――すごく疲れるんですけどね。結局のところ受けている以上、「触れるつもり」の相手との、認識のぶつかり合いですから。やってることは、ただのバリアです。
(治す方が楽なんです、なんて。くすりと、笑いながら)
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
素晴らしい攻撃で、術でした。
ただ、減点が一つだけ。
(にっこりと。
――薄れた煙をかき分けるように、貴方に向けて、近付いていく)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
(――――なるほど)
(つまり“このパターン”で用意した“切り札”はこうなってしまうと恐らく通用しない、ということだ)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
理屈は大体わかった。……が、非効率じゃないか?
それなら――ああ(治すほうが楽、と言われれば頷いて)(話の続きを促した)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
物理で必殺を狙うなら、(頭を、とん、と叩いて)ここでしたね。脳を壊し、思考を奪う一撃は魔術師相手にはとても有効。
もちろん、心臓の破壊によって呪的な死を与えられるなら、話は別ですが――胸を吹き飛ばしただけなら、わたくしは死ぬ前に治せます。
ただ、頭で受けたら危険そうでしたので――(言いかけて、返ってきた言葉に、微笑んで)
はい。「非効率的」な手札を、切らされました。
白の番長を追い詰めた、と言い触らして構いませんよ。
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月4日
(そう笑い、ゆっくりと近づきながら)
(見せつけるように拳を固めた)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月4日
(ライフルを肩に担いで――)
それじゃ、アンタも覚えておいてくれ。
確かに、思考を奪える点で行けば頭が最善だが――普通の人間は、胸を撃たれれば逆流した血液の圧力で欠陥を損傷して死ぬ。普通ならな。
(ため息一つ吐きながら、反対側から近づいて)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月5日
(彼女の胸を見る)(弾が本来当たるはずだった場所)
・・・・
(じっと見る) ズラしたのは自分自身なのか? それとも服? 間の空間?
(、)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月5日
仮に自分自身だとすれば、そんな紙一重のことを今、この場でやってのけたってことか?(彼女の服に開いただろう、焼け焦げた穴の辺りを勝手に摘まんで、じっと観察する)
(むむむ…………理屈はわかったが納得がいかない)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月5日
…………………、
(言葉に詰まり、ぎょっと、目を見開いて、胸元を見下ろして)
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月5日
…………、三つ。授業は、それで最後にしましょう。
一つ。――『その疑問は正しく、そして考察は間違っている』。
それ以上は、教えてあげません。貴方がまたわたくしに挑むなら、どうぞ解き明かしてみなさい。
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月5日
二つ。――『魔術師は「普通の人間」ではない』。あなたもね。
ミサゴ・ゾーリンゲン。
観察し、対策を重ね、足りない力を道具に頼る貴方のスタイルは、とても正しい。
未知の探求者ならぬ実学者としてならば、貴方は必ず大成するでしょう。
いえ……その好奇心、本来の意味としての魔術師も、向いていると思いますよ。
だからこそ……『普通』なんてつまらない言葉を使うのは、やめなさい。
神秘を支えるのは認識の強さ。自分を非凡と信じてこそ、人は非凡になれますのよ。
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月5日
(言いながら。三つ目の前に、がしりと、手首を捕まえた)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年9月5日
………………………………。
(別に“普通”という言葉に拘っていたわけではない)
(わけではないが――“魔術師”という言葉に、人よりもねじ曲がったこだわりがあったのは確かだ)
(だからこそ“ズレ”であr―――――)
ん???
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月5日
『レディの胸元に無作法に触れるんじゃありません』―――ああ、いえ。
間違えました。
(にっこりと――明らかに怒っていることが分かる笑顔で)(言って)
(無効票)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月5日
『道具も魔力も尽きた後に勝負を決するのは、殴り合いの強さ』です。
じゃあ。
今から貴方を、私が痛かった数だけ殴りますので。
……抵抗して、いいですよ?
(さんざ好き放題されたのも、口にした通り、割に、怒っていたらしく)
(、)
ミーレ・ベルンシュタイン 2021年9月5日
(――――ゴッ)
(崩れかけのビルに、鈍い音が響いた)