【卍】 青之卍奪戦 蒼天明星 【卍】
竜城・陸 2023年7月29日
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─━==卍奪戦 第弐試合━==ニニニ==━───━==ニニニ==━─━==ニニニ==━─
“蒼海番長”竜城・陸
VS
“無明”三隅・彩乃
━==ニニニ==━───━==ニニニ==━──━“世界創造神話”デミウルゴス==━─
🌍 特殊ルール 🌍
【 歴史は神話によって造られる 】
今はまだ何も存在していない『無垢なる世界』です。
強い神秘に影響を受けて造られる『新たな歴史』を味方につける事で、自身の能力を強化出来ます。
――永き神話の涯てには、紡がれた歴史が遺る。
それは、未来を歩む“人”の為に残された道標である。
────────────【 七月二十九日 二〇〇〇 開戦 】
4
竜城・陸 2023年7月30日
自らに届かんとする楔の軌跡を刃が逸らす。
離れた場所へ突き立ったとて、その撒き散らす光と熱は脅威であるが――
炸裂せんとするその力が膨れ上がった刹那、それを氷剣が貫いて止めた。
“あらゆるものを停滞せしめる”と記された氷雪に象られた剣は、その熱をも留め、命を守る。
竜城・陸 2023年7月30日
後背に回った瞳子の動きも、前から来る彩乃の動きも、具に読めている。
であれば当然、どうするかと問われたならば明白。
ぎりぎりまで引き付けて――
竜城・陸 2023年7月30日
魔術でのブーストにあかせた脚力で、その場を飛びのいた。
雪を踏みしめた足跡がくっきりと、その下の大地に刻まれるほどの踏み込みで高く跳び上がる。
剣が意志を持ち追従してくるのなら、当然にそれを追ってくるのだろうが。
翼持つ瞳子と、翼なき彩乃が、今のようにタイミングを完全に合わせることはできないだろう。
それならば捌くのは当然、容易であるし。
もしそれが追いすがって来ず、その場で炸裂するとしても。
十分に距離を取った上空であれば、余波は己の障壁で十分に抗しきれる程度だ。
そして、魔法使いにして魔術師であるこの身には、離れた敵を穿つ術など幾らでもある。
竜城・陸 2023年7月30日
「意趣返しではないけれど」
熱に焼け出された大地に再び芽吹いた森は恵みを与える。
そこから幾つもの矢が生まれ、魔力を帯びて二人へ襲い掛かる。
その正体は、この少年の生きた時代の魔術師たちにとって最も神聖なるもの――最も魔力を宿すもの。
竜城・陸 2023年7月30日
――すなわち、ヤドリギである。
ご丁寧にひとつひとつに少年の魔術を施されたそれが、まさに雨の如く二人と射掛けられた。
(無効票)
三隅・彩乃 2023年7月30日
突き出した刃は瞳子のものが陸を追い、私のものはまっすぐに飛んでいた。戦いの技術の差だ。
いつしか瞳子の手には二本目の楔が収まっている。
パラドクスで呼び出すそれに数の制限はない。
彼女にとって雨を切るなんて欠伸が出るほど簡単で、加えて剣の先にあるものすべてが射程内なら弾幕に切れ目を作ることだってできる。
右手の楔で弾き、左手でも弾き、翼を利用して反転、蹴りの要領で新たな楔を蹴り飛ばす。そのいずれもの先にある矢が消し飛んでいく。
捌きながら陸へと上昇してゆく。
三隅・彩乃 2023年7月30日
しかし私はそうもいかない。
三隅・彩乃 2023年7月30日
矢が胸を貫く、しかし止まらない。
何も見えぬまま、剣に導かれるまま振るい、結果体が裂けようと止まるわけがない。
「……っく、ふ。あは」
痛いけれど苦しいけれど、それ以上に嬉しい。
嬉しいのだ。瞳子と戦えることが。卍奪の場で戦えることが。
だから苦しくたって止まらないし、笑いがこぼれたりもする。
絶えず瞳子を支えるべく上空めがけて剣を振る。
三隅・彩乃 2023年7月30日
傷口から激痛が広がる。矢傷のせいではない。そこに編まれた魔術の作用だ。
苦痛と怪我に膝をつくが、止まらない。止まりたくはない。
楔を陸めがけて投げつけた。海を泳ぐ魚のように、彼を狙うだろう。
続けて新しい楔を握──れない。矢が利き腕に突き刺さった。
(無効票)
竜城・陸 2023年7月30日
その意気やよし、とでもいうように。
矢雨を弾きながら突き進む瞳子の姿に微笑んだ。
蹴り飛ばされてくる楔を剣で弾く。
上昇してくるそれと距離を取るように、こちらも上昇を続けながら、
竜城・陸 2023年7月30日
それを追ってくる瞳子はもしかしたら視えるのだろうし。
視えずとも彩乃にも、頬に落ちる雪の粒がいつの間にかその勢いを減じていたことに気付くかもしれない。
いつしか、氷雪が薄らいでいた。
光を遮る長い、長い、冬が明けてゆくのだ。
竜城・陸 2023年7月30日
――さて、ところで。
この戦いが始まってから、少年は。
呪歌を除いては、只管に一つの魔術のみを使い続けている。
氷雪に、風嵐に、火焔。土塊に岩石、蔦葉に樹木。
その表現型こそ多彩と見えたろう。
しかし全て、根は一つ。
竜城・陸 2023年7月30日
それは、最終人類史に於いても。
ディヴィジョンと作り変えられた、歪んだ世界に於いても。
自らの生きた、旧き正史の時代に於いても。
変わらぬ、不変にして普遍の信仰に基づいたもの。
すなわち。
【
https://tw7.t-walker.jp/garage/gravity/show?gravity_id=47489 】
――ヒトの、自然を尊ぶ心を元に編み上げた、魔術である。
竜城・陸 2023年7月30日
『我らは常に、自然と共に在るもの』
『あなたが振るう力は、常に――大いなるものたちが貸し与えてくれるもの』
『あなたがそれを忘れなければ、何処までも応えてくれる』
かつて、姉が語った言葉を。
自らの裡に根付いた信仰を。
揺ぎ無く信じて、幾重にも、幾重にも。
ヒトは自然を尊び、自然とともに生き、自然に守られる、と。
ただ、愚直に刻み続け。
竜城・陸 2023年7月30日
その信仰を刻まれた世界は、やがてひとつの歴史を記述するに至った。
“自然とは、朽ちることなくヒトと共に在り、ヒトの営みを支え、ヒトを守るものである”と。
竜城・陸 2023年7月30日
転じて――
竜城・陸 2023年7月30日
᚛ ᚋᚑᚏ ᚃᚐᚏᚏᚔᚐᚌᚓ ᚌᚏᚐ ᚋᚑᚏ ᚄᚗᚂ ᚌᚏᚐ ᚋᚑᚏ ᚈᚔᚏ ᚌᚏᚐ ᚜
不朽の世界は、自然とは。
常に人に寄り添い、その道を守り、
未来を切り拓く尽きせぬ力を与うものである。
᚛ ᚉᚔᚗᚂ ᚌᚑ ᚁᚒᚐ ᚈᚒ ᚃᚐᚖ ᚌᚕᚂ ᚄᚑᚂᚐᚄ ᚜
竜城・陸 2023年7月30日
「ねえ、二人とも、知っているかい」
開けた空には。
「俺の故郷ではね」
満天の星空と、月と。
竜城・陸 2023年7月30日
――青く、どこまでも高く。
「あの光が、視えるんだよ」
極光が映る。
竜城・陸 2023年7月30日
なれば彼の魔術がどんな形を成すかなど、誰もに知れたものだろう。
番長連合に於いて自他ともに認める“出力最強”を誇る赤と青の双璧、
その何れもが得意とする、自らの力を極限まで高めに高めて放つ極彩の一撃――
竜城・陸 2023年7月30日
「さあ、貫け、」
その手に生み出されたどこまでも澄んだ青き極光。
不朽の自然たる空の極光に後押しされて、その威をいや増した光が、
【
https://tw7.t-walker.jp/garage/gravity/show?gravity_id=31790 】
northern light
「――“ 天涯の極光 ”!!」
二人を諸共に飲み込む、一振りの光の槍を成して――天から地へと向けて、投げ放たれる。
(無効票)
三隅・彩乃 2023年7月30日
矢の貫いた腕で無理矢理に楔を握る。握った。
その直後のことだった。
私の体は光に飲まれた。見えなくともわかった。
出力最強はその通りなのだろう。焼かれるどころか消し飛ぶ威力に違いないものが、直撃した。
瞳子のほうはどうかわからない。逃れられなかっただろうと思う。
三隅・彩乃 2023年7月30日
やがて光が途切れ、元の大地がカメラに映るようになると。
クレーターの中心に私が見えるはずだ。
剣を支えにして、かろうじて立つ私が。ちょうどヤドリギを受けた陸と同じ姿勢だった。
三隅・彩乃 2023年7月30日
体の傷は治る。
楔を握っている限り、体の傷はいくらでも再生する。
楔の取り込んだ命が体を補填する。
けれど、人間の体はそんな簡単なものじゃない。
治せばすべて元通りとはいかない。再生するだけ負荷が残る。体の負担は決してゼロではない。
呼吸は微か、虫の息に違いなくて。
三隅・彩乃 2023年7月30日
きっと瞳子は歯を食いしばりながら立ち上がり、再び楔を構えるだろう。
私の方はそうはいかない。
いかないけれど、投げた。もう一度。
戦いはまだ終わっていない。
(無効票)
竜城・陸 2023年7月30日
.The act of providence, that glaciates all in all,
「 “ 其は、遍く熱を奪い、全てを砕く厄災の業 ” 」
紡ぐことばを耳にしたのは、極光の槍が着弾したその余波が消えるより前のことであったろう。
竜城・陸 2023年7月30日
何故そうしたか。
自明のことだ。
彼女たちなら耐えきると、諦めはしないだろうと、それもまた、揺ぎ無く信じていたから。
竜城・陸 2023年7月30日
.echoes in sphere and brings the last sleep from the edge.
「 “ 静寂と停滞齎す弥終の氷獄、天涯満たす星滅の終響 ” 」
詠唱に応ずるように、青い鉱石が淡く光を灯し――
・・・・・・・・・・
青を象徴する卍器、その通常駆動が切れる。
竜城・陸 2023年7月30日
この卍器“鏖殺圏・ゼッタイレイド”の第一相は「魔力を貯蔵する器」である。
世界から火が消えることがなく。風が潰えることがなく。
大地が腐ることがなく。水の流れが留まることがなく。
光が、絶えることがないように。
生きている限り世界への影響――力を生み出し続ける竜城・陸の身からその力を引き取り、適時引き出せるリソースとして半永久的に貯蔵するのが、この卍器の第一相。
竜城・陸 2023年7月30日
つまり、竜城・陸にとって卍器とは。
即時に膨大な力を供給できる、外付けの魔力貯蔵庫だ。
そこから受け取ったリソースで我が身の消耗を回復して、即時の追撃に入る。
竜城・陸 2023年7月30日
眼下に見える姿は満身創痍といった様だった。
絶えそうな息を辛うじて繋いでいるというような姿だった。
なれど、「もうやめるか」などと問うたりはしない。
竜城・陸 2023年7月30日
全霊を懸けてこの場に立つ挑戦者を。
こちらも全霊を以て捻じ伏せることが、最大の敬意で、最大の賛辞だと。
もう嫌というほどに教えられているから。
竜城・陸 2023年7月30日
ふたたび、極光が煌めく。
(――いつだっけ、きみの真似を初めてしたのは)
なんて、ふと、親友たる赤き星を思い浮かべる。
まだその力の道理も何もわからなかった頃、番長になってすぐの頃だった。
その頃よりはこの見よう見まねも――様になっているといいけれど。
竜城・陸 2023年7月30日
青を纏わせた刃を天高く掲げる。
そこから大上段に振り落とす、雲を割り天を衝く極光斬撃閃。
極光の槍を耐え抜いた二人に次の猶予を与えぬとばかり、諸共に斬り伏して――――
(無効票)
三隅・彩乃 2023年7月30日
再び、体が光に飲み込まれた。
楔はどれだけ保持していられたかわからない。すぐに落としてしまったかもしれないし、光の剣閃を最後まで受けてからだったかもしれない。
残ったのは二重にえぐられたクレーターと大の字に倒れる私の姿だ。瞳子がどこにいるのかわからない。
私よりずっと強い子だ、どこかで反撃を考えてるかもしれない。そうであればいいなと思った。
けど、私はもう戦えない。巨人の沈黙よりずっと確かな事実として心に浸透してゆく。
傷はきっとすべて治っている。
立ち上がれないのは体の限界だからだ。瞳子の体に傷が残らなくて良かったと心から思う。
さて。
三隅・彩乃 2023年7月30日
ここから最後の仕事だ。いちばん大事な仕事。
立てないし見えないけれど。
「────……」
三隅・彩乃 2023年7月30日
この『ありがとう』が伝わればいいなと思った。
推薦してくれた人たちに。番長たちにも。
卍奪を運営してくれた人たちにも。
きっと観戦してくれたであろう人たちももちろん。
ありがとう。
三隅・彩乃 2023年7月30日
ございました。
(無効票)
竜城・陸 2023年7月30日
刃を下ろせば極光は散って、赤熱した刃は形を失って崩れた。
ゆっくりと地に降り立った少年は、ぐらりと頽れかけて――
竜城・陸 2023年7月30日
――しかし、縺れる足で踏みとどまった。
情けなく膝をついた姿など、勝者の晒す姿ではない。
竜城・陸 2023年7月30日
倒れた彼女へ近づいていく。
……ざっと視線が、瞳子の姿も探すけれど。
見つけられるかはわからない。
「……立てるかい、彩乃」
返事はあるだろうか。ないだろうか。
(無効票)
三隅・彩乃 2023年7月30日
「────……」
少し休めば、と言ったつもりだけど。
届いただろうか。自信はない。唇は微かに動かせたと思う。
(__〆)
竜城・陸 2023年7月30日
そう、と。
吐息を零すように相槌した。
その横に屈み込んで、彼女の手を取り。
竜城・陸 2023年7月30日
高く、掲げる。
その戦いへの称賛のように。
そして、告げる。
竜城・陸 2023年7月30日
「その覚悟と、その力。確かに受け止めたよ」
「それもまた背負って。新たな一年もこの席を務めることをここに誓おう」
竜城・陸 2023年7月30日
――そうして、晴れ渡る世界を見渡す。
きっとそこかしこに居るのだろう、姿も見えず声も聴こえぬ一人一人を見遣るように。
「では、皆、宜しければ」
「此度の挑戦者へ、尽きせぬ喝采と賛辞を願いたい」
ああ、この時ばかりは。
彼らの顔が見えず、声が聞こえなくて残念だ、と思う。
竜城・陸 2023年7月30日
――彼女の示した覚悟と力を讃える声を。
彼女の耳に届けられないのだから。
(無効票)
三隅・彩乃 2023年7月30日
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三隅・彩乃 2023年7月30日
この青のクラスの試合を以て2023年の卍奪は終了します。
挑戦者も番長も、様々な形で関わった人たちも、みんなお疲れ様でした。
竜城・陸 2023年7月30日
――そうして。
歴史は綴じられたのでした。
(__〆)