【個別】おひめさまと、こどくのとう
十埼・竜 2023年4月1日
依頼を受けたきみは、その病院に辿り着く。
最上階なんてない。
そんな患者は知らない。
不審げな目で見られはするかも知れないが、きみを阻む者は特になく。
エレベーターは、上階に向かって滑り出し────
────止まってしまった。
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ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
【ERROR】セットアップが不十分です。
研究開発部門への連絡……
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
【ERROR】対象が見つかりません。
指揮権の所在の確認……
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
【ERROR】対象が見つかりません。
状況の確認……
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
該当1件。
【命令】対象の保護。
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
世界定義機構内臓型ゾルダート試作機。
仮称、【グレゴール】。状況開始。
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
https://tw7.t-walker.jp/garage/gravity/show?gravity_id=43248
(嘘偽りの命令により。)
(異形の翼を持つ、戦闘機械が、其処に立つ。)
(無効票)
十埼・竜 2023年4月2日
《――――それは》
《あなたは、》
《何?》
(声は、恐怖を含んで)
《クロノヴェーダというもの、じゃ、なくて?》
十埼・竜 2023年4月2日
《うそよ》
《あたし、そんなつもりじゃなくて》
《どうして》
(新宿島出身の一般人にとって、小さな子どもにとって、『それ』は恐怖の対象だ。
直接支配を受けた他の改竄史と違って一度も相対したことがない『それ』は、伝説の天災で、身の毛もよだつ怪談で、悍ましい悪夢)
十埼・竜 2023年4月2日
(周囲の繭壁を構成する糸が、でたらめな悲鳴のように震え出す)
(うねり、垂れ下がり、きみを押し潰そうとする)
(ただし、脆い糸は糸だ。焼くのも断つのも容易だろうし)
(その前に扉を開いてしまうことだってできる。)
(無効票)
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
(異形の翼が、瞳のように周囲を見渡す。)
(そして、糸から響く声に対し。)
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
【肯定】
【当機は機械化ドイツ帝国により製造されたゾルダート】
【個体名、仮称【グレゴール】】
【素体名……】(loading)
【ズィーベン・フィーア】
(無機質な機械音声が答えると。)
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
(空間そのものが障壁になったように、糸は空中で止まり。)
(床に触れることなく、空中を歩いて扉を開く。)
(無効票)
十埼・竜 2023年4月2日
(糸に引っ掛かりながらも)
(がら。)
(きみの前で、あっさりと扉は開いて)
「ぴぃっ!!!」
(引き攣った悲鳴)
十埼・竜 2023年4月2日
(やはりそこも、繭の中のようで)
(ベッドだったのだろう。糸に覆われているけれど。)
(入院着だったのだろう。糸に覆われてドレスのようになっている。)
(だから、まるで彼女の衣装が広がって部屋中を包んでいるようだった。)
(いつかのパーティーの時よりは、少しほっそりして見えるかも知れないけれど)
(糸から外に出ている範囲は、いつか見た少女の姿をしていて)
十埼・竜 2023年4月2日
(そのベッドに寄りかかるように、ひとり。)
(糸が一本だけ、腕に絡みついている。)
(“スカイセンサー”の持ち主は、静かに目を閉じていた。)
(無効票)
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
(異形の翼が、左右非対称に動く。)
(片方は、少女の姿を視る。)
(片方は、青年の姿を視る。)
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
(部屋の中へ入った異形は、歩みを進める。)
(その片翼が少女を見つめ続けたまま。)
(青年の元へと。)
(無効票)
十埼・竜 2023年4月2日
…………
今、きみに言うべき言い訳を10個くらい考えてるんだけど。
(静かな声が)
(きみの歩みを制止する。)
全部イマイチなんだよね。
十埼・竜 2023年4月2日
きみに言わなかったのは、本当にごめん。
……こうなるとは思っていなかったし、
、、、、、、 、、、、、、、、、
ここまでして、間に合われてしまうと思ってなかった。
十埼・竜 2023年4月2日
(青年の手首には、腕時計が嵌っている)
(……きみがここに入り込んだのは何時だっただろうか?)
(少なくとも、まだ病院が普通に開いている時間だったはずだ)
(時計は、0時直前を指している。)
十埼・竜 2023年4月2日
……きみのことは何て呼んだらいいのかな。
“グレゴール”なのか、やっぱりズィーベンちゃんなのかな……
(ベッドに寄りかかったまま、その片手を握手でも求めるみたいにきみに向けて掲げる。腕に絡みつく糸がほの光っていた)
(無効票)
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
【対象確認】
【回答】
【当機稼働中、素体であるズィーベン・フィーアの自意識は不在】
【よって、グレゴールと呼称されるべきと判断】
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
【確認】
【対象:十埼・竜】
【保護の必要性を問う】
(無効票)
十埼・竜 2023年4月2日
(手を掲げたまま、きみの答えに、軽く目を伏せた)
……いいえ。
ぼくは囚われていない。隠れていただけだ。
(無効票)
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
【認証】
【前提の変化を確認】
【状況終了】
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
(そう、機械音声が流れると。)
(異形の両翼が瞳を閉じて。)
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
(残されたのは、満身創痍の少女。)
(無効票)
十埼・竜 2023年4月2日
「……ねぇ」(やっと、おそるおそる、糸の少女が口を開いた)
「ちょっと、これ、あなた、怪我っ……」
十埼・竜 2023年4月2日
大丈夫。(声は、焦りを全く感じさせない)
……ちょっと返して貰うよ。
「そうしてっ」
(ぼくの支配下で、“スカイセンサー”が、もとの力を取り戻す。)
十埼・竜 2023年4月2日
(きみが此処に至るまでに失った光、全てを見出す)
(光はつまり、ある種の“波”)
(ぼくが捕まえられる形式だ)
(集めれば、それは外で起きている事件と変わらない)
(簡単に、きみに還っていくだろう)
十埼・竜 2023年4月2日
(きみが自分でしたこと、以外は。)
…………大丈夫?
(無効票)
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
(奪われた衣服と、感覚を取り戻す。)
(手を握り、感覚を確かめると。)
(そうして、取り外した機械の瞳を眼孔に埋め込んで。)
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
(眼鏡を付け直すと、向き直して。)
……ええ。ありがとうございます。
……状況の説明を聞いても?
(事前に聞いていた話と、違うようだ。)
(無効票)
十埼・竜 2023年4月2日
……そ、
十埼・竜 2023年4月2日
それそんな風に元に戻るんだぁ………………
(ベッドの上のレディは怖すぎて両手で顔を覆っている)
十埼・竜 2023年4月2日
…………つまりね。
十埼・竜 2023年4月2日
モールの中で起きてる現象はぼくたちのせいで。
4/1一杯、ぼくたちはここに立てこもることにした。
……まさかマルチネス氏が直接きみに依頼するなんて、本当に予想外だったよ。しかも逮捕じゃなくて保護なんてさ。
十埼・竜 2023年4月2日
……追いつめられると、解らないものだね。(どこか苦々しげに呟いて)
(腕時計が、0時を示す。)
時間だ。
(無効票)
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
余り見せるような物でもありませんからね。
他にも見苦しい物を見せたかもしれませんが。
(戻った制服の襟を正して。)
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
……直接私に依頼が来ることは、私も想定していませんでした。
マチルダ様の事情は……推測は可能ですが、詳細を聞いてはいません。
何故、協力を?
(そう問いかける頃には、0時を過ぎていて。)
(無効票)
十埼・竜 2023年4月2日
見苦しいっていうかさぁ……
(目を逸らした)
十埼・竜 2023年4月2日
(4/1。“嘘の日”が終われば)
(張り巡らされた糸は、光の粒になって、解けかけていた。)
「気持ちの話よ」
(今度は光の粒をドレスのように纏った繭の姫は、さっきの意趣返しみたいに唇をとがらせる)
「兄はそうしたいからしたのですって。あなた、何か言ってやったほうがよくってよ!」
(光がほつれたその下に、肉体は無い。)
十埼・竜 2023年4月2日
……。(それを見て、微かに、息を呑んで。)
十埼・竜 2023年4月2日
……レディには聴かせられない理由。……きみには、今度話すから。
(――――恐らく、エレベーターも正常に動き出したのだろう)
(酷く慌てた息遣いと、荒い足音が迫ってくるのを聞いて)
じゃあ、お姫様。
、、、、、、、、、、
しっかり叱られといで。
(立ち上がって)
ちょっと出てよう、ズィーベンちゃん。
(きみに、手を差し伸べた。)
十埼・竜 2023年4月2日
……来てくれて、ありがとう。
(無効票)
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
(マチルダ様の様子を、無機質な瞳が眺めて。)
……此処では話せないというのは、分かりました。
(差し出された手を取って。)
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
……感謝は、マルチネス様に。
謝罪は、わくわくモールの皆様に。です。
ズィーベン・フィーア 2023年4月2日
(最後に、もう一度、少女に視線を向けて。)
……嘘のような時間は、これで終わりです。
御機嫌よう。マチルダ様。
(🕸)
十埼・竜 2023年4月2日
「ええ」
「さよなら、ナナ。」
十埼・竜 2023年4月2日
(手を引いて、病室を出る。)
(入れ違いに、息を切らせた男が駆け込んだ。)
(二人分の泣き声が、やがて一人分になってしまうまで)
(ぼくたちは、静かにそこにいた。)
(🕸)