ニュー新宿わくわくモール

【個別】地下道の遭難者

十埼・竜 2023年1月7日
――――薄暗く湿った地下通路の一角に。





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十埼・竜 2023年1月7日
(――――いや違う)(人間、しかも小柄)(女の子!?)

(それに気づいたときにはもう暗闇に突っ込んでいっていた)ちょっと、きみ、大丈夫!?ぼくの声はわかる!?
(声をかけながら駆け寄って、きみに向かって屈みこんで、その顔を覗く。……血の臭いはしないし、見たところ怪我をしてるようではないけれど……) (無効票)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月7日
(目を瞑る眼前の少女は、さながら眠り姫か)
(勿論、そんな空想じみたことを思う余裕などあるはずもないのだけれど)

…………ふ、ぁ……

(声に呼応したのか、微かに吐息と一緒に漏れた声がひとつ)
(蚊のまつげが落ちる音ほどの声量だったかもしれないが、“彼”なら聴き逃がさないのだろう)

(ほんの少し、瞼が開いて)
(影の中に在っても浮き上がるかのように紅い鮮血のような瞳が、わずかに聞こえてきた声の主を追いかけようと動く)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月7日
(そして、視線がかち合った)

(貴方は、誰)
(青い瞳を数瞬捉えると、また力なく紅い瞳が伏せていく)

…………お……

(また声が絞り出される)
(今度は、死に体な声色と、そこになんだか何かを諦めたみたいな音が混じる)

……お、なか……すいた……

(頑張って少女が訴えたのは、そんな、なんとも気が抜けそうな言葉だった) (無効票)
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十埼・竜 2023年1月8日
(地下にも伝手がないわけじゃない、上まで運べなくてもそこで一応の応急処置なり、頭の中でプランをめぐらせながら)
……。(じっと、きみの反応に耳をそばだてていた)

(――――だから、きみのほんとうに幽かな吐息にも、ぼくの耳は過剰に反応したし、)
(瞼がゆっくりと開いて、睫毛の奥に鮮やかな赤が覗いていくのも、ちゃんと見えていた。ピジョンブラッドってこんな色を言うんだろうな、そのくらいの、鮮烈な血の色。)
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十埼・竜 2023年1月8日
……お?
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十埼・竜 2023年1月8日
……え、ちょっと待って、今「おなかすいた」っつった!?
(空腹なところに耳元でキャンキャン言われたらちょっと頭痛いかも知れないけれど申し訳ない!! だってあまりにもテンプレだろ!?)
えええ、食べ物、何か、えっと、ああそういやさっき、
(冬場だから色々着込んでマフラーだって巻いている、おかげでどこに何仕舞ったもんだか探しにくい!)
(ばたばたあちこち身動ぎしている)
(そのうちに、するりとマフラーがほどけて落ちて。)
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十埼・竜 2023年1月8日
(黒い異形の冠が押さえつける、氷色の髪)
(その髪の下、色白い首筋が顕になる。) (無効票)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月8日
(忽然と騒がれたせいか、脱力でモロにやかましさを浴びるしかない彼女は眉をしかめて)
(キンとした耳も、しかし塞ぐ気力すら湧かないことにまた諦めを覚えた)

…………ふぅ……

(しかし、その煩さがきつけになったのか、やっと目を開けて彼の顔に向き合えた)
……ん、貴方が誰かは知らないけれど…………

不躾なお願いで……申し訳ないけれど……
少しだけ、分けてほしいの……

(分けてほしい、とは食糧のことだろうか)
(そう思うのが当然だろう。けれど、『なにを?』と疑問を投げかければ)

(――その答えは)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月8日
……貴方の血を、私に頂戴。

(――たったその一言が、彼女がそこらの行き倒れとは違うと語っていた)
(血を欲している?―何故―まさか―殺される?)

(と、そうなることを見越していたのか、またどうにか彼女は口を動かし付け加える)
私の生命維持には、それが必要なの……
……人間の食事だけでは、力を十全に出せず、衰弱していく。

(そこまで言って)
けれど、
(と最後にもう一つだけ加えた)

……怖ろしいのなら、断って構わないわ。
(人形のように動かなかった身体が、軋むみたいに震えて体勢を変えようとして)
お邪魔、したわね…………

(脱力発作の襲う肉体に鞭打って立ち上がろうとする)
(ああ、この彼にただ闇から食らいつけられたならば楽だったろうに)
(飢えに苦しんでなお、まだ己を流れる血の誇りが野蛮な行いを律する)
(彼女はそれを守るしか生き方を知らない) (無効票)
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十埼・竜 2023年1月8日
(顰めた顔にああごめんうるさかった?と返す間もなく、その薄い色の唇がまた僅かに震えはじめたので、しばらく押し黙る)
(黙って、きみの顔を見つめていた。)

(白い髪に白い肌。向き合うのは自分に近い色だけれど、それを雪に喩えるよりは、どこか寒い国の獣のようだなと思ったのは)
(その瞳が鮮やかな血を思わせるからだろうか)


……分けて欲しい?
(鸚鵡返しして、返ってきた言葉は、)
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十埼・竜 2023年1月8日
(――――別に何を予期していたわけじゃないし、ぼくの耳にはそんな能力まではないけれど)
(正直、大きな驚きはなくて。)
(ああ、だから彼女は寒い国から来たような気配を纏って、そんなに赤い瞳をしているんだな、と)

そう、きみ、吸血鬼か。

(返した言葉にだって、ただ出身地を聞いただけみたいに、何の畏れも嫌悪も含まれない。)
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十埼・竜 2023年1月8日
断るってきみ……大丈夫!?
(立ち上がろうとしたんだろうその振る舞いが、震えて藻掻いているように見えて、咄嗟に支えようと腕を伸ばす)
って、立てやしないんじゃないか……!

(何にせよ)
(ぼくに、要救助者を見捨てる選択肢なんて、ない。)

……あー。
(マフラーがほどけて、露わなままの首筋を、少し反らすように傾けて。)
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十埼・竜 2023年1月8日
……それって、「こう」で、いいの?
(ただのイメージと先入観だ。「首を差し出せ」ってことだろう、っていう。) (無効票)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月8日
(……そう)

あぁ、知っているのね。
ディアボロスにも、居ると聞いたけれど。

(抑揚のない、というか、感情が乗らないような喋り方で)
(新宿島。ディアボロスの総本山であるならば何もおかしくないなと納得するようにかの言葉を受け止める)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月8日
(今の己の不甲斐なさに、久々にこの吸血鬼は苛立ちを覚えた気がした)

…………あ……、ぁ〜……

(結局、立つこと叶わず少年の腕に身を預ける形になりながら)
(ゆっくり、へたり込む)

(それから、ぺたんと力なく尻餅をつくと)
(差し出された首を上目遣いに見やる。綺麗、と場違いな感想が過ぎったが、彼にひとつ訂正しなくては)

……。

……別に、血は身体のどこにでも流れているでしょう……?
腕とか、指でもいいのよ……?

(確かに、そりゃそうだ)
(どこでだって吸血できる)
(ただ、きょとんと勝手に急所を差し出す彼を見つめていた) (無効票)
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十埼・竜 2023年1月8日
(それはもう、急所晒しながら注射待ちの子供みたいに顔をしかめていたのだけれど。)
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十埼・竜 2023年1月8日
……え。
(お人形さんの無表情、その意図が「愚かなのかしらこの子」みたいに見えてぱっと赤面する! 色白だから赤くなりやすかった!)
いやだってほら、吸血鬼ーって言ったらさ! ここじゃん!?
どこでもいいなら……いやぼくだってどこでもいいんだけど……
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十埼・竜 2023年1月8日
…………どこでもいいんだよ。きみが動ける程度に、その……「飲める」んだったら。
(やっぱり首は晒したままだ。)
指ってなんか、ちょっとずつしか吸えなそうだし…… (無効票)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月8日
くあ゛ぁ―――ッ



(赤面を弄るような間すらなく)
(どこでもいい)
(その言葉が聞こえた瞬間、その白い細首に、動脈へと)

(ぐぷり、と牙が突き刺さった)

(すぐに襲ってくるだろう。あの、自分の肉体から何かが抜けていく不安定な感覚が)
(但し、献血とは訳が違う。生物的な、本能を逆撫でるような、傷ついてはならない場所に刃を入れられたかのような)

……ごぷっ、くぽっ……ぐぶっ……

(首に噛みついている以上、耳に飛び込んでもくる)
(わずかにとろみを持った赤い赤い液体が、彼女の口に流れ込んでくる音)
(とぽぽ、とコリオリの力で渦巻くように、微かに泡立ちながら口の中で流動する音)
(それが喉を通っていく音)

…………ご、くっ……

(吸血は時間にして、ほんの十数秒だった)
(……その経験は、あまりにも濃密だったかもしれないが)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月8日
(吸った量は、献血より少しばかり余分なくらいな程度だった)
(生命に問題ない量なら彼女は弁えている。倦怠感はあるだろうが、命に別条はない)
(個体差がなければ)

…………っふは……

(永く思えた吸血を終え、彼の首から牙をそっと抜く)
(それからハンカチーフを取り出し、その首筋をつつ、と拭う)
(これはおそらくは、本当におそらくではあるが、人間にはない、吸血鬼ならではのマナーのようなものなのかもしれない)

……ごちそう、さまでした。
貴方には借りができたわね……ええと、なんて呼べば良いのかしら?

(血を得たことで体力を取り戻したのか、今度はすいと立ち上がり)

……名乗る前には、まず私から。
初めまして、私は『大公の牙、キーラ』。
ロシア帝国からここに流れ着いた、放浪者よ。

(スカートの端を軽くつまんで、上品に挨拶してみせた) (無効票)
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十埼・竜 2023年1月8日
い゛ッ!
(人間の犬歯だとして幅約5㎜、しかもそれを二つ分。動脈に達するほどに穿たれれば普通の人間なら痛いで済ませるものではない。けれどディアボロスの肉体はやっぱりグロテスクなくらいに頑丈だし、ぼくの精神は、随分と理不尽な痛みに慣れてしまっていた。)
(……正直)
(「人間の歯」で首を噛み千切られた時よりは、鋭利さのぶんで痛みは軽かった)

(灼熱感を伴う激痛は脈打つ鈍痛へ)
(その“波”が引いていくたびにぼくの体から抜け出ていく熱)
(彼女がぼくの血を飲み下すノイズをすぐそばで聞きながら、自分に言い聞かせる。これは緊急避難だ。すぐに取れる手段は他に思いつかなかった。)
(……だから、きみがあまり気に病まないでくれると嬉しいな、と思うのだけれど)
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十埼・竜 2023年1月8日
(――――顔面が蒼白なのである。)
(そりゃそうだよ、献血は断られるっていうかもっぱら「される側」だ!)
(視界の端が薄暗いし、全体的にちらちらとノイズがかかって焦点が合わない。手足の先が凍えるように軽く痺れて、きみが丁寧に拭う首筋だけが妙にくすぐったかった。……丁寧な所作はちょっと貴族っぽいなあ)
……どう、いたし、まして
(きみは立ち上がるが、ぼくはさっきまでのきみよろしくへたり込んだままで。ぐらつく首で、どうにかきみを視界に収める)
……たいこうのきば……キーラ……ちゃん?
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十埼・竜 2023年1月8日
えーっと。ぼくは……おわりさき、りゅう。
生まれはちょっと違うところだけれど、この時代で、新宿島に取り残された人間だよ。
……動けるようになって良かったねぇ。もう身体、大丈夫そう? (無効票)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月10日
(つつい、と最後に自分の口を拭ってから)
(どうにも動きがおかしくなった彼を見下ろして)
…………あら、そんなに多く吸ったつもりはなかったのだけれど……

(しおれた彼――十埼・竜の顔を覗き込んだ)
おわりさき、りゅうね。恩人の顔と名前、ちゃんと覚えたわ。
そう。大公の牙までが私の名前。

人間としての姓は、既に持っていないから。

(そう語るキーラは、竜をずっとまっすぐ見つめていると言うのに、まるでどこか遠くを見ているような瞳で)
(しかし大丈夫かと尋ねられると、またすぐ、その目に意識が戻り)

ええ、おかげで歩けるまでになったわ。
けれど貴方は……動ける、かしら?
(そう言って竜の身を案じる)
(しかしながら、その声色は不安や心配というよりかは、疑問)
(彼がなぜ一寸―キーラが思う程度に―の吸血でここまで弱ってしまったのか)
(そして、そんな脆弱体質でなけなしの血を快く差し出したのかとハテナを浮かべているようだった) (無効票)
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十埼・竜 2023年1月10日
じゃ……(息を深く吸って、吐く。……ここは新宿島、【活性治癒】の力が最高潮に満ちている。こうして休んでいるだけで、少しずつ気分は楽になりつつあった。……反面お腹はすくんだけど……)
……キーラちゃんって、呼んでいい? ぼくのことは好きに呼んでくれていいよ。

(人間としての、姓。)
(……どこか遠くを見る視線、悲嘆や嫌悪はぼくには読み取れないし、そこから何かを“聴きとる”こともできないけれど)
(その二つ名みたいな名前の半分は、呼ばない。)
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十埼・竜 2023年1月10日
……何でこんなによわっちいのに軽々しく血を飲ませたんだろ、って思ってるだろ。
(そういうの“聴きとっちゃう”。耳がいいもんで!)
(……でも、心配されるよりはただの疑問形の方が気が楽だ)

ひとーつ(まだ血の気の薄い指を一本立てる。……腕がだるい……)新宿島にいる限り、この程度の怪我はそんなに長引かないんだよ。大丈夫、5分もすればぼくも……(くら、頭を揺らして)
(再度、深呼吸)
……ふたつめ。(それでも、もう一本指を立てた。)
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十埼・竜 2023年1月10日
……“遭難者”を絶対にほっておけないんだ。ぼくは。 (無効票)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月10日
(まだ日の浅いキーラにとって原理は分からなかったが、血色が先程と比べて幾分かましになったのを見ると彼女も安心できた)
(……死なれてしまったら他のディアボロスと誤解を生むかもしれない。バレないよう何処かに隠すのだってきっと骨が折れたろうから)

ええ、それで構わないわ。
そのほうが呼びやすいものね、自覚はあるから安心してちょうだい。

なら貴方は……竜。そう呼ばせてもらうわ。

(リュー、と確かめるように発音してみる)
(何処となくロシアっぽさみたいなものを感じる。しかしとりあえず、新宿島に馴染む第一歩をこれできっと踏み出せただろう)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月11日
あら、ディアボロスの持つ奇妙な能力かしら?
よく私の考えていることが、わかったわね……?
(すごいわねみたいな顔で首を傾げて)
(キーラ自身は深い意味で言ってないが、無自覚にちょっと追い詰めて泣かせにきてた)

(けれど)
(指を立て、彼女を見せたその顔はまるで――)

……そう。私は、遭難者、ね。
なら、案内してみせて……?

(だからその手を、くいっと引っ張ろうとする)
(先程まで行き倒れていたとは思えない、というか、一介の女の子とも思えないような力で、まだ貧血気味な十埼を立たせようとするのだろう) (無効票)
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十埼・竜 2023年1月11日
(きみが口にするぼくの名は、やっぱりなんだか異国の響きを帯びている。……なんか面白いな)

あ、当たってた?
考えていること全部がわかるわけじゃないよ。耳がすごーく、いいだけ。
そう、そしてぼくは、このショッピングモール「ニュー新宿わくわくモール」の、迷子係。ちゃんときみを安全なところまで――――
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十埼・竜 2023年1月11日
(きみはかるーくぼくの手を握ったのだろう)え(なんだかやたらがっしりしていた)
(そしてかるーく手を引いたのだろう)のぁ!!??(くい、というよりはあまりに“すぽぉん!” の勢いで立ち上がらされる。急な高低差に血がついていかず、くらくらする頭で「おおきなかぶってロシア民話だったな」なんてことを思い出していた)

(――――立ち上がった足元に、どさ、と)(茶色い紙包みが転がり落ちる。)
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十埼・竜 2023年1月11日
お、っと、っと(それを拾い上げる)ちょい待ち……ちょっと、一口これ食べていい?
糖分が足りない……
(――――湿って饐えた臭いの路地に、ふわり、温かく甘く香ばしい匂いが混じる。)
(そう、さっき血を提供する前に懐やらポケットから探してたのはこれだ。お腹すいた、って言うから――――さっき、馴染みの店で貰った焼き芋を。) (無効票)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月11日
耳……?
(こくんとまた首を傾げる)
(聴覚?そんな読心に近いような力を持つなんて、やはりディアボロスは興味深い存在だ)
(この刺々しい耳あても、それに関係しているのか。聞かねど、少し興味もあった)

に、ゅ〜……シンジュク、わくわく、モール……?
……ちょっと、まだわからない言葉ね。よければあとで意味を教えてもらうわ。

(でもその前に、)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月11日
(血から得た力は想像以上らしい。立ちくらみなどお構いなしにずいっと立ち上がらせてみせた)
(人というより、それはもう昇降機くらいの力強さだった)

……?
なあに、それ……?

(どこから落ちたのか、紙に包まれた塊に興味を惹かれる)
(すん。彼女の鼻を微かに刺激するそれは、未知の匂いだった)
……食べ物、なの……?

……見せて。
(真紅の瞳に、心なしかキラキラとした光が注ぎ込まれたみたいに)
それ食べるところ、見せて。
(食べるところを観察しようと、ずいずい近寄ってくる。彼女には、これが芋だとはわかっていないようだった)
どうやって食べるのか、早く見せて。 (無効票)
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十埼・竜 2023年1月11日
そ。
……店や市場がすごーくたくさん集まってる場所、みたいなものかな。きみの時代に合わせて言うとさ。
探せば何でも売ってるし、お金があればだいたい手に入るよ。

……これ?(紙包みを捲り、その下のアルミホイルをかさかさ剥がす。)
焼き芋。(ますます濃厚に、蒸かした芋と焦がした砂糖のような香りが立ち籠めて)
……ロマノフにはさつまいも、ないのかなあ。甘いお芋だよ。食べ物。(艷やかな臙脂色の皮をほっくりと2つに割って、湯気立つ黄金色の断面を見せる。)
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十埼・竜 2023年1月11日
……!?
(無表情のまま急に子供のような輝きを帯びる赤い瞳に、怯む)
食べるとこ、って、普通に食べるだけですけど!?
口で。
齧って……

(……ぼくらは、吸血鬼は「血を食事の代替にできる」と聞かされている。つまり、吸血鬼はひとと同じ食事が可能だと)(でもこの反応なんだ!? 他人の食事を見たことないのか!?)
(純度100%の好奇心に至近距離で晒されながら)
……えーーー、っと。
(恥ずかしさを押し殺して、ゆっくりと口に芋を運ぶ)
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十埼・竜 2023年1月11日
(湯気を吹いて、さまして)
(唇で熱を探り、その断面に歯を立てて、こぼれそうな欠片を舌で舐め取って)
……ふ、あふ
(熱さを口の中で転がしながら、ゆっくり、咀嚼する)

(……味なんてしないかと思ったけど、血の薄れた体にはしっかり甘くておいしかった。)

……きみも食べたら?気になるなら、あげるよ。
(半分にわけた、包み紙つきの方をきみに差し出した。) (無効票)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月11日
(市場ならキーラにもわかる。しかし、こんな大規模なものなど想像もつかなかった)
(貴族の坪庭をそっくりそのまま店で埋め尽くし、それらが賑やかなひとつの村々のように共生するなど、どれほどの……彼女は数秒思いを巡らせ、すぐに圧倒された)
(……歴史を奪われる前の東京に、そんな場所がいくつもあったなどと思いもよらないだろう)


焼き芋……?
(聞き慣れない言葉だ。というか、彼女にはどちらかといえば不可解だった)
(ホワンと湯気が覗き込んだ顔を直撃する。芋がこんな甘い匂いを発するなんて)
……これ、一体どうやって作っているの……?

まさか、芋を焼いてこんな風になるわけがないわ。
外側だけ焦げていて、中がどうしてこんなに瑞々しいの。
(ずっと無表情だった彼女は、今日一番の混乱を見せた)
(解説すれば長くなるが、その通り焼き芋はただ芋に火を通せばこうなるわけではない。火にかければ、相応に焼けてぱさつくはずなのだ)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月11日
…………。
(じっと十埼が焼き芋を食べて、嚥下するまでを見つめていた)
(人が食べるところを観察するだなんて奇行への羞恥心は、まあ、やっぱりない様子だった)

……ぅ、わぁ……!
(差し出された焼き芋の半身に、無意識に声が上擦った)
(常氷の国に居たら、きっと食べることなんてなかった)

(すんすん、匂いをまたよく嗅いで)
(ちょんちょんと指で感触を確かめる。芋だと聞いたのに、思った以上に柔らかい)

……ありがとう、いただくわ。
――はむっ。
(意を決してちっちゃな口でひと齧り)
(もに、もに、噛みしめながら“焼き芋”という未知を全力で味わう)
(しかし、十埼が舌で転がして冷ましてようやく飲み込んだのに、彼女ときたら常温のパンでも食べるみたいに何のアクションもないのは不思議なところだった)

……こくんっ。

(喉の鳴る音、そして暫しの静寂。さて、感想は)

……温かくて、よかったわ。とても。

(そこは美味しい、じゃないのか……) (無効票)
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十埼・竜 2023年1月11日
どうやって……えーっと……石焼き……?
(身近なのにそういや原理がわからない。……これはラジオのネタになるかも知れない! あとで調べとこ。)

(……しかしこの子、反応が新鮮でいいなぁ!)
(さっきは貴族のお嬢様かな、と思ったのに、今目の前で芋をつつく少女はまるで子供だ。)
どうぞ。……噛みつきゃしないよ。熱いから気をつけて……
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十埼・竜 2023年1月11日
……。(あんまりあっさり齧るからちょっと身構えた! 舌の火傷は痛いから!)
(採点を待つみたいに、しばらく見守って)

温かい、なんだ……(小学生並み以下の反応────!)
甘い……とか、ないの?
(何となく、だけど)
(この子、まさか血だけを常食にしてるタイプの吸血鬼なのか……?)
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十埼・竜 2023年1月11日
……まあ、でも。
(ぼくの耳は、きみがその食べ物に感じたポジティブな"波"を聴き取っている。)
気に入ったならよかったよ。残り半分、きみにあげる。
食べながら帰ろっか。

(こっちの半分の芋を齧りながら)
……それでは、きみを、どこに案内しましょうか? (無効票)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月11日
ええ、温かいわ。
(あっけらかんと答えて)
……甘い、そうね、言われてみれば確かに甘いと思うわ。
(確かめるみたいにまた一口食み、舌で口の中の焼き芋をすりつぶすようにしてみる)
(それでも「うん、やっぱり甘い」なんて、情報だけを整理しているみたいで)
(さてこの子、痛覚も、味覚も、人間のそれとは違うのかもしれない)

(でも気に入ったらしいのは事実のようだ)
(ちまちま食べ進めて、思ったより芋が減っていく)
……くれるの?ありがとう。

(そしてまた一口)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月11日
……帰る。
(十埼の言葉に少し考える素振りを見せて)

……帰るところは、私にはないわ。
私もね、ディアボロスになったから……貴方達とおなじになったから、ロシア帝国には帰れないし。

(ああでも、と何かを思い立ったように)
(十埼に向かって、こんなふうにけっこう真剣な眼差しで言った)

この領地の主には挨拶しておきたいわ。
この、焼き芋?も気に入ったし、お礼と今後のための社交も兼ねて。
外から見たらすごい高さだったわね、だからさぞ高名な有力者が居るものだと歩き回ったのだけれど……
(どうやら、ニュー新宿わくわくモールを巨城だと思っているらしい)
(時代のギャップを感じずにはいられない。そりゃまあ、時として歴史から漂流したディアボロスは実際タイムトラベラー同然なのだが) (無効票)
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十埼・竜 2023年1月11日
……言われてみれば、かぁ……
(……嫌いではなさそうなんだけどなあ……)
……きみにとっては、やっぱり血のほうが美味しいのかな。ぼくの血なんて味薄そうだけど。
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十埼・竜 2023年1月11日
……そっか。そうだよね。
帰る……っていうのは、この新宿島での拠点にだよ。きみ、こっちに来てから何処かに住んでるわけではないのかな、って……

(真剣な眼差しを向けられて、こちらも)うん?(耳を傾けて)
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十埼・竜 2023年1月11日
……………………………。

(なるほど?)
(感覚的にはやっぱり"貴族"なんだろうな、と思う。ようこそ21世紀、資本経済の坩堝へ。この勘違い、正直どうやって説明しよう……!!)
あー……うん。
わかった。ご案内します。……ここは領主ひとりで治めてるんじゃなくてね。いくつかの有力者による、分割統治なんだ。
(この問題、"商工会"に丸投げさせてもらう────!)
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十埼・竜 2023年1月11日
じゃ、まずは「地上」に上がろうか。

(さっき引っ張られた手を、今度はこちらから差し出して。)
(その、細くてちょっぴり頼りない手を取るのなら────)

(きみを、無事に目的地まで連れて行くのだ。) (。)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月11日
そうね……竜の血は、美味しかったわ。
私にとっては命の源が流れ込む感覚。
人間で例えるなら……いいえ、うまい喩えが見つからないわね。人間にそんな機能はないもの。
(飲酒、でもないし、点滴、でもない。食事ともまた違う)
(いわば吸血鬼にだけ与えられた余分な構造だ。わかり易い言葉もそう簡単に出てくるはずもない)

……ほう、なるほど。

(言葉に悩む十埼の言葉を真面目に聞き入る)
(駄目だ、この場で訂正するのはどうにも骨が折れそうだ)
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キーラ・パーヴェルファング 2023年1月11日
(差し出された手をほんの少しのあいだ見つめて)
……ええ、よろしく。竜。

(ぴとり。そこに存在することを認めるみたいに触れて)
(地下のコンクリが熱を奪うせいもあるだろうが、それにしたってキーラの肌はひんやりしていた)

(……ただし、それは本来の吸血鬼としての彼女)
(今、十埼の手をとった彼女の柔い手は、焼き芋の熱で誤魔化されて、丁度、人のぬくもりみたいだった)

……温かい。

(ぽつと、十埼の手を握った彼女が呟く)
……気がする。
(勘違いなのかも。けれど、彼の手の感触はなかなか悪いものではなかった) (。)
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