【個別】ボロボロ・イン・ザ・シー
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月17日
――死んだ。
墜ちて、死んだはずだった。
なのに目を開けると其処は、
「どうして」
☆Talk
#十埼・竜
#虚ヶ谷・ワチカ
0
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月17日
(遠退いていく。きみが遠退いていく。聞きたい事が沢山あった。君がどうして此処にいるの。君は何物なの。君は、…君は……)
(波に抵抗できなくて、わっちは流されていく。そのまま網のようなものにぶつかって、)
……。
(声だ。この声は、…知っている。毎夜聞いていた声だ、忘れる訳がないのだ)
……る、……くん…
(わっちなんかが手を伸ばして良い存在じゃないんだ。判っているんだ。でも、……其れでも、其の声に。此処にいると、手を伸ばして――)
(無効票)
十埼・竜 2022年12月17日
……つーかまーえ、た。
(“波”が、きみの手を包む。)
(白と群青の光が、サーチライトみたいにきみを照らし出して。)
十埼・竜 2022年12月17日
(レイヤーの現実側に、異形の冠で耳を塞いだ白い少年の姿がある)
(焦燥と動揺に血走った目を、ぱちりと瞬かせて)
十埼・竜 2022年12月17日
……こんなところにいたの、ワチカちゃん。(優しく柔らかな声で、きみの名を呼んだ。)
(無効票)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月17日
(まぶしい)
(まるで救助船のサーチライトみたいな光に、わっちは目を細める。片眼は殆ど機能していないけれど、反射のようなものだ)
(――……光を抜ければ目の前に、きみがいる)
(少女は、ボロボロのぐずぐずだった)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月17日
(王冠は既になく、山羊角の所々をノイズが走る。片足の膝から下と脇腹、顔の一部は崩れてなくなっていた。データとしてみれば、これでもリソースをありったけ突っ込んでいるのが判るだろう。中身には“なにもない”。何もない、はずなのに)
――るー、くん。……。なんで…?
(少女は瞬きをして、君の名を呼ぶ。)
(無効票)
十埼・竜 2022年12月17日
(自他境界をどうにか取り繕い、尚あちこちが綻びている、霧散寸前のデータ。ホロなんて維持してる余裕ないはずなのに、それでも“殻”は必要なんだろうか。きみが“在る”ために)
(殻の中が本当に空だと気づいて、)
(胸の中が苦みでいっぱいになる)
十埼・竜 2022年12月17日
……なんで。なんでと来たか……(わざとらしく額に手を当てて)
…………嘘だろ、マジに「なんで」って聞いてる?(指の隙間から、じろりときみを見る)
(無効票)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月17日
(蠍の尾は砕けて折れてしまって、だらりと垂れ下がっている)
(わざとらしく額に手を当てる彼に、う、と呻いた。そう、心当たりがない訳じゃない。ない訳がない。わっちは、だって、)
いや、まあ……判ってる、よ。
――……大口、叩いてみせたけど…
……。……。こう、なっちゃった。
(苦く、笑ってみせようとして)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月17日
(『そうかと思えば笑って媚びたりすればいいと思って!誰かが慰めてくれるとでも思ってるの!?』)
……。
(お母さんの言葉が頭をこだまして、表情が固まった。……笑って、媚びて、この場を抜けようとしている自分が気持ち悪くなる)
……ごめん。
(無効票)
十埼・竜 2022年12月17日
…………。
十埼・竜 2022年12月17日
……まあ、正直さ。
ぼく、すごーく怒っていいと思うんだよね。その権利がある。結構でかいこと言われたもんなー。
そんでマジにデータとか電脳まるごと押し付けられてるもんなー進行形で。更に下請けに丸投げしてきたけどさ。
(両手を伸ばして、半壊したきみの、こわばった頬に触れる。……とはいえ、そのまま貫通するだけだ)
(ただ、“波”くらいは、伝えられるだろう。それがぼくの力なんだから)
(今は別に、怒っちゃいないってこと。)
十埼・竜 2022年12月17日
きみは真面目でサボりが下手だからなー。そんなになるまでしちゃうんだもんなー。
だから「なんで?」って聞かれたら、「お疲れさまを言いに来ました」なんだけど。
お疲れさま、ワチカちゃん。
ありがとね、みんなを守ってくれて。
……迎えに来たよ。嬉しいだろ?
(無効票)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
う。
う、う、……うう……
(笑う笑えないの問題ではなく、笑って誤魔化せる問題ではなかった。そうなんだよなあ、でっかい事いった割には全然出来なくて、戦闘で忙しくて色々ほっぽり投げちゃったもんな。)
(半分しかない視界。頬辺りに手が添って、思わずびくりと肩を震わす。……少し前まではオルゴールの音で満たされていた電子体は、今は何の音も返さない。……だから、だろうか。君の“波”がよくわかる)
……。怒って、ないの?
わっち、……わっち、結局、帰って来れなかった。死んだのに何でか此処にいるし、……。死んじゃった、し。
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
(暖かい、気がする。君の波はとても穏やか、凪いだ時の海みたい。残っている緑色の目を瞬かせる。涙はでない。だって、泣いたら“慰めて欲しいみたいじゃないか”)
……。
……そンなの、いい、のに。
わっちの事なんて、構わなくたって。
(わっちも手を伸ばす。其の手はすり抜けるけれど、君の眼の充血を確かめるように、指がなぞる)
(嬉しいのに。嬉しいのに、嬉しいっていえない)
……るーくん、わっちに丸投げされて、頑張ったンでしょ。
すごく疲れた顔、してるよ。
…無理した? また、身体わるく、なる?
(無効票)
十埼・竜 2022年12月18日
(謝るなよ)
(謝るな)
(ぼくだってきみを、ぼくの声の届くところで、死なせたんだから)
(――――波の下に押し殺す。)
(きみには関係がない。きみのせいじゃない。)
十埼・竜 2022年12月18日
きみ、ぼくにあんっな構い方しといて(頬をつねれないのが残念だけれど、指をむにゅっと動かして)今後も絶対構うからなって宣言しといてさ(笑顔の形になるように。)それで今度は「構うな」かい。心臓に何飼ってるの?ポメラニアン?
(曖昧に透ける、空の指先が目元に触れる。感触なんてないけれど)
……きみよりは元気だよ。生きてるし。
十埼・竜 2022年12月18日
……そう、身体。
この状態、きみの身体は……
(ぼくの知覚は、きみの身体の場所を特定できないでいる)
…………隠してる、って、言ってたけど。(だめなのか。)
(無効票)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
(僅かに反響する波で、頬をつまむようにされたのだと判る。肉体があったのなら――両頬をつままれて。上げられて。笑え、と。彼は言いたかったのかもしれないが)
ぽ、ぽめ……犬なンて飼ってないもン。
……だって。わっちは、泣いて同情を引いたり、(声が震える)笑って媚びたり、……して。人に、迷惑しか、かけなく、て。わっちは、駄目な子だから。……迷惑をかけるなら、…いっそ、
(涙は出ない。プログラムしていなかったから。雑プログラムさえも涙になるには足りなくて、でも、しきりに片目は瞬きを繰り返している)
……。
生きてるからって、無理しちゃ駄目だよ。
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
――……(静かに頭を振る)
心臓が止まって、肉体が死んだときのプログラムが――作動した。
身体は多分、まだ海にあるンだと、思う。意識がいないから、打ち上げられては……いないと…思うンだけど。多分…
何せ、……死んだのが、初めてでして。
(やっぱり笑えない。巧い笑い方が判らない。笑うって、どうするんだっけ。相手の頬に添えていた手を己の頬に引き戻して撫でてみるけれど、辛気臭い顔のままだ)
(無効票)
十埼・竜 2022年12月18日
泣いて、解ってもらおうとして。
笑って、寄り添おうとする。
……それを誰に否定されたんだよ。きみ。
十埼・竜 2022年12月18日
わぁ。流石無茶して一線越えたひとは言う事がお偉くていらっしゃるなあ(思いっきり皮肉交じりに)
……そう。
そっか。
(頬を撫で降ろして、肩に手を)
(引き寄せれば、抱き上げる形になるだろうか)
十埼・竜 2022年12月18日
(亡霊を胸に。)
じゃ、海、行こっか!
(まるで場違いに明るく、口にした。)
(無効票)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
――。
……。
お母さん、に。
わっちは、駄目な子だって。努力が、足りてない……って。
(正確には。ルゥが呼び出した母の幻影だが)
(だが――私には、判る)
(アレは紛れもなく“母の本音”だった。わっちが覚えている母は優しかった筈なのに、私が知っている母は私に優しくしてくれた事などなかった。あれは敵が喋らせたのではなく、私の奥底にいる母の記憶だ。だから――あれは、“母”なのだ)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
うーん、今日もるーくんの皮肉が刺さる。
いやごめんって。本当に悪かったと思ってるし、仕事をお返しする羽目になったのも悪かったと思ってるし、……でも、…でも、護る事だけは…諦めなかった、から。
(君の手が動く。其の波につられてだろうか、わっちの身体も体勢を変え、)
――るーくん?
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
へ。
あ、……え? う、海?
(お出掛けしよっか、みたいなノリで言われた言葉に、わっちは瞳を瞬かせる。)
え、海?
(思わず2度訊く)
(無効票)
十埼・竜 2022年12月18日
(「あいつんちの親すげー厳しいよな」を一線越えた異様さを、比較的呑気な田舎育ちのぼくだって、見知らないわけじゃない。)
(……この学園は親の話をするひとがあまりにも少ないから、最近忘れていたけれど)
(ぼくたちは子どもで。)
(親はしばしば、枷になる。)
十埼・竜 2022年12月18日
(――――その「すげー厳しい親」の目を掻い潜る低俗で下劣な逃げ場が、深夜ラジオだ)
いいじゃん、気にすんなよ、そんなきみと相性最悪な親はさ。
(強張る声に、優しく返す。)
偉そうにしちゃって、ショッピングモールでサメに襲われたこともないくせに!
ていうかきみの努力はなんというか……いっそ過剰なんだけどベクトルが独特なんだよ……(おでこをつつく)(めりこむ)
護ることは諦めなかった。すごーくえらいぞ。
でも無茶してこんなことになった。そこはマジでダメ。(マジのトーン)
十埼・竜 2022年12月18日
そ、海。嫌い?
ぼくは好きだよ、冬の海も。朝方とか、境界線がぼんやりとけてさ。
(腕の中の、翠の片眼を見下ろして)
(にやり、笑うのだ。)
(無効票)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
(うっすらと脳裏に過ぎる、寒い冬の日の事)
(宿題をするには、ベランダはとても寒かった)
(家の中は暖かそうだったけれど、窓から見える両親は、其の心を凍り付かせていた)
(布団の中で震えながら、かじかむ手に息を吐きかけながら、必死に、勉強をした)
(ただ広いだけのベランダが、私の部屋だった)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
……。
(今、何を思い返したのだろう。ふるふると頭を振って、竜くんを見上げる。重くて痛いこの枷を、気にするなと一笑に付してくれる)
……だれとも、相性なんて合わないよ。あのお母さんは。
普通じゃない事が、許せなかったンだから。
(笑えないけど、辛気臭い顔は出来る。口を思い切りへの字にして、母に対して不機嫌そうに……わっちなりに“笑う”のだ)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
おうふ。
(指がめりこむ。感覚的にいつまでも慣れない)
ええ、べ、ベクトル? わっちなりに真っ当に頑張っているつもりなンだけど。
…そう、頑張った。女の子を、助けたよ。
でも其の結果、銃弾を胸に……うう。そうか。マジで駄目か。すみません。(そうだよな、と肩を落とす。軽く謝っているように聞こえるかもしれないが、真剣に申し訳ないと思っている)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
嫌い、じゃ、ないけど……
……。海に行ったら、体に戻れるかなあ?
わっち、正しく死んで、……帰って来れるだろか。
(海を楽しむ余裕が、少し、ない。わっちは少し焦っている。だって今、この瞬間もイレギュラーは続いている。もしこれが“本当の死”だったらと思うと気が気ではない)
(無効票)
十埼・竜 2022年12月18日
(頭を小さく振るう姿が、寒さに震えているみたいに見えたから)
(細い腕だけれど、その幻を包み込む)
……ふふ。
(子供みたいな仏頂面に、笑ってしまった)
普通じゃない? きみが? そんなに前から毒マニアだったの?
(それとも)(確かに翠の片目は“普通”じゃなかっただろうな、と思う。……けれど、だとしたら、あまりにも理不尽だ)
(自分の、氷の色に抜け落ちた髪が一房視界に入って)
(目を逸らす。)
十埼・竜 2022年12月18日
きみの来年の抱負を決めてあげよう。「がんばらない」だ。
がんばらずに目標達成したらラクチンだしカッコいいし、いいことずくめだよ?
……同じことをぼくがしたら、きみ、赦せる?
(反省の“波”はちゃんと届いているから、軽い追撃にとどめた。)
十埼・竜 2022年12月18日
…………。
呼んであげるよ。
だから、ぼくの声を辿って、帰っておいで。
(無効票)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
(回った腕にびっくりして、竜くんを見上げる。体温の亡い身体だから、頬が赤くなったりする事はなかったけれど……何故だか暖かい、気がした)
…わ、笑うなよ。
――…まあ、毒マニアでは、あったけど。其れ以上に、…色、が。ね。
(こめかみが痛い。最近“どうして”痛むのか判ってきた。其処から一滴掬い上げて言葉にすると、氷色の髪にそっと手を伸ばして、……ああ、すり抜けてしまう。でも)
るーくんみたいに、綺麗な色だったら良かったなぁ。
(雪のような髪に、夏の海のような青。季節を閉じ込めたようなあなた)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
ええ? が、がんばらない?
………あの。とっても難しいと、思うンですが…
頑張らずに目標を達成できるほど、わっちは、スペックが高くない、とゆうか……
(マジでそれやんの? みたいな顔をしている)
……。(君は其れを赦せるか)
…許せない、と思う。……でも、……るーくんが頑張った結果なら、…仕方ないなあ、って。ほら、今のるーくんみたいな顔をするよ。
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
……うん。
…うん。
(許されるのなら……両腕を、彼の背に回してみるのだ。其れはあくまでフリであって、一時の気の迷いであって、だけれど)
るーくんの声、ずっと聴いてるよ。
また、お葉書とか送るから。
そうしたら、
( ぷく、)
(泡が、立つ)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
読んでね。
(ぷくぷくぷく、)
あとね、いっぱい、お出掛けもしたい。
モールのお仕事も、頑張りたい。
そいでね、今度はね、ちゃんとノックして入って、特等席で、聞きたいな。
(わがままいっぱい、言っちゃえ)
(ぷくぷくぷくと泡が沸き上がる、足元から少女の幻影を海へと還していく)
(無効票)
十埼・竜 2022年12月18日
……ぼくはね。
(伸ばされる手に、群青の瞳を細めて)
もともと髪も目も黒かったんだよ。
それも、最期には見る影もなかったけれど。
……だから、この姿は、すごく嬉しかったんだ。綺麗だったから。
(ぽつり、零れるように呟いて)
十埼・竜 2022年12月18日
だいじょーぶだいじょーぶいけるいける(軽薄で無責任極まる笑顔!)
ポイントはコース取りとアクセルを踏むタイミングだよ。
(だろー?みたいな顔をしたものの)仕方ないなとは思ってないぞーぼく。文句は生身に言ってやろうってだけで……
十埼・竜 2022年12月18日
(体が被さって、腕が背中に回る。そうすれば、声は近く)
……うん。
(微かな、弾けるようなノイズも。)
十埼・竜 2022年12月18日
待ってる。
(楽しみな夢を数えるみたいな、その言葉を)
だから。
(今度はきみの声で、聴きたいから)
ぼくが呼んだら、応えてほしい。
十埼・竜 2022年12月18日
(柔らかなノイズにとけていくきみに)
――――いってらっしゃい。
(⚡)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
――……。うん。
(髪も眼も黒かったきみが、最期にはどんな姿になったのか、わっちは知らない。だから、静かに受け入れるように頷くしか出来ないけれど)
でも、今のるーくんはとても綺麗な色だ。
嫉妬しちゃうな。わっちはなんつーか、中途半端だから。
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
てきとーだ。(笑うような声音なのに、顔は辛気臭いのだ)
……其れってつまり、わっちがコース取れてないアクセル変なとこで踏むって意味? ……。(泡に包まれながら考え込み)考慮します。
……だって、るーくんは強いでしょ?
強いのに死ぬって事は、相手もきっと強かったンだってわっちは思うな。……勿論、文句言わない訳じゃないけど。
(直ぐ傍にある顔を見上げて、)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
(とん、と床を蹴れば、君のすぐそばにボロボロの顔を晒す。見たくないかもしれないけれど、少し勘弁してほしい。君の顔を、覚えておきたい)
……うン。
(手を君の頬に。……ちりん、と、まるで最後の一音のようにオルゴールの音が体内を反響して)
約束する。
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
約束するよ。
るーくんが呼んでくれたら、わっちは応える。
何があっても。何処にいても、応えるよ。
(優しく、目を細めて……其の身体があぶくへと変わる。)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年12月18日
捕まえてくれて、ありがとう。
――いってきます。
(そして幻のように、幻影は泡へ、泡は中空へと消えていくのだ)
(⚡)