放送電波研究会

【個別】息継ぎの下手な魚

十埼・竜 2022年12月3日
みたいな少年が、運動場のはじっこに転がっている。

#奉利・聖
#十埼・竜





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奉利・聖 2022年12月4日
この先を。

知りたいですか。 (無効票)
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十埼・竜 2022年12月4日
(ぼくの知る世界は)
(ぼくの知る父さんは)
(不幸があっても、理不尽があったとしても、)
(聴覚の呪いにもこんなおかしな道具にも何の縁も無い、普通で、常識的な)

(刻逆が何かを歪めたのか?)
(その「アラタ」は、本当にぼくの父さんか?)
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十埼・竜 2022年12月4日
…………大丈夫。

(その先を聴かないと、きっと、何も判断できない)

続けて。 (無効票)
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奉利・聖 2022年12月4日
…わかりました。

できるだけ、僕の主観を交えずにお話します。
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奉利・聖 2022年12月4日
ノイズイーターは言いました。
竜に集まってきたものを、食べる。そういう約束。
あまりに多すぎると、貴方が壊れてしまうのだと。
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奉利・聖 2022年12月4日
もし終わってしまったなら、やり直す。
潰して、それ(ヘッドホン)に混ぜてしまって。

そうして、貴方は海からまた生まれてくる。

(ここで、一度言葉を切る)
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奉利・聖 2022年12月4日
なぜ、貴方に集まってしまうのか。

それは───アラタが、そう世界を変えたのだと。
そう言っていました。

なぜそうしたのか。
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奉利・聖 2022年12月4日
『ハルカ』の声を、探す為なのだそうです。 (無効票)
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十埼・竜 2022年12月4日
(多すぎると壊れる。ノイズのこと、なんだろう)

聴こえた、じゃなくて、「集まってきた」……そういう表現するとこ、マジなんだね。この話。
(この期に及んで、嘘だなんて思ってはいないけどさ)
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十埼・竜 2022年12月4日
…………終わってしまった?

(「潰す」「やり直す」「混ぜて」「また生まれて」――――)
(耳をすり抜けかけたそれらの単語が、ひとつの像を結ぶ)

(――――『自らの体で再構築』)
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十埼・竜 2022年12月4日
ッ、(ぞわ、と、怖気が走る)
(嫌悪に突き動かされるよう、耳から弾き飛ばす勢いで異形の冠を跳ね上げ)

(――――それでも)
(それでも、耳に忍び込み引き裂く轟音に怯む)
(ぐらりと傾いだ頭で、また耳を塞ぎ直してしまう)
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十埼・竜 2022年12月4日
(ノイズの向こうの)
(きみの声を探して)
(声を、拾う)
……世界を、変えた?

(続くもうひとつの名前に)
ああ。
(納得すらしてしまった。)
(ある意味、最高に、最悪に、話の筋が通っていた。)
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十埼・竜 2022年12月4日
(例えば、世界の果てからの声まで、拾える力を得られるなら――――父さんは、何のためにそれを使う?)

(そうだよね。)
(だって、ずっと、諦めていなかったもんね。)
(ぼくは知ってたよ。失踪宣告を出せないでいること。)
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十埼・竜 2022年12月4日
……やっぱり、父さんだ。
(声から感情が抜け落ちる)

「ハルカ」。母さんを探してるんだ。
……ぼくを、使って。 (無効票)
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奉利・聖 2022年12月4日
…ただ、変えるのは嫌だったそうです。

えーと…これはよく意味が分からなかったので、最初の方から言われたまま話しますが。

「アラタがそう、変えたからだよ」
「世界をかえたの。かわっちゃうの。ハルカの声をさがすために」
「だけど、変えるのがいやで、ぼくは、そこからうまれたし」
「今は、あれの命に使ったのに、全部まざっちゃった」

あれ、とは竜のことです。
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奉利・聖 2022年12月4日
(声音は、幼い無邪気さを排して明瞭に発していた)

ハルカを探したアラタが、どうなったか。
ここも…言われたままのことを話します。どう解釈するかは、お任せしましょう。
(ここからが、きっと)(きついのだ)

「もう、ぜんぶさがしたんだよ」

「アラタは、ぜんぶ、ばらばらの波にして、さがしたんだよ」

「自分のこころのなかだって、ばらばらにしてさがしたのに」

「なくなってたから、たぶん」
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奉利・聖 2022年12月4日
海の中は、アラタでも探せないのだそうです。
だからきっと────。

(ノイズは、集まってこない)
(再び、言葉を切る)(ゆっくり、一つずつだ)
(まだこの先を聞くかと、目は訴えている) (無効票)
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十埼・竜 2022年12月4日
(相槌を打つ気力はなくて)
(ただ、視線で、その言葉の先を辿る)

(言葉遣いが随分幼いんだな、と、思う)
(指示語が入り乱れてひどくわかりにくい)
(変えたと、変わっちゃうでは、随分意味が違う気がするけれど)
(“あれ”。……ぼくの命に使う?)
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十埼・竜 2022年12月4日
(全部探した。……そうだよね)
(父さんが、この力を手にしたところを思い描く)

(そうできなかったから、父さんは声を放つことにした)
(もう探せないから、あとは叫ぶしかなかっただけ)

(魔法みたいな、呪いみたいな力があれば、きっと)
(探して、探して、探して)
(――――そして。)
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十埼・竜 2022年12月4日
(力が入らない両手を握り合わせて。問いかける瞳に、無言で頷いた。)

(どのみちここまで来たら、帰り道なんてありやしなかった。) (無効票)
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奉利・聖 2022年12月4日
そうして、アラタがどうなったのか。

「ぼくをつくるときに、ぼくにまざっちゃった。そういうやくそくだったから」
「でも、またきてくれたんだよ。あれといっしょに」
「だから、ぼく、やくそくを変えることにしたの。
アラタといっしょに終わりにいけるなら、ぼくはそうしたいから」

「時間がぐちゃぐちゃになった日に、やくそくしたんだ」
「あれが、おわりまで、たどりついたら」
「アラタはぼくといっしょだ、って!」
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奉利・聖 2022年12月4日
アラタは、
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奉利・聖 2022年12月4日
……………………
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奉利・聖 2022年12月4日
あなたの、近くに居た。 (無効票)
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十埼・竜 2022年12月4日
……?
(ますます、話がこじれてきていないか)
(まざる、という言葉が繰り返される。“ノイズイーター”を作る時に混ざったもの、“ぼくの命”に混ざったもの)
(約束。……途中で変えられた約束)(“骨”も約束という言葉を使っていた)

(ぼくが、終わりに、辿り着いたら)
(……漠然とあった、果てへの憧憬)
(その根幹に眩暈がする。ぐらぐらと揺さ振られて、端から綻びて崩れていくような)
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十埼・竜 2022年12月4日
(…………ぼくって、何だったんだろう)
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十埼・竜 2022年12月4日
……近く?
(思わず訊ね返した、口の中がからからに乾いていた。声が喉に引っ掛かって、咳き込みそうになる)
…………父さんが?

嘘だろ。流石にそれは、嘘だ。
だって、そんなの、ぼくにきこえないはずがないじゃないか。 (無効票)
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奉利・聖 2022年12月4日
「またきてくれたんだよ。あれといっしょに」

………あなたと一緒に、此処に来たのは。
ノイズイーター以外に何も、ありませんでしたか? (無効票)
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十埼・竜 2022年12月4日
(刻逆直後のぼくにあったもの)

(聴覚過敏と)(この異形のヘッドホンと)

(それと――――)



…………ノイ。
(かすれ声で、呟く)
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十埼・竜 2022年12月4日
(覚束ない手で、きみの服でも腕でも、どこかを掴もうとした)

(ノイ。)
(何を考えているのかわからないモーラット。)
(灯台の放送局からあまり出たがらない)
(ほっとけば一人で放送回せるくらい器用な)
(ぼくが水に近づくのを、異様に嫌がる)

(――――何かの間違いだと、言って欲しい。)
(だって、それじゃあ)
 、、、、、、、、、
(取り返しようがない。) (無効票)
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奉利・聖 2022年12月4日
………だから、あまり言いたくなかった。
あれほど念を押したのは、このためです。

竜…僕には、彼のことは分かりません。
だから貴方が判断してください。

ノイズイーターの言っていたことは、事実かどうか。
思い当たる節があるのか。
(その手を取り、ただ真摯に見つめた)
(せめて寄る辺になろうと、じっと) (無効票)
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十埼・竜 2022年12月4日
(顔色は蒼白もいいとこだろう)
(真っ直ぐな射干玉の先で、群青の瞳はひどく頼りなげに揺れて)

……出来るなら今すぐコイツを剥ぎ取って叩き壊したい。
(できないんだけどさ。)
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十埼・竜 2022年12月4日
納得がいくことが、たくさん、ある。
…………でも全部じゃない。
聖の記憶が正確だったとしたら、こいつの話はわかりにくすぎる。

だから――――だからさ、
(悪いけど)(今だけ、思いっきり、頼らせて)(掴んだ手を握り締めて、抱え寄せて、背中を丸めたまま大きく息をする)
(それで、泣くのを、先延ばしにした。)
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十埼・竜 2022年12月4日
(――――大丈夫。)

……ぼく自身が、話ができないと、ダメだよな。本当にコイツに意志があるんなら。
聖はなんでこいつと話なんかできたの? こいつからの干渉? (無効票)
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奉利・聖 2022年12月4日
……ノイズイーターは、死骸から出来ている。
それ即ち───『死』と近しい。それゆえに、なのでしょう。

どうやら僕は、ノイズイーターに気に入られている。
逆に竜は…扱いがかなりぞんざいな印象だった。
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奉利・聖 2022年12月4日
必要であるならば、セヴラトの時のように。
僕がメッセンジャーになりましょう。

真実というのは時に残酷で、辛いものですけれど。
それでもなお手を伸ばすのなら、いくらでも手伝います。 (無効票)
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十埼・竜 2022年12月4日
(死骸と聞いて鳥肌が立つ)
(……革製品だって極論死骸だ、ぼくはこのノイズイーターの素材が何かの骨や甲殻なんだろうなと推測していた。恐竜の骨、と言われて納得すらした。化石みたいだからだ)

(でも、言葉通りなら……混じっているのは、ぼくの死体だ)
(何度死んだ。何度海からやり直した。耳に纏わりつく、頭にへばりつく、どのくらいがぼく自身の重みだ)
(振り払って粉々に砕いてしまいたい、けれど「そうできない」ことをぼく自身が知っている。まるで本能みたいに)

(ぼくは、何だ?)
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十埼・竜 2022年12月4日
…………きみ相手には随分お喋りだったみたいだからね。
あの海で、ヘンにぼーっとしてるなと思ってたけど、そんなことしてたわけだ。
(声はなんとか、軽く取り繕うけれど)(……ごめんなさい)(まだ、強張った手を離せそうにない。)

……そうだね。すごく、助かる。通訳再びじゃん、立場逆だけど。
(ぼくは)
(やっぱり、あの夏で死んでいて)
(この歪な冠みたいに捏ね上げられた、色の抜けた模造品が、今のぼくで)

(空転する悪夢を止めようと、もう一度、息をする)
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十埼・竜 2022年12月4日
…………聖、ありがとね。
言いたくなかったのにさ。あの海から、ずっと黙っててくれたんだろ。 (無効票)
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奉利・聖 2022年12月4日
…………竜がお父さんのことを話す時の感じを想うと。
とても言い出しにくかった。
変わり果てた姿で、ずっとそこに居たのに。
気付かずに過ごしていたなんて、そんな事実…知ってしまえば傷になる。

だから、慎重に取り扱っていました。
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奉利・聖 2022年12月4日
貴方が………自分の抱えるものと向き合う時。
強い覚悟を持った時でないと、話せなかった。

ごめんなさい。
僕の判断です。 (無効票)
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十埼・竜 2022年12月4日
……ノイのことはさ。

正直信じられてない。
(信じたくない。)

……ノイズイーターに関わるところとか、ぼく自身の体感と噛み合う部分の話だったら、そうかもな、って言えるけど。
だって、人間と、モーラットだぜ。流石にそんなファンタジーあるかよ。
ノイの脳波や思念だって今まで何度も読んだけど、犬猫とそんなに変わらない――――

(…………きもち、わるい)
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十埼・竜 2022年12月4日
………………だから。
あいつに直接確かめます。
…………ロクな返事なんて、返してくれないかも知れないけど。

なんで謝るのさ。……何度も大丈夫だって、聞きたがったのはぼくだよ。あれだけ止められたのに。
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十埼・竜 2022年12月4日
(やっと、手を緩められる気がした)
(ぎこちなくほどいて、)

…………流石に今日はこれ以上無理かな。モールに行って、放送の準備、しないと。……微妙にあいつと顔合わすの気まずいな。
(笑顔も、うまく作れた気がしない)
聖も向こうで仕事? (無効票)
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奉利・聖 2022年12月4日
……そうですか。
大丈夫、僕が聞き出します。必ず。
何を信じるかどうかは、その後で決めしょう。

……………。貴方を傷つけるのは、いつだってしのびない。
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奉利・聖 2022年12月4日
(一度、深い呼吸をして)
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奉利・聖 2022年12月4日
僕も、仕事です。
(本当は、無いけれど)
(できるだけ傍に居てあげたいから)

行きましょう、竜。 (■)
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十埼・竜 2022年12月4日
痛かったらちゃんと、痛いって言いますよ。
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十埼・竜 2022年12月4日
(聴きとれて、しまう。)
そっか。
(優しい嘘を。)

(――――救われてしまうのだ。これが、どんな悍ましい呪いでも)
(ぼくが何者だとしても、ぼくに流れ込む“波”は確かにあって)

(だからその声で、ぼくの名を、教えて欲しいと思う。)
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十埼・竜 2022年12月4日
(――――モールへと向かう道すがら、話題は、下らない日常で埋め尽くした。) (■)
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