【個】煙と泡と日陰者
十埼・竜 2022年11月27日
────豊饒祭、二日目、開場前。
まだ随分日の低い時間、ひとけのない屋上。
柵に凭れて空を仰ぎ────細い紫煙を燻らす、メイドエプロン姿の男子中学生がいる。
……問題点が過積載である。
#奉利・聖
#十埼・竜
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奉利・聖 2022年11月27日
強いって、何だと思いますか?
(顔を覗き込んだ)
(無効票)
十埼・竜 2022年11月27日
……だって、怖いもん。寂しいもん。
うるさくても苦しくても痛くても。ぼく自身のためだったら、ぼくはこっちでいい。
たださ。
そんなの、一回踏み越えちゃえば楽になれる。でしょう?
(きみは、そこを何度だって踏み越えただろ?)
十埼・竜 2022年11月27日
(覗き込んだ顔はきっと、朝日を浴びて尚不景気そうに青白く)
(拗ねた視線は、微かに潤んですらいた)
聖みたいなの。
(声だって拗ね散らかしている。)
……大したことで動じなくてさ。ひとりで、なんでもできるじゃん。
(無効票)
奉利・聖 2022年11月27日
楽になれるでしょうね。
ただ……僕は、竜が何の音にも触れられなくなるのは嫌ですけど。
ラジオも聴けないし、僕の声も聴いてくれなくなるし。
…竜も楽しくないでしょう、そんなの。
奉利・聖 2022年11月27日
すっごい高い評価ですねぇ。
(そんなに凄い人に見えるものか)
そうかもしれません。
きっと一人で生きていくことも。
戦っていくことも、出来るんでしょうね。
奉利・聖 2022年11月27日
でも、強いとは思えない。
他ならない己が、そう思ってる。
強さって言うのは、そういうものじゃないと思えてる。
(冷たい手を、彼の頭に置いた)
奉利・聖 2022年11月27日
己から逃げないこと。
内から湧き出る全てと、ちゃんと目を合わせること。
僕はそう思っています。
ねぇ、竜。
心の底から、僕のようになって強くなれると。
思っていますか?
(無効票)
十埼・竜 2022年11月27日
たのしくなーい。
何も聴こえないなんて、死んでるのと何が違うのさ。
……きみも、声、聴いて欲しいって気持ち、あるんだ。
(そんな声だけ、親近感の分の温度が乗る。)
十埼・竜 2022年11月27日
(背中丸めて柵に寄りかかってるのと真っ直ぐ立ってるのでは、目線の高さが全然違う)
(数えきれない年月に磨かれたその立ち姿を、美しいと思う)
(温度なんてなくても重みは心地よかった。頭に被さった手と、黒い紋様で彩られた腕越しに、きみの顔を見上げて)
…………憧れは、あるよ。
(それはもう、すごーく。)
十埼・竜 2022年11月27日
……でも、音楽性が違い過ぎるんだよな。
(無効票)
奉利・聖 2022年11月27日
声を聴いてもらうのって、存在証明にになるでしょう?
お互いの声を認め合えるのって、素晴らしいじゃないですか。
奉利・聖 2022年11月27日
でしょ?
憧れるのはいいい。でも至りたいものは、きっと違う。
どうやってとこに行くかは……分かりません。
到達できたかも、自分で判断するしかない。
だから、なりたいものの為に。
僕や周りを、沢山利用したらいい。
(無効票)
十埼・竜 2022年11月27日
……そうだよ。
だからぼくは、ぼくの声を、覚えててほしいし。
誰の声も忘れたくない。
十埼・竜 2022年11月27日
(自分から、逃げずに。)
(内側を覗き込んで目を合わせようとしたら)
(真っ先に見えたのは、やっぱり)
(弱くて狡くて、我儘で欲しがりな)
(ガキがいて。)
十埼・竜 2022年11月27日
(じゃあ、ぼくがなりたいものって――――)
十埼・竜 2022年11月27日
……。(また、よく晴れた空に煙とシャボン玉を吹き出す。ふわ、と、清涼感のある香りが漂った。)
まだぼくに使われてくれるんだ、“先輩”。(最近手厳しかったじゃん。くすくす、肩を揺らして)
十埼・竜 2022年11月27日
(指に挟んだそれ――――なんのことはない、ただ煙草に似せた形状の、仕掛け付きのハッカパイプ――――を、きみの口元に差し出した。)
……聖、「己から逃げない」とか、「内面と目を合わせる」なんてとこ、もうクリアしてると思ったのに。
それでも、「強くない」なの?
(無効票)
奉利・聖 2022年11月27日
(誰の声も忘れたくない)
(その言葉に、置いた手をわしゃわしゃと動かした)
奉利・聖 2022年11月27日
勿論。泣きついて頼るのではなく、強かに利用するなら喜んで。
それが大人の関係というものです。
奉利・聖 2022年11月27日
ん………。
奉利・聖 2022年11月27日
これがまた、完全に出来ているわけではなくて。
何しろ未だに思い出せないことも多くて…真の己を全て捉えられているわけではない。
だからまだ、僕も修行中というわけです。
強くなる道は、誰しも遠いのですよ。
(無効票)
十埼・竜 2022年11月27日
ひゃ。
(くすぐったくて肩を揺らす)
…………今ちょっと嬉しかった?
(そういう“波”が、伝わった気がしたもんで。)
十埼・竜 2022年11月27日
いいねー大人の関係!(特に「大人」扱いが気に入った!)んじゃ、きみもぼくのこと、ちゃーんと利用すんだぜ?
(ふてぶてしい笑顔はとんだ不良メイドであり)(おおむね調子乗ったガキなのだが)
……そっか。でも、要はそれって伸びしろじゃん。(いいことだよね。柔らかく微笑んで)
そういや、思い出したのって、何だったの?
(無効票)
奉利・聖 2022年11月27日
分かってるんじゃないですか?
(あえて自分でそうだと言ったりしない)
(そういう意地の悪さだ)
奉利・聖 2022年11月27日
勿論、我々対等ですからね。
(ポン、とやや強めに手を弾ませてから手を離す)
(ハッカパイプに口をつけて、息を吹いた)
奉利・聖 2022年11月27日
思い出せなかった人のこと。
凄い強いのに、ずっとどこか哀しそうな顔をしてて。
ついぞ名前を聞けなかった。自分は何者でもない存在だから、って。
初めて会った時から妙に懐かしい雰囲気がして…。
不思議だったなぁ。
(無効票)
十埼・竜 2022年11月27日
わかってるけど、存在を証明したくて。
(うれしい、なんて、形のないものを。)
……うーわ、今聖の写真撮ったら無限に誤解を招けるね。
(煙と一緒にシャボン玉を吹き出す羽目になるとはいえ、煙草状の物体を咥えている姿が異様にサマになる)(因みに、吸ったら普通に甘いハッカ味だ。)
試してみて思ったけど、ぼく、お酒よりそーゆーのにハマっていきそうだな、大人になったら……
十埼・竜 2022年11月27日
……。
(実際、想いを馳せる横顔は、懐かしそうに見えた)
どんな人だったの。その……うーん、呼び名がないの不便だな。
なんかないの、渾名とか、特徴的ななんか。
(無効票)
奉利・聖 2022年11月28日
…しょうがないですねぇ。
というかこれ、実質的に言ってるようなもんか。
肺は大事にしてくださいね。
何を好きになってもいいですけど。
(撮ってもいいけど、大っぴらには見せないように)
(そう釘を刺しておいて)
奉利・聖 2022年11月28日
ん-……何かと、『端役』って言ってました。
口は悪い方法で、時々知らない国のスラングみたいなのを使う人で。
銃の扱いと刀剣の扱いが上手くて、後は……凄く頭が良い人。
学校の勉強が出来る人って意味じゃなくて、クレバーな感じ。
電子機器なら何でも扱えて、それなりのハッカーだったんだよ、って嘯いてた。
(無効票)
十埼・竜 2022年11月28日
オーケー、ぼくらだけの秘密に(ぱしゃり)してあげよう。
(そういやこないだバニーに囲まれて泰然自若の様も撮ったんだった)
(誤解を招く写真フォルダが潤うな……)
……その時が来たらほどほどにするよ、商売道具だし。
思い出したけど、父さんもこっそり吸ってたんだよね。ぼくの前では出さなかったけど。
十埼・竜 2022年11月28日
……はやく……『端役』?
銃と刀剣と、すごくクレバーなハッカー……
(ふっと、)
あー……、
(…………本当に下らない、子供じみた想像が、頭を過って。)
(流石にそれは、まさか、だ。)
十埼・竜 2022年11月28日
んじゃ、仮称『端役』さんで。
……その人に、色々教わったんだっけ?
ハッカーかぁ、なんか親近感湧くな。(ぼく、割とそっち寄りの音楽性な気がするし。)
(無効票)
奉利・聖 2022年11月28日
…血は争えないってやつなのかも。
大人になったら一緒に吹かしてあげますよ。
奉利・聖 2022年11月28日
そう…戦い方…それと生き方。適応の仕方。
サバイバルの術やら何やらを教えてもらって……。
あとは……ううん、細部までは思い出せない。
重要なことを言っていた気が…。
(無効票)
十埼・竜 2022年11月28日
……ほんと? やった。覚えときますからねそれ。
じゃ、父さんに会ったらぼくの煙草、渡しといて……
十埼・竜 2022年11月28日
(あれ)
(……なんでぼく、今。)
十埼・竜 2022年11月28日
(怪訝そうに瞬きして、)(疑問はすぐに振り払ってしまった。)
……すごーく基礎の基礎というか、奉利・聖スターターキットみたいな内容ですね。結構初期のうちに会ったひとだったんですか?
重要なこと……
(きみの戦い方を思い出して)……出会い頭にまず頭を潰せとか。(教育に悪い部分ばかりを覚えている)
十埼・竜 2022年11月28日
まあ、でもさ。
重要だ、って思ってることなら、きっとまた思い出せますよ。
…………またあんな騒ぎになるのは正直御免だけど。
(無効票)
奉利・聖 2022年11月28日
(………?)
(妙な瞬きに対して首を傾げるが、追及はせず)
そうそう、可能な限り急所を一撃で潰せ、とか。
拙速は巧遅に勝る…とか。
何時に出会ったかも…なんとも。何だか、あの人には全部分かってるみたいな雰囲気はありましたが…。
奉利・聖 2022年11月28日
ですかねぇ。
(軽く嘆息して)
そうですよ、わくわくモールももう少し平和になってもらわないと。
………いつのまにか、しょぼくれた感じがしなくなりましたね。
奉利・聖 2022年11月28日
もう平気そうですか?
(無効票)
十埼・竜 2022年11月28日
わぁ(マジか)
その薫陶で生まれたのがこちらの判断力おばけか……
話聞いてる感じだと、何らかの達人とか……全部わかってるとか、なんか仙人っぽいね。
十埼・竜 2022年11月28日
(――――日は、さっきより高く昇って)
(校内で目覚めた者。登校してきた者。)
(祝祭後半を楽しむために集った熱が、今日も眼下にざわめきだしていて)
(時化ていく海みたいに足元がぐらついていく。)
十埼・竜 2022年11月28日
(……それでも、ぼくがなりたいものは、)
大丈夫。
(寄りかかっていた体を起こして、まっすぐ立つ。全身に浴びる日差しは、随分暖かかった。)
そろそろ、放送開始の時間だからね。
(無効票)
奉利・聖 2022年11月28日
……仙人か。
むしろ僕には……必死に頑張ってる普通の人のようにも……。
(小さな呟き)
(何で、こう思うんだ?)
(分からない)
奉利・聖 2022年11月28日
そうですか。
では、それぞれ仕事に戻るとしましょうか。
(ぺしんっ)
(小さく背中を叩いて)
がんばりましょ?
(■)
十埼・竜 2022年11月28日
(小さな呟きに含まれた疑念を聴きとって)
(だってきみは、そうそう人物像を見誤らないだろうし)
(……ほんとに、まさか、なぁ。)
十埼・竜 2022年11月28日
ん、
(背中の衝撃が、エンジンのスターターだったみたいに)
(その冷たい手のひらから、胸に灯る。)
十埼・竜 2022年11月28日
――――きみも、ね。
(届くように。)
(少し強めに、叩き返した。)
(■)