【個】夕暮れ、滄溟の上に
竜城・陸 2021年8月23日
下駄箱に手紙が入っていた。
割とよくある。
自分はいまいち所在がわからないことが多いためだ。
内容は、というと――
……これもまあ、想定内では、ある。
そんなわけで、夕刻。
新宿島辺縁部からしばし、翼を頼りに洋上を行く。
視線の先にあるものは――放棄された船の残骸。
きっと、どこかのディヴィジョンから流れついたのだろうそれは、
この時代には似つかわしくない、ひどく古めかしいものだった。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月23日
学んで来いって言われたからな。
オレなりに、徹底的に学ばせてもらうだけだ。
それじゃ――――(始めよう、と言いかけたところで)
ン……? ああ、いや。別に。
好きか嫌いかで言えば……好きなんじゃねえかな。陸に立ってるよりは波に揺られてるほうが、落ち着く。
アンタは? 浮いてるほうが楽なのか?
竜城・陸 2021年8月23日
(それこそ俺から学べるものなんて、さしてないと思うけれど。)
(――なんて、浮いた言葉を音にするのは無粋だろう。何から、何を学ぶかは、当人の考えひとつのことだ)
ああ、そうなんだ。もしかして海の近くで育ったとか、そういう感じなのかな。
……俺? うーん……さしてどちらでも変わらないかな。でも、まあ、海の上だから。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月23日
近くというか、上というか――――。
そりゃそーだ。魚じゃねえしな、お互い。
んじゃ、改めて。
よろしくセンパイ。胸借りるぜ。
(勝手に初めても問題ないだろうと、宣告)
(懐に手を突っ込む)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月23日
(その次の瞬間には、大型の回転式拳銃を引き抜いて、照準)
シャープシューター ダブル
“弾 速 強 化”“二重”
(――――拳銃の中、装填された6つの銃弾に特性が付与され、青白く光る)
(胴体目掛けて――ファニングショット)
(1発分の銃声のうちに放たれた6発の銃弾が、空を奔る)
竜城・陸 2021年8月23日
上。(船の上とか?)(とまでは、続けない)――ああ、
こちらこそ、宜しく。学ばせてもらうよ。
(冗談でも長髪でもなく、本音)(――告げた通りだ。“戦うのは、さほど得意ではない”)
竜城・陸 2021年8月23日
(引き抜かれたのは、先程とは違う銃だった)
(音は、一つ――少なくともこの竜人には、そう聞こえた)(が)
(何らかの術式が付与されたということくらいは、理解ができて)
(それでも、そのまま。動くことはなく――、)
竜城・陸 2021年8月23日
(近いぶん。今度は、明確に、彼の耳にも届くだろう)
(金属同士がぶつかるような。そんな音とともに、またも、銃弾が弾かれる――)
(――――魔術を視る素養を有していれば。魔術的な防護の恩恵――いわゆる、魔力障壁というものに近いそれであることは、窺えるかもしれない)
……あれ、6つ?
(なんて、ひどく間の抜けた声。すごいな、と零れた感嘆も、素直な感想そのままに、)――ああ、ところで、
竜城・陸 2021年8月23日
泳げるよね?
(羽搏き、ひとつ)
(それととも、海面が、うねるように蠢いて)
(――巨大な蛇めいた濁流が、幾重も。意思を持ったように、彼を目掛けて殺到する)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月23日
(壁、或いはもっと限定して、盾――?)
(弾かれる弾を視認する。成程、自動迎撃でないのなら“弾速”は関係ない)
(選択肢の中から一旦取り下げて――――)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月23日
こちとら船乗りだ。問題ない――――
(言いながら、あらゆる方向から殺到してくる濁流から逃れるために、ライフルをひっつかんでマストから真っ直ぐ飛び降りた)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月23日
(マストに沿って真っ直ぐに落ちていく)
(その最中、拳銃をベルトにねじ込んで、背中からもう一丁の銃を取り出す)
(クリスタ・コルトハードとの戦いで学習した。番長に一撃を通すには、銃では火力が足らない)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月23日
ディレイ
“遅 延”“5sec”
(だから、この武器を選んだ)
(――――擲弾発射器。一般的にはグレネードランチャーと言われるそれに装填された擲弾の時限信管をその場で設定し、引き金を引く)
(きっかり5秒、弾は緩やかな弧を描いて元居た場所――濁流の集結点の付近で流れに呑まれると、内側から破裂した)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月23日
土砂降りだな。妹に怒られる。
(全身をずぶ濡れにしながら甲板に着地すると、再び拳銃を握る)
(“自動装填”の“まじない”と共に引き金を引く)
(今度は、規則的な6発の銃声。――ただし、ボロ船の金属に反射させてあらゆる方向から)
竜城・陸 2021年8月23日
怯まないね。
(当然そうあるべきものを評するような声音だ)(なんなら、喜色を含んですらいたかもしれない)
(……顔つきはいつも通り。淡い、穏やかなそれのままだが)
竜城・陸 2021年8月23日
(精緻な術式による修飾を得手としないこの竜人の扱う魔術は、当然、対象を追尾する――などといった細かな挙動をすることは、なく)
(その集結点が破裂すると同時、勢いを失って、ほどけて、ただの水に変わる)
それはご愁傷様だ。……加減したほうがよかった?
(また銃声。今度は正しく、6つの音を耳でとらえることは出来て)
(それが、あらゆる方向へ散っていくのは捉えられて)
(――――けれど一顧だにしない)
(死角なく張り巡らされた障壁が、それを防ぐ、と踏んだから。6発ほぼ同時が防げたなら、単発のそれが防げない道理はない)
竜城・陸 2021年8月23日
(落ちた弾丸は、海面でかつりと硬質な音を立てた)
(海面――――否、今は白く凍り付いた、海面だった場所で)
(身を縛るような冷気と共に。凍り付いた海面から、白い氷霜が、傾いた甲板を這い上っていく)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月23日
いや、必要ない。
むしろ――――
(グレネードランチャーから、2発目の擲弾を今度は本人に向かって放ちながら)
端から手加減してるだろ、センパイ。
オレは見せて貰いに来たって言ったはずだけど
竜城・陸 2021年8月23日
――――、
(“あなたが、信じていないのでしょう。”)
(そんな言葉がふと過って、)
……言っただろう。戦うのは余り得意でないんだ。
竜城・陸 2021年8月23日
(――――手加減をしているわけではない)
・・・・・・・・・・
(そもそも、加減がわからないのだから)
――――でも、そうか。
(吐息ひとつ)
(着弾する寸前で、擲弾はそのまま“凍り付いた)
(勢いをなくして、墜ちていく)
(それだけではない)
(竜人の周囲で、幾つも、幾つも。細かな氷が、舞って、散って、)
でも、そうだな。
(ある意味、“信じていない”のはその通りだったかもしれない)
(そんな、自嘲めいた、溜息)
竜城・陸 2021年8月24日
確かに、余り信じていなかった。
(――――ひとは、すぐに命を落としてしまうから)
(生まれた氷の粒は、瞬きの間に大きくなってゆくだろう)
(十や、二十では済まない。数えきれるかも判らないほどの――氷の槍、としか形容のつかない何か)
(それが、ひとつ残らず彼を向いて)(一斉に、落ちる)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月24日
(――――防御手段が“変わった”)
(全周囲に対して“常に”防壁があるのなら、別に今のも防ぐ必要は――――)
(いや、これが“本気”か)
(思わず口角が上がる。肉食の獣めいた、獰猛な笑み)
信じるってのはよくわかんねえけど――
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月24日
. ・・・・・・・
漸くこっちを見たな。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月24日
(これまでの試験――敵の防壁性能を見た評価は捨てずに、切り替える)
(擲弾――通常の銃弾よりも大きな武器でこれなら、拳銃弾では問題外だ)
(大型のリボルバーを迷わず捨てて、廃船の中へ)
……って言っても滅茶苦茶だな。怪獣か?
(転がるように、船の中を走る。氷槍。視界が通らなくなったからか、無差別に、船事破壊する勢いで降り注いでくるそれが開けた穴から、擲弾を数発)
(“遅延”を3秒、5秒、7秒とそれぞれ分けながら放つ。一瞬で凍るわけでないなら、どれかは爆ぜるはずだ)
竜城・陸 2021年8月24日
(突き刺さった傍から、周囲の物体も、或いは空気でさえも――凍り付いていくだろう。まるで、冷気が伝播していくように)
(マストは折れたろうし、甲板は半分以上捲れ、抉れて、そこから這うように冷気が全てを侵していく)
(――――その船自体も、もはや海面に浮いているというより、氷の上に突き立っているような様相だ)
(足場が増えたともとれるかもしれないが――その全てが、触れたものの熱を無差別に奪う、魔を帯びた氷晶だ。降り立てば、“熱と力が奪われるような”感覚があることは、すぐにわかるだろう)
竜城・陸 2021年8月24日
別に、見ていないつもりはなかったんだけど。
(これも、本当。ただ、目線の高さが違ったと言われれば、否定はできない)
(もともと、“人と対等にはできていない”。竜とは、■とは、そういうものだから)
竜城・陸 2021年8月24日
(ひとつめ、)(凍って、)(砕ける)
(――ふたつめ、)(凍って、)(砕ける)
(――――みっつめ。)(凍って、)(砕ける。)
(恐らくは、破裂することで熱や衝撃を与える、そういうものなのだろう)
(なら、破裂させなければいい――破裂“できなくすればいい”。)
(熱を奪うとは、そういうことだ。あらゆる生命の、あらゆる事物の、あらゆる活動を停滞させる)
(――――この“竜”の本質のひとつだ)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月24日
(――――1発の爆発も確認できない。つまり“3秒以内に凍結している”)
(それが1秒か、2秒か)
(周囲の冷気が思考力を奪っていく。――まだ、まだ耐えられる)
(狐のほうの母のおかげだろうか。寒いのには随分強く出来ていて――いや、だとしても猶予はない)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月24日
(船尾に大穴が空き、船が沈んでいく。船尾が沈むことで逆に起き上がっていく船頭の根元に黒狐は姿を現して)
キモチの問題だよ、センパイ。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月24日
(ミサゴ・ゾーリンゲンに飛行能力はない。ならば、届くところまで走って、跳ぶ必要がある)
(だから――――傾斜していく船頭を、疾走した)
(登り切った頂点から、一足で悠然と空へ佇む竜へと飛び掛かる)
(――――恐らく、ただ接近しようとすれば擲弾の様に一瞬で凍り付かされるだろう)
(それ故に、)
ディレイ
“遅 延”“0.5sec”
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月24日
(自分の進行方向、蒼海番長へ向けてほとんど即時爆発する遅延信管を設定し、擲弾を放つ)
(――――――――爆発。自分自身の体を焼きながら、爆炎が作る一瞬の“安全圏”の中を跳びながら、次の安全圏を確保するための擲弾を放ち――)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月24日
(――――――爆発)
(――――爆発)
(――爆発)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月24日
来たぞ、センパイ――――ッ
(死に物狂いで眼前まで迫り、拳を握り締め――――)
竜城・陸 2021年8月24日
(――――この竜人の構築している防御の式は、二つ)
(ひとつは、領域内に捉えたものに対して“ほとんど瞬時に反応する”反射式――有体な言葉で表すならば、自動的なカウンター、というのが近いが)
(――“ほとんど”である。実際には、感知し、干渉し、応手を為す、という工程を経る必要があり、)
(つまりは、“自身の感知より速くは起動しない”)
(故に――――)
竜城・陸 2021年8月24日
(発射とほぼ同時に爆発するそれを、防ぐ手立てがなく、)
(仮に、それが目に慣れたとて、そのタイミングを理解できたとて)
(“精緻な制御ができない”この竜人は、この状況に於いて“擲弾だけを止める”こともできない)
(――最悪は、体ごと。どこまでも最大限に頑張ったところで、おそらくは銃を握る彼の腕ごと。凍らせ、腐らせ、損なわせてしまうだろう)
竜城・陸 2021年8月24日
(――――だから、“ひとつめ”は彼の動きを止めるには、至らず)
(もうひとつは、)
――――、
竜城・陸 2021年8月24日
(文字通り身を焼きながら。眼前まで迫った彼の瞳を見た)
(金の瞳は、まっすぐにこちらを見ていて、)
(…………ああ、)(そうだな)
(高いところから見下ろしていたら、きっと、)
(この色には出会えなかったろう)
竜城・陸 2021年8月24日
(握り締められた拳を受けようと、腕を前に出した)
(見様見真似だ。よく、部屋に入り浸っている、同じ立場の少年の)
(――――武術の心得などまるでないから、その腕がどう動くかまでは、全く予想ができないが)
(それでも、受けるだけならば。受けてはみせるだろう)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月24日
(――――思考が過る)
(この期に及んで加減をされて――――)
(いや、考えない)
(だとしても、自分はやるべきことをやるだけだから――――)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月24日
―――――ッラァ!!!!!!
(もはや自棄に近い、型も何もないただのパンチ)
(握った拳を、顔面目掛けて遠慮なく振り抜いた)
竜城・陸 2021年8月24日
うわっ
(容赦のない顔面を狙った一撃に、それはもう声も出ようというもので)
(それでも、多分彼の腕よりも細く、全く肉のないような青白い手は、しっかりとその拳を受け止めてみせただろう)
竜城・陸 2021年8月24日
…………君さ、顔つきの割にこう……柄が悪くないかい。
(受け止めた拳を掴んだまま、浮いている)(彼の身体もそのまま浮いているだろう。手を離さないのだから)
(まるで重さを感じた様子も、一切ない)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月24日
……(あれ?という顔)
うおおお…………(腕掴まれてぶらぶらしてる。なんだこれ)
それは生まれって言うか、こう、家庭環境って言うか―――
竜城・陸 2021年8月24日
どんな家庭環境なんだいそれ。
(溜息交じりに、足を下ろさせてやれる場所を探す)
(船…………はさっきめちゃくちゃにしたんだった)(もう氷漬けだった)(下ろしたら多分彼が普通に凍死する)
(のでぶら下げたままだった)
あー、で、ええと。見たいものは見られた?
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月24日
うちの過程はちょっと複雑っていうか……
(ぶら下がる)
(ライフル……はまあ、スペアがあるし問題はないだろ)
(沈むライフルに手を合わせた。南無)
ア? あー…………どうだかな。最後、まだ手加減してたろ
竜城・陸 2021年8月24日
え?(虚を突かれたように瞬いて、)
……それは、こう、野生の勘的な何かなの?
(この間後輩とやった時は気付かれなかったんだけどなあ)(なんて、小さく呟きつつ)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月24日
止めようはいくらでもあっただろうし、そもそももっと高く飛べば完封じゃん(勘、と言われれば苦笑して)
まあいいけど。流石に今、これ以上手札はないわ(降参のポーズ)
竜城・陸 2021年8月24日
え? ああ――
(――――確かに、防ごうと思えば防げた)
(ふたつめの防御は、物理的な干渉をほとんど弾く魔力障壁で、)(それは、確かに。人体によるそれとて例外では、ないけれど)
――――(それを切ったのは意図的だけれど、)
言ったろ、戦うの、さして得意じゃないって。
高く飛ぶか。そうだね、そういう手はあったな、確かに。
(誤魔化しているようでない、素みたいな声音だった)
(“竜”である。羽搏き一つで、ひとは簡単に命を落とすのだ。)(“咄嗟の判断”が必要な戦いを――したことがない)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月24日
(何言ってんだか――って顔)
いやまあ、いいや。
とりあえず陸までよろしく。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2021年8月24日
・・
番長。
竜城・陸 2021年8月24日
(呆れた顔されるとちょっと傷つくな……みたいな顔)
ん、……了解。
さすがに抱えられるのは嫌だろうから、このままでも…………
(あらためて、そういえば)(洋上)(小舟もなかったし)(飛べるようにも見えない)
…………君、どうやってここまで来たの?
(とかなんとか、怪訝な顔をしつつ)(なんやかんや新宿島まで運んで行ったことだろう)