【イ】修学旅行初日 AM8:00 VRアリーナ
カノン・ダウンワーズ 2022年11月1日
『全員────静聴!』
『おはようございます、カノンちゃんです! 本当はこういう壇上にあがるの嫌いなんですけど、どうしてもやれやれってうるさいので、少しだけお話しさせてもらいますね?』
『今日から待ちに待った修学旅行です! これからみんなが体験するのは─────「あ、駄目ですか。そうですか」
「あ、あー…てすてす、まいくてす」
録音していた去年の音声が停止され、スクリーンに童女が映し出される。かわいいね。
「はろはろ、カノンちゃんですよ! …っていっても、特に去年と大差ない話しか出来ないわけですが。そうですね、あえて何か話すのであれば────」
スクリーンと現実。2Dと3Dの隙間を軽々と飛び越えて、カノン・ダウンワーズが壇上へと足を踏み入れて。
「──貴方達は今から、このスクリーンの先に向かっていただきます。かつて、刻逆が起きる前に、この世界の人間たちが魂をかけて描き、作った本気の虚構!! 夢と希望の世界に、皆さんをお連れしましょう!」
スクリーンの向こう側から、いくつものフィルムが伸びる。
貴方達を誘う道のように、現実と嘘を繋ぐ橋のように。
「案内人は、私達黄のクラス!! 今回の世界はちょっとすごいですよ? さぁ───」
──コクーンが起動する。現実が遠く離れ、映写機は回り、0と1が走り出して、物語が今、紡がれる!
「───ニセモノへヨウコソ!!!」
0