第6試合:アソビバ・ランペイジ
緋野・氷織 2022年10月14日
ステージ:オフィス街
戦 場 :公園
────開始から、一秒未満。
#野々矢・一三郎
#十埼・竜
0
十埼・竜 2022年10月14日
(!?)
聴こえたというか、手応えからの警告だった。急にがくんと軌道を変えたきみを、視界の端にしかとらえられていない。
直感100%、咄嗟に握った柵を手放してきみに持っていかせて、
「――――っ」
(鋭い吐息)
(と)
(だん! 強く踏み込めば、体はひどく俊敏にきみから距離をとって)
十埼・竜 2022年10月14日
――――その全てが、普段の十埼・竜の動きでは、まるでない。
十埼・竜 2022年10月14日
飛び退いた先で、やっと一呼吸ついて。
きみの堪忍袋がお喋りに耐えてくれるかわからないから、口早に。
「先に柱投げたのは悪かったって……でもぼくが顔合わせてよーいドンが一番向いてないの、きみだって知ってるだろ?」
ぼく、前のシーズンでも散々弱音吐いてたしさ。
十埼・竜 2022年10月14日
「それとも」
「ぼく、つまんない死に方した方がよかった?」
(無効票)
野々矢・一三郎 2022年10月14日
絡め取った。体勢が崩れてくれれば儲けものと思ったが
軽い。体重が引っかかったようには見えない。ならばと、すぐさま剣を格納する
ワイヤの鎖分銅のみがぽろりと落ちて
野々矢・一三郎 2022年10月14日
「知ってるからこうして潰しに来たンだろうが……ちっ」
野々矢・一三郎 2022年10月14日
「そこはどーだろな。簡単に片付いてくれンなら、うちのチームが楽できて万々歳……」
「ちょっと物足りねェが……ま、あっという間に終わっちまう模擬戦ってのもあるしな」
赤のクラスでは、そういうのも日常茶飯事だ
逆に、あっという間に負けてしまうのもあるわけだが
野々矢・一三郎 2022年10月14日
「つーか、よ」
つまんない死に方
野々矢・一三郎 2022年10月14日
「これはそう、模擬戦。ちょいと荒っぽいゲームみたいなもンなわけだ」
死
野々矢・一三郎 2022年10月14日
「なら、あンま教育上悪そうな単語使ってンじゃ――」
――ねェ!
野々矢・一三郎 2022年10月14日
言い終わる前に、加速した。選択は、直線
動きがやけにいい。フィジカル弱者のそれではない
何かある。あるが――
野々矢・一三郎 2022年10月14日
音で判断する相手に、視線を切る動きは通用しない
急加速……とりわけ、急激な方向転換には、かなりの魔力を使う
つまり、このトライデントではリソースの消耗を意味する
野々矢・一三郎 2022年10月14日
効果の無い動きをして、リソースの無駄使いをするのこそ、愚の骨頂だ
ならば、何かがあったとしても……突っ込むしかない
野々矢・一三郎 2022年10月14日
手に魔力を宿す。一三郎の手は、熱の放出機関だ
触れた程度なら、熱さを感じるだけだが……掴むことに成功すれば、そこから高熱を送り込める
腕力も膂力も無い一三郎に唯一ある、圧倒的握力。それを以て焼き切ろうと、腕を伸ばした
(無効票)
十埼・竜 2022年10月14日
「その辺はクラスの個性もあるのかなぁ……きみ、勝負事なら結構ドライだよね」
……ああ、そうだった。
それで、きみは。
ぼくより、放送倫理規定より、道徳的な言葉を選ぼうとするんだ。
十埼・竜 2022年10月14日
もちろん、ただのよくある比喩のつもりだよ。
現実には成立しない。
“死”すらもVR(たとえばなし)だからこそ、ぼくはこんなことができてるんだから。
息を整えて。
ぼくが今まで飲み込み続けた“波”を辿って、手繰って、吐き出して。
再演/模倣は、続けられる。
https://tw7.t-walker.jp/garage/gravity/show?gravity_id=22869
十埼・竜 2022年10月14日
「――――それは失礼」
直線で突っ込んでくるきみから目を離さない。ああ、よく見えるけど、やっぱ怖いなこれ。
あの人はどうするかな。多分退かないんだよな。
ただで消えてやる気はないんだ。
特に、野々矢・一三郎。
きみの前で――――カッコ悪い終わり方なんて、見せられるわけないだろ!!
十埼・竜 2022年10月14日
拳は握ってない。指を広げて掴みに来てる。じゃあ――――
「――――『硬』」
こっちが拳を突き出して“食わせ”て……と、触れたか触れないかの瞬間、皮膚を炙る灼熱が襲う。まずい、これは握られたらマズいっ!
「っ、『爆』ッ!!!」
きみの五指が握り込む、そのタイミングをずらして叩きつけた拳の表面が、きみを押し戻すように激しく爆ぜた。
(無効票)
野々矢・一三郎 2022年10月15日
圧を感じる。近づく。何をしてくる? 何かするつもりの目で、何かしてくる目だ
そう思いつつも伸ばした手は――
(弾けた!?)
野々矢・一三郎 2022年10月15日
この体は、熱が効かない。変身状態ならなおさらだ
だってそうだろう? 火を吹く竜が、炎を舞い散らす鳳凰が燃えたりするものか
野々矢・一三郎 2022年10月15日
しかし衝撃は別だ。こちらとは逆方向に放たれる爆発は、指を逆向きに曲げる。脆い小指は千切れ飛ぶ
それは、剣を握れなくなったことを意味している
野々矢・一三郎 2022年10月15日
――こうなる可能性は考えていた
不用意に腕を伸ばすこと、相手の手が届くことに近づくこと
それは脆い自分に取っては危険な行為に他ならない
野々矢・一三郎 2022年10月15日
リソースの無駄使いはできない
できないが、消耗を、犠牲を許容せずにこの相手に勝つこともできない
野々矢・一三郎 2022年10月15日
最初はさくっと倒してやろうと思っていた
何かがあっても、近づけばまあ終わりだろう。ぐらいの
野々矢・一三郎 2022年10月15日
今は違う。原理はまるでわからないが
こいつは、楽勝に倒せる相手ではない
少なくとも――
「――右腕ぐらいはくれてやンよ」
野々矢・一三郎 2022年10月15日
まあ、それでも勝つのはオレだけどなァ――――ッ!
爆発を食らっても構わない。怯まない
内側からハラワタが飛び出る激痛に比べれば、制限されたVRでの手元での爆発などくすぐられるぐらいのもの
野々矢・一三郎 2022年10月15日
全身を加速させる。衝撃で少し動きが歪になるが、調整しつつ
抱きつくように飛びついた
(無効票)
十埼・竜 2022年10月15日
殴り抜いた拳の先が真っ黒に形を崩していて指と手首も区別もつかない、その上ぼろりと欠けてしまった。
あと何が使える?
あと何回呼吸できる?
あと、どれだけ、ぼくは――――
痛みと重い痺れは、たとえVRでも、ぼくに、熱いものを残す。
十埼・竜 2022年10月15日
(……きみにそんな目をさせられたのが、ぼくは、一番うれしいよ。)
十埼・竜 2022年10月15日
再演、停止。
ぼくの余力全てを、ここに。
さあ報いよう。報われようじゃないか。お互いの拳に。
――――ジジ、耳障りなノイズ。仮想空間の描画エラー。
黒く欠け落ちた腕の先が、砂嵐のような歪みを纏う。
そっちは?殴りかかってくるんじゃなくて抱き着いてくるの!?
うわぁ、情熱的じゃん。
無事な片手を差し伸べて、願わくばその襟元引っ掴んで。
十埼・竜 2022年10月15日
やっぱ、ぼくは「こっち」だ。
腕に纏った圧縮情報の嵐でブン殴られれば、砕けるほどの轟音と振動がそこに叩き込まれる!!
https://tw7.t-walker.jp/garage/gravity/show?gravity_id=26890
(無効票)
野々矢・一三郎 2022年10月15日
にっと笑う。今からすることは、大げさな技でも剣でもない
やや大規模に行うので、消費するリソースはそれなりだが
発動そのものは、一瞬でできる
野々矢・一三郎 2022年10月15日
残った拳を出さないのも、そのほうが早いからだ
これは、体なら。どの部位でもいいから
野々矢・一三郎 2022年10月15日
振れる。抱きつく。可能な限り多くの面積を
そこから――
野々矢・一三郎 2022年10月15日
――牙を生やした
肉体を口に見立て、そこから鮫の牙のように鋭く尖るそれは
まともな人体ならば、穴だらけになる貫きの一撃
野々矢・一三郎 2022年10月15日
これは一三郎のとっておきだ
今まで、他で見せたことのない。隠し札
野々矢・一三郎 2022年10月15日
ただ、唯一。星見・晴、赤星番長との手合わせの時を見ていたものならば気付いたかもしれない
この牙は、あの時の牙だ
野々矢・一三郎 2022年10月15日
試しとして抜いた、剣の第二段階
黒牙剣シャークブラックの極超抜刀
斬ったものから、無限に増殖する牙の森を生み出す鮫の剣
その際、体から生やした、生やすことができた牙
野々矢・一三郎 2022年10月15日
戦いを終え、剣を収めた後も。それが出せるようになっていた
一度抜き放った剣は、二度と元に戻すことができないとでも言うように
一度人を殺めた者は、二度と元に戻ることができないとでも言うように
野々矢・一三郎 2022年10月15日
無論、あの時のような規模は遠く望めないが
一つの攻撃手段としては、これで十分
野々矢・一三郎 2022年10月15日
そしてこの牙は、防御の役割も果たす
本来の使い道は、どちらかというとそっちで
向こうの腕も、攻撃も、勝手に抜けた牙が阻む……!
(無効票)
十埼・竜 2022年10月15日
「え」
腕が、縫い留められる。
脆く炭化した腕に穿たれた大穴から罅が広がり、更に、ばきん、と短くなった。
十埼・竜 2022年10月15日
ぼくときみの間に、幾本もの、牙。
耳元で鳴り響く、リソース不足のアラート。
「……流石に、ここまで、かな」
せめて。
今零れ落ちた腕の先、まだ極端に圧縮された“情報”が爆弾のように張り詰めたそれを、咄嗟にきみに向かって蹴り込んで、悪足掻きとする。
きみの残り時間が、少しでも減らせるように。
十埼・竜 2022年10月15日
「楽しかったよ、きみとの“ゲーム”」
意地悪い笑顔とともに、そっと耳元に吹き込んで――――
――――消滅する。
(■)
野々矢・一三郎 2022年10月15日
「はっ」
笑う。崩れる姿が目に入ったからだ
勝利を確信したからだ
野々矢・一三郎 2022年10月15日
だからこそ、蹴ってくる動きに対しての反応が少し遅れた
「――う、お」
意地悪い笑顔が見えたと同時に、致命打だけは避けようと牙をもう一度だけ展開し――
野々矢・一三郎 2022年10月15日
..
野々矢・一三郎 2022年10月15日
「――楽しめたンなら何よりだ……こっちも同じ言葉を返せりゃいいンだが……」
竜とのやり合いは楽しかったが、まだ過去形にはできない
なにせこっちはまだ生きているのだ
チームメイトだってまだ戦っている
野々矢・一三郎 2022年10月15日
今の最後の一撃を防ぐのに、ほとんどのリソースを使い切ってしまった
その証拠に、共鳴昇華が解けている。もう一度なることもできなくもないが……そうすると、その瞬間にリソースが切れそうな気がする
野々矢・一三郎 2022年10月15日
それに、どうにもぐわんぐわんする
「くっそ、やっぱ厄介なヤツだぜ、竜……」
舌打ち一つ。なんとか進もうと、足を進めるのだった
(■)