立つ・祭り・生きる
日日日・らんか 2022年10月6日
——師匠が、起きた。
#日日日・らんか
#奉利・聖
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日日日・らんか 2022年10月6日
どうでもいいことしか、考えないようにしていた。
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奉利・聖 2022年10月6日
───生憎と、浴衣を用意してる暇が無かった。
それもそのはず、最近まで入院していたのだ。
長い間眠っていたとは微妙に言えないような期間ではあったが……すっかり世間は秋模様、肌寒さが目立っている。
ピアスが風に揺れる。待ち合わせるポイントは、ここで良かったはずだ。
奉利・聖 2022年10月6日
いつもと変わらぬタトゥーとピアス。
装いだけは普段と違い、ラフな私服だ。黒シャツにジーパン。
どこかのバンドマンのオフのような、そんな雰囲気。
お待たせしました、と。
ちょっと小走りで寄っていった。
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日日日・らんか 2022年10月6日
その姿を視界に捉えるより先に、声が届いた。
少し遅れて、目が追う。
日日日・らんか 2022年10月6日
——見えた瞬間、脚が勝手に駆け出していた。
日日日・らんか 2022年10月6日
脚が。腕が。何も考えられなくなった頭を置き去りにして、まるで別の生物のように動く。
日日日・らんか 2022年10月6日
気がつけば。胸の辺りに顔を埋めるようにして、師匠の身体に抱きついていた。
頭の中がこんがらがって、何を言うべきか。言おうとしていたのかが分からなくなる。
口は喘ぐように、紡がれない言葉の代わりに空気を吐いていた。
日日日・らんか 2022年10月6日
——それに何より、顔を上げられなかった。
顔を上げてしまえば、自分の顔がどうなっているか、わかってしまうから。
あなたの顔を、見つめてしまうから。
日日日・らんか 2022年10月6日
だから——。
日日日・らんか 2022年10月6日
「……おかえりなさい。」
日日日・らんか 2022年10月6日
黒いシャツに包まれてくぐもった声で、そう一言発するのが精一杯だった。
私が泣かない、精一杯だった。
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奉利・聖 2022年10月6日
軽い身体がぽふっ、と飛び込んで来た。
強靭な体幹は難なく受け止めてしまうだろう。
──死人の肉体はとても冷たい。
常ならそうだった。が………今は仄かに、熱を帯びている。
生命の熱は、裏向きのコインのままでも影響を及ぼしていた。
奉利・聖 2022年10月6日
彼女の頭の後ろに、手を伸ばしていた。
なるほど、随分と想われていたらしい。眠っていた頃、訪れた人たちの顔を見れなかったのは実に惜しい。
「ただいま戻りました」
さて、彼女の気持ちを尊重して。
顔を上げられるまで、こうしておこう。
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日日日・らんか 2022年10月6日
「……うん。」
掌が。身体全体が。溢れる熱を、受け止める。
前に触れた時は冷たかったその身体。
仄かに宿るその熱に、全身を包まれる。
日日日・らんか 2022年10月6日
それは彼が今、生きている証。
彼が今、ここに居る証。
日日日・らんか 2022年10月6日
その熱が陽の光のように、私の気持ちを乾かして。
日日日・らんか 2022年10月6日
——もう大丈夫。顔を、あげられる。
日日日・らんか 2022年10月6日
「……久しぶり。」
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奉利・聖 2022年10月6日
なんだか、日常に戻ってきたという感覚がより強くなった。
それが無性に嬉しくて、思わず笑みが零れる。
もぞ、と彼女が動いた。
奉利・聖 2022年10月6日
「お久しぶりです。
大分長い夢を見ていたようでして。
いやはや、ご心配をおかけしました。」
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日日日・らんか 2022年10月6日
「……ほんとにね。あたしだけじゃなくて、色んな人が来てたよ?」
花や食べ物。音に歌。色とりどりのよく分からない雑誌に、コインや武器など様々な物品。
人が居た証。
それに——。
日日日・らんか 2022年10月6日
「ずっと離れなかった、男の子もいた。」
日日日・らんか 2022年10月6日
「もう目は、覚めた?」
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奉利・聖 2022年10月6日
「知ってます。おかげでお見舞い品を持ち帰るの、大変でした」
「ずっと傍に居た後輩も、ようやく肩の荷を降ろせたみたいで)
自分は思いの外人望があるんだな、なんて思ったものだ。
奉利・聖 2022年10月6日
「…おかげさまで。暫くは起きていたいところです」
「あ、それと」
奉利・聖 2022年10月6日
「マドレーヌとアップルパイ、美味しかった」
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日日日・らんか 2022年10月6日
「ふふっ。嬉しい悲鳴、ってやつ?」
ヒューッ、やるぅ〜。
冗談めかしながら、彼の胸をトンと叩いてウインクする。
日日日・らんか 2022年10月6日
「……!」
日日日・らんか 2022年10月6日
……ちゃんと。食べて、くれたんだ……。
日日日・らんか 2022年10月6日
「あ……。ええと。そっ、そう。」
日日日・らんか 2022年10月6日
声が上擦る。
それを隠すように、服の裾をきゅっと握りしめて、俯いた。
……でも。
日日日・らんか 2022年10月6日
「そっか……。良かったぁ。」
日日日・らんか 2022年10月6日
あなたの顔を上目がちに見上げると、にへらっと笑った。
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奉利・聖 2022年10月6日
「それもありつつ……寝過ぎたなあ、とも思いました」
我ながらちょっと情けないな、なんて思いもするのだ。
奉利・聖 2022年10月6日
「お菓子作れるなんて、中々やりますね」
「ところで……今日は甘える日ですか?」
祭囃子に繰り出しすのも、こうして久しぶりの再会に浸るのも。
どちらでも付き合いますよ、とばかりに。
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日日日・らんか 2022年10月6日
「ほんと。お寝坊さんだね。」
からかうように、クスリと笑う。
日日日・らんか 2022年10月7日
「ふふん。そうでしょ。こう見えて、料理もちょっとはできるんだから。」
えへんぷい。
日日日・らんか 2022年10月7日
「あま……っ!」
「ま……まあっ、そ、そうですけどっ?」
日日日・らんか 2022年10月7日
「今日は心配させられたぶん、返してもらう日でも、あるから。」
いじけるように、ツン、と指をやって。
——もちろん。師匠の快気祝いであることは、言うまでもないのだが。
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奉利・聖 2022年10月7日
「女子力っていうんでしたっけ。流石」
きっとモテるんだろうな、なんて思ってる。
奉利・聖 2022年10月7日
「分かりました。任せてください」
「ひとまずは…見て回りますか」
頭に置いた手を、ぽんぽんと軽く叩くようにして。
「僕も楽しみですし」
いつになく楽しそうな笑みを浮かべていた。
(無効票)
日日日・らんか 2022年10月7日
「む……。」
少し、子どもに思われてる?と訝しがりながらも。
……まあいいか。と、その手の感触を確かめるように、さながら猫のように頭をこすりつけて。
日日日・らんか 2022年10月7日
「じゃあ、先ずは何か食べたい。」
早速、オーダーするのだった。
(無効票)
奉利・聖 2022年10月7日
「しかし……また見違えますね」
「途端に大和撫子になられた」
可愛らしい仕草に微笑みが浮かんだ。
奉利・聖 2022年10月7日
「焼きそば、いっときますか」
かくして、祭囃子に繰り出していくだろう
(演出終了)
日日日・らんか 2022年10月7日
「この日のために、用意したから。」
満足な反応を得られて、心の中でガッツポーズする。
ヘアアレンジも、薄く塗ったマニキュアも、邪魔にならない程度の薄化粧も。
こうしてちゃんと、浴衣と合わせたのは初めてだった。
そしてその初めてを見せたい相手に見せられたのだから、その甲斐はあった、と思う。
ただ……
日日日・らんか 2022年10月7日
「普段から、山、と?ナデシコ?だったと思うけど。」
なんとなく、そこは気になった。やまとなでしこがなんなのかは分からないが。多分褒め言葉だろう。
日日日・らんか 2022年10月7日
「焼きそば!」
喜びでぴょん、と飛び跳ねる。心がじゃなく物理的に。
日日日・らんか 2022年10月7日
かくして。かんらかんらと下駄の音鳴り響かせながら、2人は祭囃子へと繰り出した。
——晴れ渡る、太陽のような笑みを携えて。
具体的に、なんの屋台でどう楽しんだのかは、2人だけの秘密だ。
日日日・らんか 2022年10月7日
【〆】
(演出終了)