放送電波研究会

【個別】汀の砂山

十埼・竜 2022年10月3日
それは、脆く。





2
1

十埼・竜 2022年10月4日
泣いてません。
(ノイズまみれの音には、慣れっこだ。ぼくはその“波”を、読み誤らない。)

…………これ、大丈夫なんですか、カゲハさん。 (無効票)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(例えば、砂山に手を突っ込んだみたいな。)
(そんな子どもの遊びみたいな感覚。)

(“されてる側”のはずなのに、同じような感覚を味わっているのが面白くて。)


(体内の砂が笑ったように振動したのがわかるだろうか。)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
────────大丈夫に、見える?

(振り返って、笑う顔は。)

(半分ぐらい。流れ落ちている。) (無効票)
0

十埼・竜 2022年10月4日
(いつもの豪快な笑いに比べれば、ひどくちいさな)
(かぼそい、振動だった)
0

十埼・竜 2022年10月4日
(まるで海の幽霊だ)
(今このタイミングでなければ悲鳴のひとつもあげていただろう)

(咄嗟に腕を引き抜いて)
(崩れていく顔を両手で包む)
(こんなことで何が止まるのか)(でも何もできないわけないだろ、これ見といて!)
0

十埼・竜 2022年10月4日
……ぼくにできることはある?(真正面から覗き込む群青の瞳は、静かに燃えていた) (無効票)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(包まれて受け皿になっている頬から、止め処なく溢れていく砂。)
(指の隙間から。手の腹から。)

(────そういうの、早いよなあ。)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
────────どーかなあ。

────────オレにも、わかんないし。
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
────────でもさ。一応マシなんだ。

(これでも。)


────────アレ。あるからさ。

(あの時貰った、“心臓”。)

(そのおかげで、まだ、“人”でいられるんだ。)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
────────終わった?

(だからちょっと、話をしよう。“人”であるうちに。)


────────きみの。一番。

(人として暮らせないぐらい、辛かったこと。) (無効票)
0

十埼・竜 2022年10月4日
………………探すのにも役に立ちました。あげといてよかった。

(指の間をくすぐりながら砂が零れ落ちる)
(ふざけんなよ)
(なんでぼくは、今日まで気づかなかった!!)
0

十埼・竜 2022年10月4日
(――――「一番怖いこと」に、かまけてたからだろ)
0

十埼・竜 2022年10月4日
ぼくはもう大丈夫ですよ。……終わったってきっと手放しに言えないかも知れないけど、先のことなんてやっぱりわかんないけど、ぼくは大丈夫。

だから、迎えに来たんです。
せっかく帰ったのにカゲハさんがいないなんてありえないだろ。 (無効票)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
────────そう。

(────ああ、やっぱり。)


────────よかったなあ。

(────託して、よかったなあ。)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
────────ねえ。

(あのさ。)


────────お前は、どこまでが。

(この、微粒子のように砂粒が集まった末の地で。)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
────────オレだと思う。


(いつも、便利に使っている砂の体。)

(その境目。境界線が、もう。)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(────わっかんねぇんだよなあ。) (無効票)
0

十埼・竜 2022年10月4日
(なんでマジ安堵なんだよ)
(気ィ抜いてんじゃねーよ、いつもみたいに咽るくらい背中叩いて来いよ)

(泣くか、怯むもんか)
("要救助者"が、ここにいるんだ)
0

十埼・竜 2022年10月4日
……ここの砂全部オレちゃんなんだぜくらいデカいこと言うじゃないですか。
(顔を包んでいた手を、背中と思しきところに回して、崩れないように抱きしめる)
(――――つながりと境界をぐちゃぐちゃに断ち切ったあの剣閃)
(あれのせいで、砂の体を繋ぎなおせなくなった?)

(それなら。)
0

十埼・竜 2022年10月4日
それなら、一曲演りましょっか。
(いくぜ野郎ども。ぼくの影イコールこの夜闇、きみが奏でる砂のざわめきとまた違う旋律で、ぞあ、と――――楽器たちが躍り出る)

それでついてこれたヤツ、ぜーんぶカゲハさんってことで、どう?
(……なるほど、こんな姿勢で歌えなんて、ほんっとぼくワガママ言ったな)
(抱き締めた腕を、離さないまま。)

(もらったものを、託されたメロディを、きみに還そう)
https://tw7.t-walker.jp/garage/gravity/show?gravity_id=23803
0

十埼・竜 2022年10月4日
(ここ数日、ずっと泣いていた声だ。みっともなく濁ってときどき無様にひっくり返る)
(それでも)
(きみのひとつひとつに刻まれた記憶に、響いてくれたらと、願う。) (無効票)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(いつか。いつだったか。)
(抱きしめたのはオレだっけ。抱きしめられたのボクだっけ。)
(見えた楽器。覚えのない姿形。名前ぐらいは、知ってるけれど。)
(覚えてないの。覚えてないよ。)
(覚えちゃいるが。忘れてるんだ。)

(割と上手いじゃん。ド下手くそ。)
(可愛い声。抗う歌。泣き虫こよし。)
(いい曲。勿体ない。もっと上手く書けるのに。)
(どこまで歌うの。長いな。ちょうどいい。こんなもんでしょ。)
(必死だなあ。当たり前。知らないの?)


(────うるせえなあ。)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(残念ながら────────)(誰かいるの────────)(お願いしますお金なら────────)(夢を見るなよ────────)(さようなら────────)(ごめんね────────)(この歌が好きだ────────)(お前が悪い────────)(全部お前の────────)(また行こう────────)(クソが────────)(あけましておめでとう────────)(バンド結成────────)(無理だ────────)(ちゃんと働きなさい────────)(一緒に行こうよ────────)(最後の一曲────────)(まだまだ行こうぜ────────)(はじめまして────────)(バイトやめてえ────────)(ばいばい────────)(そろそろ結婚────────)(明日の天気は────────)(終わるな夏休み────────)(あなたのことが────────)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(おはよう────────)(お前が鬼────────)(嫌いだバカ────────)(もう一回────────)(寝言は寝て言え────────)(最高────────)(死ぬかと思った────────)(よっしゃ────────)(いってきます────────)(屋上な────────)(何回やんの────────)(子どもが欲しい────────)(やめようよ────────)(たまんねえ────────)(もう一度────────)(反省しろ────────)(ずぶ濡れじゃん────────)(競争しようぜ────────)(無理じゃない────────)(最終話見た────────)(ありがとう────────)(いいね────────)(どこまで行くの────────)(おいしい────────)(あの空が────────)(一度きりだ────────)(ああ────────)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(濁流みたいに、一粒一粒。)

(震えて、呼び起される。)


(“何か”が。)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(うるさい────────)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(一言一句。それぞれに。)

(叩きつけるみたいに。殴りつけるみたいに。)


(うるさい────────)(うるさい────────)


(うるさい────────)(うるさい────────)(うるさい────────)(うるさい────────)(うるさい────────)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)(うるさい────────!)


(拒絶するその感覚は、不思議と。)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(────────心拍に、よく似ていた。)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(────────『行っちゃうの?』)

(────────うるせえよ。ガキ。)



(────────『行っちゃ、やだよ』)

(────────うるせえって。)



(────────『ねえ……』)

(────────わかったよ。)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(────────、、、)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(うるッッッッッせえ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(“怒り”が、灯る。)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(────────お前は誰だ。)

(────────誰かの言葉で話すんじゃねえよ。)

(────────誰なんだお前はよ。)

(────────もういっそ誰でもいい。誰だろうといい。)


(────────いいから、お前も。)



(さっさと、歌え!!!!!!!!!!)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
────────『“お前”は一体、誰なんだ』!!!!!!!!!!!!!!
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(──────10。ちょうど、その刹那。)



(──────聲が、重なる。)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
──────笑ってくれ。


(かげろう、かくあるべし。) (無効票)
0

十埼・竜 2022年10月4日
(此岸も彼岸も節操ないぼくの耳は、夏の喧騒が遠く冷めきった浜辺に満ちる“声”たちを聴く)
(きみが聴いているものなのか、ただの幻なのかわからないけれど)
(ぼくが、この異形の冠を外して何もかも受け入れようとするときに聴こえるノイズに、どこか似ていた)
0

十埼・竜 2022年10月4日
(有象無象の野放図な呟きをうるせえ黙れと叩き潰す叫び)
(この歌を聴いてついてこい歌えと煽る怒りの熱)
(そういうとこですよ、カゲハさん。)

(すげー、ロックじゃん。)
0

十埼・竜 2022年10月4日
──────笑ってくれ。

(重なった聲は、完璧なタイミングとトーン。っていうかぼくが若干喰われた。クソ。)
0

十埼・竜 2022年10月4日
……っげほ、げほっ(アウトロを待ちきれずにぼくは咳き込み、ざらざら、呆れたみたいに砂の楽隊が崩れて還る。)
(腕に抱いたひとのかたちは、もう、力を籠めても大丈夫そうだったので)

…………ダメ出しがあるなら、どーぞ?(ぽん、背中を叩いた。) (無効票)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
…………っ、なはは。

(久しぶりに?きちんと声を発したものだから。)
(咽るのもほとんど一緒で。)

(抱き返すみたいに、背中を叩き返す。)
(未だ、柔らかな手で。)
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
──────愛してるよ、竜。
0

薄羽・カゲハ 2022年10月4日
(ぷつんと糸が切れたみたいに、がくんと力は抜けて。)

(体の何処も、普段と寸分違わないまま。)


(幸せそうな寝顔を晒していた。) (。)
0

十埼・竜 2022年10月4日
(言っちゃなんだけど甲殻の手で叩かれる感触、ほとんど鉄パイプのそれだ。この期に及んで身構えてしまったし)
(――――予想を崩された虚に、掠れたその声が忍び込む)
0

十埼・竜 2022年10月4日
(それを聴くのははじめてじゃなくて)
(その記憶は、なんだか、すごくふわふわした熱と一緒になっていて)

(…………りゅう、と呼ぶ声が、重なる記憶にくすぐったい“波”を添えて、)

うん。(ぼくは泣きたいのか笑いたいのかわからなくなる。)
0

十埼・竜 2022年10月4日
ぼく――――――――
0

十埼・竜 2022年10月4日
――――――――うぇぇ!!??
(がくん!!)(ぼくより若干身長あるし筋肉なら相当ある女性の唐突な全脱力!)まってまってまってちょっとうわぁぁっ(ぼくの腕!?もやしだよ!!??)
(砂の上じゃ踏ん張りもきかないし)
(最終的に、尻もちつくみたいな流れでぼくが下敷きになるのだ)
0

十埼・竜 2022年10月4日
………………。
(至近距離で観た寝顔は、腹立つくらいに幸せそうだったので)
…………ダメ出しにしちゃ、甘ったるすぎると思います。
(ぼくは寛大にも許してあげることにする。)
0

十埼・竜 2022年10月4日
(さしあたっての問題は)
…………この時間、グスタフ先輩、助けてくれるかなあ……
(この“共犯者”を、どうやって寮に連行するか、だけれど――――)

(それはまた、別のお話。) (。)
0