【イ】プロローグ 2
一恋・花束 2022年9月17日
「やってくれましたね……」
一恋・花束が“知恵の果実”を通じて知ったのは、『箱庭』からの新たな一手。
幸い、温泉島ユフィーンは、現状、MM学園の復讐者にしか認識できない状態にある。
と言うか、他の復讐者に認識される状態になったら、最終人類史のディヴィジョン化が大きく進行してしまう。
が、対処法を明示してくれるのもまた“知恵の果実”の良いところだ。
もともと、温泉島ユフィーンは『騎士団』の慰安のために作られた『箱庭世界』だ。
中に存在する住民たちは皆、決まった反応をするだけの人形の様なものだ。
一度具現化してしまえば、彼らが来賓をもてなすだけでも、どんどんリソースを消費していく。
つまりは――――――
「温泉に浸かりまくって、食べまくって、飲みまくって、もてなされまくれば、あの島は消すことが出来ますね……」
そう、島の存在を維持できなくなるぐらいリソースを使い切ってしまえば良い。
問題があるとすれば、『普通に利用している』だけでは駄目だ。
内部に蓄えた魔力を大量消費するためには、“特殊な温泉”を生成させるのが最も効率が良い。
「……【無限温泉迷宮】を使うしかありませんね」
【無限温泉迷宮】、それは文字通り、足を踏み入れ扉を開けば、不思議な温泉が生成される不思議な迷宮だ。
無から温泉を作り出す上に、特殊なルールが付与されることも多い。当然、その分魔力を消費するという寸法である。
「……最近皆頑張ってましたし、慰安旅行というていで温泉に浸かってもらうのはどうでしょう」
まあ、色々ハプニングはあるだろうがそれはそれ。
皆復讐者なんだし、頑張って乗り越えてもらおう。
というわけで。
「えー、生徒会からのお知らせです。温泉にいきたいかー!」
こうして、ある意味地獄、ある意味世界を救うための、一泊二日の温泉旅行が始まった。
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