【個別】水の肺
十埼・竜 2022年8月12日
――――どうやら言い間違いではないらしいし、ぼくはそうそう聴き間違えない。
「ごめん先輩もっぺん言って?」
遊びに行かないかと誘われた。
一も二も無く飛びつくさ! 海!? それともプール!?
……ただ、ちょっとだけ。
ぼくには懸念があるんだけど。
#奉利・聖
#十埼・竜
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十埼・竜 2022年8月12日
(――――もぁぁ)
(――――遠くで、何かの鳴き声が聞こえたかも知れない。)
(無効票)
奉利・聖 2022年8月12日
(準備運動がてら、軽く身体を伸ばしながら)
…えっ、いらなくなるんですか?
それは素晴らしいことですけど……大丈夫なんですよね?
(手伝うのは構いませんけど、と)
(同じく海へと歩いていく)
奉利・聖 2022年8月12日
(───何か)
(嫌な予感が、脳裏をくすぐっていた)
(無効票)
十埼・竜 2022年8月12日
そーそー、たまたま偶然わかっ(ざぶーん)つめたっ!!あはははしょっぱい!!!
(波を浴びて、心底楽しそうな笑い声をあげる)
(久しぶりの海だ)
(もう、触れることすらできないと思っていた)
(二度と泳ぐことはないんだろうと諦めていた!)
十埼・竜 2022年8月12日
(……あんまり興奮しすぎると心臓痛くなるな。深呼吸。……風すらなんだか塩からい)
先輩いるし、大丈夫でしょ?
(全幅の信頼の笑顔を向けて、タトゥーだらけの冷たい腕を掴む。すぐ一歩向こうの海の色が、随分深くなっていた)
んじゃー、せーのっ
(――――とぷん。)
十埼・竜 2022年8月12日
(まばたきする。……少し揺らぐ視界。)
(息を止めている必要がないことに気付いて、ごぼ、と泡を吐き出した。口の中を水が出入りする感覚はちょっと慣れないけど、苦しくはない)
(頭が、重い。水の抵抗のせいだろう。)
十埼・竜 2022年8月12日
(腕を掴んでいた手を離して、両手をヘッドホンに添えて、)
(前は大丈夫だった。……あの時は学校のプールだったけれど)(うまくいかなかったら、またすぐに戻せばいいんだから)
(ヘッドホンを耳から浮かす。内側に閉じ込められた空気がこぽこぽ逃げて、冷たい海水が耳を撫でた。)
(それだけだった。)
(ノイズの嵐は、やってこない。)
(無効票)
奉利・聖 2022年8月12日
(海水にはしゃぐ彼をよそに、嫌な予感の正体を探っていた)
(ざぶんっ。久方ぶりに、海に浸かる。腕を掴む彼が、今は少し頼りないように思える。胸騒ぎをそのままに頭まで潜って──)
奉利・聖 2022年8月12日
(復讐者というのは便利で、水中でも酸素不足に陥ることが無いのだ。だから彼が溺れるなんてことはなくて、じゃあこの嫌な予感は何処から来るのかと一層悩ませもした)
(注意深く観察する。腕を離し、ヘッドホンを外した)
(彼が平時、それを外すことの意味を知る身としては…身構えてしまうが)(何も、起こらない?)
奉利・聖 2022年8月12日
(本当にこれは、大丈夫なのかと)
(顔を覗き込んだ)
(無効票)
十埼・竜 2022年8月12日
(ああ。)
(静かだ。)
(雑音が勝手に耳に流れ込んで犯して砕いて引き千切ることもない)
(ぼくは世界との正しい距離をとりもどす)
(少しだけ、遠いけれど)
十埼・竜 2022年8月12日
(覗き込まれた顔は、ちょっと泣きだしそうに見えたかも知れない)
……大丈夫。じゃ、ない?
(恐る恐る吐き出した声は、ヘッドホンを外しているときのいつもの癖で随分か細かった)
ね。
……水の中なら、何故か、なんともないんですよ。盲点だった。
(自分でも自分の声が聴きとりにくくて、少し声を張る)
十埼・竜 2022年8月12日
(深呼吸――――もおかしいけれど、深く息を吐く)
これ、ちょっと持っててもらっていいですか。……思いっきり泳ぎたいから!
あ、上に置いてきちゃっても多分大丈夫ですよ。邪魔だしね!
(命綱、生命維持装置。異形のヘッドホンをきみに押し付けた。骨と甲殻と鉱石を押し固め奇怪な人工物で繋ぎ、内側に鮮やかな青の棘が覗く)
(――――触れたなら、何故か、わかるだろうか。)
(誰よりも死を識るのだから。)
【これは、いくつもの死骸である。】
(無効票)
奉利・聖 2022年8月12日
……良かった。大丈夫そうで。
(水中であれば、外しても問題無いのか)
(暗室くらいでしか落ち着いてみれない、ありのままの彼)
(少しばかり安心する)
遠くに行きすぎないようにしてくださいね。
(重さから解放されて、動き回りたいのだろう)
(ヘッドホンを手に取り、見守って───)
奉利・聖 2022年8月12日
(ぞわりっ。無機質な機械のように思っていたそれを、しっかり手に取った時。内なり宵闇が騒ぎ始めた)
これ、は───。
(死骸?なん、の?)
(惹かれ合う。死に近すぎる者として、この異形に)
(じっと、その場で。何かを繋げるように、見つめていた)
(無効票)
十埼・竜 2022年8月12日
だってVRぶりにこんなことできるんだもん!!!
はいはい遠く行ったって聴こえるからそうそう迷わな……あっ今聴こえないんだった!
(勿論、きみの安堵だって、欠片も聴こえない)
(その声の暖かさの何割かが、ぼくが同時に聴きとっていた想いの“波”だったのだと知る。)
(……胸の内側に冷たい一滴を感じながら)
(それでも、海底を滑るように泳いで遠ざかる。)
十埼・竜 2022年8月12日
【死骸。境界線の向こうに行ってしまったものの、こちら側の残り滓。】
【――――やがて】
【普段少年の耳を塞いでいる、その箇所から。ごぼ、ごぼ、水音と】
【ごぼ】
【水の中で、くぐもるような、声。】
【「そんなの、ぼくだって、しらない。」稚げな声は、少年によく似ていた。】
(無効票)
奉利・聖 2022年8月12日
(彼が遠ざかる。後に残されるのは己と、このヘッドホンだけ)
………。
仕方ない。
奉利・聖 2022年8月12日
(明確な意思が返ってくる。セブラトの様に、互いを認識して疎通ができる。…なんとなく、そんな気はしていた)
あなたは。
あなたはなんですか?
(曖昧な質問。それもそうだ。これが一体何なのか。現象なのか。生物なのか。機械なのか。どうにも判別できない。
(無効票)
十埼・竜 2022年8月12日
【「なまえだね」「なまえ」嬉しそうに、誇らしげに】
【「“ノイズイーター”だって! アラタが、くれたの」稚い声は、水音のノイズの向こうで燥いでいる】
【「ノイズは、いらないものだから、ぼく、たべていいんだよ」それすら、あの少年に似て】
【「きみは」「アラタじゃないの?」】
【「こちらがわにいるのに」「なぜ」「そっちにいるの?」】
(無効票)
奉利・聖 2022年8月12日
(アラタ。名を付けたのが、アラタ)
違います。
僕は……聖。セイです。ちょっと特殊で。こっちにいます。
ねぇノイズイーター。君は……彼の、リュウのノイズを食べてるのかな。いつから……どうやって彼のもとに?
(事実を確認しながら、一歩ずつ距離を詰める)
(無効票)
十埼・竜 2022年8月12日
【「ふぅん」「アラタじゃないんだ。」】
【声は、あからさまに熱量を失くした。】
【「りゅう?」「あれのこと?」「あれに集まってきたやつ、食べるよ。そういうやくそく」「先にとられちゃうこともあるけど」「最近は、特に、そう」「あんまり多いと、すぐ壊れるくせにさ」】
十埼・竜 2022年8月12日
【「時間がぐちゃぐちゃになった日に、やくそくしたんだ」「あれが、おわりまで、たどりついたら」「アラタはぼくといっしょだ、って!」】
【稚い声は、ひどく自分勝手で要領を得ない。言いたいことを言っては、まるで胸を張るように得意げにする。】
【「あれはどこ?」「ここじゃ、よくきこえないね」「こわれてない?」「こわれたら」】
【「またやりなおさないと。」】
(無効票)
奉利・聖 2022年8月12日
(あからさまな落胆。これにとって、そのアラタなる者が一番なのだろう)(対して、着用者である彼は随分とぞんざいな扱いだ)
(まるで、そう)(餌を寄せ集める箱としか思ってないみたいな)
そう……なんで集まってくるか、わかる?
(彼が、平時はこれに頼らなければならない理由は)
奉利・聖 2022年8月12日
(やはり、刻逆。そこでアラタが…これを差し向けた。先見の明?終わりまでとは……それこそ、命の果てまで?そこまで行けたら、アラタと一緒に居られる──こちら側?つまりはアラタは……?)
そう。そしたら、頑張らないとね。
大丈夫、今は壊れてない。
……やり直すと、どうなるのかな?
(無効票)
十埼・竜 2022年8月12日
【「アラタがそう、変えたからだよ」
「世界をかえたの。かわっちゃうの。ハルカの声をさがすために」
「だけど、変えるのがいやで、ぼくは、そこからうまれたし」
「今は、あれの命に使ったのに、全部まざっちゃった」】
【おかしいよねぇ、と、くすくす笑う。】
【「きみは、いいやつだね。じゃあ、きっと、いい終わりにたどりつくよ」】
【「こわれてない?ほんとう?こわれてたら、ちゃんとつぶしてね?」】
十埼・竜 2022年8月12日
【「やりなおすのはね、かんたんなの」くすくす。】
【「あれって、また海から生まれてくるから」無邪気に。】
【「こわれたのは、つぶして、」まるで、秘密を打ち明けるように。】
【「これにまぜるの。ぼくのからだといっしょに」異形の骸から、囁き声がする。】
【「そうしたら、なんどでも、やりなおせるの。ぼく、みつけたんだよ!」】
【「アラタはね、あれが止まるの、いやだって言ってたけど」】
【「動くやつがたくさんあるって、アラタ、しらなかったのかな」】
(無効票)
奉利・聖 2022年8月13日
(アラタが原因で彼がノイズに苛まれることになった…?)
(それの補填として、救済として…ノイズイーターが居る)
(かなりかいつまんでまとめると、こういうことだ)
ありがとう。僕もそう思う。
奉利・聖 2022年8月13日
(……こいつ)
(ノイズに耐えきれなければ、文字通り廃棄して)
(新宿島の海から復活するのを、利用する)
(悪意じゃない。無邪気なだけだ。…何か言ってやりたい気持ちを、抑える)
きっと…知らなかったんだね。
アラタは……もうずっと、そっち側に居続けるのかな。
奉利・聖 2022年8月13日
ハルカを探しに、ずっと?
(無効票)
十埼・竜 2022年8月13日
【「ううん」】
【「ぼくをつくるときに、ぼくにまざっちゃった。そういうやくそくだったから」】
【「でもねぇ、またきてくれたんだよ。あれといっしょに」】
【「だから、ぼく、やくそくを変えることにしたの。
アラタといっしょに終わりにいけるなら、ぼくはそうしたいから」】
【「アラタは、そっちにいるよ。声がきこえるでしょ?」】
十埼・竜 2022年8月13日
(――――水面の向こう、遠くから)
(悲痛な咆哮が、かすかに聴こえている)
(ひとのものでは、まるでなく。)
十埼・竜 2022年8月13日
【「もう、ぜんぶさがしたんだよ」】
【「アラタは、ぜんぶ、ばらばらの波にして、さがしたんだよ」】
【「自分のこころのなかだって、ばらばらにしてさがしたのに」】
【「なくなってたから、たぶん」】
【「ねぇ。おわり、って、いいとこかな」無邪気な声は、初めて思案気な声音を帯びる。】
【「しずかなとこだといいね。ぼく、おなかすくけど、それなら、いいと思うの」――――】
十埼・竜 2022年8月13日
――――先輩、何してるんですか?
(無効票)
奉利・聖 2022年8月13日
────────。
(おぞましい。悪意が無い分、ずっと)
(報われない、救われないような心地)
(叫びが……心を掻き乱して)
(こんなにも、彼らは…彼らは)
奉利・聖 2022年8月13日
はっ!?
(不意に、聞き慣れた声がして)
(ぎこちなく首を動かす)
奉利・聖 2022年8月13日
あの……すいません、ちょっとぼーっとのんびりしてました。
(彼は、知っているんだろうか)
(知らないのだとしたら、これの扱いは)
(慎重にならざるを得ない)
(無効票)
十埼・竜 2022年8月13日
【「ああ」】
【声にかかる、水音のようなノイズが幾分晴れる】
【「こわれてなかった」】
【「……ああ、そうだ」】
【「ここは、アラタでも、さがせないんだね」】
十埼・竜 2022年8月13日
……ぼーっと、のんびり……ソレ抱えて微動だにしてないように見えるんですけど……
(……聴こえない。)
(実は結構な割合で、相手の声と感情を同時に聴きとっていたことを痛感する。するりと泳ぎ寄って、なんだか後生大事にヘッドホンを抱えてぼんやり浮かんでいる、その顔を近くで覗き込んだ。水中では身長差があまり気にならないのが利点だ。)
十埼・竜 2022年8月13日
(――――それが、声を発することを)(嘗て教えて貰ったことがある。)
(ただし、それは極めて限定的な条件下。会話が成立していない。)
(だから――――そんなやりとりだって、ぼくはまるで知らなかった。)
(無効票)
奉利・聖 2022年8月13日
久しぶりの海なので、漂って堪能してたんです。
(嘘。でも多分…これも聴こえていないはず)
(まだ、話すわけにはいかない。きちんと飲み下せる時と、環境が必要だ)
それより、泳ぎはどうでした?
奉利・聖 2022年8月13日
(…………まだ気になることがあるが、ここでいったん打ち止めか)
(これ以上は流石に怪しまれる)
これ、置いてきますね。
そろそろ僕も泳ぎたいと思っていました。
(彼も、随分と……重苦しいものを、負わされている)
(無効票)
十埼・竜 2022年8月13日
うん……(腕を、伸ばす)案外体が覚えてるなって。息継ぎいらないのは妙な気持ちだけどさ。
(伸ばした先で刺青の肌に触れる。……冷たいと感じない)
(ぼくの体が、冷えてるんだろうか)
来られて、良かった、って、思う。
ありがとね。せー先輩。
十埼・竜 2022年8月13日
……んでも、なんかさ。
、、、、、、
妙に寂しくて。
折角だし思いっきり遠くまでいってやろ!って思ってたんだけど、案外ちっちゃく一周して帰って来ちゃった。先輩全然きてくんないしさー。
(拗ねた口ぶりで嘯くも、)
あ、先輩の全力泳ぎ!? 超興味ある!!(案外すぐに調子に乗る。)
十埼・竜 2022年8月13日
……早く戻ってきてね。先輩。
(無効票)
奉利・聖 2022年8月13日
いえ、お礼を言われるようなことでは───
(寂しい。…寂しい、か)
そうですか。
それなら、すぐ戻ってきますから。
(……すぐそこに、ずっといたのだな)
奉利・聖 2022年8月13日
それじゃ、待っててくださいね。
(腕の中にあるノイズイーターを…どう扱ったものか、とても困った)
(こんなもの、無くていいならそれで良いと思ってたのに)
(でも今は、これは喪われていいものではないという気持ちもある)
…………。
(水面に上がり、世界が切り替わったように感じる)
(浜辺にことり、とヘッドホンを置いた)
奉利・聖 2022年8月13日
また、気が向いたら話そう。
(彼に関して、これに関して)
(知らねばならないことがまだある。今はもう彼との約束の履行のために、身を引くが)
(このままで終わるには、惜しい)
(とぷん)(再び碧の中に潜り)(彼を目指した)
(。o〇)
十埼・竜 2022年8月13日
【「いいよ。“セイ”」幼い悪魔は、名前を呼ぶ】
【「ぼくはいつまでも、そこにいるから」】
【「ことばを話したくなったら、いるといいよ」】
十埼・竜 2022年8月13日
(――――打ち上げられた骸一つ残して、その浜には、何もいなくなり)
(鳴き声だけが、遠く聴こえていた。)
(。o〇)