私立MM学園

【卍】 白之卍奪戦 月影光靡 【卍】

ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月21日
─━==卍奪戦 第陸試合━==ニニニ==━─ ─━==ニニニ==━─━==ニニニ==━─

  “腕白番長”ミーレ・ベルンシュタイン
                    VS
                     “ライトニングハート”新堂・亜唯

━==ニニニ==━───━==ニニニ=━==ニニニ==“天空決闘聖域”ヴァルハラ=━─━


🌗 特殊ルール 🌓 

【 魂は肉体を凌駕する 】

 この卍奪戦に於いては、心が敗北を認めない限り、
 “魂が肉体を凌駕”し、意識を失わず、力尽きることはありません。

 ――御託は無用。言葉通りに「心ゆくまで」の対峙を。
 元より、必要なことはそれだけなのですから。

 そうでしょう?

          ────────────【 七月二二日 二〇〇〇 開戦 】





2
5

ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
「亜唯くん。――自分の外にある力を操ることにかけて、わたくしに挑むのは」
「ナメすぎ、ってモノですよ」

https://tw7.t-walker.jp/garage/gravity/show?gravity_id=8601

重力を統べ、上から下を見下ろす魔術師の周囲に。
氷が、焔が、雷が、風が、天変地異の奔流が姿を現して、巨大な拳と食らい合う。

そこは己の土俵。負ける気などしない。
だが、だからこそ、分かることが一つだけ。
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
「――――これで終わりのつもりじゃ、ないでしょう!!?」
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「…………ちっ」

当然――止められた。なんせこんなもん、彼女の言う通り、彼女の土俵そのものだ。
ホイホイ絡めとってくださいと、懐に飛び込んだようなものだ。

けれど、今使える、あの重力に対抗できるだけの力は……これしかなかった。
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新堂・亜唯 2022年7月23日
でも、食らい合っているこの瞬間――相手は正面にいる。
布石だってことは、見抜かれているだろうけど。
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新堂・亜唯 2022年7月23日
これから放つ拳が、最後。

螺月流は、今まで時代を重ね、常に新たな奥義を拓き、それに応じて名前を変えてきた。
つまり「今の最終奥義が螺月だから、螺月流という名前に過ぎない」ということだ。

即ち――奥義の会得者は、その次の技を繋ぐことで、真の意味でこの流派を修めた、と言える。
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「その原型が、人の技ってのは……やっぱ、俺とミーレの、在り方の差なのかもしれない」

さっき、分かってしまっていた。気持ちいいくらいに。
番長に必要な〝我〟の強さ。

自分の中の最も大きな〝我〟は、どこまで言っても〝無我〟の中にある。
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「それでも……」

それでも、新堂亜唯が、奥義〝螺月〟の先に繋ぐものとして選ぶのは。

自分が、番長だとか、生徒会だとかよりも、戦っていて最も「強かった」と魂で感じてしまった拳は
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「勝っても負けても、泣いても笑っても……たぶん、この一撃ですべてが決まる」

「この一撃で、俺たち白のクラスの、〝次の一年〟を決めるなら」
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新堂・亜唯 2022年7月23日
おもむろに、開いた、もう片方の拳の中に握りこむ。
https://tw7.t-walker.jp/garage/item/show?item_id=37226 】


「……俺は、お前が良い」

            ・・・・・
小さな黒い鍵と―――――もうひとつ。
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「――卍器よりも強い遺産を知ってるか?」

「少なくとも、俺にとっては、ある」 (無効票)
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
「―――――、」

いやあ。
さすがに大技は限界ですね、と、拳と食い合って消えていく天災を目に、顔には出さず、内心、苦笑した。

内なるエーテルを世界に伸ばし、テコのように、小さな力で大きな理に干渉するのがベルンシュタインの魔術。
魂が肉体を凌駕するこの空間といえど――否、だからこそ、魂の力、精神力というリソースだけは無尽蔵に沸きはしない。

ふわり、と、緩やかに、亜唯の前に降り立って。
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
「ん」
不意の問いかけに、首を傾げて。

「さあ。……わたくし、道具の強さは使い手の強さだと思っていますから」
強い遺産というものを、あまり考えたことない……という顔をして。

「だから――」
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
「何のことだか、分かりませんが」

「――それが君の強さとなったなら、どんなものでも、受けて立ちましょう」 (無効票)
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「…………」

ただ、構えた。
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新堂・亜唯 2022年7月23日
その技は、極めて単純であり、故に純粋だ。
最短で、最善の、磨き抜かれた構えから、極限の軌跡を描いて放たれる。

記憶に焼き付いているのは……物腰柔らかで、ちょっと胡散臭くて、割と負けず嫌いで、夜食を作るのが上手いどっかの眼鏡が
喧嘩の最中に咄嗟に放った拳。……それを着想のもとにしている。
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新堂・亜唯 2022年7月23日
つまり――

自分が最も〝壊れない〟と信じたものを握りしめて放つだけの拳。
https://tw7.t-walker.jp/garage/item/show?item_id=36603 】
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新堂・亜唯 2022年7月23日
故に。

その技は壊れず、そして望まぬものを壊さずに

狙ったものだけを打ち砕く。
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「―――――〝我流〟」
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新堂・亜唯 2022年7月23日
https://tw7.t-walker.jp/garage/gravity/show?gravity_id=32367 (無効票)
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
すう、と、息を吐く。

極端に突き出すは左の縦拳。
人外との戦いを優先する以上、流れを活かす闘法は「受け流し」よりも「弾いてからの最短最速の拳」だと想定した新たな構え。

右を下げるのは……今は、関係のない理由。

だから。大技に頼れない以上、今、この意地を示すには、――、

――――。
そんな、思考が、
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
――ずるいなぁ、と。

刹那、大変、不満そうな顔をした。

だって、そうでしょう。
人がせっかく、君との勝敗しか考えない、と言っているのに。
立場も、並び立つ子も、応援してくれる子も、ライバルと言える子も、全て忘れて目の前を見て、“ダンスの誘い”に応じているというのに。
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
「一番大切なもの」を、初めて手に入れたと信じられるものを握りしめて、叩きつけられたら。

流すことも。
弾くことも。
巻き戻してなかったことにすることだって、出来ようはずがない。
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
――倒れることだって、出来るはずもない。 (無効票)
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新堂・亜唯 2022年7月23日
――悪いな、と思った。

彼女が不服そうな顔をするところが見えたからだ。
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新堂・亜唯 2022年7月23日
そして、自分と、彼女を分かつものがあるとすれば。

この瞬間、番長としての資質を分けるものがあるとすれば、つまり――自分の、こういうところなのだろう。

でも、螺月流の先に連なる、自分が最も信じた拳は、こういう技だ。
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新堂・亜唯 2022年7月23日
俺の拳は、正しいものは砕けない。
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「……正真正銘、俺にこれ以上の技はない」
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「それでも、力尽きる感じが全然しないのは……俺の心が折れていないからだ」

「たぶん、俺の心は根本から、〝負ける〟ってことは無いんだと思う」
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新堂・亜唯 2022年7月23日
……俺を此処に送り出してくれた人たちならば

「でも……」

きっと、この答えを、赦してくれるだろうか。
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「…………」
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「……お前の〝勝ち〟なら、認められる」 (無効票)
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
「――――――」
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
一度。
拳の感触が残る胸元に触れると、
ふう、と。頬を、緩めて。

「はい。――『わたし』の勝ちです、亜唯くん」
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
「――ひとつ、お願いがあるんですけど」 (無効票)
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新堂・亜唯 2022年7月23日
……。

握りしめた拳を開く。今はもう輝かない、二つの鍵。
それをポケットにしまって、向き直る。
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「なんだい、番長」 (無効票)
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
「番長になったらやろうとしてたこと。――どーせ、あれこれあるんでしょう。亜唯くん、真面目ですもの」

ひょいと、肩を竦めて、
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
「今度聞かせて、良かったら手伝ってください。――わたくし、へたくそなことも多い、自覚はあるので。……そのへん。『頼れる人』に助けてもらえると、助かります」

一度。いつものように胸を張って、そんな風に言ってから、
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
……だ、だめですかね。変? みたいな顔をした。 (無効票)
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「……どーどーと言え。〝当代番長〟」

「この一年、お前のクラスでここまで腕を磨いて、お前の使う卍器で力になれないのもヤだな~~ってあんな技まで用意してきたヤツだぞ」
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「白のクラスのためになることを、断るわけないだろ」 (無効票)
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
「わ……分かってますよう!!! ちょっとはたかれた胸が痛んだだけですー!!!」

そう、そうだ、うん。
――これだけぶつかりあっておいて。信じて口に出せなくてどうするか。
だから、うん、
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
「……よろしく。」 (無効票)
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「こちらこそ」

そして、振り返る。
崩れてひび割れて、平坦じゃない神殿の道を、歩き出す。

「……ま、でも」
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「俺にもそれなりに、誇りってもんがある。お手手つないで帰ろうね、とは行かないからさ」

「舞台の上に残るのは、勝者だけ……ってのが奇麗だろ」
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新堂・亜唯 2022年7月23日
もう一度言うが――力尽きたりはしていない。

まだ螺月流の技を使うくらいのことはできるし、この戦場には糧になる力が満ち満ちている。
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新堂・亜唯 2022年7月23日
「――――〝次の一年〟を、よろしく」
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新堂・亜唯 2022年7月23日
そして、不意に少し強いつむじ風が吹いたかと思うと

砂埃が巻き上げた螺旋が晴れたころには、もう、その姿は無かった。 (卍)
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
「……まったくもう」

負けず嫌い、みたいなことか。
要修行ですね、なんてことか。
自分でも分からない、いろんなニュアンスを込めて、溜息一つ。
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ミーレ・ベルンシュタイン 2022年7月23日
ひらりと。
空――箱庭を見る観客に向けて一つ手を振ってみせて、

そうして、身を翻した。 (卍)
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