【個】世の涯てから、
竜城・陸 2022年6月8日
ここ最近真面目に授業を受けているようだから、姿を探すのはそう難しくなかった。
「少し、歩かない?」
放課後。
言葉少なにそんな風に声を掛けた。
相手の声音は少し意外そうな響きを帯びながら、それでも「嬉しい」と口にする。
――それを見たら。
また、喉の奥が詰まったみたいな心地になった。
場所:
新宿島・西海岸
書き込み可能:
#十桜・ひとめ
#竜城・陸
・終了時にアンケート選択
1
竜城・陸 2022年6月9日
…………まあ、とはいえ。
番長でなくなったからといって、大切なものが減るわけではないからね。
(……と、言いながら)
(たぶん、)(答えるべきなのは、そういうことじゃないな、と思って)
……、話しておかなきゃならないことがある、と言ったでしょう。
竜城・陸 2022年6月9日
(この魂は、神の灰)
(すべてが等しくいとおしくて――だから、どんなものも特別には成りえない)
(そういう生き方を、してきた)
(そういう生き方を、していくと思ってた)
(だけど――――)
今の俺には、まだ。
君の“好き”に、返せるだけの想いがない。
竜城・陸 2022年6月9日
……傲慢に大切なものすべてに手を伸ばせても。
そこからたった一つを選べない。
世界を変えることだって厭わないくせに、自分の周りの大切なものが、変わってほしくないと思ってる。
竜城・陸 2022年6月9日
(――そうであってほしい、と思ったものでさえ)
(最後の最後で、踏み止まってしまっている)
……君のことは、きっと、好きなんだと思う。
でも、多分それは。大切なものは皆、そうで――
(こうやって、冷静に考えられてしまう時点で、)
(なりふり構わず、後先考えることなく、何を気にすることもなく、“そうだ”と言えない時点で)
――きっとまだこれは、特別な“好き”じゃないから。
だから、……ごめんね。
今は、ちゃんとした答えを返せない。
(無効票)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
(我ながら浅はかで、短絡的で。子どもみたいな我儘を言ってしまったと思う)
(それでも、ほら)
(こうして笑わずに応えてくれるのだから)
(その声音が、心地良い)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
(『返せない』『選べない』)
(『ごめんね』)
(それは、小さくて、僅かな毒)
(じくり。じわりと。容赦なく花を蝕む)
(先程感じたものとは打って変わって、息の詰まるような────)
(ただでさえか細い息吹が、二人の間を抜けていく)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
──────ねえ、陸。
(ようやく、吐き出された言葉は)
──────傍に、行ってもいいかしら。
(幼子のようだった)
(無効票)
竜城・陸 2022年6月9日
(か細い、吐息みたいな言葉に、)
(ああ、やっぱり、傷つけたな、と思った)
竜城・陸 2022年6月9日
ん、…………。
……いいよ、勿論。
(無効票)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
(ふらり。木々が風に吹かれて軋むように)
(彼の腕に、凭れて)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
────嘘。
本当は、傷つけてしまうのが……怖いから。
……嫌でしょう?
こんなにか弱い生き物に、触れられるのは。
十桜・ひとめ 2022年6月9日
──────ねえ、陸。
…………我ね。この前、花占いをしたの。
…………どっちだったと思う?
(唐突に、当ててみて?と)(視線だけ動かして)
(無効票)
竜城・陸 2022年6月9日
……嫌だったら、そもそも頷きはしないよ。
(――壊してしまうのが怖いから、そもそも)(近づけることすら、ないだろう)
自分から手を伸ばしたりも、しない。
竜城・陸 2022年6月9日
…………花、占い?
(耳慣れない単語に、首を傾げて、)……どっち、というのは、
(話の流れからすれば。好きか、そうでないか、ということか)
(すこし、考えて)
…………君のその浮かない顔からしたら。
嫌い、って出たんじゃない?
(無効票)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
──────流石、鋭いのね。陸。
(小さく口角を上げたのが、薄らを見えたかもしれない)
……そうよ。“きらい”。
我は運命とか、占いとか……そんなもの、信じてなんかいないの。
十桜・ひとめ 2022年6月9日
いないのに────どうしてかしら。
それに、頼ってみたくなったの。
(結果は、お粗末なものだったけれど)
……不思議よね。
まるで────いいえ。我は、きっとこうなることが分かっていたの。
分かっていて、見ないようにしていたの。
(頼って、縋って────“すき”が出れば、僅かながらでも救われるような気がして)
(それは全部、あなたが────)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
──────我が好きになったあなたが、そういう人だって信じていたから。
(だからこそ、分かっているつもりだったのに)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
…………陸。どうか、あなたは傷つかないで。
──────我は、ずっと待っているから。
十桜・ひとめ 2022年6月9日
──────あなたが、もう一度。答えを出せるその時まで。
ずっと、ずうっと…………待っているから。
十桜・ひとめ 2022年6月9日
────それに、知っているでしょう。陸。
我が、ただ待っているだけだなんて。
(すると思う?)
(無効票)
竜城・陸 2022年6月9日
(――――結局)
(答えを先送りにしているだけだなんてわかっている)
(今、出ない答えが、)
(いつ出るかもわからないのに)(生きているうちには、わからないかもしれないのに)
(ただ、縛り付けてしまうだけだ)
(そっちのほうが余程、彼女を傷つけている)(ひどいことをしている)
(本当なら、きっぱり手を放すべきなんだ)
(そう思う、のに――――)
竜城・陸 2022年6月9日
(――――この手を離せないのは、どうしてなんだろう)
竜城・陸 2022年6月9日
――――知っているよ。
君が、おとなしく待ってるなんてタイプじゃないってことくらい。
(知っているから)(――多分、それに甘えている)
…………、
竜城・陸 2022年6月9日
……君のそういうところが、好きなんだからね。
(“そういう意味”では、きっと、まだないけれど)
(――そう呼ぶには稚拙で、聞き分けの良すぎる“好き”だけれど)
(変わらなくたっていいよ、と)(伝えて、おきたくて)
…………ところで、勘違いだったら恥ずかしいのだけれど。
授業に真面目に出ているのは、俺のせい?
(無効票)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
っ────────────陸。
少し、狡いわ。あなたの、そういうところ。
十桜・ひとめ 2022年6月9日
…………ええ、そうよ?
あなたが、ずうっと言っていたじゃない。
授業にもちゃんと出て、って。
十桜・ひとめ 2022年6月9日
────それと、“せい”と言うには、少し違うわ。
きっと、そうしたらあなたが喜ぶと思ったからよ。
……違った?
(無効票)
竜城・陸 2022年6月9日
………………。
(とてつもない罪悪感)(割と誰にでも言う定型句)
それはえーとね、その、あー……。
……君が授業に出て、話を聞いて、教科書を読んで。
楽しいな、面白いな、と思えたなら、それは勿論、俺も嬉しいけど……。
竜城・陸 2022年6月9日
でも、そこに君が楽しみを見いだせないなら、無理に出る必要はないよ。
無理をしてほしいわけじゃないからね。
……苦じゃないなら勿論、いいんだけどね。
君の顔を見る機会が増えたのは、それはそれで嬉しい。
(無効票)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
……………………、
十桜・ひとめ 2022年6月9日
………………誰にでもそうやって。
我のことなんてどうだっていいのね。
十桜・ひとめ 2022年6月9日
…………なんて、ふふっ。言いたかっただけよ。
ええ、それがね、陸。
これでも我、楽しんでいるのよ?
とってもとっても疲れるけれど…………楽しいの。
(授業だけでなく、あの学園自体が。この人生が)
(無効票)
竜城・陸 2022年6月9日
そこについては反論のしようが一切ありません……。
竜城・陸 2022年6月9日
(とか)(言いつつ)
……そう、なの? 楽しめているのならよかったけれど……。
疲れるようなら、ほどほどに休むんだよ。倒れてしまっては元も子もないしね。
竜城・陸 2022年6月9日
うん、でも、……そっか。
楽しい、か。
俺もそうだよ、ここで経験するすべてのことが、楽しくてたまらない。
(無効票)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
ふふふっ、やっぱり我たち、似た者同士かもしれないわね。
(くすくすと笑みを零して)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
(ふぅ、と一息ついて)
……ああ、そう。
倒れそうなほど疲れているのに、こんなところまで歩いて来たのよ。我。
(あとは、言わなくてもわかるだろうと)
(身を寄せて)
(無効票)
竜城・陸 2022年6月9日
ふふ、そうだね、そこは似た者同士かも――――
竜城・陸 2022年6月9日
……ふふ、はいはい。
俺も片付ける仕事が残っているしね。学園まで、一緒に戻ろうか。
(受け止めるように、両腕を差し出して)
(無効票)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
(そう。それでいいのよ)
(と、微笑みながら)
(ふわりと彼の腕の中へ)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
(“正面から”収まった)
(彼の性別の割に細い腰を、抱き寄せて)
(その胸の中に、顔を埋めて)
(──────ねえ、陸)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
(──────────もし、わたしが)
(この世界から消えてしまったとしても)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
(あなたは──────────)
(見つけて、くれる?)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
(その言葉は、声になっていただろうか)
(彼の耳に、届いているだろうか)
(抱き着いて、甘えるような状態から、何事もなかったかのように翻って)
(彼が抱き上げやすいように、背を向けた)
十桜・ひとめ 2022年6月9日
────────────おねがいね、陸。
(▼)
竜城・陸 2022年6月9日
――――――、
(そういうところ、少しずるいよ)(なんて、意趣返しみたいな言葉は、口から出ずに)
(微かに、息を呑むような気配だけが)
(顔を埋めた彼女には、伝わっているだろう)
竜城・陸 2022年6月9日
……風も出てきたし、早く戻ろうか。
(何事もなかったかのように、そう言って、)(抱き上げて、)
(羽搏き一つ、宙に浮き上がって――――)
竜城・陸 2022年6月9日
(――――“俺の目の前から、簡単に消えられると思わないでよね”)
(羽搏きに紛れた、そんな、迂遠な言葉は)
(「当然でしょう」と、そういう、響き)
竜城・陸 2022年6月9日
(――ちいさな世界の涯てを背にして、学園へと向けて空をゆく)
(もう、遠い“自分”には戻れないのだから)
(世の涯てから眺めるだけは、やめにしたはずなのだから)
(――――伸ばした手の先に在る答えを、見つけないと)
竜城・陸 2022年6月9日
(――それが、)
(“皆”にとってのしあわせではないと)
(どうあったって、誰かを傷つけると)
(わかっていても――――)
(▼)