【個】アナードレディ
スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月22日
ある日の放課後である。
赤のクラスは忙しない。
己の戦闘技術を磨き、伸ばそうとする生徒たちで溢れている。
お互いに高め、時には級友へ師事をする。
そして今日もまた、先達の胸を借りようとする生徒がいるのであった。
優雅たらんとする、1人の人物へ向けて
#スィーリ・ラウタヴァーラ
#リュヌ・ドゥートランキルテ
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リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
閑静な空気を打ち破るように、元気な音と共に少年がやってきた。
「お待たせーーー!」
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スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月22日
「お待ちしておりました、リュヌ様」
静かに微笑むと、綺麗にカーテシーを描き挨拶をするのであった。
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リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
お上品だ…! 優雅に振る舞うメイドさんの姿に思わず見入ってしまいそうになる
「はい! 今日はよろしくねーっ」
対してこちらは大きく、やはり元気よく頭を下げるのでした
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スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月22日
なんとも溌溂な少年だ。身体中からエネルギーが溢れているように感じる。
「えぇ、こちらこそよろしくお願いいたします。模擬戦、をご所望ということで間違いないでしょうか?」
事前に伺っていた内容ではあるが、今一度確認を。
相互の理解に間違いがあっては、万が一取り返しのつかない怪我を負わせてしまうかもしれない。
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リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
そう、この待ち合わせは模擬戦の約束だ。
ここ最近、強くなろうとたくさんの人達へ誘いをかけているのだ。
そして赤のクラスであるスィーリ、先輩である彼女にもまた胸を借りようと声をかけていたのだった。
「おうっ、そのとーりだぜ!」
間違いない。その言葉を簡潔に答えるのでした。
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スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月22日
近頃色んな学生を相手に戦いを挑んでいると噂に聞いたことがある。
自分に声を掛けてきたのもその一環なのであろう。
「かしこまりました。では──」
相手の了承の言葉を得て、小さく頷き。
スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月22日
両腕を交差するように振り上げ、2本のナイフをリュヌ様へと投擲するのであった。
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リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
「! 投げナイフか!」
早速、来た。
ナイフ1つ──いや、2本ではあるが──投げるだけでも流麗な趣きがある。
戦闘技巧者がする合理の動きとはまた違った、芯のような流儀を感じる動きだった。
リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
「よーし、それなら──!」
ナイフもそうだが、投擲武器には必ず刃と持ち手がある。当然だ。
ナイフは使わない少年ではあるが、スィーリが触れていたその"持ち手"はよく見えていた。
様子見だからか、直線的な動きのナイフを回転の動きと共に一つを避け、
もう一つは"持ち手"に手を添え──避ける時の回転の勢いに合わせ、彼女へ投げ返した。
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スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月22日
さて、避けるか防ぐか。彼がどちらを選択するか様子見をしようと思っての初手。
だが、第三の答えを突き付けられる。
「目がよろしいのですね」
曲芸じみた動きではあるが、それを可能とするだけの力を持っているということだ。
自ら仕掛けた刃が、こちらへ迫ってくる──。
スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月22日
模擬戦ゆえ流石に毒などは塗っていないが、正真正銘のナイフである。刺されば当然血が流れる。
帰り道にまだ買い出しもあるのである。メイド服を汚すわけにはいかない。
「では、私めもリュヌ様に習いまして」
単純に避けることは簡単だが、それでは模擬戦の意味がないだろう。
相手も自分も学ぶものがなければ。
スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月22日
すっ、と片足を後ろに引くと今まさにナイフがその白いメイド服を貫かんと迫るタイミングで
カンッ!!!
勢いよく振り上げられた右足、そのつま先にて刃の腹を蹴り上げる。
ふわり、とスカートがはためく。色素の薄い生足とガーターベルトが垣間見えたかもしれない。
くるくると回転し落ちてくるナイフを、服の袖へと導くのだった。
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リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
見えた。それが視界に入った。そしてそれは白と黒だった。
リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
さっと視線を落とした──もう後の祭りではあるが、一応、礼儀として。
「む、むぅ……軽業って感じだ。凄いな、スィーリ」
やはりナイフについては相手の方が一枚も二枚も上手か。曲芸じみた仕舞い方でも優雅さが醸し出ている。
リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
もういいかな? なんて再び彼女を視界に収めると
「よーし、じゃあ今度はこっちから!」
パァン!!
破裂音にも似た音共に、彼の位置が変化した。
彼我の距離が離れた所から、一気に直ぐ近くまで。
──接近。腰だめに構えた拳を、天を突くように持ち上げた。
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スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月22日
第一幕が閉じた。お客様を喜ばせようと少し派手なアクションをしてみたがいかがだろうか?
リュヌ様へと視線を送ると、どうやら贈り物は無事届いたようだ。
なんとも微笑ましい様子である。
「メイドでございますから。当然でございます」
さぁ、第二幕の開演である──!
スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月22日
音が、爆ぜた。
耳から脳へ情報が伝わり、ようやくの理解を得たころにはすでに距離は詰められていて。
一瞬の驚愕と共に納得する。やはり彼も復讐者であり、戦士なのであると。
「良い突きです……が、少々近づきすぎかと」
さらに一歩前へ。リュヌ様の息遣いが聞こえるかのようなところまで。
スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月22日
ロケットのごとく勢いの乗り振り上げられた拳、しかし直線的かつ突き上げの動作には加速が必要になる。
足裏から膝、腰へ。そして肩から腕へと力を伝えて対象を射抜こうとしている。
ならば……。
「力を途中で乱してやるのが、得策かと」
トンッ
迫りくる拳のその先、肘の関節を優しくだが確実に手の甲で押すのだった。
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リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
「むむっ」
スィーリと向かい合った。少年は既に、彼女へ向かって打ち放つその寸前である。その姿が、彼女の瞳の中で大きくなっていた。
リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
スィーリの観察は的を射ていた。
疑似的な縮地、それを可能にする踏み込みと足運び。それを移動だけに終わらせず、攻撃へと転用する──それが今の突き上げだ。
感覚的に行なっている、体の各部を使った力の伝導を途中で乱される。それは揺らぎ、弱まり、空を軽く切るだけの結果を残した。
リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
「あ、あれ? おかしいなー」
力の流動──彼が感覚的に行なっているそれを狂わされた。
それはわかる、わかるのだが、放つ前にそれを行われたのは初めての経験だった。
拳を、それからスィーリを不思議そうな目で見た。
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スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月22日
素直に受けて差し上げた方がよかっただろうか?
いや、これは教練である。明確な弱点が見えているのならば、指摘して差し上げるのが先達としての務めだろう。
「とても力強い拳でございました。ですが……」
戸惑いを見せるリュヌ様の腕に、そっと押した手をそして腕を絡ませる。
スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月22日
彼女の格闘術の源流となっているのシステマ。ロシア軍隊の格闘術として知られるものである。
呼吸を整え緊張を解き、常に冷静であり動き続ける。決まった型や技はなく、柔軟で自由な動きが特徴的だ。
「フェイントや視線誘導などを挟むとより効果的かと」
身体を密着させ、絡ませた彼の腕をその後方へと導く。その可動域の限界まで──。
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リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
「流す……のとはまた違うよな、勢いが乗る前に潰されるのとも違うし」
放つ前に勢いそのものが掻き消された。そんな感覚に近いだろうか。
突き出した腕を即座に戻そうとするも──先に絡み取られてしまった。
リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
フェイント、視線誘導。当てるための搦手、否戦略だ。
確かに少年に欠けている──以前から言われているが、なかなか出来ずにいるものだ。
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リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
「今のって──っ。
いでででででっ」
腕に続き、彼女と体が触れ合う。けれどそれは痛みを伴う所業でもあった。
腕があらぬ方向へと無理矢理に曲げられる。どうしてそんな力があるのか気になるが、それ以上に痛みに対する反応が頭を支配するのだった。
関節の不可動領域、そこへ向かって抑えられていた。
じたばた。もがく。
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スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月22日
一撃当てて終了。スポーツの試合ならばそれもまた一つの作戦だ。
だが、復讐者の戦いに終わりはない。クロノヴェーダを滅ぼしきるその日まで。
ならば、求められるのは継戦能力。以下に戦力の消耗を抑え、次の戦いに繋ぐか。
「あとはそう。痛みに慣れることも必要ですね。でないと……」
スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月22日
腕の痛みにもがき、暴れる。正常な反応ではあるが、こと戦場では冷静さを失ってはいけない。
意識が腕や肩、上半身へと集まっているのを確認して。
するり、絡めた腕を抜きながら──
「咄嗟の反応が遅れてしまいますよ?」
タンッ
軽い動作でリュヌ様へと足払いを仕掛けた。
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リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
「ぐむむむむーん」
慣れない痛みだ。それもそうでしょう、関節技なんてこれまであまり相手にした事がないのですから。
慣れるなんて、出来るのだろうか。彼は人一倍、反応がいいのだから。
リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
「あっ、抜け───あれ?」
すてん。空が見えます、それから視界の隅にスィーリも。
転ばされた──そう理解するのに時間はかかりませんでした。
痛みに惑わされた結果、足元を掬われたのでしょう
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スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月22日
地面に背をつけるリュヌ様、その胸に優しくしかししっかりと体重を掛けて足を乗せる。
胸骨をヒールで圧迫し、呼吸を乱すことを目的として。
「これで、チェックメイトです」
いつの間にかその右手には黒光りする自動拳銃が握られており、その銃口はぴたりと彼の額を狙っていた。
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リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
「ぐ…ぐえっ」
潰れたカエルのような声が漏れる。
細いヒールが体重をより強いものとして伝えてくる。呼吸がし辛い──息がしにくいとここまで動きにくくなるものなのか。
いや。
例え動けたとしても、今はダメだろう。額に冷たい、金属の感触が伝わってくるのだ──
リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月22日
感触。としか思えないのは視界を少し逸らしているからだ。
恐らくは……そう。こちらを抑える為に上げた足、必然的にスカートが持ち上がるだろう。
そこへ少年の頭が下にいく──大変危険な視界になる事は少年でも予想がつく。
尤も、彼は『そういうのは、良くないな』と言う思いやりの気持ちで視界に入れないでいるのだが。
「むむ……そうみたいだな」
降参、と両手を挙げて伝えた。
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スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月23日
視線を逸らし、降参を告げるリュヌ様。
後はその純朴さも直さねば……いえ、それは彼の長所でしょうか。ぐっと、コメントの飲み込んで。
そっと足を退けると、拳銃をスカートの中にしまう。
そして、リュヌ様の傍へとしゃがみこんで。
「リュヌ様のまっすぐな心意気はとても素敵なものだと思います。ですが、戦場ではその素直さが命取りとなりますので」
スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月23日
できるならば、命を散らさず、怪我をしないで欲しいと思う。
復讐者は死から外れた存在とはいえ、絶対はないのだから。
なんとなく、そう、本当になんとなくだが。
その金色の輝く髪を、そっと撫でようと手を伸ばした。
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リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月23日
彼女の捌き方。対応。そしてあの動き。改めて反復していく──いつもやる事だ。
他の格闘技を習っている人とはまた違う。なんだかその道のプロのようなものも感じるのだった。
リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月23日
「ぷはーっ、ありがとありがと」
これでようやく息がしっかり出来る。退けてくれ、顔を寄せたスィーリお礼を言い。
「命取りかー……そうだなっ。気を付けないと、今日みたいに足元掬われちゃうもんな…!」
でも、次は簡単にはさせないぜ。そう笑顔で答えて。
リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月23日
「んん。どうしたの?」
無邪気な表情でスィーリを見つめ、自身の髪がなぞられるのを感じる。
それは滑らかできめ細やかく、到底男子とは思えないキューティクルでもあった。きっと撫でていて気持ちのいいものだろう。
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スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月23日
無垢な笑顔を向けてくるリュヌ様。眩しく、そしてどこか懐かしさを感じる。
先ほど伝えた素直さは命取り、その言葉は決して訓告の類ではない。彼女自身の経験によるものだ。
「えぇ、本当に。生き延びるための手段を得てください。武器でも技術でも心得でも、なんでも構いません」
さらり、と髪を撫でる。
スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月23日
どうした?というリュヌ様の声にはっと息を飲み、慌てて手を引っ込めるのであった。
どうやら無意識の産物であったらしく、彼女自身も戸惑いがあるようだ。
「い、いえ……なんでもございません。それよりお召し物を汚してしまいましたね、着替えはございますか?」
ごまかす様に、別の話題を口にした。
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リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月23日
忠告、というよりも。
自分と何かを重ねて見ているような、繰り返しているような。そんな不思議な視線を感じ。
「──うん。そうだな。
折角スィーリが言ってくれているし、ちょっと考えてみるぜ」
やはり素直で、純粋なまでに助言を受け取って。
リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月23日
少し、ほんの少し怪訝な表情で彼女を見て。
「ほんとー? ……あ、着替えはないぜ。いつもこんな感じで汚してるしー」
何かあったのかな、なんて考えるも、直ぐに隅っこへ追いやった。
起き上がり、埃と土を払っていつもの事だと返事をした。
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スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月23日
素直にこちらの言葉を受け止めてくれるリュヌ様に安心を得て。
「今日のような訓練であれば、時間が合えばいつでもお付き合いしますので」
そう、自分はメイド。人の役に立つのが仕事である。
こういった提案も何も不思議なことはないだろう。
スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月23日
「良ければお洗濯いたしましょうか?替えのお召し物は……メイド服なら、いくらでもありますよ」
スカートの中の異空間から、ぽんぽんと様々なサイズのメイド服を取り出してみせた。
(無効票)
リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月23日
次も付き合ってくれる。そんな嬉しい言葉を聞いて。
「よしっ、じゃあその時はまたよろしく頼むぜ!」
次は負けない! 強くなるぞーと言い。ばんざーい、なんて諸手を挙げて喜んで。
リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月23日
「あ、それは喜ん……メイド服!? 他にはないの!?」
可愛らしいメイド服が並び出てきた。それだけなら良いが──自分が着るとなると話は別だ。
それは、ちょっと、その、困ってしまう。
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スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月23日
他にはないか?と問われる。だが、他にしまってあるのは寝るとき用のネグリジェやら下着しかなく。
「リュヌ様がそういった趣味があれば構いませんが……女性ものの下着をお召しになりますか?」
なんて。答えが分かり切っている質問をしてみたり。
そう、この充実した時間が少しでも長く続けばいいなと思って。
(演出終了)
リュヌ・ドゥートランキルテ 2022年5月23日
困った。これは非常に困った。
どうやら替えは女性ものしかなく、自分には合わないものだ。
しかし彼女の厚意を無碍にするわけにもいかないし──八方塞がりだ。
「う、うーーーん。それはだな………っ!」
意外とスィーリは意地悪だ。
悪戯めいた言葉を聞いて、この時を早くどうにか切り抜けなければと切に思うのだった。
(演出終了)
スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月23日
校舎裏のグラウンドに少年と少女の声が響き渡る。
どのような結末を迎えたのかは、二人にしか分からないだろう。
スィーリ・ラウタヴァーラ 2022年5月23日
【このスレッドは終了しました】