第17試合:ラスト・スタンド
神居・メト 2022年4月30日
機関砲の掃射を受け、ドローンの自爆でトドメを刺された大型ショッピングモール。
全壊し、見るも無残な瓦礫の山となってもなおつかない勝敗を付けるため。
赤薙・夜明の残した“置き土産”がフィールドを徐々に飲み込む中、最後のプレイヤーたちが集う。
トライデント第1シーズン、最終試合。
その最後の瞬間が迫る――――
1
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
ミーレより、花束よりは遅い。
(それはつまり、対応できる領域の速さということで)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
. ラウンド・カット
(偽・銃弾拳法漆式――)
(ボロボロの停滞装甲に溜め込んだ反動を蹴り脚から断続的に発露――)
(多段加速を伴う、ギロチンのような鋭い蹴りで迎え撃つ!)
藤永・えみり 2022年4月30日
(――っ、応じられた!)
(その高速化された思考の中で、その結果は現実に起こるよりも先に、予測結果として理解され)
(無効票)
藤永・えみり 2022年4月30日
(そのままであれば、刃を砕き、その身にすら届きかねない一撃)
(それを前にして、完全義体の支援により思考は限界まで加速され)
(無効票)
藤永・えみり 2022年4月30日
(――振るった右腕自体の速度はもう消しきれない)
(そう判断し、振るった右腕を盾にするように体をひねりつつ、無理矢理『身体』のみに電磁加速を起動)
(無効票)
藤永・えみり 2022年4月30日
(そうしたことで、振るった右腕の双銃剣型ガジェットの刃と、それを手にした右手に対し、ギロチンのごとき蹴撃が炸裂、ガジェットの刃と銃身、そして、さらにはえみりの右手自身を砕き裂き)
(無効票)
藤永・えみり 2022年4月30日
(しかし、えみり自身はその身をさらに加速。それ以上の追撃を避けるように、すれ違いざまになる様に加速しつつ)
(残されたガジェットの弾倉に残った電磁加速の力を銃弾を遠隔爆破して、細かい破片の散弾をばら撒かんとします)
田中・夜美 2022年4月30日
(吹き飛ばされても)(すぐに)(態勢を立て直す)
(空中)(足元で)(リソースを使って)(足場を作る)
(リソースは)(もうあんまり残ってない)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(びっくりしたけど)(さっきのはもう)(あるのはわかっているから)
(大丈夫!)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(それに)(見ていた)
(突撃して)(それを迎え撃った)(二人)
(あっちも)(敵だけど)(これなら)(前と同じ!)
(青の番長を)(我とリップで)(追い詰めたのと)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(だから)(今なら)(行ける!)
(突撃)(だぞ!)
(空中)(足場を踏み込む)(先程と同じ)(凄まじい速度で)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(そうして)(ミサゴに)(迫り始めたところで)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(――子爵が)(消えた)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(えっ)
(なんで)
(どうして)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(これは)(やみが任されたもので)
(リップの鎌で)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(どうして)(どうしてどこかに)(行ってしまうの?)
(やだ)(やだ)(やだやだやだ)(そんなの)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(だって)(任されたのに)(だから)(勝手になくなるなんて)
(どうして)(どうして?)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(でも)(無い)(どこにも無い)
(あったはずのものが)(任されたはずのものが)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(無い)(どこにも)(無くなると)
(やみは――)(リップは――)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(――――)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(――だから)
. ・・・・・・・・・・
(――だから何だというのだ)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(鎌が無くても)(振るうべきものがなくても)
. ・・・・・・・・・ ・・・・・・・
(リップ・ハップなら)(そう言うはずだ)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(そうだ)(無くてもリップは)(青の番長と)(戦っている)
(我も)(リップに任されたのだから)(戦わなくては!)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(体は)(もう)(向かっている)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(後は)(ぶつかればいい)
(無効票)
田中・夜美 2022年4月30日
(ぶつかれば)(倒せる……!)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年5月1日
――――ッ
(破壊したまではいい。いいが――――)
(周囲で爆ぜる小さな爆発、その破片から、抱えたゴールデンギガースを庇う。万が一、これが破壊されればそれでゲームセットだ)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年5月1日
(庇って受けた破片で停滞装甲――魔術を込めたインナースーツが機能を停止する)
(ここまで持っただけでも奇跡に近い)
・・・・・・・・・・
(次。なんにしても、どういうわけか鎌を使うことに熱心な相手なら)
(どうにでもして見せる――つもりだった)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年5月1日
(――――その挙動が、変わる)
(鎌が消えたからか。体当たりに切り替える分、その攻撃の手が一瞬分早くなる)
(鎌の一撃を受け流して倒す態勢からの変更は間に合わない)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年5月1日
ンな―――――
(銃は使えず、まじないを込めた道具もなく、拳も振るえず、反動も蓄えがない)
(もはや残された手は何もない――――)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年5月1日
(――――なんて、事はない)
(武器がないのなら拳を、爪を。それすらないのなら体のあらゆるものを使って――――)
(それが、母が教えてくれた数少ない教えの一つだ)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年5月1日
―――クソッ!!!
(自分が破壊したばかりの、えみりが使っていたガジェットの刃)
(その刀身に噛みついて――口に咥え、突っ込んでくる夜美に合わせて振るった)
藤永・えみり 2022年5月1日
(右手を砕かれた機械仕掛けの身体を持った少女は、電磁加速とけてもその勢いのまま瓦礫の上を転がり、瓦礫を背後にして止まりました)
(――結局、ミサゴ先輩への攻撃は右手を犠牲にしただけに――)
(しかし、攻撃前から、すべての痛覚信号をカットした完全義体の身は、ただ冷静に身体の状態を把握しつつ)
(無効票)
藤永・えみり 2022年5月1日
(――しただけでは、終わりには、しません!)
(あれで、仕留められれば良かったが……そうならない場合も考えて動いておりました)
(――これで、少しは油断してくれますでしょうか?)
(瓦礫を背にして、そんな思考をしている中。ミサゴ先輩に向かう小さな姿を完全義体の観測機が捉えて)
(――田中さんも、まだ行くようですね)
(無効票)
藤永・えみり 2022年5月1日
(息をひそめて、しかし、全身の観測機でもって、ミサゴさんと暴竜さんの激突を見つめながら、反応の鈍い左手、残ったもう片割れの銃剣型ガジェットを握った左手を、ゆっくりと動かして)
(――ここが、最後のチャンスです)
田中・夜美 2022年5月1日
(漆黒の暴竜は)(ちゃんと拳すら握れない少女だ)
(だから今)(素手できることはただ一つ)
. ・・
(蹴る)
(ただ)(それだけ)
(無効票)
田中・夜美 2022年5月1日
(自転車を)(飛ばすような)(脚力で)
(向かってきた)(刀身を)(顔面ごと)(蹴り上げた)
(無効票)
田中・夜美 2022年5月1日
(顔に当たれば)(顔が潰れ)
(刃に当たっても)(足を犠牲に)(刃ごと)(顔へと押し込む)(一撃)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年5月1日
(――教わっている刃の使い方は、日本刀のそれ)
(つまり、刀身を“押し当てる”技術ではない)
(蹴り脚が当たる直前、その足を切り裂くように)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年5月1日
.
(一閃)
.
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年5月1日
(交差の瞬間、夜美の蹴り脚を切り落とす)
(その代償は――――)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年5月1日
(「――――。自分の胴体をこんな形で見ることがあるとは思わなかったな」)
(なんて、ちぎり飛ばされた頭から自分の胴体が見えたところで)
(黒狐の身体は、光の残滓を残して強制退場した)
(無効票)
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年5月1日
.
(――――光の粒の中で、ゴールデンギガースが解き放たれる)
.
(離脱)
田中・夜美 2022年5月1日
(やった)(倒せた)(ゴールデンプチギガース)(出た)
(倒す!)(倒さなくちゃ!)
(無効票)
田中・夜美 2022年5月1日
(でも)(あれっ?)
(足が)(動かない)
(なんで?)
(、)
田中・夜美 2022年5月1日
(ふらふらと)(そのまま)(無理な姿勢の)(代償として)
(倒れた)
藤永・えみり 2022年5月1日
(暴竜さんがゴールデンギガースを狙おうとしたその瞬間――)
(――光り輝く銃弾の一閃が、ゴールデンギガースを貫きました)
(無効票)
藤永・えみり 2022年5月1日
(瓦礫を背後にしたまま、足を投げ出した姿勢でありながら、その精密な射撃を行った左手は、加熱して銃身が一部溶解したガジェットを手にしていました)
(電磁加速ガジェットの力をブレードに付加するのではなく、銃身と銃弾に付与することで放つ、リニア加速された銃弾は、それまでの銃弾の速度とは比べ物にならない速度のために、空気摩擦で白熱化して、光り輝く一閃となって、ゴールデンギガースを貫いたのでした)
(無効票)
藤永・えみり 2022年5月1日
(その光景を目にして)
(――漁夫の利狙いの、浅ましい勝ち方ですけど……勝ちは勝ちです)
(そんなことを思いながら、苦笑する様な笑顔のまま、試合終了のメッセージを聞いて)
(無効票)
藤永・えみり 2022年5月1日
……今度こそ、私たちの、勝ちです。
(自分に言い聞かせるように、そう呟いて、機械仕掛けの身体を持った少女は、転送されていくのでした)
(離脱)