第17試合:02分 28秒
神居・メト 2022年4月30日
試合開始から2分28秒が経過した第17試合。
ゴールデンプチギガースがスポーンするショッピングモール棟。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
―――――ショッピングモール内。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
ガラスを割って飛び込んだ1階のエントランスフロア。
飛び込んだ矢先に目についたのは、機銃の付いた小さなフライトドローン。
ここをプレイヤー不在にするのはどういう了見だと思ったが――3分間誰もここに足を踏み入れさせないつもりならば、確かにこれで十二分だ。
ゴールデンプチギガースのスポーンまで、残り20秒と少し。
これより先に見つけ――――
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
――そんな、僅かな思考の瞬間。
轟音が、ショッピングモールと大気を揺らした。
聞いた覚えのあるが、相手にすることはないだろうと思っていた音。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
「ンなことすんのは彩乃だな……ッ!」
どうせ狙いはつけていないだろうし、この攻撃に遮蔽なんて意味はほとんどない。
砲弾の雨霰の中を、身を低くするだけ。隠れもせずに走り抜ける。
姿を晒しているんだ。ドローンからの迎撃が来る。
ハンドガンを片手に、正面のドローンに照準して――――
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
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・・・・・・
――――迎撃が来ない。
代わりに、迎撃よりも先に柱の傍へとドローンが寄っていく。
機械が、設定された動作以外を出来るわけがない。
つまりこの“目の前の敵よりも柱に近づく”
これは、意図された動きだ。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
「――――オイオイ、マジかよ!!!」
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
ドローンの下部。ゴールデンプチギガース1体を倒すには不必要な“重荷”
距離を詰めて初めて気が付いたそれの正体――“自爆用の爆装”に、“まさか”と過った予感が、確信に変わった。
こいつらは、ゴールデンプチギガース1体相手にモールを1棟破壊しつくすつもりだ。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
気づいた瞬間、目の前のドローンをひとつ撃ち落として即座に走り出した。
残り10秒を切った。
見つけることは難しくない。彩乃がわざわざ風通しを良くしてくれた。
一番見通しがいい吹き抜けにポジションを取り、射線を通す。
――――勝負は一瞬。
起爆でゴールデンプチギガースが破壊されるよりも先に、それを撃ち抜く。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
「―――――――――」
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
――撃ち抜いて、どうする?
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
“ポイント不足”
モールに飛び込んでから漸く落ち着いて思考できるこの瞬間、置き去りにしていた問題が目の前に浮上した。
自分を含めた3人を綺麗に抑えられた結果、ゴールデンプチギガースを倒したところで他2チームを捲れるほどの点数を確保することが出来ていない。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
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試合開始から、3分が経過。
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――黒狐の思考を読んであざ笑いにでも来たのか、吹き抜けの中央に金色の標的が生成される。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
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撃てない。今撃てば、負ける。
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――信号を送られたドローンが、一斉に起爆する。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
ピッと一度だけ甲高い音をたてて。
ドローンについた“重荷”が急激に膨らみ、衝撃と炎を伴って柱を破壊する。
機関砲の掃射も受けて、限界寸前だった建物は一気に崩落を始めて――――
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
……駄目だ。
この崩落に巻き込まれ、ゴールデンプチギガースは破壊される。
生成された直後のギガースが、逃げることもかなわない。面攻撃。
完全な王手。巻き返す手段はない。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
標的に向けられた銃口が降りる。相手が自分たちより一枚上手だった。
この勝負は、彼女たちの勝利だ。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
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それでいいだろう?
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
なのに、なんで。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
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・・・・・
オレはまた走り出した。
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ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
走る。
「あああぁあぁああああぁぁぁああああああああ!!!!!!!」
手近な店に突っ込んで――
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
――走る。
「ねえだろッッッ!!!!!!!!!」
適当な布――たぶんスカートだったのだろう長い布をひっつかんで――
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
――――――走る。
「いいわけがッ!!!!!」
見える位置にいるドローンをハンドガンで撃ち抜き――
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
――――――走るッ!!
「ねぇだろ!!!!!!!!!」
吹き抜けへと、飛び込む。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
「っらあああぁあっぁぁぁああ!!!!!」
向かう先は、生成された直後のゴールデンプチギガース。
撃ち抜くのは不可能。だが、まだ手はある。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
――誰かがこれを“ゲーム”だと言っていた。
その通りだ。命を懸けた実戦ではない。負けたところで、失うものは何もない。
勝ったところで得られるものだって、ない。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
だけど、それでも。
――陸も、ラールも、このチームでの勝ちを最後まで諦めていない。
なのに、オレだけが降りれるはずがない。
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
……いや、正直なところ勝敗はどっちでも構わない。
ただ、
ミサゴ・ゾーリンゲン 2022年4月30日
「“このチーム”をまだ終わらせてたまるかよ―――――ッッ!!!!!」
金色へと、手を伸ばして―――――