第9試合:空が鳴いている
神居・メト 2022年4月18日
トライデント:シーズン1、第9試合。
決戦の地たるグラウンドからは離れた、正面広場の片隅。
死した筈の者が、そこに居る。
全てはこの試合を終わらせる為に。
仕掛けは上々、後は結果を御覧じろ。
見るがいい、戦士達よ。
空が、鳴いているぞ───
0
奉利・聖 2022年4月18日
それはまるで、空間から突然現れたようだった。
背の高い、タトゥーとピアスが目立つ男。
先の戦いで、落とされたと思われていた男。
「さ、て」
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
「なんとか、ここまで来れた」
グラウンドには、どれほど集まるか。
見立てでは、3人以上は固い。とはいえ時間をかけすぎれば、一恋・花束が合流して全てを破壊してしまうだろう。
急がなくてはならない。シエロが稼いだ時間を決して無駄にはできないのだ
「始めましょう」
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
──奉利・聖は、気功使いである。
強靭な肉体を振りかざし、前線を維持する戦士だ。
──奉利・聖は、バウンサーである。
環境を最大限利用し、何でも武器にできる器用な男だ。
──奉利・聖は、経験豊富なベテランである。
永い時にて培われた勘と叡智が武器の男だ。
そして。
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
──奉利・聖は、
ㅤ
ㅤ
、、、、
魔法使いである。
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
「久方ぶり、ですね」
龍骨にて、地面の砂をかき分けて線を描く。
線は意味ある形を成し──それは所謂、魔法陣と呼ばれるものだった。
その中心に、男は立つ。リソースを吐き出し、手持ちのマジック・アイテムをオールリリース。魔力の充填が終わり、指先に集い。
再び、陣を形成する線を指先でなぞる。
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
「廃れた理由が、よくわかる。面倒くさい」
これにて陣は、完全なものとなった。
この力ある場でしか、これからやる魔法は意味を為さない。
──魔力を練り上げる。濃縮して、さらにそれを濃縮して。
魔力の総量をできるだけ小さくして、濃度だけを極限まで高める。
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
魔力総量の決まった魔法において、唯一多量の魔力を消費できる手段。
言ってしまえば、バグを利用した裏技だ。
回路に魔力を流し、魔法式を思い浮かべて。
流れ込んで魔力が式を励起。解けるように展開され、維持を困難にさせた。これをずっと、完璧な形で保たなければ。
『───雨と雷』
魔力の籠った力ある言葉が、更なる励起を促す。
『偽りの教皇』
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
言葉を紡ぐごとに、式は複雑に、膨大になっていく。
集中力が切れれば、それでお終い。故にこうして、身を隠していた。
戦闘の最中でやれないこともないが、失敗すればリソースが無駄に削れるだけだ。
『アルフレド=ハーリの鉄槌』
魔力が、雷を帯び始めていた。
『言葉は裏返り、意味を失くす』
そしてそれが、槍のような形を為していく。
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
『目を逸らすな』
鋭く、ただ鋭く。万物を貫き穿てるように。
『先人の罪は、我らが償う』
雷火がそこに、届くように。
───式は、完全に成立した。
今こその、この一撃を
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
ㅤ
ㅤㅤㅤㅤ、、、
「───重ねる」
まだ、撃たない。
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
男の扱う魔法は、ヴィルラカル式と呼ばれていた。
かつての人生で過ごした世界においては、広く普及した魔法体系だ。
手順は、先ほどなぞった通り。魔力を回路に流し、式を思い浮かべ、力ある言葉で励起し、最後まで維持し続けること。
そう、つまりは。
足元に描いた魔法陣なんぞ、必要無い。
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
では何故、わざわざそんな手順を追加したか。
それが
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
ヴィルラカル式魔法の、
ㅤ
ㅤ
、、、、、、、、
源流にあった手順だからだ。
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
ヴィルラカル式が普及する前、魔法として扱われていたのがこれだった。
面倒な手順。
長すぎる詠唱。
そして、過度な大威力。
時代が進むにつれて、人々は簡略化と便利さを求め始めた。
それゆえ、手順を出来るだけ省略し、詠唱を短くし、必要なだけの効力が取り出せることを望むようになり──時代に即した、より扱いやすい魔法体系が確立されたのだ。
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
そして古き体系は廃れ…源流を扱う者もまた、殆どいなくなった。
己だって、滅多なことでは使わない。時間がかかり過ぎて迷惑をかけるだけなのだから。
だが、今この場において。
限られたリソースで、最大限の効力を絞り出すには。
面倒な手順と時間を、代償にするしかない。
これ以外に、方法は存在しない。
だから望んだ。
後は任せたと。耐えろと。
代わりに全てを終わらせる、一撃を齎すと!
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
『いにしえの眠り』
最早、魔法式は異次元のような膨大さと複雑さだ。
『宵闇の執行者』
脳が熱を帯びて、目から血すら流れ始める。
耐えろ、耐えて──応えるのだ!
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
『三世を断つ、ジーズライン…!』
あぁ、苦痛が無くてよかった。
きっと今、頭痛がとんでもないことになっていただろう。
『微かな抗い』
あと、少しだ。
『消えゆく希望』
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
『我らに再び、無窮の稀人を』
槍のような形状の雷は、さらに形を変えて。
『目醒めよ 目醒めよ』
まるで、人のような形状に近づき始めていた。
『其に名は無く』
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
ガギン!!龍骨を杖の様に、突き立てた。
ただ、倒れぬように。
『何人も顧みぬ』
力の、莫大な奔流が迸った。もうここまで来れば、隠し通すのは不可能。雷が荒れ狂い、渦を巻くかのように!人型のそれを覆った!
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
『目醒めよ 目醒めよ』
さぁ、あと一句で結実するぞ──決着の時が!!
日日日・らんか 2022年4月18日
ドローンが異常を察知した。異常なまでの熱量を感知したのだ。
その場所は——広場!
(無効票)
日日日・らんか 2022年4月18日
「——見つけた!!!ししょぉぉおおぉ!!!!!」
空から、青い光が空襲した
奉利・聖 2022年4月18日
───あと少しだというのに。
いやしかし、仕方ない。元より彼女には無理を言った。
「こちらに向かっている」という通信を聴いた時、責める気にもなれなかったものだ。
「やれやれ……」
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
ガッッッッギィイイイイン!!
僅かなリソースを振り絞り、龍骨で迎え撃った。
「よくぞ間に合ったものです。まぁ…もうあと一歩ですけど」
「これが成立すれば、僕達が勝つ。止める方法は一つだけ」
(無効票)
奉利・聖 2022年4月18日
「術者を仕留めることだけ」
つまりは、この状況で耐え抜き、式を建て直し、最後の詠唱を完遂するか。それをさせずに、彼女が己を仕留めるか。
どちらかだ。
日日日・らんか 2022年4月19日
竜骨に脚を止められた。静かにやるべきだった。しかし、つい叫んでしまった。
竜骨を蹴りつけ、宙で身を翻して着地する
「ええ。決着をつけましょう、師匠。」
——地を蹴り、一気に間合いを詰め、肘打ちからの裏拳、そしてさらに左内回し蹴り!
(無効票)
日日日・らんか 2022年4月19日
——術者を仕留めるとか、勝ち負けとか、正直、そんなことはもうどうでも良かった。
ただひとつ、たったひとつ。彼に勝ちたい。
彼と決着をつけたい、そのために——!
奉利・聖 2022年4月19日
魔法の発動に大部分のリソースを使っている以上、
反撃に転じるのは不可能だ。防御し、いなして、何とか最後の一句を。
「くっ……」
片手で龍骨を回して肘打ちと裏拳をいなし、回り蹴りを片手で弾いて。
防御は出来ている。だが衝撃のせいで式のイメージがぶれてしまう。
(無効票)
奉利・聖 2022年4月19日
『あと…あと、少しです…』
(仔細は時間が無い故に伝えられない。だがもう少し、もう少しだけ耐えてくれれば撃てることはレイには伝えなくては)
日日日・らんか 2022年4月19日
「打ち返さないんですか?それをやってるから!」
さらにジェットを吹かしてサマーソルトキックを繰り出す!
奉利・聖 2022年4月19日
「…………」
口をを開くリソースすら惜しい。
背を逸らすが、鼻先に掠る。式を、安定させなくては……!今はただ、それしか。
『偉大、なる……………』
日日日・らんか 2022年4月19日
これでも、これでもこっちを向かないの……っ!
「師匠がそんななら、あたしが勝ちますよ!?」
エンジンを再点火、突進して羽で殴りつけつつ、回転を加えることで羽を振りまわし、さらに蹴りを加えて連撃を与え、詠唱を止める——!
奉利・聖 2022年4月19日
「ぐっ……!!??」
ダメだ、紡ぎ切れない。陣の中からは出ないように、踏ん張ったが。
体力の限界が…すぐそこだ。
「僕、は…チームを…勝たせ……」
ふらつく脚を叱咤して、杖の様に龍骨を立てる。何をされたとて、動くものか。元より死せる者、耐え抜くことなど…慣れているのだ。
「個人、の…勝利など…くれて、あげます」
日日日・らんか 2022年4月19日
息を吸い
そして
心を吐き出した
「……なら、遠慮なく。」
残りのリソース、そのほとんどで練った『気』、硬気功を拳へと纏わせ、そして——
「はぁっ!!!」
——衝気功。今まで1度たりとも使ったことのなかった、使えなかった第4の気功。その力が炸裂した。
奉利・聖 2022年4月19日
──ダンプが衝突したような衝撃が、身体を貫いた。
くずおれそうな身体を、意志の力だけが繋ぎとめる。
満身創痍、もはや式の維持は───
(無効票)
奉利・聖 2022年4月19日
彼女からの通信。座標。合図。
問題は…彼女の離脱が、恐らく不可能であると察したこと。
切羽詰まったそれは、きっと。
構わずやれ、ということか。
(無効票)
奉利・聖 2022年4月19日
シエロは一恋・花束を相手に、役目を果たした。
レイもまた、言われた通りに時間を稼いでみせた。
己だけ何も出来ないのは、ありえない。
そう、思った瞬間。
頭の中が、クリアになった。
『偉大なる献身を、此処に』
驚くほど、明朗な一句を以て
全ては、結実するだろう。
(無効票)
奉利・聖 2022年4月19日
人の形をした雷は、万雷の力を帯びて。
グラウンドへ、飛び立っていった。
(無効票)
奉利・聖 2022年4月19日
「…お見事、でした。ですが……僕達の、勝ちだ」
日日日・らんか 2022年4月19日
人の形をした雷が飛び立つ瞬間を見送った。
その雷電はグラウンド一帯をゴールデンギガース諸共跡形もなく吹き飛ばした。
「はぁ……ふぅ。」
最後まで立ち上がっていたのは自分だ。しかし、これではどうあっても勝ちとは言えないだろう。
それに、何よりも、これだけやっても全然スッキリとはしなかった。つまり、完全に負けた——
日日日・らんか 2022年4月19日
「あ”ーっ……負けた……っ!!!」
「最後まで立ってたのはあたしなのに、倒したのはあたしなのに……っ!」
そうして見上げる空は、泣きそうな程に青かった
奉利・聖 2022年4月19日
..
(離脱)
日日日・らんか 2022年4月19日
そして、世界の消失と共に、電子の塵へと却って行った。あとには静寂が残るのみだった——
(離脱)