第4試合:自分の流儀
最上・優人 2022年4月4日
――トライデント戦において狙撃手であるミサゴが怖いのは当然のことだが、北方向は一貴が向かった。
本来であれば、亜唯は狙撃を警戒しながら迅速に南東地点へ向かい
未樹と合流して、戦場における数的拮抗を狙いにいくべきだった。
狙撃手のいる北と、乱戦が想定される南東を結ぶ線上に、〝彼〟がいなければ。
0
新堂・亜唯 2022年4月4日
「間違いじゃなかった。悪いな、未樹」
(ならば、大技で短期に決めようというのは虫が良いか)
(拳で当たりのギガースを叩きながら……)
新堂・亜唯 2022年4月4日
「メインディッシュはこっちだったかもしれないぜ!!」
(風を切って、小柄な体が駆けた。以前よりもはるかに無駄なく、そして力強い動き)
(足音も立てぬその所作で、まるで舞うように腕を振るって)
新堂・亜唯 2022年4月4日
(この戦いはあくまで最上さんを倒せば勝ちってものじゃない)
(ポイントを稼ぐチーム戦だ。なら……至近距離で格闘戦の練度を押し付けながら戦えば)
「必然、あなたを御しながらターゲットを狩れる!」
(ただ攻めるだけではない)
(打撃の機動に的確に、周辺に浮いたギガースを巻き込みながら、彼が守り、捌く動きをして対応に追われるように格闘していく)
最上・優人 2022年4月4日
弾く
捌く
弾く
弾く
弾く弾く捌く捌く捌く捌く弾く弾く弾く弾く―――
最上・優人 2022年4月4日
亜唯の繰り出す拳や蹴りを出来る限りギガース達へ当てぬよう誘導しているが、全ては捌ききれず点差は開いて行く
このままでは――――
最上・優人 2022年4月4日
「―――やるか」
躊躇いは一瞬、瞳に力が籠る
最上・優人 2022年4月4日
「ハァァァアアアア!!!!!!」
腰を落とし、姿勢を低くした瞬間
それまでの動きと全く異なる異質な拳が地面へと振り下ろされ――
最上・優人 2022年4月4日
――亜唯の立つ大岩が爆発するように砕けた
最上・優人 2022年4月4日
「……チッ」
破壊に巻き込まれるギガースの数を横目に見るも、その結果に対する不満が言葉の端からにじみ出ている
新堂・亜唯 2022年4月4日
(足場にしていた岩が、まるでビスケットのように砕け散った)
「――んなっ」
(本日、二度目の驚愕)
(なんだ、今の威力は――あれは、螺月流の〝剛法〟の打撃!?)
(いや、しかし、彼の螺月流の練度であれほどの威力を出せるとは)
(クソっ、今のでだいぶ数持っていかれたぞ!? ここにきて攻め手も強いのかよ!!)
新堂・亜唯 2022年4月4日
「ならばこちらも――!!」
(ひらりと着地し、地面をしっかりと踏みしめ、拳を固める)
(荒々しくはならない。あくまで静かに、瀟洒に、力を余さず御し、伝えきる)
新堂・亜唯 2022年4月4日
「螺月流――――徹真!!! 」
(螺月流の、本当の〝剛〟の拳)
最上・優人 2022年4月4日
再び迫る脅威に対し、最上は静かに口を開く
最上・優人 2022年4月4日
”””””””””
「山本神刀無敵流―――
―― [>劣化絶技」
新堂・亜唯 2022年4月4日
「ら…………
螺月流じゃない!!?」
(いや、まて、この技は――)
新堂・亜唯 2022年4月4日
「――――山本神刀無敵流!!?」
最上・優人 2022年4月4日
「一心破摧!!!
プレヤデェェェェス・インパクトォォォォォ!!!!!!!」
拳同士がぶつかり合った瞬間、周囲の岩肌が先程とは比べ物にならない範囲で砕け散るが――
お互いの拳は、亜唯のグローブが消し飛んだ以外全くの無傷だった
新堂・亜唯 2022年4月4日
「プレヤデス・インパクトぉおおおおおおおおおお!!?」
新堂・亜唯 2022年4月4日
(拳のグローブを形作っていたのは、自前の遺産、〝白紙の記録〟)
(自身の気功を十全に打撃に乗せるためのその武装が、まるで紙屑のようにはじけ飛ぶ)
「――くっ」
(なんだ? 拳同士のぶつかり合いではこちらに強い衝撃は来なかった)
(あれは対物体用の技だということか!?)
(どちらにせよ、どちらにせよだ。螺月流だけで来ると思い込んでいた自分が浅はか!! そして――あの破壊範囲!! 単なる殴り合いではなくギガースの取り合いである以上、脅威には変わりない!!)
最上・優人 2022年4月4日
「やっぱ、技名叫ばないとしっくり来ないっすね!」
新堂・亜唯 2022年4月4日
(他の戦場の音が聞こえてくる)
(一貴は!? 未樹はどうなっている!? 戦況全体に気を配る余裕は、今はない)
(いや、余所見をしている暇など1秒たりともないだろう)
新堂・亜唯 2022年4月4日
(改めて思う。〝術〟とは手段でしかない。振う時、必ずそこには武術の結果よりも先に、振うものの信念と目的がある)
(目の前の相手は――修めた術の一切を、おそらくは本人がそう意識していないにもかかわらず、その信念と目的のためにチューニングできるんだ)
新堂・亜唯 2022年4月4日
(だが――この試合、背負った信念は一人分ではないはずだ)
(遠くで、火の手と風雪のぶつかり合いが、きらめいた気がした)
「悪ぃですけど――」
(試合時間は限りある。今、自分がこの強敵と向き合いながら、チーム全体の勝利のためにできること)
(それは)
新堂・亜唯 2022年4月4日
「俺が一人、負けて良い戦いじゃないんで!! 使わせてもらいます!!」
(両手を広げ、螺旋を描くように回し、構える)
(トライデント環境の制約においては、ゲーム終盤にしか使えないとっておき)
(冬樹と戦った時に散々見た――魔力弾による包囲陣形を模した――!)
新堂・亜唯 2022年4月4日
(出会った人の力が息づいているのは、最上さんだけじゃない!!)
「螺月流応用――――〝天式勁砲〟!!」
(周辺の破壊されたプチギガース、そのデータの残留)
(今までの戦いで生まれた衝撃、余波、そのものへ気功を伝達させリソースと替える――)
(この環境で発動できる手札の中での、とっておきにして最大範囲攻撃)
新堂・亜唯 2022年4月4日
(無論、その性質上、ある程度戦場に他者の攻撃の余波が満ちねば、発動条件そのものが整わない。だが、彼の放ったプレヤデスインパクトの直後なら――)
(周辺に散った塵や煙、先ほどまでぶつかり合っていた地点に発生し、揺らいだデータの残滓を、全て〝気弾〟へと変換し)
「俺達が――勝つ!!!」
(可能な限り多くのギガースを巻き込みながら、気弾の嵐が襲い掛かる)
最上・優人 2022年4月4日
三度迫る脅威に対し――最上は深く目を閉じた
最上・優人 2022年4月4日
それは嵐という災害に対する諦めでも抵抗でもなく――
最上・優人 2022年4月4日
「コォォォォォオオオオオオ………………」
心から全ての蟠りを吐き出すが如く息を吐き――
身に纏う闘気の色は、瑠璃色から更に濃く深く――黒鉄のように鈍い輝きを放っていた
新堂・亜唯 2022年4月4日
(おそらくは、今日一番、我が目を疑っただろう)
新堂・亜唯 2022年4月4日
「――あれは……!!」
(その目で、確かに見た)
(おそらく、正しい形ではない。けれど、けれどあれは、あの技は)
(まぎれもなく――)
最上・優人 2022年4月4日
最上優人のパラドクス――それは
身の丈に合わぬ技術を、合わぬまま習得する その名の通りのパラドックス
最上・優人 2022年4月4日
””””””””””
「螺月流奥義―――
――閃空」
最上・優人 2022年4月4日
全ての色を混ざたような黒い気を纏うその両腕が
円を描くように目の前の嵐を己に循環させ――
最上・優人 2022年4月4日
「 ≪属性支配:放棄≫ ≪劣化絶技:解放≫ ≪山本神刀:解放≫ 」
最上・優人 2022年4月4日
受け止めた力に――ありったけを籠めて―――拳を突き返した
新堂・亜唯 2022年4月4日
「は、
新堂・亜唯 2022年4月4日
――はは
新堂・亜唯 2022年4月4日
ははは――!!」
(驚くことはない。考えてみれば彼にうってつけの技じゃないか)
新堂・亜唯 2022年4月4日
(だが、だが、それを繰り出されたら――螺月流を使う自分に、まぎれもなく、さらに上位の螺月流の技を乗せて)
(あの打撃へと籠める力に昇華されたなら)
新堂・亜唯 2022年4月4日
(この、データで再現された世界であっても、対抗できる手段は)
新堂・亜唯 2022年4月4日
(どう考えたって、ひとつじゃないか)
新堂・亜唯 2022年4月4日
「悪い、一貴、未樹。今この瞬間、チーム戦を忘れる」
新堂・亜唯 2022年4月4日
(恵まれていると理解しろ)
新堂・亜唯 2022年4月4日
(お手本ならば、目の前にある――)
新堂・亜唯 2022年4月4日
(今っ!)
「螺月流――――」
(ここでっ!!)
新堂・亜唯 2022年4月4日
「――――〝奥義〟!!!!」
新堂・亜唯 2022年4月4日
(二つの拳が、轟音を立ててぶつかり合い)
新堂・亜唯 2022年4月4日
(周囲の岩肌ごと、周りに浮かぶプチギガースたちが爆ぜて行った)
最上・優人 2022年4月4日
_________〆