【終末ラジオ】おわりに。
十埼・竜 2022年2月28日
灯台の外装は波に嵐に耐えるよう、頑丈に出来ている。
しかし、放送機材はそうでもないし
病弱な14歳の肉体は、そもそもが脆弱だ。
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十埼・竜 2022年2月28日
(放送室の中は、もう、何をつついてもぼろぼろと崩れるくらいに脆化している。砂の山か、その予備軍でしかない。)
(なんとか再び耳をノイズイーターに押し込んだぼくも、例外ではなく。)
十埼・竜 2022年2月28日
(自分の体をあんまり直視したくないから、砂と血で汚れた床を凝視して)
(ノイズイーターの中から、『自分がそこそこ健康だったときの音』を差探し出す。……クソ、痛みと疲労で、うまく頭がまわんない)
十埼・竜 2022年2月28日
(灯台の外から声がして)
(ぴこん)
(ノイズイーターが、ぼくに向かって送信されたデータを拾う)
(……しかられ、そう、だなあ)
(勿論10秒以内になんて、返事ができるはずがなかった。)
赤薙・夜明 2022年2月28日
(静かに扉が開く音――しゅるしゅると、人の歩く音にしては奇妙な音が灯台を登って来て――)
(ゆっくりと扉が開く。初めに、ソレが彼の頭について居る事を確認して)
迎えに、来ましたよ。―――――――放送お疲れ様です。
十埼・竜 2022年2月28日
(蛇の足音、なんてそうそう聴くことないんだけど、そんなイメージ)
(きみが見たのは、まるでハリケーンでも通り過ぎたみたいに荒れ果てた、砂だらけの室内と)
(全身擦り傷だらけで白い髪もべったり血まみれ、頭に被った異形のヘッドホンだけが汚れも傷もひとつもない、少年。)
よあけちゃん。
……ありがと、ね。わざわざ。
エンデ・トロイメライ 2022年2月28日
うわぁ……すごいことになってる……
(下手に歩けば崩れるかもと、重力操作でふわりと浮いて入ってきて)
リュウ……大丈夫、な訳ないよね。歩ける?
十埼・竜 2022年2月28日
(すごいことになってる)
(ひどく寂しそうな視線を、部屋にめぐらせて)……ほんとに、ね。
まって、ね。今ちょっと、いい感じのとこ、再生、するから……
赤薙・夜明 2022年2月28日
大事な家族ですからね。家族は愛してますからね。
……立てますか? 立てないようなら。
(両腕に黒いロンググローヴのようなものでおおわれる)
私が横抱きで運びます。
(そう言って彼の傍に寄り、抱き起そうとする)
十埼・竜 2022年2月28日
(ノイズイーターの記録を、探る)
(何もかも残っているわけじゃない。大事なもの。利用できるもの。なんか気に入ったもの、)
……ぼく、って……うぁ゛(黒い腕で抱き起されて、痛そうに顔を顰めた)
十埼・竜 2022年2月28日
(||:やっと、ちょっと前の調子よかった頃の自分、その音を思い出して:||)
(||:リピート再生する:||)
(その音は体の中のものだから、聴こえないだろうけれど)
(音の波が塗り替えていくように、ぼろぼろの体が戻っていく。傷も痛みも、まだ起きていないみたいに。)
十埼・竜 2022年2月28日
……ありがと。大丈夫、歩いて帰れるくらいの間は、これでもつよ。
ところで、ウチの寮って……こういう怪我って、いい感じに治せるひと、いたっけ……?
赤薙・夜明 2022年2月28日
(痛みに呻く声を聴き手を止めて)
(じっと、「何か」とはハッキリ言えない。彼の中で起きている変化を見守り。それが終わるのを待つ)
エンデ・トロイメライ 2022年2月28日
(治ってく……)
(その様子を内心驚きながら、じっと見守り)
エンデ・トロイメライ 2022年2月28日
……あっ、ええと……どうだろ。アタシは無理だけど……ヨアケ、治せる?
赤薙・夜明 2022年2月28日
どういう怪我かにもよりますけど。
超常的な物でない「怪我」であれば私が「直せ」ます。
「すぐ直るから」という理由で普段使わないのですが。
「直し」ますか?
十埼・竜 2022年2月28日
あ、ほんとに? 助かった……再生やめたらもとにもどっちゃうからさ、これ。
(やってることは、音による現状の上書き。…………種明かしすれば、これだって「そう」なんだろう。)
(やっぱり、あいつ、きらいだな)
怪我は……ただの怪我だよ。超音波破砕機で全身揉まれた、みたいなやつだしね。
(と、放送室の大惨事に、また視線をめぐらせて。)
……お願いします。よあけちゃんの負担じゃない範囲で。
赤薙・夜明 2022年2月28日
(黒いロンググローヴがうっすらと光る。光るけれどもその光の波長は何故か読み取る事ができないでしょう。観測できません。とても「静か」でした。すると身体の損傷、欠損、汚れ傷ついた衣装までが魔法のように元の形を取り戻して行きます)
(傷が塞がっても。一瞬だけ何か違和感がありますが、一瞬だけでそれも無くなります)
傷は治しても栄養が復活するわけじゃありませんからね。
終雪さんがお夜食を作って待ってます。
いい仕事をした帰りには一杯やるとしましょうか。
エンデさんもお付き合いください。
エンデ・トロイメライ 2022年2月28日
へえー、治せるんだ。よかったね、リュウ!
でもあんまり無理しない方がいいよ?流石に疲れてるだろうし。
キミがよければおぶって帰ろうか?抱っこでもいいよ!
エンデ・トロイメライ 2022年2月28日
一杯って晩酌みたいだねぇ。まっ、お酒はダメだけど。
いいよー!せっかくシュウセツが準備してくれてるんだしね!
十埼・竜 2022年2月28日
(再生、停止――――またも痛みと吐き気と疲労がぶり返す)
(話し声も新宿島のノイズもいつも通り聴こえるのに、目の前で光るその黒い腕の挙動が、うまく聴き取れない)
(ただ、痛みは魔法のように失せていった)
(吐き気も、軽く)
(怠い疲労感だけが重く蟠る)
十埼・竜 2022年2月28日
……まほう、みたい、だなあ……確かにすぐなおっちゃった、し、(肺を膨らませるのも億劫で、細い息が途切れ途切れに)
らくちんすぎて……うん、あんまりアテにすると、よくなさそう……
(痛みのない両手で、顔を覆った)
十埼・竜 2022年2月28日
……………………ああ。
(やっと、泣きそうな声で、呻く)
うん。かえろう。
……つれてって、くれるんですか。エンデさん。
赤薙・夜明 2022年2月28日
魔法じゃない物理現象なので。代償も無いのですよね。
そう、だからこそ、それが困るからあまり使わないんですが。
…………。
(顔を覆う彼から。改めて砂だらけになった「スタジオ」を見回す。
本当なら所せましと機材が並び。幾つもの思い出があったであろう場所を)
赤薙・夜明 2022年2月28日
こっちは……もっと、時間掛かると思いますけど。
でも、「治して」いきましょう。
私も、みんなも手伝いますよ。
Radio-DINOのリスナーじゃないですか。
十埼・竜 2022年2月28日
(父さんは、これを、ゆるしてくれるだろうか)
(ゆるしてくれるんだと思う)
(いっそ「これで新しいのが入れられるなぁ」なんて、呑気に言ってくれるんだろう。「Radio-DINOはもっと強くなるぞ! 首長竜だからね!」)
十埼・竜 2022年2月28日
(ここは――――「もう誰も死なさないための放送局」だから)
エンデ・トロイメライ 2022年2月28日
うん、アタシ癒しパワーとかそういうの全然だからさ、その分運んだりするのは任せてよ!
(辺りを見回す。公開収録の時に見たような機材、だったものがあちこちに見えて)
そうだねぇ……きっと、治せるよね。
また明日もリュウの放送聴きたいし!
十埼・竜 2022年2月28日
…………ぼく、って。
あいつを、まだ。
無視してることに、なるんでしょうか。
(“雑音”の声を聴いてしまった。成り代わりたいと願うほどの怒りを知ってしまった。
それを、“ノイズイーター”で防いでる、ぼくは。)
(死んでいく言葉に背を向けているんじゃないのか、なんて)
(こんなこと、考えるのは、疲れてるからなんだろう、けど)
赤薙・夜明 2022年2月28日
耳で聞かなくても。心で向き合って居れば無視にはなりませんよ。
もう少し身体が丈夫になったら聴いてもいい。
で、ここは手を打ちませんか?
(また向き合ってこうなられては困る。という寮長兼白のクラスのご意見です)
十埼・竜 2022年2月28日
(痛まない肺で深呼吸したら、すごく埃っぽかった)
……そうだね。
なおそう。
…………そうでな、きゃ、
十埼・竜 2022年2月28日
(――――背負った言葉を譲らないか、なんて、あいつにでかい口叩いた手前、)
(すごく恥ずかしいじゃないか。)
(体から、ぐったりと力が抜けた。)
(寮に辿り付く頃に、目を覚ますんだろう。)
エンデ・トロイメライ 2022年2月28日
おっ、っと……もう、今そんな難しいこと今考えなくてもいいのに……
(体を支えて、背中に背負って)
ほんと、リュウも真面目なんだから。
赤薙・夜明 2022年2月28日
(彼が意識を失うと、ふっと険しい表情を緩め)
私達でフォローできる限りは好きにやらせてあげましょう。
こういう、どうもならない案件も時々ある事ですから。
杭が残らないように。
赤薙・夜明 2022年2月28日
なんて、偉そうな事を言いつつ。
毎度毎度、エンデさんには頭が上がりませんね。
どうもありがとうございます。
エンデ・トロイメライ 2022年2月28日
まあね、本人の意思が第一だし。
リュウもそこまで無茶しないと思うしね。
中途半端にモヤモヤするのも精神的な健康に良くないしねぇ。
エンデ・トロイメライ 2022年2月28日
……ん?アタシ何かしたっけ?
まあ、よくわからないけど、どういたしまして?
赤薙・夜明 2022年2月28日
何時も、家に貴女が居る事が心強いと思って居ますよ。
さて、十埼さんをお家にかえしますか。
疲れたら私が代わりますね。
(そういって。コツコツと灯台を下りていくのでした)
エンデ・トロイメライ 2022年2月28日
そうなんだ……(いまいちピンときてない顔で)
だねぇ、早く寝かせてあげないと。
(あまり揺らさないようにしつつも早足で、ヨアケの後ろをついていった)