私立MM学園

【イ】エムライブ『Origin』

二瀬・詩織 2022年1月30日
2022年1月30日


「えっ、マリアちゃんが……?」

ステージの急遽中止。そのトラブルが耳に届いたのは、まさに本番の直前の控室。
プレッシャーか、他の理由があるのか……それは分からないけれど。


(何があったの?)


(動揺しちゃ駄目)




(私まで失敗したらどうしよう?)




ぱちん!
両頬を叩いて弱気を振り払う。

「人の事を心配してる余裕なんてない……よね。」

私が彼女の分まで、とか。
私がエムライブを成功させなきゃ、とか。
そんな事を考えてる暇があったら集中なさい、詩織。

私が読書に夢中になるみたいに。
今日は私が皆を夢中にさせるんだ。


「……って、メイク崩れてないかな!?」

慌てて鏡台で確認してみるけれど、大丈夫そう。
スタッフさんが丁寧に施してくれた化粧は、これくらいじゃなんともない。

いつもこれくらい綺麗ならいいんだけどな。
にへら、と鏡に向かって微笑めば。

「うん……行こっか」

もう大丈夫。
立ち上がり、ステージに続く扉を開けます。




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二瀬・詩織 2022年1月30日
(屹とした表情を観客席に向ければ、大きく口を開き。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
この身体が変わってしまっても
この声を喪ってしまっても

あの日出会った眩しい笑顔が
私の心に光をくれたの
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(自分を中心に、頼りなかった照明が大きく広がってゆく。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(世界が色づくように、周囲に咲くポインセチアが輝く。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(張り詰めた顔はいつの間にか、咲き掛けの蕾の様に綻び)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(サイリウムぶんぶんに気付いて、軽くウインクします。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(すでにその曲調と歌声は、明るく伸び伸びとしたそれに変わっていて。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
いつか話した景色を見に行こう

ふたりで眺めた頁(ページ)は今も心の中に
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二瀬・詩織 2022年1月30日
それが私のOrigin
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(絞り出すような声と旋律は余韻を残し――)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(――再びぽろん、ぽろんと物淋しいピアノの音色に繋がる。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(緊張も幾分解れてきたのか。みんなに目線を向けながら、両手で小さくハートマークを作ったりなんかします。)


(そして先程とは違い、優しく語り掛けるように歌い始めます。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
「今じゃなくてもいいんだよ」
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二瀬・詩織 2022年1月30日
あの日あなたは言ったね 自分の速さで進もう 今でも覚えてる その優しい音色

ねえ私達きっと 長い物語紡いでる途中だから
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二瀬・詩織 2022年1月30日
私が倒れそうになった時 あなたは手を取ってくれた

あなたが不安に襲われたなら 今度は私が元気をあげる
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(刻逆で喪ったもの。負った傷。すべてが癒えたとは言えないけれど)

(この学園に来てからの出会いや記憶が、どれだけ救いになったかな)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(伝わるといいな)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(――ありがとう!)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(そして再び訪れるサビを、高らかに歌い上げる。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
この祈りが汚されたとしても
この想いが傷ついたとしても

私を守るって言ってくれた
あなたの幸せを願っているよ
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(貰うばかりじゃなくて、返したい。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(私の言葉で)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(私の気持ちを!)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
いつか話した景色を見に行こう

心に思い出という名前の栞はさんで
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二瀬・詩織 2022年1月30日
それが私のOrigin
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(観客に向ける顔は汗まみれで。)

(そして、とても楽しそうな笑顔。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(先程とは違い、2番が終わっても明るい曲調のまま、しばらくピアノソロが続く。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(お客さん達の様子に、うんと頷いて。みんなが振ってくれているサイリウムに合わせて自分も大きく手を振ります。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(やがてピアノの音色が落ち着いてきた頃、両手を差し伸べるように前に大きく出して。)

(ゆっくりと大きく左右に開きながら。また歌い出す。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
空の青さも

息の白さも

手のぬくもりも
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二瀬・詩織 2022年1月30日
空っぽの私にあなたがくれたMemory
空っぽの私があなたに贈るMelody
真っ白の頁に私達が綴るStory
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二瀬・詩織 2022年1月30日
さあ 行こう
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(心を大事に包むように、開いた両手をそっと胸元に重ねて。)

(高らかに歌い上げる。)

(そしてピアノは、三度ぽろん、ぽろんと物淋しい音色に変わり。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
「何もなくなってしまった」

弱い私が言う
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二瀬・詩織 2022年1月30日
「残ったものは あるよ」

私が答える
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二瀬・詩織 2022年1月30日
それが私の

Origin……
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(最後の言葉と共に、ピアノの音も止む。)

(照明がゆっくりと暗くなってゆき、曲の終わりを伝える。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(照明がライブが始まる前ほどの光量に落ち着くのを、マイクの前で荒く息を吐きながらぼんやり眺めている。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(やがて呼吸も落ち着き、はっと我に返ったようです。)

えっと……以上、二瀬・詩織の『Origin』でした。
聴いてくれてありがとーっ

(あなた達に向かって、改めて大きく手を振ります。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(拍手や手の振り、そして……たくさんの、本当にたくさんの反応に、思わず涙ぐんでしまいます。)


えへへ……ありがとぉーっ!
(ステージ脇に進むと、ポインセチアの花を両手いっぱいに抱えて、勢いよく観客席に向けて放り投げます。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(大輪の赤い花が宙に舞い、あなた達に降り注ぎます。よく見れば、赤色以外の花も見えるような……?)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
赤いポインセチアの花言葉は『私の心は燃えている』。そして『希望』。

青い薔薇の花言葉は『夢叶う』。
もともと自然界には無い色で、『不可能』っていう花言葉だったんだけれど、人工的に作り出す事に成功して、その時からこの花言葉になったんだって。

キャッチできたラッキーさんはいるかな?
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二瀬・詩織 2022年1月30日
あっ、ラッキーさん、いるみたいだね。
おめでとう(サングラスをかけた男の子が花を掲げたのを見て、ぱちぱちと拍手します。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
ふふ、キャッチできた人もそうじゃない人も、あなたの夢が叶う事を祈って……
(と、いいかけて。うーん、と首をかしげます。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
そうじゃないな。

一緒に夢を叶えて行こうーっ

(おーっ、と手を高くつき上げます。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
あ、ラッキーさんがまたいたね。
貴女の夢も叶いますように……(銀髪の可愛い女の子にも拍手を送ります。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
……えっと、名残惜しいけれど、私のステージはそろそろ終わりです。
やだ、ちょっと嬉しすぎて涙が出てきちゃった……
(そう言って、困ったように笑顔のまま涙を指先で拭います。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
みんな、楽しんでくれたかな?
それなら私はとっても嬉しいです。

さ、エムライブはまだまだ続きます。みんなもっともっと盛り上がっていってねっ
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(最後に両手を口元に寄せ、)


(ちゅ……)


(投げキッスをして、手を振りながら舞台袖に歩き去ってゆきます。)
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二瀬・詩織 2022年1月30日
(Fin.)
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