【個別】For our ears only.
十埼・竜 2021年12月5日
────まあ、耳ないんでしょうけど。
#グスタフ・カツラギ
#十埼・竜
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十埼・竜 2021年12月5日
(幾億の蝉を捻じ込まれたような轟音が耳の奥を食い破る)
(跳ね回る暴れ回る音による眩暈、平衡感覚の喪失)
(形が音と崩れ、音が形になって肌を這う不快感)
(共振は侵食、波に震えたところからボロボロと形を崩してゆく)
(視界をぎらぎら蝕む原色の砂嵐、ゴーストノイズ)
(無効票)
十埼・竜 2021年12月5日
(この空間に押し付けられた世界法則は即ち――――【すべてはノイズで出来ている】)
(【音もひかりもいろもかたちも】)
(【こころですら】)
(“ワールドハッカー”ででもあるかのように傲慢に)(しかし、そうではないから)
(この世界は全く、「自分に都合よく」はなく)
(ぼくと、彼を、等しく蝕んでいく)
(無効票)
十埼・竜 2021年12月5日
(今やただの耳当てと化したノイズイーターを、まだ頭に戴いたまま。苦し気な吐息と共に、ゆっくりと口を開く)
――――聴こえてますか。まだ。ぼくの声。
(ただのささやきが暴れまわる轟音の嵐を劈き、耳障りな波と化して吹き荒れる)(憤った赤、重苦しい青、誘うようなむらさきに、妬ましい緑が入り混じる、ノイズを纏って。)
グスタフ・カツラギ 2021年12月5日
(くらり、と、した。)
(視界はエラーを訴えていない。)
(だが、平衡感覚が消えて真横にぶっ倒れた。)
(足裏の感覚では立っているはずなのに、ディスプレイの内部表示だけが訴える。)
――ふむ?
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月5日
(立ち上がろうとして、虚空を握った。)
(足を踏み出そうとして、地面を擦った。)
(前に伸ばしたはずの腕が、ただ震えている。)
(ディスプレイの内部表示だけが、異常を訴える。)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月5日
(エラーは出ていない、バグは起きていない。となれば、今おかしいのはこの生身の方?)
(電流ですらも、どこかおかしい気がする。)
(はて、いま彼の口は何を言ったんだ?)
(何か聞こえたようで、何も聞こえない。いや、聞こえているのかどうかすらわからない。滝の中にいるような、圧力に全身をもみくちゃにされている。いや、それすら正しいのか?)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月5日
(真横に倒れながら、手袋が風化していくのを眺めている。)
(声を出そうとしても歪な鋼の音が出るだけだ。妙に響く気がする。)
(ぶるぶると大きく震える鋼の腕に、ぴしりと亀裂が入って)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月5日
(表面が砕けて、中から黒と白の入り混じった、不思議な色合いの鋼の手が出てきた。)
(それも変わらず、震えている。)
十埼・竜 2021年12月5日
(ぼくがまだ立っていられるのは、ただ、この暴虐に、理不尽に、慣れているからというだけだ)
(身体スペックは、ぼくと彼では雲泥のはず。……だから。)
……嘘でしょう?
(真横に倒れて、そのまま朽ちていく姿に。洩らした一言は、ひどく濁った波を纏っていた。)
(腕。……の中に、更に、腕?)
グスタフ・カツラギ 2021年12月5日
(ぶるぶると震えるだけで、新たな腕は揺らがない。)
(今までの腕だと思われていた外装らしき破片は、粒子に帰っていく。)
(すべてを灰燼に帰す波も、世界を崩壊させていく中でも、その腕は、壊れない。)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月5日
(ゆっくりと上半身を起こす。)
(前のめりに地面に手を突き、脆くなったコンクリートの中にその手を突っ込んでいった。)
(手を突き出す際、袖から覆っていたものだと思われる粉がザラザラと零れ落ちた。)
(つんのめってうつ伏せになり、ごろり、と転がって、もう一度上半身を。)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月5日
(脆くなった上着の繊維が破れて、その体が起き上がる。)
(何度かふらつきながらも、頭とネックウォーマー、そして新しい腕だけは壊れない。)
(ゆっくり、ゆっくり、まだ安定した場所を調べながら、立ち上がる。)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月5日
(どうにか二本足で立ち上がって、今度はしっかりと足を踏みしめて。)
(また、両腕を開いた。)
十埼・竜 2021年12月6日
(脱皮、生え変わり、みたいな新しい腕。“波”のあおりを受けて真っ先に脆く崩れるだろうと思った、その頭も砕けない。)
(そのことに、少し安堵もしていた。……戦闘訓練とやらでよく罅を入れては中から血を流しているのを、見ていたから)
(藻掻きながら、崩れ落ちながら、ふらつきながら、それでも、またぼくの前に立ちはだかる。その両手を広げて)
(正直なとこ、ハグでも待ってるみたいに見える。飛び込んだら脇の下支えて高く持ち上げてくれそうな、)
(無効票)
十埼・竜 2021年12月6日
(――――何で、このひとは)
(こうなんだろうな。)
(そんな、どこか和らいでしまったこころも、既にノイズに暴かれて空間に散ってしまう。それを、このひとが感知するのかはわからないけれど、)
(――――空間に満ちるノイズが密度を増し始める)
(ことば。声。何気ない挨拶。囁き。ただの棒読み。嗚咽。謝罪の抑揚。笑い声。怒声。叫び。悲鳴。)
(誰かが発しただろうどこかにあっただろう誰かが聞き届けただろう声たちが時間も空間も攪拌されて一緒くたに幻聴となる)
(もしかしたら)
(――――馴染んだ言語の懐かしい声も、聴こえるのかも知れない)
(無効票)
十埼・竜 2021年12月6日
(想起する。)
(再生する。)
(ぼくの恐怖を。喪失を。怒りを。ありったけのノイズに変換して直にその両腕の真ん中を、穿つ。)
(叩きつける)
(それは、敬愛する先輩の死であり)
(父親の声の聞こえない毎夜の、寂しさであり)
(誰もいない放送局の)
(病床で、誰も握ってくれない掌の)
(無効票)
十埼・竜 2021年12月6日
【_‐⁼_―■愛する、恋した人を理不尽に踏み躙られた慟哭】
(激情と呼ぶには青く淡い光に、一筋、濁った異物を混じらせて。)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
(成る程、成る程成る程。)
(冷静にはなれないが、これはいわゆる、何か。)
(世界を圧縮したような、そういう何かだろうか。)
(今ばかりは解析なんてできないが、ああ、響く声があまりにも騒々しい。猛々しい。轟々としている。)
(あの人にまた無茶だと怒られてしまうかな、あの人にまた心配をかけるかな、いやぁ、日常とはこうも難しいのか。)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
(こほ、と、小さく血混じりの咳をした。喉が痛い。内臓からの出血か?だいぶ全身がやられている――先日のダメージとは、また別で。)
(でも、倒れない。引かない。退かない。一度倒れたがそれはそれとして、ここで倒れるのは無礼だろう?)
(正面切ってお好きにどうぞ、僕は受け止めますと宣言したようなものだから。)
(嘘ついちゃあ、失礼でしょう。)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
(聞こえた声に、世界に知った声のような知らない声のような、誰のやつだこれは。)
(いい、いい、気にしない。どこかの家庭で包丁がこの身を切り裂くように聞こえても)
(どこかの路地でゴミ箱の如く蹴られるような錯覚が聞こえても)
(どこかの道路で靴に踏みにじられる様な衝撃が聞こえても)
(どこかの部屋で戸締りするような絞圧が聞こえても)
(どこかの窓を雑巾がけするような摺り下ろす音が聞こえても)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
(君の、どこまでも苦しく淋しい孤独と絶望と憤怒がこの胸を貫いても。)
(全部、■■しいから。)
(いつまでだって、歩み寄ろう。)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
(ぐちゃぐちゃになった機械の声を、搾り出して。)
MaだでsU。
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
まだマだ。
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
思う存分、Dおうゾ?
(それが僕の、行動規範、覆ったものだから。)
十埼・竜 2021年12月6日
(自分の放った感情で悪酔いして噎せ返れば口の中いっぱいに血の味がした。残響が耳を穿ち肌を刻む。全身が燃え上がるように痛む)
(それでも壊れたロボットの声がぼくを煽る)
(まだ)
(まだ? ぼくに、何ができる?)
(無効票)
十埼・竜 2021年12月6日
(――――ポケットの中に)
(まだ、その重みが引っ掛かっていた。)
(べたり、赤をなすりつけて。ポケットから引き出した小さな拳銃は、不思議とまだ原型を保っていたけれど)(ざらざらざら、隙間から粉が零れ落ちて、弾倉は、からっぽ。)
(無効票)
十埼・竜 2021年12月6日
(それでもいい。)
(無効票)
十埼・竜 2021年12月6日
(今にも砕けそうな掌で銃把を包み、崩れかけの指を銃爪にかける)
(どう見ても当たりっこない構えで、しかし銃口は確かにその胸に向けられる)
(意志が、たった一発を生み出して)
https://tw7.t-walker.jp/garage/gravity/show?gravity_id=6863
(無効票)
十埼・竜 2021年12月6日
(――――ぱぁん)
(必中の切り札は確かに放たれ)
(生み出された音は、反動は、脆くなった自分の体を砕くのに十分だった)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
(銃撃なんて、実はそこまで撃たれた側にリアクションがあるわけじゃない。)
(熱さと、寒さと、不穏さと、雷管の爆発だけ。)
(間違いなく、それは、皮膚を貫き、筋肉を裂き、血管を破り、骨を抜けて、)
(目的の通りへと吸い込まれるように。)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
(強靭さも、今の脆弱な肉体では意味がない。)
(どんなに鍛えようが弾丸に耐える肉体など、余程の異能と同格だ。)
(ふらり、後ろにふらついて)
(しかして、崩壊しながらも踏ん張り、)
(「倒れるときは、前のめり。」)
十埼・竜 2021年12月6日
(――――風呂でまじまじ身体見てたのがここで活きるとか思わないじゃん)
(生身で痛そうなとこ、狙ったけど、)
(だいじょうぶ)
(かな)
(無効票)
十埼・竜 2021年12月6日
(視界が回る)(ざらざらざらざらざら)
(ごとん。)
(――――ぐちゃ、)
(ノイズイーターが【閉じた。】
【崩れた骸の上に転がったそれが、捲れ上がるように広げられて】
十埼・竜 2021年12月6日
【白い、白い、骨】
【頭骨を欠いた、長い首骨を持つ、】
【肋骨の内側に、赤く拍動する心臓を宿らせた】
【悪魔が、ずる、と、這いだして】
【――――音の嵐は、もう、静まり返っていた。】
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
(バチバチと、電流が迸り)
(ぽーん!)
(静寂の中に、不釣り合いなSEが広がる)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
(――全略、了。)
(ズタボロのスポンジみたいな脆い肉体が、ゆっくりと起き上がる。)
(体内電気は細胞を活性化させ自己治癒を図る。)
(当然だ、これは死なないためのシステム。どこまでも歪な間違った使い方。)
(死なないためは、倒れないためでは決してない。)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
(学園であれば残留効果は申請が必要だが、今ここに限っては必要ない。)
(見る見るうちにその身の傷は癒えていきその体は確固としたものを取り戻していく。)
(一度は途絶えかけた穏やかな雰囲気、それは今やフラットなそれになり)
(意識があるのか不明なまま、大地にその手を付けた。)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
(一瞬、電流が迸る。)
(大気に還ったはずの真っ黒い元々腕だったものが、それに張り付き始めた。)
(数秒もしないうちに、塗装されたかのように黒い腕が再現される。)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
(ゆっくり、頭に手を添えて)
(左右に揺らして、バギバギと鳴らす。)
……生きてます?
十埼・竜 2021年12月6日
【頭の無い首が折れ曲がって俯いて、ただ、そこに積もる塵に向いている。白い骨に、赤い糸がいくつも――――血管のように、這いはじめる】
【「ああ」子どものような甲高い声が、「またこわれた。」】
【やがて肉らしきものがぶらさがり始めた腕を、無造作に肋骨の間に突っ込んで。】
(無効票)
十埼・竜 2021年12月6日
【その心臓を握りつぶした。】
【「約束だからね。」】
【めき、めきめきめきばきばきばき】【心臓があった場所に向けて全ての骨が凝集していく。潰れた心臓の血に濡れて赤く、やがて黒く】
【小さな塊に。】
(無効票)
十埼・竜 2021年12月6日
(――――ごろんと塵の上に落ちたそれは、少年がいつも被っているヘッドホンそのものだった。)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
(はぁ。一連の動作を見つめて、ため息一つ。)
(ゆっくりと、そのヘッドホンらしき何かを拾って。)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
また叱られるじゃないですか……団長ともああ約束したというのに。
ままなりませんね、まったく。
吐き出せましたか?形に残せましたか?
自分が死んじゃあ意味ないって、気づいてないんですかね。
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
赦せるも忘れるも、全部生きてた上でしょうに。
加減がない分、聖さんよりもずっと態度悪いですよ。帰ったら説教ですね。
まぁ、扇動したのは僕の方とは言えよろしくないですね。
(足早に海岸の方へと向かっていく。)
(無効票)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
誰も彼も勝手に秘密を押し付けて納得してこちらの開示を要求して。
これが日常なんですか?先生。それとも僕が踏み込み過ぎなんですか?先生。
言葉一つ選ぶのも、大変ですね。先生。
でも、まぁ、頑張りますよ。
(まだ。)
グスタフ・カツラギ 2021年12月6日
指令ですし。
十埼・竜 2021年12月6日
(――――夜の海に、白いこどもが浮かんでただよう)
(海に沈んだ両耳は、まだ、雑音を知らない。)
(無効票)
十埼・竜 2021年12月6日
(やがて、黒い四角に顔を覗き込まれて)
(頭に異形のヘッドホンを被せられて)
(小さく「ごめんなさい」と呟いた、声は)
(まだ。)
十埼・竜 2021年12月6日
(声変わり前の、高く柔らかな音に戻っていた。)