【RP】2024年 誕生日
眞守・天彩 8月29日21時
8月15日。俺の誕生日。
お祝いしてもらえたらうれしい。
幸せな記憶が増えてうれしい。
うそじゃないよ、本当にそう思う。
日付をなぞれば楽しみとうれしいが半分。
もう半分は、違うものが混じる8月15日。
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眞守・天彩 8月29日21時
昨夜に夕立がざぁざぁと降っていたけれど、朝には快晴。
太陽が出ていても前の日に雨が降った分だけ、暑さは少しだけましだった。
思い立って、夏の熱が広がる前の新宿の空へ飛び出した。
眞守・天彩 8月29日21時
新宿の街並みの中、夏の陽射しでキラキラ光る翼を見つけて、空からふわりと降り立った。
「華子ちゃん、やっほー!」
笑ってそう言えば、蜂蜜色の目がこちらを向く。
やっほー、とあまり変わらない表情で、けれど親し気に返されて。その軽やかさのまま、寿がれた。
誕生日だね、おめでとう。
その言葉に一度瞬いてから、ありがとうとくろきつねは笑う。
見て。とぴかぴか楽しい色の目で差し出されたのは、水色のポンプと白いボディの、きみの目とおんなじくらいぴかぴかの水鉄砲だった。
「うん、すごくカッコいいね!俺にくれるの?ありがとう!
無敵になれちゃうかな、俺、水鉄砲バトル王になっちゃうかも。なりたいね!
水鉄砲バトル、どこで出来るかな」
ね、あったら華子ちゃんも行こうよ。と笑えば、一緒に遊ぼうねと君が――――。
滅多に見ることのないその表情に、くろきつねは一瞬息を止めた後、そっかぁ、うれしい。と口にした。
眞守・天彩 8月29日21時
◆絆砲「水天」 贈り主:十七夜・華子
https://tw7.t-walker.jp/garage/item/show?item_id=61816
(高性能で新品のぴかぴかな水鉄砲。青と白のコントラストは、夏空に映える。
一発引き金を引けば、ズドン!と勢いよく水が放たれた。
かっこいー!やったぜ今年は俺が水鉄砲王だ!)
眞守・天彩 8月29日21時
いつものもように訪れた、常に鬼灯揺れる庭園を持つ館の中。
夜の帷も落ちた。
帰ろうかと玄関口に向かっていると、くろきつねの耳が揺れる。
歌が聞こえた。
硬質な金属音の、歌。
曲じゃなくて歌だと思ったのは、その曲を初めて聞いた印象からだろう。
なんだっけ、この歌の名前…
そう考えながら音の先を求めて歩けば、ひらひらりと光砂を零す天冠が見えた。
「ルリラさん!ねぇ今聞こえていた歌って、」
問う前に、その掌の中に梅雨色の色彩が目に入って、口を閉じる。
はっぴーばーすでぃ、天彩さん。
歌の主のその人は、表情は淡くも柔らかい声音でお祝いを口にしてくれた。
「ありがとう!
…あ、やっぱりあの日の歌だったんだぁ。さっき聞こえたからここまで来たんだ。
うん、部屋でゆっくり聞きたいな。大事にするね!」
…ところで、この曲の題、なんだっけ?
せっかく答えが返ってきても、何語かも見当のつかないくろきつねは首を傾げるのだった。
眞守・天彩 8月29日21時
◆Mélodie de la pluie. 贈り主:ルリラ・ラプソディア
https://tw7.t-walker.jp/garage/item/show?item_id=61853
(梅雨色の花と音符の刻まれた繊細な蓋を開けば、歌が聞こえる。
耳にずっとあなたの歌う声が残っているから、オルゴールが奏でるのは、確かに歌だった)
眞守・天彩 8月29日21時
帰ろうと扉を開いたけれど、庭先に見えた白い影を見つけて、くろきつねは足向く先を変えた。
「冥夜さーん!ねぇねぇ、今日は何の日?」
駆け寄りながらそう尋ねれば、ぱちりと瞬きした後、
天彩、誕生日おめでとう。
と祝ってくれた。
一年経つのはあっという間だなぁ。なんて付け加えつつ。
「ふふ、ありがとう!」
しみじみしている親戚のお兄さんの如き声に笑って、それじゃあおやすみと手を振ろうとすれば
ずしりと重そうな包みが差し出された。
…否、きっと、大きさはさしてないのだけれど。
以前同じようなものを差し出されて、色々な意味で重かったから、そんな印象を抱いただけかもしれない。
それは、真っ白な懐刀だった。
何も斬ったことがないのだろう。そういう意味でも、真っ白だった。
「俺のための武器…そうだねぇ」
結局のところ、使い手次第だろう。
護身用と、けれど好きに扱えと言って与えてくれたあなたに。
刀を大事に抱えながら、ありがとうと告げた。
眞守・天彩 8月29日21時
◆護刀「天華」 贈り主:朔・冥夜
https://tw7.t-walker.jp/garage/item/show?item_id=61857
(天色の花に彩られた真白の鞘。鞘から抜けば血に染まらぬ真新な刃身。けれど確かに、何かを斬れる刃だ。何を斬るかは、使い手の自分自身で定める。)
眞守・天彩 8月29日22時
あまいろさん、と馴染みの声に名前を呼ばれて、くろきつねは振り向いた。
「虹介、こんにちは!
わ、お祝いしてくれるの?
…俺が贈ったから?そっか、うれしい!いいね、真っ赤な手帳。いいことたくさん書けそう!」
そう言いながら手渡された手帳を手にして、ふと気付く。
前はきみの目線が少し下だったのに、いまやほとんど一緒だ。
いつの間にやら目線がとても近くなった年下のともだちに、そのうち追い越しちゃったりして、と言われて耳が揺れる。
「いや…いや、俺だって、もっと伸びるはず…!多分…!」
実はここ1年、くろきつねは5㎝も身長が伸びてない――!
成長期、終わってしまったんだろうか。
そんなことが頭によぎって、尻尾が垂れた。
それでも、えへへと笑って次の一年のことを祈ってくれたきみに、笑う。
きみにかわいいと言われるのは少し悔しいけれど。
大きくなったきみが祝ってくれるのは、とてもうれしいから。
そんな日は、きっといい日だろう。
眞守・天彩 8月29日22時
◆界図「現想」 贈り主:葵・虹介
https://tw7.t-walker.jp/garage/item/show?item_id=62015
(真っ赤な厚みのある手帳。書き終わってもしっかりとそこにありそうだ。
何を書こうか。何を残そうか。この先の未来のように、未だ中身は白い。)
眞守・天彩 8月29日22時
結構な大きさの荷物が届いた。
見た目よりかは重くない。厚みもそこまでない、四角い包み。
なんだろう、これ。
思い当たる先のない荷物だった。
けれど、伝票の名前を見つけた時、中身はすぐ見当がついた。
久々に見る名前だった。
便りがないのがいい便り、なんて言うけれど、どこかで倒れていてもおかしくない人なので心配もしていた。
…まぁ、うん、早々死なない気はするけれど。死んでないのと健康なのは別物なので。
逸る気持ちで自分の部屋まで戻り、包装を丁寧に剝ぐ。
中身を傷つけないように。
出てきたのは、予想通り、絵だった。
目を惹く色彩の、光を湛えたような夕暮れ。
拡げた先に明かりが灯るような。
一緒に入っていた手紙を広げて、
元気なら、よかったなぁ。
としばらく顔を見ていなかった人を思って、笑った。
確か、送り先が書いてあったな。
手紙の中の文字列を探して、見つけて、ペンを手に取る。
俺も贈りたいものがあった。と思って。
眞守・天彩 8月29日22時
◆『黄昏之時』 贈り主:灯楼・弐珀
https://tw7.t-walker.jp/garage/item/show?item_id=62045
(深い緑。果てしない青。広がる橙。部屋を彩る鮮やかなコントラストの絵は、今年で三枚目。灯火みたいに、部屋を照らした)
眞守・天彩 2月13日22時
腰元で揺れるランプに手を伸ばす。
ランプの中の青と赤が混じり合った焔に触れても、決して肌を焼くことはない。ただ、暖かさと、チリチリと焦がすような衝動を、伝えてくるだけ。
焔に触れ、中に手を入れ、掴んだものを引き出す。
そんなものが入る余地もないのに、背の丈ばかりの木の柄がずるずると抜き出された。
白いカスミソウ。
大輪の青薔薇。
宝石。
いくつもの装飾を眼でなぞりながら、最後に冴え冴えとした刃が現れる。
薔薇の花が刻まれた細工めいた半透明の刃は、美しいが鋭い。
美術品めいた美しさのある大鎌だが、くろきつねにとっては実用品だ。
幾度もこの大鎌を振るって血を浴びた。止まれない程にクロノヴェーダと、それに属するものを斬った。
そうする為に引き継いだものなのだから、そう使うべきだと、思う。
眞守・天彩 2月13日22時
長い柄を構えて、振るう。
振るう。
振るう。
振るう。
振るう――――。
眼の奥に焼き付いたのは赤い焔。まるで赤い椿のように鮮やかな火。
あの焔が、あの鋭さが、あの切っ先が俺の手にあれば。
俺は変えることが出来るだろうか。
答えは出ないし正解は何かが分からない。
それでも止まることなんて出来ない。
父だったらもっと鋭く振れただろうか……それは誰?
くろきつねの父は平穏な現代地球の日本で暮らす人だった。
どこか浮世離れした雰囲気の人ではあったが、現代地球の、魔法も戦いもない世界で、大鎌を振るうことはない。
これを持っていたのは自分の父ではなく、自分のいない違う世界で生きていた人のものだ。
(俺の父さんじゃ、ない。)
忘れてはいけないと心中で呟く。それでもどうしようもなく慕わしい。手助けするように加護を与えてくれるから、尚更に。
混じった記憶。
それが自分の記憶と混ざり合うように存在するのは、時折苦しい。
眞守・天彩 2月13日22時
焦燥と寂寥と憎悪と殺意と隔意。
混じりあって、元はどんなものだったかも分からず、解きほぐすのはもう無理だ。
混ざった。それでいいと思った。だって手放せない。
俺はこれを捨てることなんて出来ない。
捨ててしまった方が楽だとしても、捨てられない。
そうして捨てられないから、殺すまで終われない。
すべてのクロノヴェーダを殺しつくせないとしても、
あの大きな大きな鹿の化け物。
あれだけは、殺さなくては。
https://tw7.t-walker.jp/gallery/?id=197346
振るう。
振るう。
振るう。
振るう――――。
答えは出ないし正解は何かが分からない。
それでも俺は、きみを×××たいと思うんだ。
(2024年、8月15日。それは覚悟。今年も縁を繋げた日を幸いに思いながら。
今はどこにもいないきみを思って。)
【終】