書と臥榻

ソファを繕う

観月・遙 2021年9月16日
カーペットに座り込み、ソファに空いた穴を繕う妖狐が一匹。
床にひろげた九尾は自動ドア越しの陽に当たり、ぽかぽか日向ぼっこをしているよう。


お約束した方と




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観月・遙 2021年9月16日
(ちくちく)(ちくちく)(ちくっ。)いたっ。
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砂子・深彰 2021年9月16日
(端的に言うと、困っていた。)(仕事が無ければ時間はあるが、時間はあってもやることが無い。取り敢えずウォーキングしているものの、半ば今夜の雨露凌ぐ場所探しみたくなっている。……アパート、大家さんの縁者が押しかけて退去とか、流石に理不尽では?)
(ぼんやり歩く。視界に映ったふかふかな何かに、ああいう所で眠れたら最高なのに……なんて思っていたら、)(それが、近頃よく見るふかふかによく似ている気がして。)(もう少しよく見ようと身を乗り出した拍子――)
(自動ドアが開いてしまった!)
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観月・遙 2021年9月18日
(自動ドアが開くと共に、心地よい秋の外気が流れ込んでくる。首だけ傾けて振り向くと、大きく瞬いて、)
――深彰。(やがて嬉しそうな笑顔に変わる。針を手の内に包み、腰を上げて彼女のもとへ)
どうしたんですか、お散歩の途中? こんなところで会えるなんて……よかったらどうぞ、入ってください。
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砂子・深彰 2021年9月18日
す、みません、怪しい者じゃ! ただちょっと、その、ふかふかが……(言い募るほど不審者に思えてきた。もはや癖で大仰に下げてしまった頭を、恐る恐る上げてみれば、)あ……。やっぱり……観月さん……(ふかふかから徐々に視線を上げれば、想像した通りのひとが居た)
こん、にちは……(無意識にキャリーを後背に回す。見上げる瞳を、答えを探すように一瞬斜めに流し、また顎の辺りを見て、)そんなところ、です。私も、尻尾、見えた時は……驚きました。
えぇと……(努めていつもどおり――そうであれば辞した誘いも、歩き疲れた身には実に抗い難い響きで)……よろしい、の、でしょうか……。ここ……観月さんの……(家? とは違うような。かといって働く必要は無い筈だし――)……?
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観月・遙 2021年9月19日
何も怪しくないこと、存じておりますとも。ああ、この尻尾が目印になったのですね。……ふかふか、お好きで?(『ふかふか』という可愛い言い回しから好意を感じたので訊いてみる。尾は返事を待つようふわりふわり。彼女の背後に隠れ切らない荷に目をとめて)散歩と言うには、大きな荷物ですね……?(不思議そうに首を傾げた)
此処、は……(言われて、後ろめたそうに視線を店の奥へ。依然人の気配は無く伽藍としている)……私のでは、全くなくて。人がいなくて、居心地良さに、勝手に居ついておりまして……。本当は『入って』なんて言える立場ではないんです。歴史を正すまで間借りしようと思ってる……という感じ、です(幾分小さくなった声で説明した)
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砂子・深彰 2021年9月20日
そ、う……改めて、言われると……ありがとう、ございます……恐縮です。お言葉通り、尻尾かと思――好きです!(自分が話下手なのは重々承知している。肯定的な言葉に慣れないことも。だからこそ、返す言葉はどうしたってこんな事務的――)(……を、完全放棄していた。寧ろ食い気味だったと言ってもいい。)

……………………。

(気まずい。いっそ今ここで消えられたらどれ程の救いか。ぎこちなく横を向き暫時。体裁を繕い向き直って)……はぁ。まぁ、荷物は……必要最低限、です。独女の(何事も無かったかのように話題を進めてみたものの。なんて 不自然な/下手な 言い分か。)(そう、思った、のに)
……ぁ、(小さく、声が零れていた。)じゃあ……私と、似たようなもの、ですね(ほんの僅か、口許を緩めて)
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観月・遙 2021年9月22日
当然です。あんなに優しいことをして下さったのですから。その節は本当にありがとうございました……Σ(想定外の勢いに、ぴゃっと尻尾が跳ねる。一拍置いた後、嬉しさと微笑ましさに微笑んだ)
(しかし長い沈黙が落ちると、いけないことを訊いてしまったろうか……と心配顔になって)独りの女人と、荷物……(口数少ない説明により、自らの平安脳にて連想されることといえば、離縁されて生家へ戻る状況くらい。とは流石に口にしなかったが、深追いは思い留まった)
……あ。(笑った?)(思わず見つめる。だったら嬉しいな、と。その反応に少し心を軽くしてもらったことも自覚しながら)似ている……家のないところが? 深彰も一緒に間借りしますか?(さらりと。この狐、男女の区別なくフラットに接するタイプであった)とりあえず、中で休憩でも。あとよかったら尾も触ります?(元居たのとは別のソファ(修繕済)に、「どうぞ」と彼女を誘った)
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砂子・深彰 2021年9月22日
あれは……本当、たまたまで。そんな仰って頂けることでは……あ、わ!(ふかふかを驚かせてしまった……! 分かり易く大慌て……その様に、先の沈黙が節操も無く好きと宣言してしまったことに対してだと気づかれたろうか。更に呟きが耳に届けば、慌てた勢い治める暇も無く、)こ、のキャリーは、アパート出た時の私物だけで、悪事では無くて……その、空の民家をお借りするのは本当どうしようもない時だけで、お家の品には絶対手をつけないですし、寝場所をお借りしてるだけで、普段は廃工場とか倉庫とか公園で……――すみ、ません。テンパりました……。
(視線には慣れない。その上、こんな恥を晒した後だ。赤らむ顔を俯けて、その通り家がないとの意で頷いた。続く言葉があまりにさらりとしていたので、咀嚼する間も無いまま)……!(ふかふか!)(現金に顔を上げた刹那、)こちらのソファは……修繕中、ですか?(案内された先よりも、気になったのは)
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観月・遙 2021年9月25日
たまたま……気まぐれだったとしても、とても嬉しかったです。ずっと忘れません(驚いたけど大丈夫、と言うよう尻尾はたはた。先の沈黙が意図するところは察し損ねてしまったものの、尾への好意は十分伝わっている)はい、悪事を疑っておりませんよ(少し慣れて来た風に相槌ひとつ。彼女の境遇を訊くにつれ、いたわりの眼差しが向かうようになり)成る程、浮浪者なのですね……。……寝床を求め彷徨うのは大変だったでしょう。どうかゆっくりしていって下さい
(頷いたのを見てはいても、それが間借りへの同意だったのかは今一つ判じかねた。急すぎて返答に困ったろうか。落ち着いたあたりでもう一度言おうと一旦後回しにして)ええ、鼠に齧られていましたので……(繕いかけの縫い口に、手の内の針を失くさないよう刺しとめた)深彰はそちらに座っていて下さい。水でも持ってきますね。水しかないんですが。(彼女が恐縮する前に、一度奥へと引っ込んだ)
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砂子・深彰 2021年9月26日
そんな――(言って貰える人間じゃない。でも、その言葉を無碍にすることはどうしても出来ずに)……忘れても、いいです……でも……ありがとう(ぽつと呟いた)
……っ、浮浪者、て……! 今でこそこうですけど先日まで部屋も仕事もありましたし使えないけど所持金だってありますしお風呂も銭湯通ってますしコインランドリーも行きますし化粧は普段から殆どしてないですしただちょっと住処探し中ってだけなので浮浪ではないです!きっと!(はたはた尻尾に安堵――したのが仇になったか、また一気に捲し立ててしまった口を両手で塞ぎ、長身の青年の様子を窺う。いったいどんな反応をされてしまったろう……。そろりそろり、見上げ)……鼠……ですか(ソファに視線を移すこと暫し。奥へと向かった彼に振り返り、「ど、どうかお気遣いなく……」と弱い声は届いたろうか……)……。(ソファを見遣る。そして、)あの……、……これ、私が繕っても、いいですか?
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観月・遙 2021年9月27日
深彰……?(言葉を呑み込む気配。己の言がすんなりとは受け入れ難かったことが察せられ……しかしその上で、此方を思い遣ってくれたのであろう細い声。申し訳なさを感じながらも、「忘れられませんよ」と言葉を添えた)
え、あ、わ……はい(案じたのも束の間であった。息も継がぬ訴えに、思わず口許を弛める。その親しみやすさについ、返す言葉も幾分気安くなってしまう)公園で寝たりするからです。いけませんよ、蓄えもあるなら安全を買うこともできるでしょうに。雨も降れば虫も出ます。もっとよくないことだって起きうる。清潔さは見れば解りますし十二分に伝わりましたが、やめないと私また言うかも……(不穏な言葉と共に、グラスに注いだ水を手に戻ってくる。手近なテーブルに「どうぞ」と置いて)……え?(意外な申し出に瞬いた。縫い目の若干のいびつさが目にとまったろうか?)どうして、また。色々大変なようですし、お疲れなのでは……?
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砂子・深彰 2021年9月27日
……。(嗚呼、そうだ。ソレすら、刻逆が起こるまで、もう随分と――)……観月さんは、(またほんの少し、口許が緩んで)……きれいで、柔らかで……ちょっと強情、です。……月、みたい……。
わ……私とて、屋根と壁がある所、優先しますし……よくないこと、なんて……凍死くらい、で。財布は……あっても、もう、使えませんし……。……元々、誰もいない……行く宛なんて、無いから……探すか、作るかしか、ないんです……。……と、いうわけで、何とかしようとはしてるので……浮浪者呼びは、流石に嫌です(戻って来た青年が見たのは、年甲斐も無く拗ねた顔だったろう。……尤も、歳相応には到底見られたことの無い、若輩の様な顔ではあるが……)……ありがとうございます……(頭まで下げてグラスを受け取り、口を付ける。知らず、相当渇いていたらしい。八割ほど干して、所在無げに)……、ええ、と……ふかふかの、先払いということ、で……?
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観月・遙 2021年9月29日
(拾い上げ紡いでゆく彼女の言葉に、不思議そうに目を瞬いて……そしてその声が途切れる頃には、少し微笑んでいた)……貴女こそ。きれいなことばをくれる。強情は些か腑に落ちませんが、でも親しみがあって嬉しい。ありがとう。貴女にとって好ましいもので在れれば良いと思います。
……復讐者は死んでも生き返るらしいですが、凍死とか駄目です。そう、なのですね……(離縁じゃなかった)……はい、野宿しなければ言いませんとも。(きっと言わないだろうけれど、野宿の抑止になるよう敢えて条件付きの同意とした)先払いって、私の尾など無制限触り放題ですよ。断りなくいつでもどうぞ。でも……(荒れた座面を見て)……正直、手伝って頂けたら助かるのも本音です。下手に縫うのは後ろめたくて、なかなか進まなくて。お願いしても、いいですか? それで……先払いして頂くのなら、尾にでなく……此処の宿代にしませんか。(先程の提案を、今一度。)
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砂子・深彰 2021年9月30日
……、好ましくない、わけ、無いです。でも……こんな拙さに、きれいだなんて……勿体無いですから……(ともすれば消え入りそうな声。幾許かの間。やがて眉尻を下げて)……それは、いずれ……より綺麗なお言葉へ、と。
……では極力、屋根と壁は確保します(難易度が上がった。不承不承。) 凍死は……流れ着けそうに無い、ですね……確かに。冬は配給に毛布などあれば良いのですが……。触り放題……なんて大盤振舞い。いつか争奪戦が起こるのでは……(呟きながら、ソファを見る。何処か遠くを見る様に)……そう、ですか……? 私は……、……目に、留めて、貰って。手と、心を、かけていただけたこの子は……何も、後ろめたいことなんて無い。寧ろ、幸せだと……思います。……はい。私などでよろしければ、僭越ながら(床に座し、一礼して)(傷からして、広範に布を充てがうのが良さそうか。なら、荷物の中の風呂敷を交互に――)……、……、ふぇ??
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観月・遙 2021年10月3日
ない、わけ無い……!? それは、思わぬお言葉。嬉しいです。……しかし私には綺麗と言ってくれるのに、自分へとなると受け取り難いのですね? きれい、ですよ。『月みたい』という言葉は、この時代でも最上の誉め言葉では? あと私のありがとうを勝手に先延ばししない。今の貴女に伝えた言葉です。
……屋内と言わないあたり逃げ道を残している気が……(訝しむ)争奪戦は無いから安心して下さい(空白の後、可愛らしい惑いの声。今度は通じたことに安堵した。ソファを『子』と呼ぶ彼女の心優しさに微笑んで)決して私が許可することではないのですが。その子達が手をかけて貰って幸せというなら、深彰は今から、もっと彼らを幸せにするということ。此処で雨露を凌がせてもらっても、罰は当たらないと思います。行く宛を、探すか作るかしたいと言いましたね。此処がそうではなくとも、もっと良い安住の地を見つけるまでの仮宿でも。何より、凍死の予防に。
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砂子・深彰 2021年10月3日
私は……冗談とか、通じない、つまらない奴、らしいですし……『普通』の話をするのも、苦手です。それを……そう仰って、いただけて……嘘を吐く理由は、無いです。でも……私は、いつも的外れだから……言われ、慣れない。……けど……ありがとう、ございます……(視線を逃したままなのは、あまりに分不相応だからだ。きっと。野宿はしないと言い切れないからでは無い。そう、きっと)……観月さんは、ご自分の、素晴らしさを……全然お解りで無い……。……幸せに、するには……布が足りなさそう、なのですが……私の、服、切って充ててはは……バチ、当たりそうな、気がします……。それに……本当に……本当に、ありがたいお申し出、ですが…………良いの、ですか? 私、確かに、存在感の無い……透明人間みたいな、もの、ですけど……凍死も、嫌ですけど……ご迷惑、なのでは……? こんなのでも、居ては…………情人をお招きも、出来ぬのでは……。
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観月・遙 2021年10月3日
……だれかが、心無いことを言ったのですね。そういう言葉が棘となって残るつらさは、私も覚えがありますが……(彼女の隣に胡坐をかけば、尾が背後で絨毯に広がる。少し遠慮がちに、目を向けて)的外れと、私は思っていませんし。普通の話もいいでしょうけれど、深彰の話を聞きたいです。こんな不可思議な状況、いつお別れが来るのか解らないですし。素晴らしさ……(もふもふかな)うん、深彰の服は大事にしましょう、切ってはいけない。あ、私の手拭いならありますよ。替えもありますし、清潔を保つ技とやらで綺麗ですから使ってください(ポケットから取り出してソファと合わせてみる。同色とはいかないが、多分悪くはないと思えた)ええ、お嫌でなければ、是非に。凍死だめ、絶対。透明には見えませんし、迷惑より寧ろ楽しそう。じょ……?(そこは一瞬意図を計りかねたものの、)……奥に幾つか、宿泊用の個室もありますから。(妖狐らしく微笑んだ。)
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砂子・深彰 2021年10月4日
……? 心無いこと、なのでしょうか。誰もが、ずっと、そう仰って……だから、居ないもののように……誰にも気付かれない、透明みたいに、生きよう、と。……観月さん、こそ……その、疵が……癒えていることを、祈ります。……えっ、と……私の話、なんて、このくらい、ですよ。何も無いルーティン。あ、手拭い。あると、とても、助かります……私、服、少ししか無いので……実は、困るとこ、でした(ソファに合わせる様子を見て、口許に弧を浮かべ)……大丈夫、ですよ。出来れば、もう一枚、あると、助かります。これならもう……柄にしてしまった方が……(近い。素晴らしいもふもふが、近い!)え、と……それでは……不肖、砂子、お世話に、なります……(三つ指ついて深々と。個室と聞けば僅かに安堵して)……では、そちらをお使いいただければ、お邪魔はせず、すみますね……事前にお教えいただけますと……清掃して、留守にもできますし。
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観月・遙 2021年10月4日
誰もが……? どうして……。深彰は、そんな扱いを受けていいひとじゃない。……面識の薄い私の誕生日だって祝ってくれるような、優しい方なのに。今の祈りだってそう。私の疵は必ず癒えるから大丈夫ですよ。話は、なにもこういう話に限らなくて……どうでもいいような話だって、やってみれば楽しいかもしれませんよ(快いお返事に「よかった」と笑う。彼女のやわらかな表情を見て、同じ言葉を胸の内でもう一度。)承知しました。手拭い、後で取って参ります。……って、そんな。此方こそ、です(きちんと彼女へ向き直り、同じ様に姿勢を正して深く礼を返した。……上げた顔は、可笑しそうに笑っていて)心配するの、そこなのですね。客室は奥に幾つか……ですから、ちゃんと深彰のお部屋もあります。気を遣って野宿なんていけませんよ。そんなことしたら情人がいたとしても放置して探しに行きますからね(釘を刺した)
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砂子・深彰 2021年10月5日
さぁ……そういう星の下、だったのですかね。もう、気にすることでも、無いですから……。お誕生日も、そう。申しました通り、たまたま、で……祈りも、性格で……。……ただ……そう仰ってくれて……ありがとう、ございます。癒える、疵でも……そもそも、痛くない方が、良いじゃないですか(その笑顔があまりに眩しくて、ますます俯き。誤魔化すようにごそごそと鞄から小さな裁縫箱を取り出し)……で、は、手拭い、いただけるまでの、間、軽く穴を縫っておきます、ので……。て、ぇ……私、お借りする、立場です、のに……観月さんが下げる頭など――(慌てるものの。上げた顔を見れば、幽か渋面を作って)……そりゃあ、そう、ですよ。……ご迷惑は、かけられません……部屋なんて、勿体ない。私は……ソファをお借りできれば、十分で……同じ、屋根の、下に、邪魔者がいては……。放置なんて、だめ……。……ご迷惑は、掛けたく、無いです……。
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観月・遙 2021年10月5日
此処に来たからには私から程々に構われるかもしれないのですが、そういうのは大丈夫でしょうか……苦手な距離感になっていたら教えて下さいね。ん……そんな疵、復讐すればおしまいってやつです(復讐するモノであるのは皆同じ。とりわけ特別なこともなかろうから、さらりと添えて腰を上げた)では取って参りますね。ご自分の裁縫道具をお持ちとは頼もしい……服などとは勝手が違うと思いますので、気を付けてくださいね。あと此処で寝るのは駄目です。ソファは心地良いですが、外から寝姿が丸見えな上にあの透明な扉は常にすぐ開くので不用心なのですよ。(言うだけ言って、手拭を取りに再び奥へ)
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砂子・深彰 2021年10月5日
……(じぃ、と彼を見詰めた後。淡く表情を和らげ)……きっと、大丈夫、です。元々……人嫌い、でも、話嫌いでも、無くて。だだ、私は、こんなだから……居ないものみたいに、って……。なので……畏まりました。それと……観月さんも、無理、なさらないで、くださいね。……あぁ……そう、ですね。復讐、が……修正が、終わるまで――(痛いまま、なのだろう。僅か眉根を寄せて、糸を切る) はい、お願いします。……大丈夫。素材で、出来は、そう変わりませんから。この道具、も……一人暮らしの始め、からですから……二十年近くの、付き合いですし。でも……ありがとう。……個室……申し訳無い……分不相応、なのでは……(チクチク。元の布地の強度を極力維持しながら、橋を渡すように穴を埋め始め)
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観月・遙 2021年10月9日
きらいじゃない、ですか。十分です(去り際ひっそり尾が揺れたのは、二回重なったその言葉より、彼女の綻んだ表情を見たから。彼女の言葉は遠慮深いけれど、面には素直さが顕われるように思えた。かなり慎み深くではあるが。続く声から伝わる労わりに、彼女の心を痛ませてなければいいなと、)――ん?(願ったのも束の間となった。二十年とは?)(部屋に置いた荷から手拭いを取り、ついでにおかわり用の水を冷蔵庫から容器ごと持って戻る間にも脳内は多数の「?」で満ちていて。縫い物をする彼女に歩み寄りながら)ええと、立ち入ったことを聞くつもりではないのですが……深彰は、幼いころからお一人で?(直で問うのは無礼かと思い、遠回しに年齢を逆算する質問を。それなら帳尻が合う気がした。)
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砂子・深彰 2021年10月10日
十分……ですか……(視界の端に映ったふかふか。ご褒美だと思えば頑張れる。優しい青年の心中も知ること無く、どんな色ならどう組み合わせようか、なんて考えながら、手拭いを待っていた。)(足音に気付き、「おかえりなさい」と。それから、「あ……ありがとうございます」と。振り返れば、水までお持ちいただいていたから。また深々、頭を下げ)……?(問いに、瞬き。逡巡し、「あ、」と声を上げて)……そう、でした。普通は、変だって……混乱、させるの、忘れてました……すみません……。15までは……実家に。ただ、その……恥ずかしながら……実家には、少々、居辛かった、もので……高校、遠方を、選んで……一人暮らし、させて貰ってたん、です。……大学も、同じ様に……(別段、立ち入られたことでも無い、ただの世間話。未だ学生みたいな貌は恥ずかしげに。「あの……布、を……」なんて話を逸らし)
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観月・遙 2021年10月17日
え、(迎えてくれた言葉に瞬く。隙だらけのような顔だったかもしれない。僅かに頷き、少し時間をかけてほどいた唇で紡ぐ)――ただいま(不自然な反応のあとでもなるべく自然に聞こえるよう、その一言を。「喉が乾いていたようでしたから。水分、大事」と二の句を継ぐ声はもう平素のもの。水は卓上へ、そして彼女の話に耳を傾けて)……?(首も傾ける。)ええと……十五に二十年近くを足すと、不思議なことになるのです、が……。……もしかして深彰、結構お姉さん。(三十路といえば母親世代の齢……というのはあくまで平安時代の話か。いや時代を差し引いても、彼女の見た目だってそうとはとても思えない。「あ、失礼、お願いします」と手拭いを渡しつつ)……とりあえず昔はちゃんと一人暮らししていたというのは安心しました。あ……すごい、縫い目も私のよりずっと綺麗ですね。よかった……ありがとう。(ソファの順調な回復の兆しに微笑んだ)
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砂子・深彰 2021年10月17日
(変わらぬ表情のまま、ちまり首を傾げた。仕事の時くらいしか口にしなかったその言葉を、温度を持って返してくれたのが嬉しかったのかもしれない。はたして、彼にそれが届いたかは判らないけれど。)……はい。すみません……随分、歩いたものですから……。お水、後ほど、いただきます、ね。……水出しの、お茶なども、持っておりますので……置いて、おきます。……? 歳、です? 十五に、二十――正確には十九ですけど――を足したら……三十四。不思議、です? 平安の、公達や、おひいさま方から、みれば、もう、おばあちゃまかも、しれませんものね。(礼を述べて手拭いを受け取り、キャリーから一回り大きな鋏を取り出し幾つもの正方形に。傷痕を隠せる様、柄を作りながら)……光栄です。どう、いたしまし、て……。……けど、こんな生活になったのは、刻逆の所為ですし。浮浪者じゃ、無いんですってば……。
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観月・遙 2021年10月31日
(おかしなリアクションをしたかな、と思いつつも笑われる風でもない。小鳥めいた動きに、可愛らしさとなんとなく温かなものを感じて……やっぱり彼女に野宿はよくない、という思いを強めた次第。)随分遠くの公園から? え、あ、お茶……私は水で十分なのですが。……でも、こういう、ひとにお出しするときは気の利いたものが必要と感じますね。水出し、一度作れば後は液体錬成できるでしょうか。後で一つ頂きます。ありがとう。……おば……いえ、平安の34も色々ですからね、はい。不思議がって失礼しました……歳は上とは言われたものの、さほど変わらない印象があったもので。むう、刻逆許すまじ……大丈夫です、浮浪者じゃないのは解りました。むしろお茶に裁縫と丁寧な暮らしぶりを感じます。(長椅子の端に一旦挿していた針を抜く。繕える程度の小さな穴は縫ってしまおう。針に糸を通そうと試みる)
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砂子・深彰 2021年11月1日
(34歳、密かに小鳥と思われていたの巻)……そこそこ、遠くの……廃工場、から、です……(少し唇をへの字に曲げたのは、先の話題か、この後の話だったろうか)……、ひとつきり、って……淋しく、ないですか? 私は、あまり、そういうの、解らないんです、けど……そういうもの、らしい、ですから。パラドクスも……便利だと、思うんですけど。人の、手が加わるより……味気ない、気がして。……あ! ご気分を害していたらごめんなさい!……お茶は、色々あります、から……はい。では後程、お好みの物を……幾つでも。そう……色々、なのですか。読み物の知識じゃ、やっぱり足りません、ね。見た目は……あまり、頓着無くて。子供っぽいの、かも。もぅー。もう彷徨いませんからー。……お世話に、なります(視線の先は……ふかふかだ。)……ひとりが長いだけ、ですよ。……あ、これ、どうぞ(幾つかの糸を抜き。糸通しも入った裁縫道具を差し出して)
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観月・遙 2021年11月21日
廃工場……ご近所には無さそうな響きです、ね……(なんとも痛ましい顔をして)淋しい、ですか?(思わぬ言葉に首を傾げた。廃工場とやらの方が余程……とは思いながらも、もの言いたげな唇のかたちを見て言わずにおいた。)そうですね……平安はこの時代ほどモノが溢れていませんから、茶葉はひとつでも有れば充分と感じます。でも、味気ないというのはわかります。人の手で淹れたお茶は温かい。折角のご厚意、ありがたく、択ばせて頂きますね。(茶の時間を楽しみに、ほのぼのと微笑んだ。子どもっぽいは否定できないなぁと思いながら)言いましたね、もう彷徨わないと。良し良し、です。お世話になるのは此方こそ……って、尾に挨拶されています……? ……先に触りますか? 針仕事の最中、気を散らしても危ないですし(糸や道具をありがたく受け取りながら、尾をいくつか、彼女の傍へふわふわと寄せてみた)
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砂子・深彰 2021年11月23日
そうですね。こちらは繁華街ですから、なかなか見付けられないかと……、……そんなお顔をさせて、ごめんなさい。でも、やぎも居ますし。大丈夫です、よ(鏡写しの様に、困った顔。) そう、ですか。香に襲。四季の移ろい……御簾の内でも、自然を、想いを、空を詠う、うつくしさ。茶もまた色々あるかと……浅慮でした。緑茶の他に、麦茶や紅茶、珈琲もありますので、お好みの物を幾らでも。……お湯さえ有れば、私は、温かい方が好みですので(楽しそうな様子が嬉しくて、ほんのり心が温まる。繋げた布を手芸用のテープで縫い目の上に貼り、) い……幾ら何でも、尻尾さんに、ご挨拶は……いたしません、よ。ここのソファはこれにて完了ですので、大丈夫です。……(当然の如くおずおずと)……本当に……?……いえ。はい。お世話に、なります。(また三つ指ついて頭を下げる。……目の前のふわふわと彼の顔、交互に見遣りながら)
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観月・遙 2021年11月24日
深彰が暖かい布団で寝ないと、あんな顔になるようで(きびしい。いたいけな彼女の憂い顔も何のそのである。何やら兄のような気持ちかもしれない。)やぎ? 動物、でしたっけ。寝るとき一緒にいるのですか?(気になる情報にそわそわ尋ねる)いえ、この時代ほどは、ですので多少は色々と。と言っても私より後世の歴史書の方が詳しいのでしょうね。……もしかして、深彰は歴史がお好きでしょうか? 平安の好ましいところをたくさん紡いでくださって、嬉しい気持ちです。はい、茶は温かい方が好みなこと、心得ました。(そうしていつの間にかソファは新たな姿に生まれ変わっていた。見事な手腕には見惚れるばかりで)す……すごい、早い。これもう職人技では? 本当に、ありがとうございます……! って、改まって頭を下げ直さないでください……!?(あわわ)こほん、……はい。つまらないものですが、宜しければ(更に尾をずずいと彼女へ差し出した)
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砂子・深彰 2021年11月29日
観月さんは……変わってます……。ただでさえ影みたいな私を、見つけるひとも、目に留めるひとも、殆ど居ないのに……。初めてお会いしてから……いくらと経っていない、のに。お人好しですし、過保護ですし……そんなんじゃ、この街では、悪い人達に騙されて後悔しちゃうんですから……(何で。そうと言いたげに、目を逸らして……ふと、)やぎ……そういえば、起きている時は滅多に……――『おいで』(スペルひとつ。まるで透明にずっとそこに現れたのは、一体のメーラーデーモン) サーヴァントのやぎです。ほら、ご挨拶(やぎは頭を下げた)……そう、ですね。古文も、歴史も、好きでした。尤も、勉強はしなければ困ることになりましたし。(言って、ソファをチラリ見る) それは、職人さんに申し訳無いです。慣れれば……この程度は。頭は、大変お世話になるのですし……(そぉっと尻尾に手を伸ばす)(ふわ)(そわそわ)(ふわふわ)(なで)(なで)
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観月・遙 2021年12月13日
むしろ皆の記憶に残ると思います。やたら隅にいらしたので逆に構いたくなる気持ちが湧くと言いますか……(砂時計屋さんで最初に顔を合わせたときの記憶をなぞる。この見解はそう間違ってないであろうと自信をもって。)女性の野宿を諫めるのを過保護とは言いませんし、悪いモノには容赦しませんから御心配なく。(さらりと言い切った。けれど彼女が紡いだ先、現れた小柄な獣人を見て、)……!(内心ときめいた!)サーヴァント。私、初めて見ました。えっ、かわいい。かわいいですね。これはもう是非ともよろしくお願いします、やぎさん。率直なネーミングですが響きがかわいい。やぎさん……(こちらもお辞儀して、しげしげ眺める)困ること? 勉強に厳しいお家だったとかでしょうか。歴史がお好きなのは、平安の者として嬉しいですね(尾は彼女の手に委ねて。無心で撫でているように見える。なんだかそれが嬉しくて、心地よさげにふわふわ尾を揺らした)
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砂子・深彰 2021年12月15日
それは……現代、だからだと思います、よ。今、は……人が多くて、多すぎて。雑踏の中に居たって、独りに、なれる、から……。私、も、新宿が島になって……ほんの少し、だけ、出てきた、感じで……。う……不本意ですが、反論が……思い付きません……観月さん、戦いは、お強そ――(青年の今日一可愛い反応を見た気がする。当然だが、武器は持っていない。そっと「やぎ」と呼んで、『彼に近づいてみてご覧』してみつつ)……いえ。困るのは、奨学金という制度が、ありまして……(夢も希望もなかった) 古代史や、平安は特に、好きです、よ。……光と、影の……。(尻尾ふわふわ、尻尾そろそろ)……!?(動いた!!)(思わずぎゅうと抱きついた!)(……ら。何だか……眠気が……)
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観月・遙 2021年12月16日
……そういうものですか。雑踏の中でも私はきみを見つけますが。話せば話すほど楽しい気持ちになりますし。(なんだか納得いかないように主張した。そうして、反論がなかったことには、やっぱり楽しそうに笑って)(接近を促されたやぎさんに此方から手を伸ばす。しかしこの可愛さは理性をなくす恐れがあり危険でもある。己を抑え、遠慮がちに撫でるに留めた)平安、今なら電車に乗ってゆけるところにあります。よかったら安全に気を付けてお越しください。……深彰?(見れば、今にも寝そうな御様子。……歩いた後のお裁縫、やはり無理していたのだろうか。まったく……と思いつつも、抱かれた尾はおとなしくなついて)そのまま眠っていいですよ。此処はもう、深彰の寝床なんですから。……やぎさんも、添い寝します?
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砂子・深彰 2021年12月17日
……(二つ、瞬いて)……やっぱり、観月さんは、優しい、です。私は……人の、疎らな、公園のベンチに、居たって……誰の目にも、留まらない。そういう、もの、でしたのに……(子供みたいな歳の青年に、そんな笑みを向けられるのは、どうにもこそばゆい。察した様に、やぎは青年へとまたトコトコ近づいて)……いいえ。私が、見たいのは……きっと、貴方が居た、平安。……眩さと、その影の……時代――(気づけば声は寝息へと変わっていて。きゅう、と柔く抱きつくと共に、声にならない声が零れた)(やぎは静かに首を横に振る。主人の代わりにお礼を言うように)
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観月・遙 2021年12月17日
いいえ。……ただ、頂いた優しさを返したい。そう思わせてくれたのが深彰。きみだから。(呟いた言葉は、どうやら独り言になったよう。なんとも可愛らしい寝姿に、妹に向けるような笑みが零れる。起こさないよう彼女をソファに横たえ、尾を抱かれた自分も傍に座して。優しいやぎさんは、来てくれるなら膝の上へ。)――おやすみなさい、深彰。
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