【イ】メフィストフェレスの骨を拾って
一恋・花束 2024年5月31日
血の臭いに満ちた異空間にて。
今宵、舞台の幕は上がり、哀れな役者が招かれる。
怪物(ファントム)の嘲笑は、若者を大いに嘲笑うだろう。
“時よ止まれ? お前は何より美しい、なんて……”
“いいや”
“ここはもう――行き止まりさ”
◆ 決戦 ◆
#ファントム vs
#リオル・プラーテ
1
水藍・徨 2024年5月31日
【リオル・プラーテ】
見てきたって、そんなの有り得ない。
(否定。多少、他から仄めかされたような感じはしていたけど)
……まるで未来でも見てきたみたいに。決めつけてさ。
(一番、嫌いなタイプだ)
そうだよ。認められたい。
僕は、君を乗っ取って、周りに僕を認めさせたいんだから……!
(歩く速度が早くなる。早く、一歩でも近付きたい、と。)
(無効票)
一恋・花束 2024年5月31日
【ファントム】
(くつくつと、まるで何かを懐かしむように)
(“それ”は、貴方を見て、なおも笑うのだ)
(二人の距離は――なぜだか、縮まらない、近づかない)
一恋・花束 2024年5月31日
【ファントム】
“そう、君は何が何でも認められたい”
“【自分】を見てほしい” “祝福されたい”
“愛されたい” “頼られたい” “誇られたい”
(それはさながら、舞台の上で演技でもしているかのように――――)
一恋・花束 2024年5月31日
【ファントム】
“――――その為なら、手段を選ばずに”
“自分が主役だと勘違いしたまま舞台に上がって”
“称賛を受けるはずだったのに、邪魔だと叩き落される”
ボク
“――――もっとも哀れな役者。それが、 君 だ”
(無効票)
水藍・徨 2024年5月31日
【リオル・プラーテ】
(いつもは冷静でいられるはずの思考も、)
(まるで本当に起こることだと断じられ、演じられ、語られ)
それは僕なはずがない……それに、手段を選ばず奪って何が悪い!!
(距離が遠い。まだ、先にいるのか。)
(無効票)
一恋・花束 2024年5月31日
【ファントム】
(ぱちん、と指を弾く。空間が、パズルを裏返すように、歪んでいく)
一恋・花束 2024年5月31日
【ファントム】
“だから君は『予備』になったんだろうね”
“―――君が何を考えているか、よくわかるよ”
、、、、、、、、
“我がことのように”
“そう…………”
一恋・花束 2024年5月31日
【ファントム】
、、、、、、、、、、、、
“僕は奪われてきたんだから”
、、、、、、、、、、、、
“人から奪ったっていいんだって”
(そうして現れた景色は――――)
一恋・花束 2024年5月31日
【ファントム】
(見知らぬ誰かの慟哭)
(踏みにじられた者の悲鳴)
(それは時に涙であって)
(それは時に流血だった)
(その全ての出来事は)
(彼らを踏みにじった人間が居ることを示していた)
(無効票)
水藍・徨 2024年5月31日
【リオル・プラーテ】
(空間が歪む。視界に現れる人、あるいは声……)
(何かの出来事を見せられている? 全く身に覚えがないというのに)
これは、僕を動揺させるつもり? こんな出来事を見せて、いずれこうなるとでも?
まるで……未来の、自分みたいな言い方……!
(左腕の紋様を輝かせる。空間を支配しているなら、その空間を上書きして相殺でもしてやればいい……!)
(無効票)
一恋・花束 2024年5月31日
【ファントム】
(実際の所――消耗はしているのだ。複雑な魔術の操作は、体に大きな負担がかかるぐらい)
(だから、上書きを試みれば、それは存外うまくいくだろう)
(ただし)
一恋・花束 2024年5月31日
【ファントム】
(その景色の一つ一つが上書きされる寸前に)
(彼らの成果を、功績を、人生を)
(踏みにじった者の姿が、鮮明に映し出される)
(それは――鏡写しのように、貴方と同じ顔の――――)
(無効票)
水藍・徨 2024年5月31日
【リオル・プラーテ】
(景色を消し、悲鳴も、何もかも、上塗りして)
(――さっさと"向こう"を)
……!?
(今、自分の顔が見えた気がした。あれは、僕自身?)
(けど、見てきたと言っていた。――自分のことのように、と。)
水藍・徨 2024年5月31日
【リオル・プラーテ】
……なんで? 奪われたものを奪い返して、幸せになってそうなのに。
だから、幸せだろう君の"存在"が欲しいのに。
そうして、きっと僕は認められるはずじゃ……!?
(認めたくない。こんなのが現実だと、認めたくないんだ)
(無効票)
一恋・花束 2024年5月31日
【ファントム】
“ははっ”
一恋・花束 2024年5月31日
“はははっ”
一恋・花束 2024年5月31日
“あははははははははははははははははっ!!”
一恋・花束 2024年5月31日
【ファントム】
“こんな簡単なことを、僕は気づいてなかったし”
“君も知らなかったんだよ”
一恋・花束 2024年5月31日
【ファントム】
“人のものを盗ったって、自分のモノにはならないって”
(無効票)
水藍・徨 2024年5月31日
【リオル・プラーテ】
嘘だ……
(――現実だ。とどこか、頭の片隅でささやかれている気がしてならない)
(そのくらい、先の景色が鮮明だったんだ。)
じゃあなんだよ、今の君は何? 僕の先を知っていて、それでも否定されて奪われた僕だっていうのか!?
(無効票)
一恋・花束 2024年5月31日
【ファントム】
、、、、
“そうだよ”
一恋・花束 2024年5月31日
【ファントム】
バックアップ
“だから、君は 箱 庭になったんじゃない?”
(無効票)
水藍・徨 2024年5月31日
【リオル・プラーテ】
――!!
(認めたくなかった。そんなの、認めたくないに決まってる。本当だという証拠も、あるわけじゃない)
(でも、いずれ訪れる未来だと、そう確信している言葉が、これ以上……否定できないほど説得力があるのも事実。)
水藍・徨 2024年5月31日
【リオル・プラーテ】
正直、認められないし認めたくない。バックアップだからって、今の僕がその未来を辿る保証もない……
なぁ、君が僕の"未来"だっていうなら、奪われたって言うなら……
奪い続けた結果、君は実際何を、奪われた?
答えてよ。
(無効票)
一恋・花束 2024年6月1日
【ファントム】
“ああ――――そうか”
(恐らくこの「リオル・プラーテ」にとって――――)
一恋・花束 2024年6月1日
【ファントム】
(この体、水藍・徨の姿を)
、、、、、、、、、、、、
(自身のものだと思っているのか)
一恋・花束 2024年6月1日
【ファントム】
(なら、ちょうどいい)
“――――僕が奪われたのは”
(空間が歪む。景色が入れ替わる)
(それは―――――― )
一恋・花束 2024年6月1日
(すべてを手に入れたと思った瞬間)
(信じていたはずの人間に裏切られて)
(すべてを失って死にゆく――――)
、、、、、、、、、、、
(未来の自分の姿そのものだ)
(無効票)
水藍・徨 2024年6月1日
【リオル・プラーテ】
――――っ。
、、、、、、、
(奪われたのは、未来の自分の命。これはある程度想像はついた)
(けど、)
じゃあ……じゃあなんで、この場所に"死んだはずの自分"がいるんだよ?
……殺されたんだろう? なのに、まるで亡霊、とでもいうのか?
(どうして、と。それしか言えない自分にも腹立たしいけど。)
(無効票)
一恋・花束 2024年6月1日
【ファントム】
(そう、体を失った。生命の器を、彼は確かに)
“友達――――ああ、僕がそう思っている相手、という意味だけど――”
“彼は僕をこう呼んだ。こう名付けてくれた”
一恋・花束 2024年6月1日
【ファントム】
(手のひらに現れたのは、鼻から上を隠す為の……)
“――――ファントムと”
(笑っているようにも、泣いているようにも、叫んでいるようにも見える、一枚の仮面)
一恋・花束 2024年6月1日
【ファントム】
“どう思う? リオル・プラーテ”
“ご覧よ、これが君の至る未来、たどり着く現実、いずれの果ての運命という奴さ”
“割り込んで” “奪って” “成り代わって”
“それを正しいことだと、己のためだと信じきって”
“一切を顧みること無く、繰り返し続けた果てに――――”
一恋・花束 2024年6月1日
【ファントム】
、、、、、、 、、、、、、、、、
“命を失って尚、存在する事に執着し”
“何者かになりたかったのになれなかった、亡霊の成れの果てさ!”
“―――――ほら、正直に言ってご覧よ”
一恋・花束 2024年6月1日
【ファントム】
“ 滑稽だろう? ”
.
(無効票)
水藍・徨 2024年6月1日
【リオル・プラーテ】
ファン、トム……
(文字通りの、亡霊。自分の未来は、こうなるというのか?)
(今まで自分が否定してきたものを、取り返すためにやろうとしていた、その結果が)
(今、目の前にいる"自分"なのか?)
水藍・徨 2024年6月1日
【リオル・プラーテ】
――じゃあ僕はどうしたらいいんだよ!!
否定され続けたままの僕が、どうやったら僕を認めてもらえるんだよ!?
(子供のように喚いて、叫んで)
(未来なんて、分かりたくなかったのに。見せつけられてどうしろと?)
……。このまま消えろ、とか言うわけ?
(無効票)
一恋・花束 2024年6月1日
【ファントム】
“ははははははははっ”
、、、、、、、、、、、、、、、、、、
“失敗した僕にそれを聞いてどうするのさ!”
一恋・花束 2024年6月1日
【ファントム】
“ははははは……はぁ”
“――――僕は君が至る未来だ”
“だけど” “まだ辿り着いてない、って意味でもあるよね?”
一恋・花束 2024年6月1日
【ファントム】
“ここから出られるのは、本物(ぼく)と偽物(きみ)”
“どちらか片方だけ……だけど”
(そっと、自らの胸に手をおいて――――)
“僕は、【彼】を守らないと行けない”
(無効票)
水藍・徨 2024年6月1日
【リオル・プラーテ】
――っ、それは、そうだけど。
(未だ、過去は過去のまま、偽物/バックアップとしてここにいる。)
【彼】……? そうだ、"お前/ファントム"が亡霊なら……今見えてるのは。
(亡霊である未来の自分。身体はすでに死んでいる、であるなら必然、今視界に収めている"相手"は別人ということになるけど)
(――全く同じ容姿だ。驚くほどに。)
……聞かせてよ、その、【彼】って。
(無効票)
一恋・花束 2024年6月1日
【ファントム】
(周囲の空間が、じわりと歪み、少しずつ、閉じていく――)
“………………聞くよりも”
“見たほうが早いし、聞いたほうが早いかな”
(ただ、少なくとも――――)
一恋・花束 2024年6月1日
【ファントム】
“【彼】は”
“踏みにじられて、傷つけられて、苦しんで、もがいて、足掻いても”
“誰かから何かを奪おうとしなかった、それが、それだけが――――”
、、
“僕らとは、違ったんだよ、リオル・プラーテ”
一恋・花束 2024年6月1日
【ファントム】
(ぱちん、と指を鳴らし、空間が、さらに閉じていく)
(――精神と肉体を分けて、切り離し、違う器に移すやり方は)
(自分の体で、もう学んでいる)
(まして、自分自身にそれを行うのだ、失敗する理由も、道理もなく)
一恋・花束 2024年6月1日
【ファントム】
“だから、君が怪物(ファントム)にならない為に”
“少しだけ、この椅子に座らせてあげようじゃないか”
“――もし僕(きみ)が、奪って満たす以外の生き方ができるなら”
一恋・花束 2024年6月1日
【ファントム】
“その時は――君の勝ちでいいよ”
“リオル・プラーテ”
(空間が、狭く狭く、閉じていく――――!)
(■ 終了 ■)
水藍・徨 2024年6月1日
【リオル・プラーテ】
(……正直。見たところで、聞いたところで、分かるかどうかさえ不確定だ。他人だからなおのことだけど――)
……最後の最後まで、奪われるくらいなら。
(その席に座って、見て見よう。【彼】とやらを――)
(だんだん閉じていく空間に、割り込むこともなく……)
水藍・徨 2024年6月1日
.
(気が付けば、僕――リオル・プラーテは静かな暗闇の中で)
(未だ目覚めない【彼】の意識を感じつつ、呆然と立っていた)
.
(■ 終了 ■)
一恋・花束 2024年6月1日
(……【ファントム】の声は沈黙し)
(箱庭から一歩外に出た彼は、結果的にその目的を果たせた、とも言える)
(この口論を、戦いと呼ぶのならば――――)
一恋・花束 2024年6月1日
(勝ったのは………………)
一恋・花束 2024年6月1日
-fin-