【イ】エムライブ live「Honigfarbe」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
Honigfarbe/はちみつ色
甘く輝く、黄金の光。
出演者:ミーレ・ベルンシュタイン
特設ステージにて。
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ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
それで、――……、
(ほんの少しだけ。口を閉じて、ゆっくり、一年ぶりの会場と)
(足を運んで耳を傾けてくれる、貴方たちの姿を、見渡して)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
……うん。その通りだなって。
わたくし、すっかりハマっちゃいました。
思いの丈を、歌にすること。
それを、聞いてもらうこと。
それが好きで、今年も来ちゃいました。
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
だから、今日は――Identität、自分の存在意義、なんて大仰に歌った去年のあの日から。
これまでの一年を、ただ振り返るような気持ちで歌います。
良ければ皆も、そんな気持ちで聞いてもらえたら。
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
では、いきます。
「Honigfarbe」――はちみつ色。
(すう、と、大きく、息を吸って――)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(ぱちんっ)
(ステージの照明が落ちて、ほんの束の間、闇の帳が下りる)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(ふわりと、客席を春めいた暖かい風が吹き抜けた)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(ぱ、と灯った光の中に、再び少女の姿が現れる)
(スポットライトとは違う、光源が何処とも判別付かない……)
(けれど春の日差しのようにあたたかな、不思議な光に包まれて、)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
. γ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
| もう! 背伸びはダメって言ったでしょう? |
乂______________________ノ
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(めっ!)
(今はステージ衣装ですけれど――あの日は、白衣めいた白ランを翻して)
(目の前の誰かの頭をえい、と何かで抑えるポーズは、そう、身体測定!)
(そんな姿を見た覚えのある子も、きっといることでしょう)
(流れ始めたポップなメロディに合わせるような、暖かな光と春風の香りが)
(そんな学生生活の記憶を、呼び起こすように)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
「大忙しの 出会いの春」
「当番 会場 手配は完了?」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
「ピカピカ包帯 用意は完璧!」
「保健室は ぼくらの戦場!」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
――「背伸びた?」 「ちょっぴりね!」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
――「体重は?」 「ヒミツですー!」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
――「それから」 「それから?」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
「……もう十分 って思ってたけど」
「今は、ちょっぴり オトナな私になりたいな」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(ぱちんと)
(悪戯っぽいウィンクを残して、再び、舞台は暗転――)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(ざざん、と、波の音)
(仄かに香る、夏の空気)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
. γ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
| もう! やらしー目はダメですよっ |
乂__________________ノ
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(闇を切り裂く、強烈な日差し。それから、うだるような夏の風)
(確かに、それが感じられます)
(実際に温度が上がっているわけではないのですけれど、)
(それでも、冬着の皆さんには少しばかり暑く感じられるかもしれません。ごめんなさいね?)
(でも、仕方ありません。――だって、体の奥から熱くなるような、)
(夏は、そんな季節)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
「胸も高鳴る、ときめきの夏」
「お腹周りは 引き締め完了?」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
「ドキドキ水着は 気合ばっちり!」
「真夏のビーチは 乙女の戦場」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
――「背伸びした?」 「ちょっぴりね!」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
――「誰かのため?」 「ヒミツですー!」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
――「それから」 「それから……?」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
「潮が騒ぐなんて、いうけれど」
「夜は、ちょっぴり 切ない波音を効いたんだ」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(再びの、暗転――それが、明けた頃には)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(あっというまに秋が深まり、吹き抜ける風が少しばかり冷えてきて)
(ごろごろと、効果音とは思えない寒雷めいた空模様まで、どこか遠くから響いてきます)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
. γ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
| ……もう。こんなに心配かけて |
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ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(怒っちゃうようなことも、ありました)
(あんなこと、こんなこと)
(一年もあれば、きっと誰にでも、当たり前のこと)
(誰だって、すれ違いの一つくらいは覚えのあるものでしょう?)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
「秋も過ぎ去り 冬は目の前」
「口うるさいって 嫌わないでね?」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
「探したり 追いかけたり ぶつかりあったり」
「戦場だなんて 思わないけど」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
――「ケンカした?」 「……ちょっぴりね」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
――「したいのは?」 「仲直り!」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
――「それから」 「それから?」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
「……それから――、」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(風の演出はますます冷たさを増して、外の刺すような空気を思い出させますが)
(不思議と、寒くはありません)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(きっと。いつしかステージを照らす、蜂蜜みたいな色のお月様の光が、何処か暖かいからでしょう)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(風、光、音。ここまで見せてきたのは、思い出を元に出力した幻で五感を刺激してイメージを伝える、演出だけのささやかな魔法)
(一年を辿り、ミーレが最後に辿り着いたイメージは、まるで、雪の降り積もる日の、学生寮の厨房で)
(ことことと静かに響く、火にかけられた大きな鍋――)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(――――と綺麗めに纏めるには、ちょっぴりお出汁と海老の香りが強いです。一瞬、「あれ!?」という顔をしました)
(想いを形にする魔法が、遺産パワーでカマクラに閉じ込められて大食いチャレンジするハメになった記憶を刺激したからでしょうか)
(郷愁よりも食欲を刺激する寄せ鍋めいた海鮮の香り。ちょっとした飯テロです)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(あるいは)
(そんなイメージの混入と「ヤバ」って焦りまで、見る人の感受性次第でうっすら伝わってしまったかもしれませんが――)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(でも)
(ま、これもいいでしょう)
(ドタバタの絶えない黄金の日々を、愛おしむために)
(色々あったけど、一年楽しかったね。貴方は? って)
(――それだけのことを、歌うのですから)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(だから、そう)
「――寒い夜には 暖かい料理で」
「貴方の帰りを、待っているから」
(目をつぶってね、って、悪びれないウィンク)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
「はちみつ色の 日々の先で」
「貴方の帰りを、待っているから――」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
「すれ違うことがあったとしても」
「おかえり、って迎えるために」
「今は、きみに伝えるよ」
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
. γ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
| いってらっしゃい! |
乂___________ノ
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(これにて季節はぐるり、ひとめぐり)
(静かにフェードアウトするメロディと共に)
(再び春を前にした、「今」の空気を取り戻して――――)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
――――……
――……、
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(曲の終わり、ふわりふわりと薄らいでゆく灯りの真ん中で)
(ぺこりっ、と、頭を深く下げて)
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
――聞いてくれて、ありがとうございました。
願わくば、また一年の旅の先、それぞれの幸せな日々の先で。
こうしてもう一度会えますように!
ミーレ・ベルンシュタイン 2024年2月7日
(そう、告げるのでした)