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十埼・竜 2023年5月18日
竜へ
今、どこに書くことも出来ないから、これは僕の心の中なんだけど。
「宇宙戦争」より酷い滅亡がいきなり来るなんて思わないよな。
僕にも、状況は全然飲み込めてない。
風景は重なって見えて、あちこちに怪物や天使や悪魔みたいなものが飛んでて、ひどい轟音で。めちゃくちゃに壊れた映画の中みたいで、言葉にできないくらい混乱してる。
やっと話が通じる相手に君を匿ってもらって、考えを纏める時間ができた。
それも、そんなに長くは続かないらしい。
君が目を覚ましたとき、世界がこのままの混沌なのか、悪夢が醒めて奇跡みたいに元に戻るのか、わからないけど。
その時君は、一人で、立って、歩けるはずだ。
そばにいるだろう、ドラゴンみたいな子が、危険から君を守ると約束してくれた。(ノイズイーターなんて名前をつけちゃったけど、いつか君がもう少しいいやつを考えてあげなさい)
パラドックスとか、ディアボロス? だとか、彼の話はよくわからない。でも話をした感じ、悪い子じゃなさそうだ。
これは勘で、その上、妙な話だけど。
多分、今のこの混乱は、可能性とか別次元とかが入り乱れることで起きていて。
そういう、いつかのどこかで、君の弟だった子なんじゃないかな、と思う。
その世界じゃ僕も君もドラゴンなのかな。あはは。
お医者様や看護士さんたちとも、すぐに仲良くなった君だから(父さんにはお見通しだよ)、
これからも、たくさん味方を作れるはずだ。
どんな世界が来たとしても、一人で戦うな。みんなを巻き込め。
ひとりに慣れてしまった君が、父さんは少しだけ心配だ。
ひとりでいても良いことないぞ。本当に。
だって、
君がいたから、僕は今日まで生きていられた。
だから、
僕がどんな形になったとしても、君には生きていてほしかった。
君を抱きしめることは二度となくても、
君がそこにいるのなら、僕は何も後悔しない。
僕の我儘を、君は、恨んでくれていい。
お見舞い、遅くなって、ほんとにごめんね。
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