melvine_log.txt
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
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_極秘ファイルを閲覧しますか? y/n
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_これは 君の知らない物語
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ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
【log01.txt】
XX月XX日
我が国、■■■■は隣国との戦争がさらに熾烈を極め、我が軍の科学力で戦うには決め手に欠ける事態に陥っていた。
そんな中、遺伝子工学に精通した一人の科学者がある計画を発表した。
計画内容は胎児の段階から遺伝子情報を組み替え、超常的な力を得た兵士を人工的に作るというもの。
国の平和のために、軍事目的のためだけに生み出された、兵器同然の人間の開発。
人道を外し、道理を侵す悪魔の所業。
デザイナーベビーを利用したその計画は、提案者であるメルヴィン博士の名を冠して『メルヴィン計画』と呼ばれた。
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
計画を通じて、順を追って3人の赤子が誕生した。
博士の手腕によって生まれた彼女達は、どれもが通常の人間とは明らかに全く違う体の構造を持っていた。
デザイナーベビー達は通常の人間の寿命よりも倍以上の成長速度を遂げていたことから、数か月と立たずうちに10代前半の少女の身体を得ていたこともあり、戦争の舞台へと駆り出すには長い年月をかけずに済んだ。
最初に生まれた子は「MELVN-001」の名が与えられた。
メルヴィン計画の第一子として選ばれた彼女は、プロジェクトの試作運用を兼ねたものもあり、人間として必要な感情というものを撤廃させた。
機械的に行動する彼女は一度受け取った命令は自身が完了とみなすまで行動を起こすため、とても危険があった。
彼女の実験のために●●人の捕虜が命を落とした。
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
二人目に生まれた子は「MELVN-002」の名が与えられた。
001の反省をもとに、さらなる遺伝子情報の改良を加えた一人だった。
しかし結果は満足のいくものではなく、よりこの計画の危険性を高める結果となった。
彼女の能力の検証のために、●●人の捕虜が命を落とした。
三人目に生まれた子は「MELVN-003」の名が与えられた。
001、002で得た今までのデータを参考に、改良を重ねて作り上げられた兵士だった。
命令に従わせるために多少の人間性を持たせるように調整され、ある程度の修正箇所は残したものの、結果として彼女はまとまったモデルとして仕上がった。
そうして出来上がった彼女達3人は、メルヴィン計画を担う根幹の三人として、強化兵士部隊『ワルキューレ』として組み込まれた。
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
【log02.txt】
メルヴィン計画によって誕生した部隊『ワルキューレ』の誕生は、隣国との戦争に大きな変化を与えた。
たった三人で攻め込んできた敵部隊を壊滅させ、その活躍により我が国は優勢を続ける状況になった。
この活躍を評し、メルヴィン計画はさらなる兵士の増加を図ることとなる。
003のデータをさらに改良させ生み出された子は、ほんの少しの感情しか持ち合わせない事から、その後に生み出されるメルヴィンモデルの参考モデルとなった。
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
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…
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
【log03.txt】
XX月XX日
この日、私は初めてメルヴィン計画に携わる日となった。
さらなるテストケースを生み出すべく、メルヴィンモデル候補のデザイナーベビーを一人預かり、面倒を見るということらしい。
培養液に入れられた水槽と、そこに入る胎児が並べられた光景はなんとも異様だった。
戦争の勝利のためとはいえ、その場所は戦いの光景の痛々しさよりもずっと精神に刺さるものがあっただろう。
対象となるデザイナーベビーは003と共に兵士運用を実現する予定だった子であり、うっすら青みがかった銀髪が綺麗なとても幼い少女だった。
検体名「MELVN-XX4」、それが彼女の名前だった。
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
「MELVN-XX4」は他のメルヴィンモデルと違い、自らが戦地に赴いて戦いに向かうモデルではないという。
遺伝子操作と投薬によって生まれた彼女の異能は彼女自身の「声」にあるのだという。
「MELVN-XX4」との生活が始まれば、私は彼女とのコミュニケーションを図った。
最低限の人間性しか与えられてない彼女達メルヴィンモデルにおいて、その行為はあまり必要ないものだっただろう。
ただただ無機質に答えを発し行動に移すそれはまるで人の皮を被ったロボットのようで、とても人間とは言えなかった。
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
■検体名「MELVN-XX4」
■能力テスト
■結果:良好
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XX月XX日
「MELVN-XX4」の能力についての実験が行われた。
結果は想定通りだった。
彼女の発する「声」には独特の音波、電波が発せられており、
それを耳にした者は、その内に眠っている意識を目覚めさせるという。
そして彼女自身は周囲の電気信号を感知し、受信する力もある。
それが彼女の力だった。
ただし、彼女が解放させる意識はあまりにも凶悪なものだった。
人の中に誰もが抱えている潜在意識を無理やり目覚めさせるそのやり方は、戦闘意識や破壊衝動といった負の意識をも曝け出してしまう。
実験のために使われた隣国の捕虜や人質、数十人。
彼らは彼女の声を聞き出した途端に獣のように狂暴になり、狂ったかのようにお互いを攻撃し始めたのだ。
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
「MELVN-XX4」はそんな様子など気にもとめず、試験のためにと渡された国の国歌を静かに歌い上げていた。
彼女が歌い終わる頃には、捕虜・人質達は同士討ちによって全員が力尽きていた。
その数、●●人。
彼女はただ歌い上げるだけで、自らの手を一度も汚さずに、その生を血で染めることとなったのだ。
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
【log4.txt】
XX月XX日
「MELVN-XX4」の観察と世話を始めて数か月。
ついに戦争が終結した。
戦いは我が軍の勝利に終わり、数年かけて戦い続けた争いは幕を閉じた。
それは同時に、このプロジェクトにとっても終わりを意味するものであった。
戦いの終わり。それは同時に戦争のために動き出した強化兵士のプロジェクトも必要なくなったことを意味していた。
強化兵士部隊『ワルキューレ』のメルヴィンモデルの三人は戦い以外の生きる目的は持たない事から存在意義が失われた。
それは戦地に出る予定でもあった「MELVN-XX4」も当然だった。
一度も戦いに赴くことなく、その役目を失った彼女はメルヴィンモデルとしては「幻のモデル」と呼ばれるようになった。
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
XX月XX日
戦争の終結と同時に『メルヴィン計画』は事実上の終了を迎え、政府はこれを認可。
プロジェクトは解散となり、その後の行末はプロジェクトに参加した研究員達によって取り決めることとなった。
「MELVN-XX4」の様子を常日頃からチェックしていた私は、数人の研究員と共に場所を移し、他のメルヴィンモデル達と一緒に彼女達の今後を携わることになった。
戦う事だけが彼女たちの存在意義…悪魔のような計画から生まれた彼女達を、そんな呪縛から解放してやりたかったのだろうか。
ただそんな考えを一部の研究員に明かしたら、彼らは喜んでそれを手助けさせてくれと言ってくれた。
戦争という柵に縛られていたのは、研究員たちも同じだったのかもしれない。
たとえ特殊な出生だったとしても、普通の人間として生きられるようにと。
そう願わざるを得なかった。
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
………………
…………
……
…
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
「…ねぇ、ドクター。これからわたしたち、どこへ行くの?」
「んー?…そうだね。のんびりとした場所…とでも言おうか」
「ずっと研究室に籠り切りの生活だったからね」
「ただ、縛られるものはもうなくなった」
「これからは君も自由に生きていっていいんだよ」
「……………」
「…うん」
「ドクターがそう言うなら………そうする」
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
【log5.txt】
かつての研究施設を離れて、新たな住処でメルヴィンモデルと研究員達の共同生活が始まって数か月。
国々が争った戦争の傷跡はすっかり消えていき、平和が約束された日々。
私達の生活もまた、一般的な人々の生活と変わらないものとなっていた。
メルヴィンモデル達のこれからの生活を人らしくするために、彼女達に少しずつこの世界の知識を教えてあげ、プログラムを通じて兵器としての機能を少しずつ取り外す方向へと進めていった。
「MELVN-XX4」はもともと電気信号や電波を受信しやすい得意体質だったこともあり、コンピューターを通じて情報を得ることも得意だった。
そして何よりも感情、人間性という部分を復元させるために研究員達も日々の穏やかな生活を過ごしながらも彼女達のために動いていた。
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
………………
…………
……
…
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
「…ドクター…今日も星を眺めてるの?」
「おや、起こしてしまったかい?」
「色々物事が煮詰まったり、何かを終えたりしたりすると、ついこうして星々を見てしまってね」
「僕の昔からの習慣なんだ」
「…あんなに小さな光…見てると何かあるの?」
「何かあるかとか、何が起きるかと言われたら何もないだろうね」
「ただ不思議なものでね。あんなちっぽけな光でも、こうして眺めていると気持ちが落ち着いたりするんだ」
「…なんて、なかなか理解されない趣味だけどね」
「………」
「…私も」
「…じゃあ私も」
「これからは…この時間に星を眺めてみようと、思う」
「ドクターは私に色々教えてくれた」
「私の知らないことをいっぱい知ってる」
「私はドクターや皆のことも知りたい」
「だからこれから 一緒に星を眺めちゃ だめ?」
「……」
「…あぁ。いいとも」
「これからは一緒に夜になったら 星を眺めよう」
「君の好きな詩を唄いながら」
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
………………
…………
……
…
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
「……正気ですか!こんな決定、罷り通っていいわけがない!」
「しかしこれが国民達の総意だよ。■■■■■」
「彼女達の存在はあまりにも危険すぎる。戦争が集結し、平和となった今、彼女達は新たな火種となる可能性も否定しきれない」
「彼女達はすでに力を抑えています!もう普通の人間としての生活を送ってもいいくらいに!それなのにこんな…」
「君がどう意見しようが、これはもう決定事項だ」
「メルヴィン博士の遺した功績は確かに偉大だ。しかしその遺産は…今となってはもう我々には必要ない」
「メルヴィン計画によって生み出されたデザイナーベビー。通称メルヴィンモデルは●●日を以て処分とする」
「…私は納得できません。いえ、私だけではない。他の研究員たちも納得しないでしょう」
「それならそれで構わない。しかしもし反対を押し通すというのなら…君達研究員達も、どうなるかはわかるね?」
「…………」
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
…
……
…………
………………
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
【log.txt】
XX月XX日
処分命令が言い渡された当日。
我々はメルヴィンモデルである彼女達を逃がすことにした。
政府からの指示とはいえ、この決定に納得しなかった研究員達は多く、私の計画に乗っかってくれた。
この瞬間から、我々は国を追われる重罪人となるだろう。
だがそれでも構わなかった。
元よりこの計画に携わった時点で、おおよそ人の道から離れた行為の連続であった。
いつ命が消えようともわからない、そんな環境と計画に携わったことへの罪悪感に苛まれて、これまでを生きてきたメンバーもいるだろう。
だけどもそんな中で生まれた数少ない命を、もう不要だからと言ってただ散らせてしまうのはあまりに心が傷んだ。
彼女達は生まれた時から不自由で、言いなりばかりの人生だった。
命を張って我らの国を守り続けてきたのだ。
ならばこそ、今度は自分たちが彼女のために命を賭けて、彼女達の未来を守らねばいけないと。
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
決行日は丁度、戦争が終結して一年が経つ記念祭の日。
他の研究員達はしっかりとしたバックアップの元、手筈通りに動く予定だ。
現在の施設を離れ、この国より遥か遠い場所へと向かうのがおおよそのゴールだろう。
数分後には計画を開始する。
長らく綴ったこの記録はこれで最後になるだろう。
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
もしこのログを見る誰かがいたのなら
我らと彼女のこれからの道筋を止めないでほしい。
どうか何も言わず、このログを消して、胸のうちに秘めたまま、変わらずにこれまで通りに過ごしてほしい。
それが何よりの願いだ
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
………………
…………
……
…
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
「…随分と遠くまで来たな。此処まで来ればもう軍も追っては来ないはず…」
「…ねえ、ドクター。あれは 何?」
「え?……あれは花火、か?記念祭の会場のほうで打ち上げているのだろうか」
「…はな…び?」
「あぁ、お祝い事があると打ち上がる火で出来た芸術品だよ。打ち上がると花のように開くから花火というんだよ」
「…きれい…」
「……そうか。しかし今は少し見ている時間は―――」
「…………」
「…じゃあ…そうだな。この引っ越しが終わったら、みんなで花火が見られる場所に遊びに行こう」
「…?ほんとう?」
「あぁ、私から皆に伝えて来ようと思う。なんせ、君がそんなにキラキラした顔をしてるのは初めてだからね。だから今は早く移動しよう。」
「…じゃあ 約束 だよ?」
「――あぁ、必ず。みんなで大きく、綺麗な花火を見よう。」
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
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ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
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ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
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ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
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_メルヴィンモデルの処分に関する報告
_MELVN-001からMELVN-XX4は施設にいた研究員達と共に脱走
_首謀者は同施設にいた研究員兼医者である■■■■■
_研究施設はすでに手放した形跡があった模様
_
_
_軍の追跡により当施設内の脱走した研究員の数名を確認
_しかしメルヴィンモデルの痕跡はなく 研究員達は射殺
_引き続き追跡にあたる
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_
_某地にてメルヴィンモデルのうちの一人を確認。
_部隊を向かわせるも脱走した研究員達と共に交戦を確認。
_数名が死亡を確認するも メルヴィンモデル MELVN-001は行方不明となる
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_
_首謀者である■■■■■の身柄を発見
_MELVN-002を除く三体のメルヴィンモデルはいずれも行方不明
_■■■■■は抵抗を繰り返し 最後まで情報を明かすことはなく 死亡を確認
_
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_MELVN-001 MELVN-003 MELVN-XX4は現在も消息不明
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月23日
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…………
……
…
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月24日
「…これで君との付き合いもおしまい か」
薄暗い部屋にぽつんと置かれた小さな卵型のカプセル
そこに眠る少女を見て、ふとぽつりと言葉を漏らした。
「…こうして見るとまるで童話の姫のよう…だ」
カプセルの中で静かに目を閉じ、眠りにつく姿は
子供の頃に聞いた童話のお姫様とどことなく似ていた。
まるで時間が止まったかのように眠る姿は、そこだけが切り取られた世界のようだ。
「…結局。君と花火を見る日は…叶わなかったな」
唯一、彼女が目を光らせて興味を示したあの顔がちらついた。
彼女がたったひとつ、自分の口からお願いした数少ない約束。
それだけが心残りだった
「…そのカプセルは…君を長い眠りにつかせると同時に……君を守る、盾になる……はずだ…」
「君が願えば……どんな形にも、なる…」
「僕の…最後のプレゼント だ」
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月24日
「…どうか次に君が目覚める時は いい時代でありますように」
「その時は兵器なんて物騒な呼ばれ方もされずに」
「ただ普通の 一歌うことが好きな 一人の女の子として」
「友達や恋人と一緒に笑いあえるような」
「そんな世界で 楽しく生きてくれ。―――」
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月24日
…知らないベッドに連れて行かれて、あの人は横になってと言った。
これはなに?そう問いかければ、幸せな夢を見られる不思議なベッドだと言った。
ここでひとたび目をつぶって眠れば、今までとは違う世界が見られるとあの人は言った。
―――わたしは こわかった。
この中で一眠りついた瞬間、思ったの。
目を閉じたら この人は私の前から消えてしまうんじゃないかと。
わたしが何かを言う前に、カプセルの扉は静かに閉まっていった。
やだ
やだ
やだ やだ 嫌だ!
置いていかないで!
あなたも一緒にいて!
ささやかなわたしの願い事はカプセルに遮られて伝わらない
しばらくして、魔法のように自然とわたしの瞼は閉じていこうとした
その時に映ったあの人の最後の顔は
とても満足したように笑っていて
その微笑みを最後に
「わたし」の意識は消えて
あの人の顔も 思い出も 星の光のように
遥か遠くへ 遠ざかっていった
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月24日
………………
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…
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月24日
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ユノ・メルヴィーネ 2022年10月24日
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ユノ・メルヴィーネ 2022年10月24日
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ユノ・メルヴィーネ 2022年10月24日
…地下に隠された彼女を乗せたコールドスリープ装置は、研究員の自己犠牲による計画によって静かにその存在が隠され、彼女は長き眠りにつく。
そして彼女の目覚めは、別世界に起きる異変によってもたらされた。
人類史改竄術式『刻逆』
強大すぎる外界の術式は、彼女の眠るカプセルごと転移し、彼女を未知の世界へと送り出した―――
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月24日
………………
…………
……
…
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月24日
「…おい。おい!しっかりしろ!大丈夫か!」
…誰かがわたしを呼んでいる
長らく耳にしなかった、少し強めの声色がわたしの意識に問いかける
「…怪我とかは…してねえみたいだけど。…意識ないみたいだし、死んじゃってる…とかない、よな?」
ふと、どこか懐かしい声に似ていたその声に
ゆっくりと私の瞼は開かれていった
「…!目ぇ覚ましたか!…大丈夫か、アンタ。こんなところで倒れてたから心配だったんだが」
………
…わたしは……
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月24日
「…わたしは………」
わたしは
誰?
ユノ・メルヴィーネ 2022年10月24日
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