静寂の病室
十埼・竜 2022年9月27日
ある個室。
真っ白な室内、真っ白なベッド、横たわる身体、
動かないものばかりだ。
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新堂・亜唯 2022年9月29日
(だから、どうしても考えてしまう)
(心配より、憂いより……ある意味何よりなじみ深い、自分の記憶の中の彼を思えば)
(横から、後ろから、遠くから、眺めた戦場での彼の姿を思えば)
(彼が〝このようなこと〟になっている今を思えば)
(不謹慎にも、今もっとも、どういう思考が心の中を支配しているかと言えば――)
新堂・亜唯 2022年9月29日
……――先輩、何と戦ったんだろう。
新堂・亜唯 2022年9月29日
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(いない)
竜城・陸 2022年9月29日
(そんな弟の背を軽く撫でて)
(先に出ていく背中を見送ってから)
竜城・陸 2022年9月29日
……どう。
そろそろ、また、死にたくないと思えたんじゃない?
(なんて、そんな、呟き一つ)
竜城・陸 2022年9月29日
(――窓際に、もうひとつ置いた見舞いの花を軽く撫でて)
(弟の後を、追いかけた)
竜城・陸 2022年9月29日
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(いない)
日日日・らんか 2022年9月29日
(コンコン、と、小さく病室のドアをノックする。)
(無効票)
日日日・らんか 2022年9月29日
……失礼、します。
(ゆっくりと病室のドアを開くと、恐る恐るといった様子で中へと入った。)
(白一色の清潔そうな室内に、静かに、単調な機械音だけが鳴り響く。病室は個室で、ぽつんと一つだけ置かれたベッドの上に、“彼”の身体が横たわっていた。)
日日日・らんか 2022年9月29日
……!
(死んだように眠るという言葉があるが、本当に、息もしてないかのように、黙して横たわるその姿。それを引き金に、脳裏にフラッシュバックするひとつの光景。それは寝台に横たわる、内覆いを被る姉の——)
っ…………はぁっ、
うっ……ぉぇ…………
は……ぁ……っ。
(我に返り、荒い呼吸を繰り返しながら、手にしたバッグを握りしめる。暗い記憶が蘇ったことに、ぶるりと身を震わせる。)
日日日・らんか 2022年9月29日
あ……。
(口の中に広がる苦い感触をごまかすように顔を上げた。来客のためだろうか、ベッドの傍には机が置かれていて、そこには花や果物、他にも山のようなお見舞い品が置かれていた。中には変な本?やよく分からない物もあって、交流の広さを伺い知れる。)
……ふふっ。
(でもそれが何だかおかしくて。思わず笑ってしまった。)
日日日・らんか 2022年9月29日
思ったより、だいぶ慕われてるじゃないですか。
(あなたが思うより、あなたという存在は。)
あなたはそんなことないって、言うかもだけど。
(みんなにとって、あたしにとって、大きいんだよ?)
(備え付けの椅子に座って、あなたの髪を優しく撫でた。汗をかいていないからか、それとも誰かが拭いてあげているのかな。意外とサラリとしていて、指から滑り落ちていく。)
……ほんと、無茶ばっかりして。
日日日・らんか 2022年9月29日
(それはまるで、彼という存在のようで。気づかないうちに。知らないうちに。消え落ちて、なくなってしまうのでは。そう思うと、自然と拳に力が入っていた。何よりも——)
ごめん、なさい……。
あなたのそばに、居られなくて……。
(……もちろん。居たとして何かが変わったわけではないと思うし、むしろ邪魔になっていたかもしれない。それでも……)
……弟子、失格だね。
日日日・らんか 2022年9月29日
あ、そうだ。
お見舞いの品……って言ってもいいのかな。
何を持っていけばいいのか分からなかったから、これ、あの、お菓子。作って来たんだ。
……ちょっと焦げちゃったり、不格好かもしれないけど。
マドレーヌ、師匠は好き……?
じゃあ、えっと、ここに、置いておくね。
日日日・らんか 2022年9月29日
……。
……早く、起きて。
(——あの日。
彼処、わくわくモールで、何があったのか。みんな正確にはよく分かっていないようで、ぼんやりとしたことしか聞けなかった。
だから——)
その口で。師匠の、その声で。
聞かせてくれるの、待ってますから。
それじゃあ、また。
日日日・らんか 2022年9月29日
(そっと。後ろ手に扉を閉め、部屋を出——)
……。
はぁぁぁっ…………。
(扉の前に、へたり込んでしまう。
歩けるようになるには、もう少し時間がかかりそうだった。)
日日日・らんか 2022年9月29日
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(無効票)
十埼・竜 2022年9月30日
(窓の外に向けてアンテナを立てたラジオから)
(流れてくる、時報。)
(無効票)
十埼・竜 2022年9月30日
(――――のあとから聴こえてきたのは、)
………………………………あれ?
(うちに、こんな音源、あったっけ?)
十埼・竜 2022年9月30日
!!!???
(ラジオを二度見した)
(は?)(どう聴いてもレイチェルさん)(は???)(ノイも何誇らしげにしてんの???)
十埼・竜 2022年9月30日
(…………うわー……)
(カバーストーリーまで用意してくれてるじゃん)
("高くつく"と思っておかないと)
十埼・竜 2022年9月30日
(…………あんなにやる気あるモーラットの鳴き声、あんまり聴いたことないぞ)
(美人が隣にいるからだな)(あのやろ)(ぼくまだレイチェルさんゲストに呼べてないのに)(あのやろ)
十埼・竜 2022年9月30日
………(横たわる、顔を、見る)
(戦争映画にあったな、まるで眠ってるみたいに見えるけど、身体が麻痺してるだけで意識はあって、実は音だけは聴こえてた、ってやつ)
(あれは、すごく、怖かったけど)
……………先輩。
(ぎゅ、手を握る)
これは、聴かなきゃ、損ですよ?
……っていうか、あとで結構、拗ねちゃうと思うし……
十埼・竜 2022年9月30日
……………………。
(目を閉じて)
(その音に、過る幻想に、沈む。)
十埼・竜 2022年9月30日
(夢の中を、めぐるみたいだ)
(――――やがて、ゆっくりと)
(水面に見えた灯に向けて、浮かび上がって)
……………やっぱり、凄いですよ。レイチェルさんは。
十埼・竜 2022年9月30日
(ノイズイーターに、片手を添えた。)
(見てるか、わかんないけどさ。……ああ、こんなことするのも、ほんと久しぶりだな)
(送信。)
十埼・竜 2022年9月30日
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(無効票)
十埼・竜 2022年10月1日
【「ねえ」「ねえ、ってば」】
【「こっちにいるのに、きこえて、ないのかなぁ」】
十埼・竜 2022年10月1日
【「ぼくね、おぼえてるんだ」】
【「アラタ、二回とも、おんなじ"波"、してたなって」】
【「これも、いま、そう」】
十埼・竜 2022年10月1日
【「もう、やりなおさないの?」】
【「きみがいると、これ、あんまりこわれないんだ」】
十埼・竜 2022年10月1日
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(無効票)
レイチェル・セレナイト 2022年10月1日
(珍しく、少し急いたようにドアが開かれて。)
(無効票)
レイチェル・セレナイト 2022年10月1日
…………あれ? 今……
(“何か”聴こえたような気がした)(気のせいだった、だろうか)
レイチェル・セレナイト 2022年10月1日
…………。
まいっか。
レイチェル・セレナイト 2022年10月1日
(「竜くーん。今日はサーモンアボカドサンドですよー」)
(……なんて、いつもの感じでまた、声を掛けるのでした)
レイチェル・セレナイト 2022年10月1日
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(いない)
日日日・らんか 2022年10月1日
失礼します。
(またゆっくりと、病室のドアを開ける。2回目だから、幾分慣れたし、もう大丈夫。)
(無効票)
日日日・らんか 2022年10月1日
(前と同じ。備え付けの椅子に座って、眠り続けるあなたの顔をじっと見つめる。
でも、前と違うのは、幾らか余裕があること。)
日日日・らんか 2022年10月1日
……夢、見てるのかな。
(端正な指が、髪の表面を優しく這う。
添わせるように、あなたの髪をさらりと撫でた。)
……あたしも、見たいな。素敵な、夢。
(おもむろに瞼を閉じる。
その夢の中では、あなたは起きていて。いつものように笑っていて。そしてこんなことを話すのだ。)
——そうだ。夏祭り、行きましょうよ。
ふふ。もう終わってしまってるかも。
……でも、探せばきっと。見つかるから。
(——だから、目が覚めたら。夢から覚めた、その時には。)
……約束。破っちゃ、ヤだから、ね?
日日日・らんか 2022年10月1日
……んと、そうだ。これ。
また、作ってきた。今度は、アップルパイ。
……師匠って、甘いもの、好きだっけ?
……そんなことも、知らないや。あたし。
……それも、聞かないとな。
じゃあ、置いとくから。
日日日・らんか 2022年10月1日
(そしてゆったりと、背もたれに身体を預け、この、静かな、あなたとのひと時を、過ごしていきました。)
日日日・らんか 2022年10月1日
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(いない)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年10月1日
(からからから。扉を開く。目にはサングラス、手には花束を持って)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年10月1日
…ああ。やっぱり、奉利さンだ。
(己の眼で確かめて、少しだけ抱いていた期待が脆く崩れるのを知る)
……。何を無理したンだよう。お掃除のしすぎか?
虚ヶ谷・ワチカ 2022年10月1日
わっちも今日は病院だったの。
だいぶ良くなりましたねって、包帯取って貰えたよ。
……。
……。
(何を言うか、とても迷う暇があって)
花、持ってきたンだ。
虚ヶ谷・ワチカ 2022年10月1日
きっと他にも誰か持ってきてると思ったけど、花はどれだけあっても飾れば良いからさ。
……スズランだよ、覚えてる?弱毒化すれば強心作用になるって。
虚ヶ谷・ワチカ 2022年10月1日
……。
(何を言えばいいのだろう。わっちはこの人のこと、何にも知らない。でも、……たくさんのお見舞いが、この人の人望をかたちにしているようで)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年10月1日
また、お仕事依頼するから。
そしたら、来てな。……もう廃業しました、なンて、わっちは嫌だからな。
(そういえば、ずっと傍にいる男の子がいる。仲が良かったんだろうか。きっと心配だろうな。……今は眠っているようだったので、わっちは花束をおくとそっと毛布をその子にかけてあげて)
虚ヶ谷・ワチカ 2022年10月1日
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(いない)
十埼・竜 2022年10月3日
(ある夜の声)
(あくる朝の物音)
(――――そして)
(真っ白な室内、真っ白なベッド、)
(そこにはもう、だれも)
(いない)