雑貨喫茶『Nox』

2022/08/28

花塚・夜壱 2022年8月28日
平安鬼妖地獄変奪還戦 第6ターン結果

●⑬菅原道真
 封印から解き放たれたジェネラル級『菅原道真』は、その怨念の力で豊臣秀吉の軍勢と対峙していた。
 だが、豊臣秀吉の陣営に攻め入る様子は無い。
 それを受けて『菅原道真』は封印が解かれる以前と同様に、その場に留まり、豊臣秀吉の軍勢が平安鬼妖地獄変の中心へと進まぬように、その怨念の力で押しとどめ続けていた。

 怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨。
 怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨。
 怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨。
 怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨・怨。

 道真と秀吉が対峙する『離宮八幡宮』に攻め寄せた白水・蛍(鼓舞する詩歌・g01398)達ディアボロスは、戦場を埋め尽くすような道真の強い怨みの念を目の当たりにして、怖気たった。

「これが道真公の怨みの念ですか。さすがに、日本三大怨霊といわれるだけはありますね」
 蛍は、その怨念の強さを前に自らを奮い立たせると、道真の下に集った妖怪達の掃討を開始する。
 妖怪達も、道真の怨念に当てられたのか必死に攻撃を仕掛けてくる。だが、
「我が名は白水蛍! 命を惜しまぬ者は出なさい!!」
 と一喝し、その攻撃を退けつつ道真の元へと近づいていく。

 一方、道真と初めて相対したエルティ・アーシュ(受け継ぐ小竜・g01898)は、その怨みに満ちた様相にたじろぐも、
「道真くん……ちょっと困ってるみたい」
 束帯が着崩れ、口からは涎を垂らし、瞳は常軌を逸した狂気を宿す菅原道真の様子に、違和感を覚えていた。

「道真くんは、どうしてこんな風になってしまったの? ジェネラル級のクロノヴェーダが、こんなになってしまう怨みってなんなの?」
 エルティが、優しくそう問いかける。

 そもそも、平安鬼妖地獄変は京都と奈良周辺のみのディヴィジョンであるのだから、クロノヴェーダの菅原道真が九州の大宰府に流されるという事など無い。菅原道真の怨みの根幹さえ、存在していない筈なのだ。

「そもそも、この怨念って道真くんのものなの?」
 エルティがそう疑問を問いかけるが、道真は「怨・怨・怨・怨」と怨みの言葉と共に攻撃を仕掛けてくるのみ。
 だが、その攻撃を受けたエルティは、その恨みが『菅原道真の怨み』で無い事に気付いてしまった。
 それは、理不尽に殺された一般人の怨み、虐げられた一般人の怨み……だったのだ。

「道真くんは、平安鬼妖地獄変に暮らすみんなの怨みの念を集めさせられていたの? じゃぁ……、晴明くんは、道真くんを正気を無くす程に怨みを集めて結界にしたてあげたということ……」
 かつて賀茂黎瞑の残留思念は、『安倍晴明が菅原道真の献身を裏切った』とディアボロスに語ったことがある。
 その献身とは、平安鬼妖地獄変の一般人の怨みの念を一身に受け、正気を無くしてでも、平安鬼妖地獄変を護る結界となる事であったのだろうか。

「怨・怨・怨・怨・怨・怨」
 菅原道真は、エルティの問いに応える事無く、やみくもに攻撃を放ってくる。
 それは、とても悲しい事のように、エルティには思えてならなかった。
 エルティが感じた、道真の事情は他のディアボロス達にも伝わっていた。
 だが、だからといって、やる事は変わりはしない。

「はは、本来は学問の神としても祀られてきたというのに……、上司の醜悪な策の犠牲として、こんな風に使い潰されてしまうとは……。だけど、気の毒ではあるけれど、このまま倒させてもらおう」
 レジーナ・ネイサン(g00801)は、憐憫の表情で哀れなジェネラル級の姿を見つつ、微塵の油断もせずに、愛用のデッキブラシを振りかぶった。

「ようこそ、私のアトリエへ! その怨みの念もろとも、その全てを真っ白く塗りつぶしてあげる」
 レジーナの攻撃は、その言葉通り、道真とその身に宿る怨念とを白く染め上げていく。
 怨みの全てを白く塗り替えられた道真は、その力の全てを失い、白く白く消滅していった。
 白く消えゆく道真が、レジーナに向けて上品な様子で会釈したのは、果たして見間違えであったのか……。

「道真が悪しきクロノヴェーダだったのは間違い無いわ。でも、それでも、これほど酷い扱いを受ける存在では無かった……。道真のような配下すら道具として使い潰し……、そして、自分だけ降伏して生き延びようという安倍晴明、私は絶対に許すことは出来ません」
 レジーナらディアボロスは、断片の王・安倍晴明への怒りを新たにしつつ、戦場を後にするのだった。




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